桜花姫 ( No.20 ) |
- 日時: 2021/08/16 20:12
- 名前: 月影桜花姫
- 第七話
野犬
天地歴三千五年八月中頃…。北国には【鬼殺丸】と名乗る最上級武士が北軍の強兵として各戦場で活躍する。鬼殺丸は年齢十五歳の青二才であるが…。外見のみなら好青年であり今迄の各戦場での功績から次期北軍の総大将に任命される。同年八月十五日の真昼の出来事である。鬼殺丸は久方振りの気分転換に南国の最高峰である荒神山の頂上より…。南国の絶景の景色を眺望する。 「南国はこんな時代に平穏だな…」 荒神山の頂上から眺望出来る景色は非常に絶妙であり空気も清涼である。荒神山全体は非常に物静かな雰囲気であり自然林からは僅少の風音が響き渡る。 「南国は荒武者の集合地帯って命名されるが…案外平和そうだな…」 南国は荒武者の集合地帯とも呼称され…。各国の領主達からは必要以上に畏怖される。領土の大半は農村地帯であり南軍の兵卒達も大半が農村の村人達である。 (長居し続けても無意味だな…) 「北国に戻ろうか…」 祖国の北国に戻ろうかと思いきや…。背後より気配を感じる。 (ん?) 「気配を感じるな…」 鬼殺丸は冷静の表情であるが…。警戒した様子で恐る恐る背後を直視する。すると鬼殺丸の背後には白色の野犬が一匹…。無表情で鬼殺丸を凝視したのである。 「此奴は…単なる野犬か…」 一安心するものの…。 「折角だ…」 鬼殺丸は護身用の拳銃を携帯したのである。 (異国の拳銃とやらが本当に役立つのか…) 「此奴で試射するか…」 鬼殺丸の性格は人一倍負けず嫌いな性格であるが非常に獰猛で野蛮であり戦場であれば相手が無抵抗の女性やら子供は勿論…。無力の老人であっても平気で殺害する残虐非道の荒武者である。場合によっては敵軍の攻撃で瀕死状態だった仲間も殺害…。自軍の将兵達からも畏怖されたのである。 「野犬よ…私に遭遇したのを後悔するのだな…」 鬼殺丸は拳銃を発砲…。野犬の前頭部に拳銃の銃弾が直撃したのである。銃撃された野犬は即死…。地面に横たわったのである。地面には野犬の鮮血により赤色に染色する。 「人間を打っ殺す場合でも…案外此奴は役立ちそうだな…」 鬼殺丸は祖国の北国へと戻ったのである。同年の九月一日…。北軍は東国が牛耳る金剛山への侵攻作戦を開始したのである。金剛山は東国の支配領域であるが金剛山を攻略出来れば無尽蔵の牢固石が確保出来…。東国への侵攻が容易くなる。北国の領主は即座に兵卒達を集結させ東国の金剛山侵攻作戦を開始させる。北国の根城より大勢の兵卒達が集結したのである。 「全軍覚悟せよ!」 北軍の侍大将が発言する。 「今回東国の金剛山を陥落させれば大量の牢固石も確保出来…大敵の東国を弱体化させられる絶好の機会である!総軍で奮闘すれば確実に勝利出来る戦闘であるぞ!」 直後…。北軍の兵卒達の士気が鼓舞したのである。 「金剛山を守備する東軍の総兵力は俺達よりも数倍上回るが…所詮奴等は烏合の衆である!相対する貴様達は歴戦の勇士なのだ!貴様達歴戦の精鋭達が奮闘すれば…確実に東軍の烏合の衆を容易に蹴散らせられる!」 今回集結した北軍の総兵力は推計三百人…。金剛山を守備する東国の総兵力は最低でも推計九百人であり兵力では圧倒的に不利であるものの…。今回の作戦に抜擢された北軍の兵卒達は歴戦の勇士達であり北軍最強の鬼神と呼称される鬼殺丸も抜擢されたのである。 「全軍!即刻進撃を開始するぞ!」 侍大将を先頭に北軍は東国の支配領域である金剛山への侵攻作戦を開始する。移動中…。二人の足軽が私語する。 「あんた…敵兵を何人殺せるか俺と競争しないか♪」 小柄の足軽が競争を提案するのだが…。大柄の足軽は嫌悪した様子で返答する。 「他人事氏の競争なんて…不謹慎だな…俺は即刻村里に戻りたいのに…」 足軽は農民が大半であり村里に戻りたい兵卒達も少なくない。大柄の足軽が返答すると小柄の足軽が…。 「あんたは巨漢なのに随分弱腰だよな♪敵兵を二百人以上打っ殺せば三石の米俵を獲得出来る絶好の機会なのに♪」 北国では敵国の兵卒を二百人以上殺害した場合は褒美として三石の米俵を譲渡される。敵軍の総大将…。強豪の強兵を斬首した場合は領主の側近として一生涯従事出来る。すると小柄の足軽は無口の鬼殺丸に競争を提案したのである。 「兄ちゃんよ♪あんたも敵兵を何人殺せるか俺と敵兵打っ殺し競争しないか?」 (此奴…命知らずだな…) 小柄の足軽に大柄の足軽が命知らずであると感じる。すると鬼殺丸が睥睨した表情で返答する。 「鬱陶しい…貴様は私に殺されたいか?」 「ひっ!」 鬼殺丸の威厳と目力に圧倒されたのか小柄の足軽は勿論…。周囲の兵卒達が鬼殺丸に畏怖したのである。鬼殺丸は北軍では最強の武人である反面…。味方であっても気に入らなければ殺害する。鬼殺丸が発言すると周囲は即座に沈黙したのである。北軍が進撃してより二時間後…。北国と東国の国境へと到達する。 「国境に到達したぞ!目的地の金剛山は間近だ!」 侍大将を先頭に北軍は再度金剛山へと直行したのである。金剛山の天辺には東軍の根城が増築され根城の表門には二人の番兵が警備する。真夜中であるが表門の番兵が無数の足音に気付いたのである。 「足音だ…味方の軍勢か?」 「こんな真夜中に味方の軍勢が行動するか?」 直後…。真正面の山道より大勢の武士達が天辺の根城へと突入する。 「なっ!敵襲だ!」 「北軍の奴等だな!」 旗印を直視すると敵軍は北軍であると認識…。根城内部の兵卒達が番兵の呼号に気付いたのである。 「敵襲だと!?」 守備隊の兵卒達は即座に抜刀する。すると進撃中の北軍は攻城兵器である破城槌で真正面の表門を破壊…。 「表門が破壊されたぞ!」 表門を突破した北軍は城内へと進撃したのである。 「全軍!東国の荒武者達を打っ殺せ!」 北軍の侍大将が命令したと同時に北軍の足軽…。武士達が東国の兵卒達に襲撃する。 「根城を守備しろ!敵軍を撃退するのだ!」 根城の城内は乱戦状態であり敵味方の鮮血…。肉片が城内に散乱したのである。北軍最強の鬼神…。鬼殺丸は神速の身動きと剣術を駆使しては接近する東国の兵卒達を瞬殺する。戦闘開始からの五分間で東国の兵卒達を十二人殺害したのである。 (雑魚ばかりか…) 鬼殺丸は根城の最上階へと直行する。同時刻…。根城の最上階には東国の総大将と側近が停留する。 「総大将…敵軍は北軍みたいです…」 「北国の奴等か…恐らく奴等は金剛山に埋没する牢固石を確保したいみたいだな…」 すると障子の奥側より見張り役達の悲鳴が響き渡る。 「うわっ!」 「ぎゃっ!」 障子には赤色の血飛沫が飛散したのである。障子の血飛沫を直視すると総大将と側近は畏怖する。 「ひっ!」 「狼狽えるな…」 総大将は恐る恐る護身用の懐刀を抜刀したのである。すると障子が蹴破られる。 「貴様は一体…」 食人餓鬼を連想させる甲冑を装備した武士が出現したのである。右手には鮮血により赤色に染色した刀剣が確認出来る。 「私は…鬼殺丸…」 「鬼殺丸って…」 「貴様が北国最強の鬼神…鬼殺丸なのか!?」 鬼殺丸が名前を名乗ると総大将と側近は極度に畏怖するなり後退りする。 「貴様…城内の若武者達は?」 「今頃…撤退か…全滅しただろうな…」 総大将に問い掛けられた鬼殺丸は即答したのである。 「貴様…一体如何するのだ?」 恐る恐る問い掛ける総大将に鬼殺丸は再度即答する。 「如何するって…私は東国最強の軍神…夜桜崇徳丸みたいに相手が無抵抗でも手加減しない…」 直後…。鬼殺丸は神速の身動きにより総大将と側近の頭首を斬撃したのである。鬼殺丸は総大将の頭首を所持するなり…。最上階から脱出する。戦闘は継続中であり敵味方の兵卒達が乱戦したのである。鬼殺丸は一息するなり…。 「全員注目せよ!」 鬼殺丸の大声に敵味方の兵卒達が鬼殺丸に注目する。 「えっ?」 「一体何事だ?」 「鬼殺丸?」 鬼殺丸は東国総大将の頭首を敵味方に拝見させる。 「此奴を直視せよ!」 北軍は勿論…。東軍の兵卒達も愕然とした表情で東軍総大将の頭首を直視したのである。 「なっ!?総大将が…」 「斬首されたのか!?」 東軍の兵卒達は絶望したのか一目散に根城から逃走する。 「敵軍が撤退したぞ!俺達の大勝利だ!」 北軍の侍大将は勿論…。兵卒達は大喜びしたのである。侍大将は鬼殺丸に近寄るなり…。 「鬼殺丸♪見事だったぞ!今回で貴様は次期領主に確定したからな♪」 すると鬼殺丸は無表情で返答する。 「私には領主なんて不向きだ…」 「不向きだと?」 「私は徹底的に敵対者を斬首する…思う存分気に入らない人間を打っ殺せれば満足だ…」 鬼殺丸の発言に一瞬畏怖するも侍大将は笑顔で…。 「貴様らしい発言だな♪今後も思う存分大勢の敵兵を仕留めろよ…」 今回の戦闘で金剛山は北軍に襲撃され占拠されたのである。翌朝…。北軍は東軍の残存勢力殲滅を名目に金剛山の東側近辺に位置する村里への襲撃を実行したのである。村里を襲撃するものの…。東軍の残存勢力は皆無であり北軍の襲撃により数十人の村人が殺害される。 「畜生…結局東軍の残党は一目散に逃げやがったか…」 「ですが大量の米俵を入手出来ましたぜ♪」 東軍の残存勢力殲滅は達成出来なかったが…。大量の食糧を確保出来たのである。村里の中心地では兵卒達が飲酒するなり大声で談笑する。鬼殺丸は中心地のとある民家にて一人で焼酎を飲酒したのである。すると二人の兵卒達が民家に進入する。 「ん?あんたは鬼神の鬼殺丸か…」 大柄の兵卒が鬼殺丸に近寄る。 「あんたの昨日の活躍は絶大だったな♪」 「俺もあんたみたいに活躍したいぜ♪鬼殺丸みたいに活躍出来れば俺も今頃は北国の領主確定だな♪」 中柄の兵卒が発言する。すると鬼殺丸は無表情で…。 「私は単純に気に入らない人間を殺したいだけだ…私にとって地位も名誉も無価値であり不要…」 (此奴…無欲だな…) 二人とも鬼殺丸が無欲であると感じる。すると突然…。 「ん?誰だ?」 「村里の子供みたいだな…」 民家の板戸より血塗れの着物姿の少女が民家の玄関口へと進入したのである。少女の左手には出刃包丁が確認出来る。少女は鬼殺丸を睥睨するなり…。 「あんたが…あんたが私の父様と母様を殺した武士ね…」 少女は鬼神を連想させる表情で力一杯鬼殺丸を睥睨する。 「お嬢ちゃんよ…相手は北軍最強の武士だぜ♪お嬢ちゃんみたいな小娘なんて簡単に打っ殺されちまうぞ♪」 「此奴はお嬢ちゃんみたいな子供でも容赦しないからな♪死にたくなかったら即刻逃げちまいな♪」 鬼殺丸は無表情で少女に近寄る。すると少女は恐る恐る…。 「如何して…如何してあんたは私の父様と母様を殺したのよ…」 少女は目前で父親と母親が惨殺されたのである。少女の涙腺から涙が零れ落ちる。 「であればあんたも地獄で父ちゃんと母ちゃんに再会しな…」 「えっ?」 鬼殺丸は即座に抜刀すると少女の頭首を一刀両断…。室内には彼女の鮮血が飛散する。 「鬼殺丸…」 「此奴…本当に無慈悲だな…子供相手にも容赦しないとは…」 相手が子供でも容赦しない鬼殺丸に二人の兵卒達は畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。 「であれば今度は貴様達も小娘みたいに斬首されたいか?」 「ひっ!」 鬼殺丸に畏怖した二人の兵卒達は一目散に逃走する。 「所詮奴等も小心者だな…」 同時刻…。東国の中心地に位置する本拠地では北国の領土拡大により根城全体が大騒ぎする。 「北軍の領土拡大なんて本当なのかよ!?」 「如何やら本当らしい…金剛山の根城が奴等の少数精鋭の軍勢によって陥落したって…」 「金剛山の総大将も斬首されたらしいな…」 東軍の武士達は北軍の進撃に畏怖したのである。東国の領主達は即座に討伐部隊を編成する。一番に討伐部隊に抜擢されたのは東国の軍神と呼称される夜桜崇徳丸である。崇徳丸は鬼神を連想させる甲冑を装備…。愛刀である牢固石の刀剣を護身用に所持したのである。崇徳丸以外には推計八百人もの精鋭達が北軍討伐部隊として抜擢されたのである。東国中心地の根城より討伐部隊が集結する。 「俺達は即刻東国の領内に侵攻する北軍を撃退する!全員で奮闘すれば確実に撃退出来る戦闘であるぞ!」 東軍は侍大将を先頭に討伐部隊が追尾したのである。移動中…。崇徳丸に隣接する若齢の足軽が恐る恐る発言する。 「あんたは夜桜一族の夜桜崇徳丸様だよな?」 すると崇徳丸は即答したのである。 「勿論ですが…如何されましたか?」 「こんな場所で発言するのも不謹慎だが…正直あんたは自分の村里へは戻りたくないのか?俺は正直一目散に戻りたいよ…」 崇徳丸は一瞬沈黙するものの…。 「正直私は…祖国よりも西国に安住したいですね…」 崇徳丸の発言に足軽は一瞬驚愕する。 「西国に?意外だね…あんたは祖国に戻りたくないのか?」 崇徳丸は困惑した表情で…。 「正直東国の風習は堅苦しい…出来るなら私は少人数の武陵桃源の土地で安住したいですね…」 崇徳丸にとって東国の風習は堅苦しく苦痛だったのである。戦乱時代が終焉したら何者にも束縛されない場所に安住したいと思考する。 「武陵桃源か…」 すると足軽は笑顔で発言する。 「東国が無事に天下統一出来れば…西国で安住しなされ♪」 「感謝します♪私は貴方様の無事を切願しますよ♪」 「崇徳丸様♪勿論俺も崇徳丸様の無事を切願しますよ♪」 彼等は握手したのである。本拠地から移動してより二時間後…。周囲は非常に物静かであり清涼の風音が響き渡る。討伐部隊は金剛山の近辺に位置する村里の郊外へと到達するのだが…。 「なっ!?」 「村里では一体何が?」 彼等が直視したのは荒廃した村里である。人気は皆無であり腐敗した鮮血の悪臭が村里全体に蔓延する。 「襲撃されたみたいだな…」 崇徳丸は一瞬瞑目するなり…。 (無数の殺気を感じる…) 崇徳丸は幼少期から気配やら殺気を察知する感知能力が顕著であり人一倍敏感である。すると侍大将が恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。 「崇徳丸?敵軍の兵力は何人か判別出来るか?」 問い掛けられた崇徳丸は即座に返答する。 「気配から判断して…敵軍の兵力は推定二百人前後かと…」 「二百人前後か…」 周囲の兵卒達は崇徳丸に驚愕したのである。 「崇徳丸はこんな場所からでも気配だけで敵軍の人数を判断出来るのか!?」 「本当に人間なのか?此奴は?」 侍大将が村里への突入を合図する。 「全軍…慎重に突入しろ…敵兵を発見すれば即座に仕留めよ…」 討伐部隊は侍大将の合図と同時に恐る恐る村里へと潜入したのである。村里に突入すると惨殺された村人達の遺体…。肉片やら鮮血が彼方此方に確認出来る。 「敵軍は村人達を殺したのか…」 すると移動中…。崇徳丸は腹部を斬撃された妊婦の遺体を発見する。 「奴等は妊婦にも手出ししたのか…」 崇徳丸は涙腺から涙が零れ落ちるなり…。恐る恐る両手で合掌したのである。先程一緒に談笑し合った足軽が恐る恐る崇徳丸に近寄る。 「あんたは敵兵からは極悪非道の悪鬼だって畏怖されるみたいだが…今現在のあんたは本当に仏様だよ…」 「こんな私が仏様か…」 足軽の一言に崇徳丸は内心嬉しくなる。 「俺達が頑張って殺し合いの世の中を終了させましょう!」 足軽の発言に…。 「勿論ですとも!」 彼等は再度村里の中心地へと直行する。討伐部隊は村里の中心地に到達したのである。村里の中心地には北軍の兵卒達が潜伏中であり東軍の彼等と対峙するなり…。 「奴等…東国の軍勢ですぜ…」 討伐部隊の総大将が恐る恐る北軍の兵卒達に問い掛ける。 「貴様達か!?村里を襲撃したのは…」 すると北軍の兵卒が即答する。 「勿論俺達だよ♪俺達にとって東国の領内に居住する奴等は全員殲滅の対象だからな!」 「俺達は相手が女人だろうと子供だろうと打っ殺すぜ♪服従するなら別だけどな♪」 討伐部隊の兵卒達が彼等の言動に腹立たしくなる。 「外道が…」 北軍の侍大将が刀剣を抜刀する。 「こんな場所に東軍の奴等が出向くとは…非常に好都合である♪」 北軍の侍大将は合図したのである。 「全軍!東国の奴等は憎悪すべき対象だ!皆殺しにせよ!」 侍大将の合図と同時に北軍の兵卒達が殺到する。 「奴等を討伐せよ!」 東軍の侍大将も反撃を合図したのである。北軍の軍勢と討伐部隊の軍勢が衝突…。乱戦状態へと発展する。同時刻…。大勢の将兵達の雄叫びが村里全域へと響き渡り移動中の崇徳丸と若齢の足軽が兵卒達の雄叫びに気付いたのである。 「如何やら中心地で戦闘が開始されたみたいですね…」 「俺達も参戦しましょう♪崇徳丸様!」 すると道中…。三人の北軍将兵と遭遇したのである。 「ん?貴様達は東軍の奴等か?」 三人の将兵達は即座に抜刀する。崇徳丸と若齢の足軽は警戒した様子で刀剣を抜刀したのである。 「如何やら北軍の敵兵みたいですね…」 「如何しますかい?崇徳丸様?」 「仕留めなければ私達が殺されます…」 すると北軍の兵卒が崇徳丸の名前を傾聴するなり…。 「貴様は東国の軍神…夜桜崇徳丸か?」 「貴様によって俺達の戦友は大勢殺されたのだ!復讐する!」 崇徳丸は今迄の戦闘で数十人もの敵兵を斬殺したのである。味方からは英雄として扱われるも…。敵軍からは憎悪すべき対象として認識されたのである。 「覚悟せよ!」 三人の兵卒達が崇徳丸に殺到するも…。崇徳丸は神速の身動きにより数秒間で三人の兵卒達を瞬殺したのである。 「ぎゃっ!」 「ぐっ!」 彼等は地面に横たわる。三人の敵兵を瞬殺した崇徳丸に若齢の足軽は愕然とする。 「一瞬で三人の敵兵を瞬殺するなんて…あんたは本当に軍神だな…」 「私は人間ですよ…」 返答する崇徳丸に若齢の足軽は苦笑いしたのである。 「私達は即刻討伐部隊に合流して…敵軍に反撃しなくては…」 移動する直前…。 「なっ!」 (殺気!?) 「今度の相手は私だ…」 鬼神を連想させる甲冑を装備した武士が左手に拳銃…。右手には刀剣を装備した状態で拳銃を崇徳丸に発砲する。 「崇徳丸様!」 若齢の足軽が崇徳丸を庇護…。胸部に拳銃の銃弾が命中する。 「ぐっ!」 若齢の足軽が地面に横たわる。 「大丈夫ですか!?」 すると若齢の足軽が…。 「崇徳丸様…無事で…何よりです…」 若齢の足軽は息絶える。 (如何して気付けなかった…畜生…) 崇徳丸の涙腺より涙が零れ落ちる。すると敵軍の武士が落涙する崇徳丸に近寄る。 「今度こそ貴様を仕留める…東国の軍神…夜桜崇徳丸…」 崇徳丸は強烈なる目力で敵軍の武士を睥睨するなり…。 「私を殺したいか?崇徳丸…」 敵軍の武士は無表情で名前を名乗る。 「私の名前は北国の鬼神…鬼殺丸だ…貴様も地獄で仲間と再会しな♪」 普段は無表情の鬼殺丸であるが…。一瞬微笑したのである。 「鬼殺丸?」 (此奴が北軍最強の武人か…) 鬼殺丸も東国…。南国の武士達から畏怖される一人である。 「覚悟しろ!崇徳丸!」 鬼殺丸は神速で崇徳丸に急接近…。 「鬼殺丸!」 崇徳丸も全身全霊で鬼殺丸に突撃する。両者が交差した直後…。 「ぐっ!」 鬼殺丸が胸部より出血したのである。 「崇徳丸…貴様…」 崇徳丸の背中を睥睨するなり…。地面に横たわる。 「鬼殺丸…所詮貴様では私を殺せない…」 「畜生が…」 崇徳丸は無表情で横たわる鬼殺丸に近寄る。 「貴様は今迄…大勢の村人達を惨殺したみたいだな…」 「村人達を…惨殺だと?」 横たわる鬼殺丸に断言する。 「今後は罪滅ぼしとして大勢の村人達を守護しろ…急所は無事だ…貴様なら遣り直せる…」 崇徳丸は即座に村里の中心地へと移動したのである。 (何が…) 「何が罪滅ぼしだ!崇徳丸!貴様だって大勢の足軽を打っ殺しただろ!」 普段は冷静であり無表情の鬼殺丸であるが…。今回ばかりは崇徳丸の発言に鬼殺丸の表情が鬼神の表情へと変化する。同時刻…。崇徳丸は村里の中心地へと移動すると殺到する敵兵を無我夢中に仕留める。最初は互角に交戦するが崇徳丸の参戦により北軍は兵力の半分以上を喪失…。北軍は後退したのである。 「畜生!東軍の奴等!」 すると血塗れの兵卒が北軍の侍大将に近寄るなり…。 「戦闘を継続し続ければ軍勢が全滅します!金剛山に撤退しましょう!」 「止むを得ないな…」 侍大将は決断する。 「全軍金剛山に撤退するぞ!」 侍大将の撤退の合図と同時に北軍の軍勢は一目散に金剛山へと撤退したのである。討伐部隊の侍大将が笑顔で崇徳丸に近寄る。 「今回も見事だったぞ♪崇徳丸♪貴様の活躍で敵軍を撃退出来たぞ!」 崇徳丸は落涙する。 「ですが今回の悲劇で…大勢の仲間達…無関係の村人達が殺されたのです…」 「崇徳丸…」 侍大将は沈黙したのである。崇徳丸は精神的にも肉体的にも疲弊したのか東側に位置するとある民家にて一休みするのだが…。 「えっ!?」 民家には両目を失明した少女が血塗れの状態で横たわる。 「北軍の奴等はこんな少女にも…」 横たわった状態の少女に崇徳丸は悲痛に感じる。すると直後…。少女が再度呼吸し始めたのである。 「なっ!?」 少女は失明した状態であるが…。恐る恐る一休みする崇徳丸に接触したのである。 「貴方様は…味方の…将兵ですか?敵兵ですか?」 瀕死の少女に問い掛けられた崇徳丸は落涙した様子で…。 「安心しなさい…私は…味方の将兵だよ…」 崇徳丸が返答すると少女は微笑む。 「貴方様は…味方の…将兵でしたか…」 直後…。瀕死の少女は息絶える。 (力尽きたか…) 崇徳丸は戦闘の悲惨さを痛感する。崇徳丸は即座に中心地へと戻ったのである。 「侍大将…」 「崇徳丸か…大丈夫なのか?」 問い掛けられた崇徳丸は即答する。 「大丈夫です!」 崇徳丸の様子に侍大将は一安心したのである。すると崇徳丸は侍大将に意見する。 「即刻…北軍の奴等から金剛山を奪還しましょう!」 崇徳丸の意見に侍大将は困惑したのである。 「金剛山を奪還出来るのであれば奪還したいが…将兵達は体力を消耗した状態だ…北軍から金剛山を奪還するなら明日の早朝からでも…」 「明日の早朝なんて悠長過ぎます!敵軍の増援が到達すれば何もかもが水の泡ですよ!」 すると周囲の兵卒達も崇徳丸の意見に賛同する。 「勿論ですよ!即刻奴等から金剛山を奪還しましょう!」 「俺達なら思う存分大暴れ出来ますよ♪」 「金剛山から敵軍を蹴散らしましょう!」 侍大将は彼等の闘志に圧倒される。 「貴様達…」 侍大将は一瞬瞑目するなり…。 「即刻金剛山を奪還するか!」 奪還作戦を決断した討伐部隊は即座に金剛山奪還作戦を開始する。金剛山は間近であり十数分で到達したのである。占拠された根城からは無数の火縄銃…。火矢が乱射され討伐部隊は百人以上の将兵達が死傷するも洗い浚い突破したのである。金剛山の根城へと到達した討伐部隊の将兵達は全身全霊で敵陣へと突入…。北軍を圧倒したのである。崇徳丸も十四人の敵兵を斬殺…。最上階へと単身で移動したのである。 「最上階だな…」 すると背後より火縄銃を発砲されるも感知能力により火縄銃の銃弾を一刀両断…。 「あんたが総大将だな…」 火縄銃で狙撃したのは北軍の侍大将である。 「此奴は東国の軍神…夜桜崇徳丸か…」 侍大将は再度弾丸を装填させる。 「今度こそ夜桜崇徳丸!貴様を仕留める…軍神の貴様を仕留められれば東軍全体は総崩れしたのも同然であるからな♪」 侍大将が再度火縄銃で崇徳丸を狙撃する直前…。崇徳丸は神速の身動きにより火縄銃を両断したのである。 「なっ!?」 「降参しろ…あんたでは私は仕留められない…」 崇徳丸は最上階へと戻ろうかと思いきや…。背後より北軍の侍大将は護身用の懐刀で斬撃しに接近する。 「死滅しろ!崇徳丸!」 崇徳丸は即座に殺気を察知すると即座に猛反撃…。侍大将の胸部を斬撃したのである。 「ぎゃっ!」 侍大将は胸部を斬撃され即死する。崇徳丸は無表情の様子で最上階へと戻ったのである。敵軍の敗残兵は北国へと撤退…。侍大将の戦死により金剛山奪還作戦は北軍討伐部隊の勝利に終結する。同日の真夜中…。崇徳丸との戦闘で胸部を斬撃された北軍敗残兵である鬼殺丸は血塗れの状態で東国のとある山奥の夜道を徘徊する。 「ぐっ!」 (崇徳丸…) 崇徳丸の発言を想起すると腹立たしくなる。 「誰が贖罪なんて…」 (今度こそ…私が彼奴に復讐する…) すると直後である。周囲より胸騒ぎを感じる。 (胸騒ぎか…) 「一体何が?」 突然の胸騒ぎにより周囲を警戒したのである。恐る恐る背後を直視するのだが…。 「背後には何も…」 気配は感じるも背後には何も存在しない。疲労による誤認識かと思いきや…。 「なっ!?」 鬼殺丸の前面より一体の異形の化身が出現したのである。 「此奴は一体…」 異形の化身とは全身の皮膚が血塗れであり小柄の肉体…。両目の眼球が噴出した不吉の風貌である。 「ひょっとして近頃村人達が大騒ぎした…悪霊か?」 (名前は…食人餓鬼だったか?) 食人餓鬼はふら付いた身動きで鬼殺丸に近寄る。彼自身悪霊の存在は否定的であり実際に悪霊と遭遇する以前は子供騙しであると揶揄したが…。 「こんな悪霊が本当に実在するなんて…」 鬼殺丸は睥睨すると即座に抜刀する。 「私と勝負するか…悪霊!?」 神速の身動きにより接近する食人餓鬼の頭部を斬首…。瞬殺したのである。 「悪霊でも所詮は雑魚か…」 (こんな程度では其処等の子供でも打っ殺せるな…所詮悪霊なんて…) すると周辺の地中より無数の食人餓鬼が出現する。 「私を食い殺したいか?悪霊?」 無数の食人餓鬼が鬼殺丸に殺到するも食人餓鬼は非常に貧弱であり簡単に仕留められる。二分間で地面には数十体以上の食人餓鬼の肉片…。血肉が散乱したのである。 「終了したか?」 (他愛無いな…) 直後…。背後より無数の食人餓鬼が融合した人型の肉塊が出現する。 「今度の相手は百鬼食人餓鬼か…」 百鬼食人餓鬼の体表の頭部が鬼殺丸を睥睨するなり…。高熱の火炎を放射したのである。 「火炎攻撃か!?」 鬼殺丸は神速の身動きで火炎攻撃を回避する。 (此奴が相手なら多少手応えを感じられそうだな…) 神速の身動きにより百鬼食人餓鬼に接近すると一刀両断…。百鬼食人餓鬼の肉体が無数の肉片へと分裂したのである。 「ん?」 分裂した肉体が融合化すると複数の食人餓鬼に変化する。 (今度も食人餓鬼か…鬱陶しい…) 鬱陶しいと感じるも複数の食人餓鬼を瞬殺したのである。 「面白くないな…」 背後から別物の気配を察知…。背後を警戒すると甲冑を装備した巨体の骸骨が出現したのである。 「此奴は骸骨荒武者?戦死者達の亡霊か…」 (悪霊でも手応えを感じられそうな相手が出現したか♪) 鬼殺丸は内心大喜びする。二体の骸骨荒武者は抜刀すると鈍足で鬼殺丸に殺到したのである。 「鈍間が…」 骸骨荒武者は刀剣で斬撃するも容易に回避される。 (こんな鈍間では私には通用しないぞ…) 鬼殺丸は急接近…。刀剣で一体の骸骨荒武者に腹部を斬撃するのだが骸骨荒武者の鎧兜は予想以上に硬質であり鬼殺丸の刀剣が屈折したのである。 「なっ!?」 (私の刀剣が…) 愕然とした鬼殺丸に骸骨荒武者は鬼殺丸の左腕を斬撃…。 「ぐっ!」 鬼殺丸は左腕を切断されたのである。 (北国の鬼神である私が…悪霊相手に左腕を…) 地面は赤色の血液により染色する。 「畜生が…」 (本調子であれば…こんな悪霊…簡単に…) 最早戦闘継続は不可能であると判断…。鬼殺丸は一目散に逃走したのである。逃走してより十数分後…。悪霊から逃走し続けた鬼殺丸であるが精神的にも肉体的にも疲弊したのか獣道の道中にて横たわる。 (今夜が…私の最期みたいだな…) 出血多量が影響したのか鬼殺丸は瀕死の状態であり肉体は刻一刻と衰弱化する。 (夜桜崇徳丸…彼奴を仕留められなかったのは…非常に心残りだな…) 崇徳丸の存在を想起したのである。数分後…。極度の死臭と強烈なる殺気を感じる。 (極度の死臭と殺気…今度は何が出現した?) 正体不明の不吉の気配は刻一刻と横たわる鬼殺丸に急接近する。数秒後…。全身が血塗れで規格外に巨体の野犬が出現したのである。 「野犬?」 (随分巨体だな…) 左側の前頭部が白骨化した状態であり巨体の野犬は正真正銘悪霊であると認識出来る。 (野犬の…悪霊なのか?) 口先には咀嚼された肉片らしき物体を確認…。何かを捕食したのであると推測する。 「野犬の悪霊…俺を…食い殺したいか?」 すると野犬の悪霊は人語で発言し始める。 「私は死霊餓狼…」 (死霊餓狼…此奴は悪霊の分際で喋れるのか…) 鬼殺丸は衰弱化した小声で問い掛ける。 「死霊餓狼だったか?貴様は一体何者だ?」 すると死霊餓狼は即答する。 「私は貴様によって殺された野犬の悪霊である…」 死霊餓狼の発言に鬼殺丸は想起したのである。 (此奴…南国の荒神山で私が打っ殺した…野犬の亡霊だったのか…) 死霊餓狼の前頭部を直視すると銃弾の傷跡が確認出来る。 「俺が打っ殺した野犬の亡霊が…地獄から復活するとは…」 すると鬼殺丸は恐る恐る…。 「俺を食い殺したいか?死霊餓狼…俺を食い殺したければ思う存分食い殺せよ…最早俺の肉体は虫の息だぜ…」 死霊餓狼は返答する。 「極悪非道の人間よ…貴様は無間地獄で無限の苦痛を体感せよ…」 死霊餓狼の発言に鬼殺丸は僅少であるが微笑したのである。 「地獄か…」 (私にとっては本望だ…) 直後…。 「極悪非道の人間よ…貴様の肉体を頂戴する…」 死霊餓狼は衰弱化した鬼殺丸の肉体を咀嚼したのである。
 |
|