[77] ドラゴンハート
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- 日時: 2005/03/27 00:00
- 名前: のの
- 【タイトル】ドラゴンハート
【記事番号】-2147483532 (2147483647) 【 日時 】05/03/27 21:49 【 発言者 】のの
ドラゴンハート - のの 05/02/04-19:55 No.673 Re: ドラゴンハート - のの 05/02/04-19:57 No.674 Re: ドラゴンハート - tamb 05/02/04-22:12 No.675 Re: ドラゴンハート - なお。 05/02/08-01:54 No.677 Re^2: ドラゴンハート - のの 05/02/09-01:00 No.678
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タイトル : ドラゴンハート 記事No : 673 投稿日 : 2005/02/04(Fri) 19:55 投稿者 : のの
ドラゴンハート
ヒーターの設定が強すぎるかもしれない。頬の熱さを自覚して、本を閉じる。学校の図書館で懐かしい本を借りた。表紙はどこかの農場の写真。物語の核として語られる「竜の魂」に憧れたことを思い出す。たったいま読み終えて、時計が二時を回っているのを知った。
雨の匂いがする。 空はまだ泣いていた。あまく、静かに。
携帯電話が震える。一度だけだったのでメールの着信だと手に取る前にわかった。枕元にある折り畳み式の携帯電話を開き、届いたメールがいわゆる迷惑メールだったので、ムッとなってすぐに消した。
わたしはなにを期待しているのやら。
つい先日リツコさんが言っていたセリフを思い出す。今のわたしにぴったり。本当、なにを期待しているんだろう。作り笑いを浮かべてごまかしたけど、最近癖になってないだろうか。それはよくない。
いま、幸せ?
わたしはわたしに問いかける。自問自答。
幸せじゃない。 幸せなんじゃない? そんなはずない。 本当に? 本当に。 うそつき。 うそじゃない。
わたしはわたしと口論する。押問答。 嬉しかったことを反芻して生きていくわけにはいかなかった。そういう生き方じゃなくて、見えなくても、確かなものを手にしても、歩いていかなければならないと思っている。 それでも、顔を思い出したり、声を思い出したりして、望みの彼方まで到達しようと努力しているのが現状だった。誰よりも近くにいるわたしなのに、誰よりも会うことができない。
ベランダに出た。雨は闇に紛れて見えないほどで、音もほとんどしない。でも雨は外の音を遮断しているから、ベランダにいた彼にはわたしが窓を開けた音が聞こえているはずだった。それでも彼は振り向かず、何時間も前と変わらない姿勢でスツールに腰かけ、微笑みを浮かべていた。 「いつまでそうしているの?」 わたしが訊ねると、ようやく彼は振り向いた。 「さてね」 彼が返す。それは答えとは言えない。 「いつまで?」 「君が許してくれるまでかな、綾波レイ」 「わたしは許した覚えはないわ」 「つれないことを言うね。少しくらいいいだろ?減るもんじゃなし」 「気分が悪いわ」 「おやおや、これはまたご機嫌斜めだ!」 なぜか嬉しそうにスツールから跳ねるように下りた彼は足下のワインボトルを拾った。 「飲むかい?」 「いい」 「おやおや!」 彼はまた感嘆の声を上げ、スツールに座り直した。横を向いて、わたしを見るわけでもなく、雨模様を眺めるわけでもなく。 「軟禁されている身なんだ、心だけでもゆとりをもたせないとやっていけないよ」 「軟禁されているから、ゆとりがないのよ」 「術中にかかってるじゃないか、それじゃあ」 「好きにすればいい」 「そんな投げやりじゃ困るよ。もしものことが起きたらシンジ君に殴られる」 「碇くんはそんな人じゃないわ」 「男は獣を飼ってるモノさ」 「なにを言ってるの」 「冗談だよ」 わたしは大きなため息をついた。 「仕方ないんだ。僕らしかエヴァは動かせない。シンジ君を守るため、僕らはここにいるんだから」 「わかってるわ」 「忘れてそうだったから、ついね。それならいいんだ。ただ、君は危なっかしいから時々忠告したくなる」 「大丈夫よ」 「そうだとしてもさ。僕にとっては妹みたいなものなんだ。心配くらいするよ」 「……」 「もうじきだ。もうじきネルフの完全解体が完了する。そうすれば、条件付きで僕らも解放されるだろう」 「わたしは、いま、会いたいの」 状況や理屈はどうでもよかった。彼が気にしてくれていることすら。わたしは碇くんに会いたかった。 部屋に沈黙が流れる。
雨の匂いがした。 わたしはまた泣いていた。あくまで静かに。
渚カヲルがわたしを包んだ。兄が妹をあやすように頭を撫でてくれた。 静かに泣きつづける。 いつまでも鳴り響く、自分の声。声にならない泣き声が、わたしだけに聞こえる。
雨の匂いはした。 わたしはまだ泣いている。飽くまでも静かに。
わたしがわたしに問いかける。「いま、幸せ?」 それを無視して、碇くんを思い出す。何度もリトライして、思い出した言葉が少しでも間違ってればリライトした。
竜の魂に憧れるわたしは、まだ、当分泣きつづける。
【タイトル】Re: ドラゴンハート 【記事番号】-2147483531 (-2147483532) 【 日時 】05/03/27 21:50 【 発言者 】tamb
タイトル : Re: ドラゴンハート 記事No : 674 投稿日 : 2005/02/04(Fri) 19:57 投稿者 : のの
あとがき 「ハートの在り処」を書いて普通に投稿する予定だったんですが、なんとなく先送りにしてて。 で、対になる話としてレイ主観の話を書こうと思ったらこういう話に。 そして重すぎる暗すぎるという判断からボツになったSS。 完成した話を投稿しないってのは珍しい。 途中でやめちゃうのはよくあるけど。
ところで、シンジに会えないレイを書くって難しいです。 やむをえず一人語りだけのつもりでしたがカヲル君に登場してもらいました。 「ハートの在り処」が晴れの話だったので曇り空か雨模様の話を書くという方針だったけど、重すぎる。
最近日本語のタイトルが多いのでカタカナで題名をつけました。 最初は「ハートの在り方」だったんだけど、パンチ力向上を求めて。 RPGっぽい。 あとラストに納得がいかない感じ。
【タイトル】Re: ドラゴンハート 【記事番号】-2147483530 (-2147483532) 【 日時 】05/03/27 21:50 【 発言者 】tamb
タイトル : Re: ドラゴンハート 記事No : 675 投稿日 : 2005/02/04(Fri) 22:12 投稿者 : tamb
すごく昔に、小松左京の短編を評して、生のままのアイディアがそのまま書かれ ているだけで、これをもっと膨らませればすごくいい長編になるのにもったいない、 みたいなことを言った人がいたと思うけど、これもそんな感じ。確かに暗いし重い けど、悪い雰囲気じゃない。文章技術をもてあそぶのは――それに振り回されな いとか、余裕があるという意味で全てを出し切らなくてもいいとか――理想の形 なんだと思うけど、若干空回りしてる感じはあるかな。こんなにいい文章なのに、 書きたいことはこれだけなの? みたいな。まぁ要するにもっと読ませろってこと なんだけど(笑)、もしかするとののさんの書きたいことじゃないのかもしれない、と 思ったりもした。
【タイトル】Re: ドラゴンハート 【記事番号】-2147483529 (-2147483532) 【 日時 】05/03/27 21:50 【 発言者 】tamb
タイトル : Re: ドラゴンハート 記事No : 677 投稿日 : 2005/02/08(Tue) 01:54 投稿者 : なお。
>竜の魂に憧れるわたしは、まだ、当分泣きつづける。
想像するに、強さの象徴として「竜の魂」 それに「憧れる」のは今の自分は弱いから だから今は泣いている と解釈しましたけど、これでいいのかなぁ?
それと、この本って架空の本ですか?
>「男は獣を飼ってるモノさ」 >「なにを言ってるの」 >「冗談だよ」 > わたしは大きなため息をついた。
一読して思ったのは「男は獣を飼ってるモノさ」は加持っぽいかなと。 渚カヲルは普通にキザな感じより純粋で意味不明さをもったキザっぽさ(これこそ意味不明だw) まあ、スレてないっていうかはずかしげもないっていうか常識はずれっていうか知らずっていうか…
>「男は獣を飼ってるモノさ」 >「なにを言ってるの」 >「受け売りさ」 > わたしは大きなため息をついた。
とするとおもしろいかと。 だけど、この話しのカヲルはしっかりしてそうだからこれだと変かな?
>何度もリトライして、思い出した言葉が少しでも間違ってればリライトした。
こういうところはやっぱうまいですよね。 無理がなく、ちゃんと意味が通っているもの。
【タイトル】Re: ドラゴンハート 【記事番号】-2147483528 (-2147483532) 【 日時 】05/03/27 21:50 【 発言者 】tamb
タイトル : Re^2: ドラゴンハート 記事No : 678 投稿日 : 2005/02/09(Wed) 01:00 投稿者 : のの
どもです。
>なお。さん
> >竜の魂に憧れるわたしは、まだ、当分泣きつづける。 > > 想像するに、強さの象徴として「竜の魂」 > それに「憧れる」のは今の自分は弱いから > だから今は泣いている > と解釈しましたけど、これでいいのかなぁ? > > それと、この本って架空の本ですか?
解釈はそのつもりで書いています。 この本は彼女にとって大切な本なんですな。 「このままこうして-Special Version-」と本の表紙が同じなのはわざとだけど、だからと言って同一かはわからない(笑) まあ同じと考えてもいいのかな。
> >「男は獣を飼ってるモノさ」 > >「なにを言ってるの」 > >「冗談だよ」 > > わたしは大きなため息をついた。 > > 一読して思ったのは「男は獣を飼ってるモノさ」は加持っぽいかなと。 > 渚カヲルは普通にキザな感じより純粋で意味不明さをもったキザっぽさ(これこそ意味不明だw) > まあ、スレてないっていうかはずかしげもないっていうか常識はずれっていうか知らずっていうか… > > >「男は獣を飼ってるモノさ」 > >「なにを言ってるの」 > >「受け売りさ」 > > わたしは大きなため息をついた。 > > とするとおもしろいかと。 > だけど、この話しのカヲルはしっかりしてそうだからこれだと変かな?
「男は〜」の部分は実験的意味合い強いです。 カヲルをちょっと変わった書き方したかったので。 よくあるキザっぽいのとはちがう、「おやおや!」っていう言い方とか、もの静かな感じよりは道化的、劇的な書き方をしてみたくて、で、そういった試みのひとつ。 なんともはや微妙なセリフで、もうちょっと別の言い方にすればよかった。 たとえばそれこそなお。さんが書いた言い方も面白い。
> >何度もリトライして、思い出した言葉が少しでも間違ってればリライトした。 > > こういうところはやっぱうまいですよね。 > 無理がなく、ちゃんと意味が通っているもの。
「リライト」と「リトライ」は対句として面白いと思ってて、使ってみました。 実は結構お気に入りです(笑)
>tambさん なんとなくこのSSは長年書く機会のなかった渚カヲルを書いてて楽しくなっちゃって、 レイの世界を広げられなかったという感じです。 ちょっとおおげさな物言いのカヲルって書いてみたい。道化的?
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