Re: ロールプレイ ( No.2 ) |
- 日時: 2022/03/15 15:56
- 名前: tamb
- 最近忘れがちなので最初に書いておきたいが、これは素晴らしい作品である。
かつてのアスカは周囲からの期待に過剰に適応し、ある意味では期待される姿を演じてきた。そして壊れた。 その事情はレイにしても大きな違いはないと言える。自分は何かということを考えることもなく、ただ無を指向し続けた。そこには周囲からの期待しかなく、他には何もなかった。自分というものを含めて。
この作品は、その過去を乗り越え、なりたい自分になろうとしている二人を描いている。自分探し的な出口の無い迷宮を乗り越え、あるいは突き抜け、自分のあるべき姿、ありたい姿に向けて自分の過去を脱構築している。
だからこそ、お約束のロールプレイでじゃれ合うこともできる。今は軽々しく口にできる言葉ではないけれど、やはり戦友なのだろうと感じる。 「よかった、そう言いかけたのを飲み込んで「ええ」とだけ返す。」 この「よかった」があまりに沁みる。
レイの一人称で語られるこの話には、例えば「わたしはそっと見ないふりをした」の「わたし」の入れ方とか、「彼女の話の尻尾は捕まえたけど、このままではパフェを取り逃がしてしまう。」、「危険すぎるボリューム」とか、上の「よかった」もそうだし、いいフレーズ、言葉の使い方がたくさんある。いかにも一歩踏み出したレイが言いそうだし、それを自然に引き出せるのはすごい。脱帽するしかない。 単にパフェが美味しそうという事実を、美味しそう、という言葉を使わずに表現し切るという筆力。そしてこの世界にもインスタはあると思われる(笑)。
レイも、アスカとなら「わたしも、もうやらない」とか、「命令なら、そうするわ」とか、際どい会話ができる。でも「今のわたしでも碇くんとはこんな話はしない」のがとてつもなく良い。アスカも笑顔で返せる。「命令ね」と言える。ラストの二人は、とても素敵な笑顔だったのだろう。もう一度書くが、それはロールプレイでじゃれあう姿なのかもしれないが、同時に過去を乗り越えてこそ、乗り越えつつあるからこその笑顔なのだ。
これは傑作として後年に語り継がれる性質の作品ではないかもしれないが、こういう二人を描いた作品があったと、いつまでも記憶の中に残り続けるだろう。
本当に良い作品でした。ありがとう。柳井ミレアという作家が今ここにいることが、本当に嬉しい。それを言語化するのにこれだけの時間がかかってしまった。それは笑って許して欲しい。
最後に、”前後の多少の飛躍”は全く気にならなかったことを付記しておきます。
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