[680] クリスマスパーティー
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- 日時: 2013/12/21 18:33
- 名前: 史燕
- クリスマスパーティー
Written by史燕
今日は12月24日、世間では恋人たちの聖夜だ。 ご多聞に洩れず、ここ第三新東京市もクリスマスムードでいっぱいだ。 街行く人々の大半はカップルであり、まさしく恋人たちの夜という雰囲気が随所に漂っている。 もっとも、これから一人さびしく夕食を準備する僕には全く関係ないのだけど……。 ――そう、僕は今日一人なのだ。 クリスマスを一緒に過ごす相手がいないだけじゃなくて、僕の近しい人たちもみんな出払ってるんだよなあ。
ふと、昨日朝のことを思い出してみる。
「シンジ、明日は出かけるから」 「うん、わかったよ。カヲル君とでしょ?」 「ばっ/// そ、そんなんじゃないわよ。ただ……そ、そうよ、荷物もちよ、荷物持ち」 「はいはい、わかってるわかってる。荷物持ちね荷物持ち」 「ぜんぜんわかってな〜い///」 (まったく、素直じゃないんだから。まあ、アスカらしいけど)
「シンちゃ〜ん、ごめんなさい。明日は夕ご飯要らないから」 「わかりました、……朝帰りですね」 「なっ/// 大人をからかうんじゃないの///」 「ただ…ボソボソ…ちょっと仕事帰りに飲みに行くだけよ…ボソボソ…」 「えっ、ミサトさん。よく聞こえませんよ」 「べっ、別に加持とはなんでもないのよ」 (いや、クリスマスに飲みに行く時点で確定でしょ。しかも一言も加持さんとなんて言ってないのに)
それに、トウジも
「ヒカっ、委員長、明日暇か?」 「トウっ、鈴原、空いてるけど///」 「せやったら、ワシと一緒に映画見にいかへんか?」 「!! ええ、大丈夫よ。行きましょう///」 (二人とも初々しいけど、上手くいってるようで何よりだよ)
ケンスケに至っては 「ケンスケ、明日どうする?」 「うるさい、俺はお前たちリア充とは違うんだチクショウ!!」 「どいつも、こいつも見せびらかしやがって」 なんてことを言いながら駆け出して行った。 (トウジやカヲル君はともかく、僕は非リア仲間なのになあ)
こういうわけで、僕はイエス=キリストの記念日を一人で過ごしている。 まあ、神様の使いを一番多く殺してきた身としては、むしろ当然なのかもしれない。
――ピンポーン
こんな時間に誰だろう。宅急便だろうか。 「はーい」 返事をした僕は急いで玄関へと向かいドアを開けた。
「……メリークリスマス」
ドアの向こうに立っていたのは――綾波レイだった。
どうすればいいんだろう、と僕は頭を抱えた。 そもそも綾波が一人でここにきているという事実が信じられない。
――クイッ、クイッ 綾波が、僕の裾を引っ張った。
「綾波? どうしたの?」 「……これ、ケーキ」
そう言って綾波は小さめの箱を持ったもう片方の手を僕に押し付けた。 どうやらこの箱にケーキが入っているらしい。
「え、えと、綾波、とりあえず上がって」 「………」
綾波は返事こそしてくれなかったが、僕の後ろについて、テーブルの向かい側の席に座ってくれた。
こうして僕ら二人は腰を落ち着け、ひとまず僕も状況を把握することができた。 テーブルを挟んで僕と綾波の視線が交錯する。 二人の間に漂うのは静寂のみだった。 今まで、綾波がこの部屋に来たことはあった。 ただそれは、いつもミサトさんが半ば強制的に綾波を連れてきたときであり、僕らのほかにもアスカとミサトさんがいて、多くは委員長やトウジ・ケンスケ・カヲル君も招待した時だった。 しかし、いつもみんながいる部屋に、僕と綾波だけしかいないことに対して、奇妙なことにまったく違和感を抱かなかった。 むしろ、不思議なことに、この二人だけの空間がずっと続いてほしいとさえ思った。 本来ならば苦痛であるはずの沈黙さえも、今の僕にとっては心地よいものだった。
そういえば、綾波はなぜ来たんだろう、ふとそう思い、口を開きかけた時だった。
「……碇君」 「? どうしたの、綾波?」 「……あの、もしかして…めい、わく…だった?」
心なしか、哀しそうな声だった。 答えを聞きたいような、聞きたくないような、そんな想いが、滲み出ていた。 すっと、夢のなかからいきなり、現実へと引き戻されたような気がした。
「綾波は、僕といるのは嫌だった?」 「……いえ、むしろ、一緒にいて、安心できたから」 「……ただ――」 「ただ?」 「……ただ、いきなり押しかけて迷惑だったのかなって」
どうやら、綾波も僕とおんなじ気持ちみたいだ。 ただ、不安にも思ってるみたい。 (僕のせい、だよな……)
「僕は――」 「!!」 「僕は、うれしかったな、綾波が来てくれて」 「……うれ、し、かった?」 「そう、うれしかった。そりゃ、いきなりだったから最初は驚いたけどね」 「でも、一緒にいて落ち着くっていうか、安らぐっていうか……」
「僕も、綾波と一緒にいると、安心できるんだ」
「さて、幸いケーキもあることだし、そろそろ始めようか」 「……始める? 何を?」
――何をって、決まってるじゃないか――
「二人っきりの、クリスマスパーティーを」
<その後> 「そういえば、綾波ってどうしてうちに来たの?」 「……アスカやヒカリさんから、24日の夜は特別な人と過ごすものだ、って聞いたから」 「それってどうい――」
――chu
「……こういうことよ」
〜Fin〜

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