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[604] Let It Be
日時: 2011/04/09 01:55
名前: ななし



Let It Beをストレートに訳すと「あるがままに」
でも、訳し方によっては「今は耐え忍ぼう」との意味もある。
あぁ、タイトルをつけるって難しい。


東日本大震災に打ち勝つ企画案は良いと思いました。
しかし、企画の要項には個人的に無理ポでした。もうしわけないです。

でも、私のできる形で応援します。
それがこんな形。
応援の形は1つじゃないと思う。多分。


ななし拝
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◆ Chapter 1 ( No.1 )
日時: 2011/04/09 01:57
名前: ななし


男はコンビニのレジの脇にある小さな募金箱を見た。【第3新東京市災害募金】とラベルが張ってあった。
第3新東京市は『使徒』専用迎撃要塞都市。この街には高層ビルをも超える大きい怪物が突然と現れる。
怪物の目的はよくわかっていない。何かを探すかのように徘徊し街を支配しようとする。その怪物を撃退する為、エヴァンゲリオンという巨大ロボットが出動し戦う。
戦いは巨大な怪物、使徒が死ぬまで終わらない。緊急時は人々はシェルターに避難し企業団体のビル郡や住宅街は地表ゲートに収束される。この街の建物が今のところ全壊される事はないが、戦いが終わると停電や通信回線の混線など何かしらの被害は出ている。
この怪物がやってくるのは1度きりのことではない。何度もやってくる。何度に渡る戦い、ニュースによると政府の防衛予算や義援金などでは街の修復は追いついていないらしい。
男は貯金箱の中を覗いてみた。小銭が少し入っているくらいであまり募金されていないようだった。男は「そりゃそうだ」と思った。何故なら男が今滞在している街こそが第3新東京市なのだから。被害に逢っている人々は自分の事や周りの事で精一杯。使徒の被害に合った直後では街を助ける事まで手が回らない。
男はレジカウンターに安いサンドイッチを置くと自分が好んでいるタバコの銘柄を店員に伝えた。店員は後ろの棚からそのタバコを1つ取り出すとそのまま勘定を始めた。

「610円です」

財布から700円を出し店員に渡すと既に商品はレジ袋に入っており、レシートと共に90円のおつりが帰ってきた。おつりを財布に仕舞おうかと思ったが先程の募金がふと気になり、男はおつりをそのまま募金箱へ入れる。

「あれ?加持君って募金する人だっけ?」
「募金する人と言うわけじゃないが、まぁ、きまぐれだな」

男はレジ袋を持つと後ろの女性に場所を譲る為に横に避けた。後ろの女性は赤いかごをレジに置く。かごの中身は携帯用の歯ブラシと栄養ドリンク、そして何本かのエビチュのビールだった。

「なんか意外」
「そうか?葛城だってたまには募金するだろ?」

店員が値段を告げた。葛城と呼ばれた女性も「まぁ、そうね」と言いながら財布から千円札を3枚取り出す。2枚を店員に渡し、1枚を募金箱に入れた。会計が終わり、戻ってきたいくらかのお釣りも彼女はそのまま募金箱に入れた。

「太っ腹だな」
「そう?」

彼女はそのまま出口へと向かっていった。男はその後ろを付いていく。
店の外に出ると女性は栄養ドリンクのキャップを開け飲み始めた。男は先ほど買ったタバコを開けると1本取り出し、火をつけ吸う。

「あのさ、募金すると達成感ってない?」
「達成感?」
「募金した時、このお金で頑張ってくださいって思ったでしょ」
「まぁ、募金する意義はそうだからな」
「いつも思うのは、それで終わりにしないって事なの」
「終わり?何が終わりなんだ?」
「んー、上手く説明できないけど」

彼女は栄養ドリンクをまた一口飲む。そしてビンの底を覗き込んだ。どうやら飲みきったらしい。

「自分の仕事は使徒を倒す事。その使徒がいなくなれば平和が訪れる。平和になれば募金箱は無くなる、って事でしょ。募金する立場じゃなく、募金活動がなくなるよう努力する。頑張って下さいと同時に自分も頑張る。そこまで考えるようにしたの」
「それは結構な考えだが、募金箱は無くなる事はないと思うぞ」

先程見た募金箱には災害募金のラベルが貼ってあった。が、そのラベルの下には何度かラベルが剥がされた後もあった。きっと前にも何らかの救援募金がなされていたのだろう。

「私は箱じゃなくて、この街への募金を終わらせたいって言ってるの」
「はいはい」
「……いくらお金があっても根本的な問題が解決しない限り、悪循環を繰り返すだけよ」

私はその悪循環を断ち切りたいの、と彼女は語り空瓶をゴミ箱へ捨てた。男もタバコを吸い終え火を消す。

「経験者は語る、か」

その言葉で気合が入っていた彼女の顔が一気に冷めた表情になった。その顔を見て男は「しまった」と思った。しかし、時は遅すぎた。

「か、葛城……」
「ごめん、加持君。用事思い出したから」

彼女は男に背を向け道を歩く。男は慌てて彼女の名を呼び肩に手をかけようとしたが捕まらず空を切った。彼女は背中越しに右手を振った。言葉が無い別れの挨拶だった。

去って行く女を男はただ黙って見送るしかできなかった。

「……失敗した」

使徒の恐怖から直ぐに立ち直る人もいれば、長い時間をかけて克服する人もいる。
彼女は15年前の災害『セカンド・インパクト』で使徒の恐怖を目の当たりにした人物。
長い長い時間をかけて、彼女は立ち直った。表面上は。
彼女が使徒を倒そうとするのはこの街の為、というより自分の為の方が大きいかもしれない。
自分の全てを奪った使徒に復讐する事で彼女は今を生きている。

知っていたはずなのに、彼女はまだ恐怖を抱えて生きてる事を。
彼女の心の傷をまた広げてしまった。と男は深く反省した。


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