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[612] サイト開設十周年カウントダウン企画・八月―カウントゼロ―
日時: 2011/07/30 05:40
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・綾波レイの幸せ
・Over The Rainbow

です。

1111111ヒット記念企画に始まり、物議を呼んだゲロ甘ベタベタLRS企画を挟み、いよいよこの
企画も終了間近。ま、少なくとも私が全お題を書き切るまでは企画そのものは終わらないわけ
だが(笑)。

しかし企画が終わるってことはこのサイトが10周年を迎えるってことで、もちろんそれにはそ
れなりの感慨はあったりするわけだけれども、それはそれとしていつも通りぬるい感じでやっ
ていきましょう。ちなみに10周年の隠し球は、少なくとも今のところは無いっす。
メンテ

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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月―カウントゼロ― ( No.13 )
日時: 2011/10/25 00:54
名前: tamb

 ***** 綾幸終了の危機・2 *****

 仕事がなくて暇だった。

 もっとも仕事と仕事の間隔が開くのは――もちろん望ましい事ではないけれども――よくあ
ることで、そういう時にこそ営業活動やら勉強やらをしなければならないのだが、残念ながら
というか当然のようにというかそんなことをする気力は全く沸いてこず、おれはだらだらとサ
イト巡りをしたり2ちゃんを眺めたりして時間をつぶしていた。いや、たまには小説も書いた
りしてたんだが。

 知り合いから電話がかかってきたのはそんな気だるい午後だった。ちょっと古い言葉でいえ
ばアンニュイな午後ってやつか。書いてて恥ずかしい。
 それはともかく、そいつは電話の向こうで出し抜けにこう言った。合コンやるんだけど来て
くんない? なんじゃいそりゃとおれは思い、実際に口に出して言った。なんじゃそりゃ?
というか、合コンって言葉は今でもあるのか?

「いや、急にこれなくなったやつがいてさ。人数が足んないんだよな」
「いつ?」
「今日なんだけど。相手は看護婦。ナースだぜ?」

 おれに看護婦属性はないんだがな。しかも今日かよ。

「こっちのメンツは?」

 そいつは残る二人の名前をあげた。電話の主も含め、いずれも若くてイケメン揃いだった。
おっさんはおれひとり。それでわかった。おれは単なる頭数合わせだ。男女の数が合っていれ
ばいい。逆におれが女の子をかっさらうようでは困るのだ。それなら気が楽だ。要するに酒を
飲みにいくという、ただそれだけの話だ。
 おれは場所と時間を確認し、助かるよという声を聞いて電話を切った。


 というわけでおれはいま酒を飲んでいる。二十代前半と思われる女の子たちはみな可愛かっ
たが、身の程をわきまえたおれにイケメンの若者を差し置いて彼女たちをモノにしようという
気があるわけでもなし、かといって黙ってひたすら酒を飲んで場の空気を悪くするほど子供で
もない。適当にその辺にいる女の子とあることないことぺらぺら喋りながらそれなりに楽しい
酒を飲んでいた。おれ以外の男どもも、実際にはともかくさすがに飢えた獣のような雰囲気を
顕わにすることもなく、適当にコンパ向けの小ネタなど披露しながら、それでもしっかりとア
ドレスなど聞き出している。微笑ましいなとおれは思う。まあ男なら――女の子でもそうかも
しれないが――そういう季節というのは必要なんだろう。おれにもそういう時代があった。
 そのうちにみんな席を移動するのが面倒になったのか、あるいはお気に入りの女の子の隣を
確保したのか動きがなくなる。おれは最初から動いたりはしなかったが。員数外だし。
 だがそのしばらく前からおれの隣に腰を落ち着けている女の子がいた。ぶっちゃけおれの好
みのタイプで、とても彼女が員数外とは思われなかった。実際、彼女にさりげなく視線を送っ
ている男もいた。だが彼女がおれの隣から動かないのでそいつは早々に諦めたようだった。こ
ういうのは諦めが肝心だ。とはいっても、おれに彼女をどうこうするつもりはない。いろいろ
と面倒だし。

「BさんBさん」

 毒にも薬にもならない適当な話が途切れた時、彼女はおれの名を呼んで言った。

「アドレス、教えて下さい」
「お、聞いてくれるの?」

 おれはそう答えて携帯を出す。ここで断るのは失礼にあたるし、本来は男の方から聞くのが
マナーなのだ。だから聞いてくれるのかとフォローしたのだ。そもそも断る理由はない。

「聞いたからには出してくれないとだめだよ?」

 おれのセリフに彼女はにひと笑った。
 彼女はCちゃんといった。

「今日のこれって」とCちゃんはおれのグラスにビールを注ぎながら言った。「どういう企画
なんですか?」
「いや、おれも良く知らないんだけど。Cちゃん、看護婦さんなんでしょ?」
「違いますよ。看護師なのはあのこだけ」

 彼女はひときわ盛り上がっている女の子を指して言った。

「あとはいろいろ。高校のときの友だちだから」
「へえ、そうなんだ」
「やっぱり看護師さんが良かったですか?」
「いや、おれにナース属性はないよ」

 彼女は笑ってくれた。

「みなさん、職場の同僚かなんかですか?」
「うーん、同僚っていうか……」

 きちんと説明すると長くなりすぎる。

「簡単に言うと業界の仲間って感じかな。同じ会社にいるわけじゃないけど、一緒に仕事をす
ることもある、みたいな」

 彼女は不思議そうな顔をした。そりゃそうだろう。

「なんか楽しそう」

 だが彼女には深く突っ込まないだけのセンスがあった。

「Cちゃんは何してる人なの?」
「あたし、派遣社員。毎日たいくつ」
「そっか。……そりゃ困ったな」

 おれにはセンスがない。

「Bさんは、毎日楽しいですか?」
「楽しいっていうか、不安でいっぱいだよ。会社員じゃないしね。いつ仕事がなくなるかわか
んないし」
「……仕事に自信がないですか?」
「そうだね」
「だめですよ、そんなことじゃ。……ビールでいいですか?」
「あ、うん。ありがとう」

 彼女は飲み干したおれのグラスにビールを注ぎ、自分にはサワーを頼んだ。

「自信持たなきゃ。奥さんも応援してくれてるんでしょう?」

 おれの左手にちらりと視線を走らせ、彼女はそう言った。なるほどとおれは思った。彼女を
呼んだ子の意思はともかく、彼女の中では彼女自身も員数合わせなのだろう。断れない事情が
あったか友情を優先したか。でも何かの拍子で男につきまとわれるのも嫌だ。それで、なぜか
そこにいた既婚者を相手にしていれば話がややこしくならない、そう思ったのではないか。

「うーん、ま、別居中なんだけどね」
「……ごめんなさい」
「いや、いいよ」

 話が妙な方向になってしまった。正直すぎたかとも思うが、嘘をつくのも嫌だった。一気に
話題を変えるかフォローを入れるか、言葉に詰まった時にお開きの声がかかった。
 まあ仕方がない。こういう時もある。Cちゃんが嫌な気持ちになっていないかが気になった
が、もう会うこともないだろうし、明日になれば忘れているだろう。おれも、彼女も。
 階段を下り、外に出て立ち止まる。二次会に行こうという色気を見せているやつもいれば、
武運拙く諦めて帰ろうとしているやつもいる。おれの隣には彼女が立っていた。

「じゃ、気が向いたらメールでもしてよ」

 おれは社交辞令にそう言った。

「うん」

 彼女は笑顔で頷いてくれて、少しだけ救われた気分になった。手を振って歩き出すと、夜風
が気持ちよかった。
 とたんに携帯が震えた。

『気が向いたのでメールしてみました(*^-^)』

 Cちゃんからだった。
 振り向くと、彼女がすぐ後ろに立っていた。少し不安そうな笑顔。

「……もうちょっと飲んでこっか?」

 一瞬だけ考えてそう言ったおれに、彼女は黙ったまま頷いておれのシャツを掴んだ。
 それが彼女なりのおれに対するフォローだったとしても、気分は悪くない。


 おれは基本的にサービス精神が旺盛な方で、要は相手が楽しんでくれればそれでいい。だが
若い女の子をどう楽しませたらいいのかはよくわからなかった。そもそも、若いかどうかにか
かわらず女の子と二人だけで酒を飲むなんて何十年振りかわからなかった。他に誰かいるなら
適当に合いの手を入れるなり誰かが聞き役になるなりでどうとでもなるのだが。
 だがお互い初対面となれば失礼にならない程度に相手のことを聞くということはできる。お
れも自分のことを話せばいい。自慢話にならないように気をつけさえすれば。
 意外なことに彼女とは音楽と小説で趣味が合った。クラシックロックとSFが好きなのだ。
 RTFが再結成して来日。エリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドがツアー。ビー
チボーイズ『スマイル』リリース――。これを予想の範囲内だと言うやつは世界中を探しても
一人もいないと思うが、二人して驚きを共有することができた。
 NHKトリオ(野尻、林、小林)以降のSF作家についても教えてもらえた。おれはライトノベ
ル方面には疎いので、思わずメモを取ったりした。
 それなりに趣味が合うとわかるとそれ以外の話も弾むもので、近況やら子供の頃の話やらで
も話は盛り上がった。おれは油紙に火のついたごとくぺらぺらと喋りまくり、彼女はよく笑っ
てくれた。
 盛り上がると時間の進むのが早い。おれはさりげなく時計を気にした。おれはタクシーを使
うなり歩くなりすればいいが、彼女はそうはいかないだろう。親と住んでいるのかどうかは聞
かなかったが、高校のときの同級生と飲みに来るならやはり実家暮らしだろう。遅くに帰って
怒られたらかわいそうだ。終電を逃させるわけにはいかない。
 そんな気持ちが顔に出ていたのかどうか、彼女は唐突に言った。

「Bさんって、女の子はどういうタイプのこが好きなんですか?」
「Cちゃんみたいなこ、好きだよ」

 彼女はまたにひと笑ってあっかんべーをしたが、おれの言葉は本当だった。今日出合ったば
かりで何ともいえない部分はあるが、控えめでさほどうるさくなく、それでいて静か過ぎず、
頭がよくて人の気持ちをわかるセンスはいいなと思う。初対面とは思えないほど肌に馴染んだ。
おれはもはやルックス面には何のこだわりもないが、その点でも理想に近かった(ちなみにお
れのルックス的な理想は、残念ながら綾波レイではない)。
 実際おれは性欲を高ぶらせていた。近来稀に見る高ぶりだった。おれにはもう性欲なんてな
いと思っていたのだが。
 問題は、おれはあらゆる面で彼女とつり合いが取れないということだった。年齢もそうだし、
私生活の面でもそうだ。
 だからおれは彼女に、Cちゃんはどんな男がタイプなのと聞く勇気はなかった。

「さ、そろそろ電車がなくなるよ?」

 その話題を打ち切るようにおれはそう言った。彼女はまた黙ったまま頷いた。

 軽い押し問答の末、年寄りの言うことは聞くもんだという無茶な理由でおれが支払いをし、
ご馳走様ですの声を背中に聞きながら階段を上った。
 路上に出て、立ち止まった彼女を見る。
 問題はいくつもあった。
 そもそもこの二次会めいたものが彼女のおれに対するフォローであるという可能性。
 おれと彼女とのつり合い。
 そして、おれも彼女もそれなりに酔っているということ。
 自分の気持ちに正直になれというのは便利な言葉だ。だがそれは自分の欲望をそのままさら
け出すこととは違うはずだ。いったいどこが違うのだろう。彼女が今この瞬間何かを求めてい
るとして、明日になってそれを彼女が後悔しない保証はどこかにあるのか。確実な保証なんて
どんな瞬間にもどんなことに対してもありはしない。あるのは可能性だけだ。だが彼女が後悔
するとすればそれはおれの本意ではない。それは嫌だった。おれは自分の欲望を理性でコント
ロールできないような若造ではない。そしてそれほど泥酔しているわけでもない。彼女が求め
ているものを、彼女が求めているという理由で与えるのは残酷だし無責任だ。それはおれの為
すべきことではない。
 おれが為すべきだと思うのは、おれが求め同時に彼女もが本当に求めていることを、後悔し
ないような形にすることだけだ。たとえ二度と会うことがなくても。
 それがどんな形なのか、おれにはわからなかった。自信がなかった。それが進むことなのか、
それとも下がることなのか。
 自信持たなきゃ。彼女がそう言っているような気もする。だがそれは自惚れなのかもしれな
い。際限のない自問自答だ。結論など出るわけはない。
 うつむいていた彼女が顔を上げる。結局おれは、彼女の少し気弱そうなはにかんだ笑顔と揺
れる瞳に背中を押されることになった。

「Cちゃん」

 おれは彼女の名を呼び、手招きをしながら半歩近寄る。彼女も半歩だけおれに向かって歩く。
 二人合わせてようやく一歩。
 ここで少しキザでもセンスのあることを言えるようならおれも大したものだと思うが、やっ
ぱりおれの口から零れ出たのは冗談めかした言葉だった。
 断られても傷つかないように、断っても傷つかないように。

「お持ち帰り、しちゃおうと思ってるんだけど」

 彼女はまたにひと照れ笑いを浮かべ、そして顔を伏せた。

「持って帰っちゃってください」

 ささやくようにそう言って、彼女はおれの腕につかまった。柔らかく、暖かだった。


 ホテルの部屋に入り、おれたちは長い長いキスをした。背伸びをして口唇を寄せる彼女が愛
しい。あんなに飲んだのにどうして女の子はこんなに甘い匂いがするんだろうと不思議に思う。
 口唇を離し、おれは彼女を抱きかかえた。彼女は可愛らしい悲鳴をあげ、脚をばたつかせる。
そのままベッドに横たえた。

「シャワー、後でいいよね?」
「……うん」

 ホテルに入ってから初めての会話だった。

「あたしのこと」

 ベッドの上で繰り返しキスした後、彼女はおれの胸に顔を埋めて言った。

「あたしのこと、誰とでもこんなことする女の子だなんて、思わないでね」
「わかってる。おれだってそうだよ」
「Bさんとは初めて逢った気がしないの。こんなのって、初めてなの」

 おれはただ彼女の髪をなでていた。

 そしておれたちはお互いに対して夢中になった。


 おれの性技について深い関心のあるやつはいないと思うので簡単に書くが、女の子に触れる
とき、おれはひたすら丁寧に優しくする。もうおれも十四歳だし、自分勝手だったり我を忘れ
てがっついたりすることはない。ゆっくりと動くだけでもお互いの気持ちがこもっていれば女
の子は感じてくれるものだ。そして気持ちがこもっていなければ行為そのものに価値がない。
 ただ、丁寧で優しいというのは言い方を変えるとしつこくてねちっこいという、なんという
か粘り気のある中年男性そのものになってしまい、女の子によっては長すぎて疲れて大変なん
ていうことにもなりかねない。だが、彼女は十分に感じてくれた。

 長くて短い夢のような時間が過ぎ、おれたちは波間を漂っていた。おれに髪をなでられなが
ら、彼女は半ば失神に近い眠りに入っていった。おれも腕の中に彼女の細い身体の柔らかさを
感じながら少しだけまどろんだ。
 三十分も過ぎたろうか、彼女は顔を上げた。

「……あたし、寝ちゃってた?」
「寝てた。可愛かったよ」
「なんかまだふわふわしてる感じ」

 彼女はおれの頬をつつき、キスをねだった。
 ひとしきり口づけたあと、彼女はぱたりと仰向けになって言った。

「ね、タバコ、もらえる?」
「ああ、いいよ」

 おれはタバコに火をつけ、彼女の口唇に差し込む。

「飲んでる時は吸ってなかったよね?」
「こういうことの後にしか吸わないわ。……だから知ってるのはBさんだけよ」
「そいつは……光栄だな」

 おれはほとんど条件反射のように答え、そして戦慄した。まさか、まさか。

「で、人類補完計画、どこまで進んでるの?」

 やっぱり!

「ヒトを滅ぼすアダム。なぜ地下に保護されてるの?」

 彼女は半ば笑いながらセリフを続けた。おれはこう答えるしかなかった。こう答えるしかな
いじゃないか。

「それが知りたくて、おれと会ってるのか」
「Bさんって、やっぱりエヴァおただったんだー!」

 彼女はおれの頬をつまんでびーと引っ張りながら叫んだ。
 エヴァの話なんてひとつもしなかったはずなのになぜバレた!?

「なんでわかったの?」
「勘よ。女の勘」

 この子も相当の筋金入りだ。

「匂いがするの。なんとなく。エヴァおたの匂い」
「そっか。匂い、するか」
「うん」

 おれは彼女からタバコを奪い、口づけた。タバコを吸った後でもやっぱり甘い匂いがした。
 まあここまではいい。全くの予想外だが許容範囲ではある。だがおれは許容できない現実の
幻影に怯えていた。それが真に幻影であることを心の底から願った。

「Cちゃんもかなりきてるよね」
「うん。ほんと廃人に近いくらいエヴァに依存してるの。あたし、あの子達がいるから生きて
いけてるんだって思うもん」
「おれもそうだよ」
「あたし、負けてないよ。だって小説とか書いてるもん。エヴァの。わかる? エヴァの小説」

 おれはほとんど催眠術にかかったかのような状態で答えた。

「おれも書いてるよ」
「ホント!? どんなの書いてるの? どこに?」

 おれは後の質問にだけ答えた。

「綾幸」
「あたしも!」

 やっぱりこうなるのかー!
 なんてことだ! リアルな知り合いから感想メールが来るとかそんなレベルじゃない。投稿
作家を抱いてしまった! どーすんだよ! やっぱ閉鎖か!?
 というか、世の中は広いし綾幸の訪問者なんて取るに足らない数だし投稿作家なんて何十人
もいるわけじゃないのになんでどいつもこいつも作家なんだよ。
 こうなったら投稿作家を片っ端から呼び出して次から次へと手込めにするしかない。相手が
男なら逆に手込めにしてもらうか後方を使わせるかお好みで任意に選択してもらおう。いや、
男女差別は良くない。おれが女の子に手込めにしてもらってもいいのだ。いや待て。そういえ
ばおれは女の子だった。14歳微乳美少女処女だ。いつ貧乳から微乳に変貌したんだっけかな。
忘れた。まあいいや。だからおれが男性作家に手込めにされても何ら問題ないし、手込めにし
てもいい。女性作家を手込めにしてもいいし手込めにされてもいいのだ。
 しかるのちに男女問わず投稿作家全員を一同に呼び集め、一週間にわたって昼夜問わずの大
全裸祭りを繰り広げるのだ。ちなみにおれも投稿作家も全員14歳微乳美少女処女という設定で
あるが、14歳微乳美少女処女の男性作家がいても問題ない。論理的矛盾はない。実際にいるん
だし。というか設定だし。処女性も失われない。設定だから。そしてこの行為により投稿作家
はみな兄弟姉妹と化す。もうこれしかない。これでいくのだ。これでいいのだ。いいのか?

「BさんBさん」
「あ、ああ」

 ちょっと錯乱していたようだ。

「Bさんて、誰なの?」
「……そういうCちゃんは?」
「んー、Bさんから教えて」

 おれは彼女の瞳を覗き込んだ。

「管理人兼編集人、tamb」
「きゃああああ」

 彼女は絡めた足をばたつかせ、頬を真っ赤にした。

「で、Cちゃんは?」
「んー、どうしよっかなー。秘密にしとこっかなー」
「ずるいぞ」
「だってあたし、tambさんとえっちなメールとかしてたんだもん」

 おれは女の子女の子してる作家や読者とメールのやり取りをしているとなぜか必ず話題が下
ネタ方向になる。中年男性からセクハラパワーを除去したら後には何も残らないを地で行く。
 自分でもこれはいかがなものかと思い聞いてみたことがあるのだが、直接話すならともかく
メールならそんなに抵抗がないと言われた。そんなものかなと思う。もしかすると「そんなに」
というのがポイントなのかもしれないが、もちろんハードで直接的なことを書くわけでもない。
 それはそれとして、だが単なる下ネタではなくえっちなメールとなると話は別だ。思い当た
るのは一人しかいない。

「わかった」

 おれはひとりの作家の名をあげた。

「んふ」

 彼女は照れ笑いを浮かべ、またおれの頬をびーと引っ張って言った。

「あたり」
「……ある意味、今日出会ったばっかりってわけじゃなかったんだな」
「そうだね。……なんか恥ずかし」

 彼女は照れ隠しのようにキスをねだり、おれは彼女の背中に腕を回した。

 夜はまだ長い。


 明け方、少し歩きたいという彼女の言葉に、おれたちはホテルを出た。
 始発まではまだ少し時間があった。遠回りをして駅まで歩く。繋いだ手の感触が心地よかっ
た。会話は途切れ途切れだったが、その沈黙さえも心地よかった。
 駅から少し離れた、広域避難所にも指定されている大きな公園に入った。

「Cちゃん」

 おれは彼女の名を呼ぶ。

「Cちゃんって、かわいいね」
「……はじめてかわいいって言ってくれた」

 彼女は立ち止まり、はにかんだ笑顔を浮かべた。おれは彼女を抱き締め、その柔らかな口唇
を奪った。

「……またお部屋に行きたくなっちゃう」

 キスから逃れ、彼女はそう言った。

「行く?」
「ばか」
「おれ、バカだもん」

 おれは笑って、また口づけた。そのキスはやがて深くなり、おれの首に回された彼女の腕が
量感を増す。

「少し、座ってもいい?」

 彼女は甘い息を漏らし、おれを引っ張ってベンチに腰を下ろした。肩に首を預ける。
 おれには彼女を幸せにすることはできない。その事実がおれの肩を重くしていた。

「あたし、Bさんに幸せにしてもらおうなんて、思わないよ」

 まるでおれの心を読んだかのように彼女が言う。彼女のセンス。

「あたしが幸せになるの。幸せにしてもらうんじゃなくて、幸せになるの」
「……そうか」
「うん。……ね、また逢えるよね?」
「ああ、逢えるよ」
「エヴァストア、行かない?」
「お、いいね」

 おれの返事を聞いて、彼女はすっと立ち上がった。おれは彼女を見上げた。

「メールする。Bさんと、tambさんにも」

 おれは黙って頷いた。

「じゃあ、そろそろ行くね」
「送っていくよ」
「大丈夫。もう明るいし、ひとりでも」
「そうか」
「うん」

 彼女はおれに頬を寄せ、短いキスをした。

「じゃあね!」

 小さく手を振る。

「じゃ、また」

 おれはベンチに座ったまま、走っていく彼女の背中を見送った。

 彼女の背中がまるで真夏の蜃気楼のように揺れ、消えた。

 虚が実を侵食する。

 ひとり取り残され、天を仰ぐ。ビルに切り取られた四角い空に、息がかすかに白かった。



 おれは独りだった。

 これからどうしたらいいのか、わからなかった。

 水風船の弾けるような音は、いつまで待ってもおれの耳に響くことはなかった。

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 いくらなんでも当然ですがフィクションです。特に「女の子女の子してる作家や読者とメー
ルのやり取りをしていると、なぜか必ず話題が下ネタ方向になる」というような事実はないと
いうことは改めて付記しておきます。ただし、絶対に下ネタ方向になることはない、というわ
けでもないということも念のため付記しておきますw

 ラストの「水風船」は今は閉鎖してしまった某サイトの某作品から(水風船という単語その
ものは脚本にもあるようですが)。
 そのサイトの閉鎖理由は、自然消滅や更新ペースが遅い、あるいは飽きたというようなもの
ではなく、信念に基づくものでした。広い意味では卒業といえるでしょう。従ってサイト名や
作品名を明らかにするべきではないと考え、伏せさせていただきます。作品公開中に作者氏に
は絶賛するメールをいたしましたが、改めてこの場で感謝を。
 作者氏へのメールにも書きましたが、拙作「想い届かず」
http://ayasachi.sweet-tone.net/cgi-bin/bbs4c/read.cgi?no=420)のラスト「子供が戯れ
に水たまりに飛び込んだような音がした」は同作品へのオマージュです。
メンテ

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