Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.1 ) |
- 日時: 2011/08/05 04:35
- 名前: 何処 ID: L7Jh9Jhaf2s
- この虹を越えれば…
私の幸せは、この虹の向こう側。
私は、躊躇せずに真っ直ぐ虹の向こうへ飛び込んだ。
【彼女の幸せ・僕の幸せ】 初音ミク《Yellow》 http://www.youtube.com/watch?v=L7Jh9Jhaf2s&sns=em
「うわっ!?」
ホースで水を掛けながら車を洗っていたら、向こう側でその様子を見ていた彼女が跳ねる水飛沫を割って飛び込んで来た。
思わず洗車ブラシとホースを放り出して彼女を受け止める。
傍らのラジオからはカントリーが流れ
放り出したホースは暴れながら水を振り撒き
太陽は燦々…いや、ギラギラ輝き
僕の腕の中には 僕の幸せが形となって熱と感触を以てその存在を主張している。
蒸し暑い昼下がり、僕は彼女の何時もの突拍子の無い行動に言葉を無くし、裾を濡らしながら只手の内の幸せを抱き締めていた。
※※※
私は、今一人の人間として生きている。 全てが終わり、無へ消える筈の私は何故か存在を保っていて 途方に暮れたまま只存在する私をこの人は肯定して背中を押してくれた。
そう、あの瞬間から私の新たな命が始まったの。
***
「綾波…レイです。」
僕が彼女に出逢ったのは大学の新歓コンパだった。 碇の彼女と聞いていたが、まぁ、美人なのには驚いた。 最も、そのすっ飛んだキャラクターにもっと驚かせられる事になろうとはその時は思いもしなかったが。
暫くして、碇は彼女と喧嘩別れをした。
…正直、やっぱりなと思ったよ。 碇は彼女を気遣ってはいたけど、それは相手を対等の相手として見た気遣いじゃ無かったから。
多分、大切にされた事の無い男が自分なりに考え抜いた末の行動立ったんだろうが、それは違うんだよ。
とは言え、ピントの擦れた二人のやり取りは下手な漫才より面白かったが…
結局、碇は自分が間違っている事を認められず 彼女も碇の何が間違っていたのか解らず
…ま、良く有る話だったよ、そこまでは。
何やかんやで仲裁に入る羽目になった僕は、二人から衝撃的な…否、そんな言葉では済まない程の事実を知らされた。
詳しくは彼女と共に生きる事になってから発生した守秘義務に係わるから言えないが、二人の問題はサードインパクトやネルフなんて物に関係する事柄だったんだよ。
…皮肉な事に。
◇◇◇
「…ほら、彼氏が来るぞ、妙な誤解されたらどうする。」
「大丈夫…お父さんとスキンシップしてるだけ…」
「あのなぁ…」
「…聞きました…娘さんの事。」
「!?」
「…亡くなった娘さんの分まで、私がお義父さんを幸せにする。だから…」
「…僕は幸せだよ。亡くなった娘の分とは別に。君を娘に出来た、それこそが幸せだ。」
「…お父さん…」
「さ、もう直彼氏が来るよ、着替えておいで。そぉんな濡れて透けた服で彼氏と会うなぞ父さんは許さんぞぉ。」
「クスクス…はい、じゃ着替えて来ます。」
「ん。宜しい。」
***
…僕の娘はネルフ職員だった。
使徒戦の最中、娘はこの世界から消えた…
エヴァンゲリオンの自爆に巻き込まれたらしいと後に人伝に聞いた。
無人運用する兵装ビル、回線故障により動かないそれを作動させる為に一人非常用操作室の有る装甲ビルに残ったそうだ…
消えた街、消えた娘、消えたエヴァンゲリオン、消えたチルドレン…
因果は廻り、僕は彼女と巡り合った。
世界は奇跡で出来ている。
本来この世界に帰る筈の無かった少女。 非科学的だが、彼女を僕は帰る事の無い娘の生まれ変わりと確信した。
これ以上を語るのは蛇足だろう。
僕は、足元で暴れるホースを踏み抑え、再び洗車を始めた。
放物線を描き車を叩く水流はその欠片を撒き散らし小さな虹を作る。
虹の向こう側に見える通りの端、そこから現れた見慣れた自転車に乗って走る碇の姿が水滴のカーテン越しにゆっくりと近付いて来る。
空は快晴、風は穏やか、実に良い日。
何時の間にかラジオからはクラプトンが流れていた。
2013・3・23一部改定
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