◆ Chapter 2 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/04/09 01:59
- 名前: ななし
惣流・アスカ・ラングレー、エヴァンゲリオン弐号機パイロットとして日本に滞在。 彼女は14歳でドイツの大学を卒業しているが、ネルフの上司の命令で中学校に通っていた。基本はエヴァのパイロットとしての任務が優先だが何も無いときは中学生としての生活を送る事を義務付けられている。 あくびをかみ殺し、退屈で幼稚な授業に耐える。命令じゃなければこんな場所にいないのにと何度も思いながら時間が過ぎるのをただ待つ。
「こんなことしてるくらいなら、シンクロテストしてる方が100倍マシよ……」
誰にも聞こえない愚痴を呟き2つ隣の席に座る洞木ヒカリをじっと見る。視線を感じたのかヒカリはアスカと目を合わせると笑ってくれた。そして、すぐに教卓へと目を向ける。真面目なヒカリらしい仕草だった。 アスカはため息を深くつく。そして次は自分の左斜め前の空席を見る。その席の主は今頃初号機のパイロットと共にテストに望んでいるはずだ。アスカはテストに望んでいる彼を羨ましいと思った。
授業が終わるとアスカはヒカリと会話をしながら下校した。今、アスカに学校生活で必要なものは何?と質問したら「ヒカリ」と答えるかもしれない。ドイツの大学生活では得られなかったもの。ヒカリがアスカに話しかけ、友とならなかったらきっと彼女は当の昔に学校を登校拒否していただろう。学校を歩いて辿りついたとある十字路の分かれ道でアスカはヒカリと別れた。
「また、明日ね」 「うん、またね」
何気ない別れの挨拶が明日学校に行く楽しみになる。アスカは駅に着くと電車に乗りネルフへと向かった。 電車の中ではゲームウォッチで暇を潰す。簡単なパズルゲームだった。もうすぐクリアする所で電車が大きく揺れ、操作を誤った。眉をしかめ顔を上げるとアナウンスが自分の降りる駅を教えてくれた。アスカは不機嫌の表情のままゲーム機をしまうとそのまま立ち上がりドアの前に待機した。 電車を降りたアスカはまっすぐとネルフに向かった。アスカの目的地は女子更衣室の自分のロッカーだった。
「あった」
ロッカーを開けると折りたたまれたプラグスーツの上に1冊のノートがあった。ヒカリから借りていた社会科のノート。これがないと宿題が進まない。 「まったく、面倒な宿題出さないでよね」と愚痴をこぼし、カバンに大切そうにしまうと更衣室を後にした。他に用事はない。アスカはトイレに寄ってからそのまま帰るつもりだった。 そのトイレ行く途中の自販機でアスカは不思議な情景を見た。
――渚カヲルと冬月副司令が話してる?
アスカは目を疑った。二人は同じ現場で働いているとはいえ、社長と平社員的な関係。副司令からは戦闘中に直接の命令はされるが、談話するような仲柄ではないと思っていた。 だが、十数メートル先の二人は確かに話してる。よくよく見れば賑やかに、という感じではない。冬月は淡々と何かを語り、それをカヲルは聞いている感じだった。 歩みを止めてその二人を見ていたアスカは偶然にこちらを見たカヲルと目があった。何故か居た堪れない気分になったアスカは振り返りその場を離れようとした。
「アスカ」
カヲルはアスカの名を呼んだ。その声にアスカの足が止まる。カヲルは冬月と二、三言会話を交わすとまっすぐアスカの元へ歩いてきた。
「学校、終わったんだ」 「……えぇ」 「僕に逢いに来てくれたの?」 「なっ!なわけ、ないわよ!!」 「照れなくてもいいのに」
あぁ、もうっ!とアスカは心で叫んだ。カヲルと話すと自分のペースが崩れる。自分の思い通りにいかない。自分が自分でなくなる、コイツとの会話は危険だ。そう、分かっているのに、何故か『話しかけない』『無視する』という選択ができない。
「……私が気になってるのはあの人と何を話していたかって事よ」 「ん?あぁ、副司令の事かな?昔の事を聞いていたんだ」 「昔?」 「うん、セカンドインパクトについて、ね。最初は日向さん達に聞いたんだけど、年配の冬月さんに聞いた方が詳しく分かるって言うから」
カヲルは冬月が語った事を教えてくれた。
「セカンドインパクトは南極で起きた災害だから日本での被害は物資不足くらいなものだよ。海外では工場の生産ができなくなったり、輸入輸出が空海問わずストップした」 「そうなんですか」 「起きた場所が起きた場所だからね。アメリカの方は人々がパニックになり二次災害が酷かったと聞いている」 「二次災害?もう一度災害が起きたのですか?」 「いや、二次災害はセカンドインパクトが起きた事によって生まれた人為的な災害の事だよ。物や情報が無い為に強盗や窃盗が多発したらしい」 「人と人が……それが二次災害。日本でも起こったのでしょうか?」 「多少ね。全国の所々で起きた。都市では輸入に関する食料は自衛隊が管理していたから、それを巡っての暴投が起きていた。だが、」
「今よりも、昔に起きた大震災の方が悲惨だったかな」
冬月が思い出したのは遠い昔に起きた東日本沿岸沖で起きた大震災だった。当時を思い出しながらぽつりぽつりと語っていく。
「何日か停電や断水などを経験したよ。半月以上は物資、特にガソリンや灯油には悩まされた。でも、私はまだ恵まれていた。家を無くした者、家族を失った者、愛する人を失った悲しみ………渚君、授業などで津波が起きた場所の写真を見たことがあるかい?」
いえ、ありません。と答えると冬月は一息ついてぽつりと呟いた。――――幼い頃に教科書で見た、原爆が落とされた後の広島のようだったと。
「と、セカンドインパクトの事だったね。すまない、話が脱線して」 「いえ、とても興味深い話でした」
カヲルは冬月に1つ質問した。「昔の震災と、セカンドインパクト、そして今。どれが一番大変でしたか?」と。冬月は返答に困った。「比べられるものではないと」
「はっきり言えるのは過去の教訓が今を支えていると言う事だよ」
今は使徒に対してエヴァと言う救世主、信じる希望が目に見えている。しかし、昔は突然と現れた大震災に人々はパニックになるしかなかった。エヴァのような希望がある分、この世界はもしかしたら救われているのかもしれない。
「そんな事を副司令と話していたんだ」 「セカンドインパクトねぇ……」
そんなの授業で散々聞いてるじゃないとアスカは聞き返した。
「……そうなんだけどね、実はセカンドインパクトは僕が生まれた日なんだ。だから知りたかった。どんな世界だったのかを。授業の話って歴史話だから実際の体験談を聞いてみたかったんだ」 「ふぅん……って、ちょっとまって。あんた今15歳?」 「うん。病気で1年学校休んでるんだけどね。当時の事はあまり聞けなかったけど、とても興味深い話だったよ。今の平和な世の中を見ていると、昔にそんな大変なことが起きたなんて実感しないんだけど」
アスカが「つい最近まで使徒やらで大変だったけど」とツッコむとカヲルは「あぁ、そうだったね」とまるで人事のように笑った。
「人と言う生き物は生きようとする力が無限大だと思うよ」 「あんたもその生き物でしょ?何他人事みたいに語ってるのよ」 「あぁ、そうだったね」 「……ねぇ、カヲル」
アスカは少し間を置いてから何かを思い出したかのような笑いを浮かべて話した。
「そんな災害に負けずに生まれてきたあんたってやっぱ最強ね」
カヲルは少し首を傾げた。意味が分からない、という感じだった。 この言葉はある意味、アスカにとって最大級の褒め言葉である事はカヲルには伝わらなかったようだ。
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