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日時: 2026/07/29 20:17
名前: 黒狼武者 ID:eSd4Sxzo

>>1

第一話

隕石
太平洋の中央には小大陸〔エルピスコロニア〕と呼称される辺境の絶島が存在する。此処は自然が豊富であり大勢の原住民達が安住したのである。世界暦五千七百二十一年六月中旬の時期…。小大陸エルピスコロニアでの出来事である。島内の中心部に聳え立つ最高峰ギガントロックの頂上にて一人の青年が広大無辺の青空を眺望する。
『やっぱり此処は長閑だな…』
地上は大戦争によって世界各地の彼方此方が荒廃化したのである。世界全体は空前絶後の大混乱期であったが…。文明やら科学技術とは無縁のエルピスコロニアだけは平和だったのである。
『宇宙の彼方には何が存在するのかな?』
青年の名前は【ストレイダス】…。体格は男性としては比較的小柄であり頭髪が黒髪なのが特徴的である。年齢は二十九歳であるが…。常日頃から自由自在に広大無辺の大空を浮遊したいと夢見る。
『俺も鳥類みたいに大空を飛行したいな…』
ストレイダスは村落一番の力自慢であり力仕事のみなら彼に拮抗する人物は存在しない。上記の理由により次期村長候補に任命されるのだが彼自身は非常に大雑把であり面倒に感じる。
『北方地帯に戻らないと村長の野郎が口煩いからな…』
生真面目の村長とは性格が不一致であり落胆したのである。
「はぁ…」
ストレイダスが一息した直後…。
「ん?」
突如として頭上から轟音が響き渡る。
『轟音か?』
ストレイダスは恐る恐る上空を直視したのである。
「えっ…」
上空の光景に絶句…。脳内が白色化したのである。
『一体何が!?』
上空には三十センチメートルサイズの隕石が超高速で急接近…。対するストレイダスは目前の光景に絶句する。
『隕石なのか!?』
上空の物体が小型の隕石であると認識した直後…。小型の隕石はギガントロックの頂上へと落下したのである。小型隕石の爆発音は近辺の村落は勿論…。エルピスコロニア全域へと響き渡ったのである。
「うわっ!」
ストレイダスの現在地は小型隕石の落下地点から数メートル程度の近距離とされ…。爆風と衝撃波が彼を強襲したのである。ストレイダスは隕石の落下地点から十数メートル程度吹っ飛ばされ…。
「ぐっ!」
全身が地面に激突する。
「ぐっ…」
『畜生が…』
ストレイダスは地面の激突により全身を骨折したのである。
『身動き出来ないか…』
全身の苦痛により身動き出来なくなる。
「はぁ…」
すると目前の視界が黒化し始め…。
『俺は…こんな場所で死んじまうのか?』
次第に意識が遠退き始める。
『正直…もう少しだけ…』
ストレイダスは自身の最期を覚悟したのである。
『もう少しだけでも…長生きしたかったな…』
数秒間が経過…。ストレイダスの意識が消失したのである。

第二話

治癒
最高峰ギガントロックの頂上へと落下した小型の隕石はエルピスコロニア全域へと響き渡る。
「一体何が…」
「轟音は…頂上からだったよな?」
登山中の二人の村民達は畏怖するも頂上へと移動したのである。
「うわっ…」
「クレーターか…一体如何してこんな状態に?」
頂上の光景に驚愕する。頂上には直径二十メートル前後のクレーターが形作られ…。クレーターの中心部には三十センチメートルサイズの岩石が確認出来る。
「此奴は隕石なのか?」
「ん!?誰だ!?」
クレーターの近辺にて地面に横たわった状態の怪我人を発見する。
「怪我人だぞ!大丈夫か!?」
怪我人は小柄の成人男性だったのである。上半身は血塗れ…。全身の衣服はボロボロであり瀕死の状態だったのである。
「隕石で吹っ飛ばされたのか?」
「不運だったな…こんな状態では…」
生存は絶望的であり二人は瀕死の成人男性を気の毒に感じる。すると直後…。
「えっ…」
「現実なのか?」
成人男性は瀕死の状態であったが突如として全身の外傷が治癒し始める。外傷は数秒間で完治…。成人男性は目覚めたのである。
「うっ!俺は…死んじまったのか?此処は天国なのか?」
成人男性は記憶が曖昧なのか周囲をキョロキョロさせる。
「誰かと思いきや…あんたは力自慢のストレイダス!?」
「大丈夫なのかよ!?」
成人男性は誰であろう力自慢のストレイダスだったのである。
「えっ?大丈夫そうだが…」
ストレイダスは自身の全身を確認すると絶句し始める。
『衣服がボロボロだな…上着は血塗れだし…』
鮮血により白色の上着が赤化したのである。
「戻って入浴しないと…」
ストレイダスが歩行する直前…。
「ストレイダス?歩いて大丈夫なのか?」
「血塗れだし…」
二人の村民達はストレイダスを心配する。
「大丈夫だよ…外傷は無さそうだし手足はピンピンに動けるからさ…」
ストレイダスはピンピンした様子であり下山したのである。
「ストレイダス…本当に元気だな…」
「彼奴は不死身なのか?」
小柄の村民が恐る恐る…。
「先程のストレイダスの治癒力…異常だったよな?全身血塗れの状態だったのに…数秒間で治癒するなんて…」
すると大柄の村民も小声で発言する。
「ストレイダスは人一倍元気だけど…普通は失血死しても可笑しくないよ…彼奴は如何しちまったのやら…ストレイダスは本当に不死身だったのか?」
ストレイダスは幼少期から免疫力は人一倍根強く怪我も一日で治癒したのである。二人の村民達はストレイダスの様子に愕然とする。

第三話

次期村長候補
同日の夕方…。ストレイダスは自宅でゴロゴロする。
「はぁ…」
『今日は草臥れたぜ…隕石で吹っ飛ばされるなんて予想外だな…』
すると誰かがコンコンッと自宅のドアをノックしたのである。
「ん?こんな時間帯に誰だろう?」
ストレイダスは玄関へと移動するとドアを開放させる。
「ストレイダスよ…体調は如何なのだ?」
「えっ…村長!?」
訪問者は村長のウィルフィールドでありストレイダスは驚愕する。
「村民達の噂話では隕石で吹っ飛ばされたとか…其方は大丈夫なのか?」
ウィルフィールドはストレイダスの状態を心配したのである。
「俺なら大丈夫ですよ♪俺は肉体だけなら人一倍頑丈なので石ころなんかで死にませんよ!村長は心配性ですね♪」
ストレイダスは自負する。
「ストレイダスが元気なのは周知の事実だが…無理するなよ…何たって其方は次期村長候補なのだからな…」
「えっ?はぁ…」
ストレイダスは次期村長候補の発言に苦笑いしたのである。
『やっぱり村長の口癖は面倒臭いな…次期村長なんて御免だよ…』
彼にとってウィルフィールドの口癖はストレスに感じる。するとウィルフィールドは小声で…。
「偶然にも…天空世界から隕石が落下するとは…恐らく今後…世界各地で天変地異が発生するかも知れないな…」
「天変地異ですって?」
ストレイダスはウィルフィールドの小声に反応したのである。
「近頃…感じるのだよ…」
時たまであるが…。ウィルフィールドは未来を予知出来る。契機としては幼少期の海水浴で事故に遭遇…。海中に溺れ掛けるも両親に救助されたのである。事故から数日後…。未来の出来事を予見出来る能力が発現したのである。
「村長?一体…世界では何が発生するのですか?」
ストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「非常に曖昧かも知れないが…世界各地に怪物らしき巨体が暴れ回り…各国は停戦するだろう…」
「えっ…停戦ですって!?」
今現在世界各国は経済の不景気により戦争中である。世界各地の彼方此方が戦争の影響で荒廃化…。戦争による被害は拡大化する。
「怪物を相手に奮闘中の戦士らしき存在も認識出来たのだ…ひょっとして世界の救世主だろうか?」
「怪物と…戦士ですって?」
ウィルフィールドの表現は非常に曖昧であり現実味は皆無である。
『本当に曖昧だな…怪物とか戦士って何だろう?』
一方のストレイダスは内心珍粉漢粉であり苦笑いする。
「少なくとも世界全体で異変が発生するのは事実だろう…」
数秒間が経過するとウィルフィールドは自宅へと戻ったのである。
「世界全体で天変地異なんて…」
『本当に発生するのかな?巨体の怪物とか…世界の救世主とか…古代の神話みたいな内容だよな…』
先程のウィルフィールドの発言は非現実的であり大昔の神話みたいに感じられる。

第四話

停戦
隕石事故から半年後の十二月中旬の時期である。世界各国は依然として戦争中であったが…。十二月が経過した時期から海中より正体不明の移動物体の目撃情報が世界各地に伝播したのである。同年の十二月十三日…。とある大国の大型潜水艦が正体不明の巨大移動物体と衝突する大事故が発生したのである。大型潜水艦は沈没こそ免れたが…。艦体は大破したのである。正体不明の巨大移動物体による大型潜水艦の衝突事故から二日後…。今度は別の国軍の艦隊が作戦行動中に正体不明の巨大移動物体と遭遇する。魚類らしき背鰭と尾鰭が確認出来…。正体不明の巨大移動物体は全長数十メートル規模の魚類であると判明したのである。艦隊は回避行動を開始するのだが…。一隻のミサイル艦が魚類らしき移動物体と衝突したのである。巨大移動物体と衝突した影響によりミサイル艦は沈没…。艦隊は即座に対潜戦闘を開始するのだが巨大移動物体は想像以上に高速であり行方を見失ったのである。以後も各海域で各種船舶が魚類らしき巨大移動物体と遭遇…。場合によっては衝突する事故が多発したのである。一連の超常現象から月日が経過…。世界暦五千七百二十二年五月七日未明の出来事である。午前八時半…。
「各国の停戦って本当なのかよ!?」
「えっ…長期化した戦闘がこんなにもピタッと停戦するなんて…」
各国間の停戦の情報は辺境のエルピスコロニア全域にも知れ渡ったのである。エルピスコロニアは各国の停戦の動向により各村落が騒然とする。
「開戦から七年以上経過したけれど…各国が停戦するとは何が契機で?」
各村落は突然の朗報により騒然としたものの…。大勢の村民達は各国の停戦にホッとしたのである。すると一人の村民が恐る恐る…。
「各国が停戦した理由だけど…如何やら規格外の怪物が戦場に出現したらしいぞ…」
「えっ!?規格外の怪物だって!?」
周囲の者達は怪物の一言に反応する。
「世界各地の戦場で巨体の怪物が何体も出現したらしいぞ…」
各国が戦争中に規格外の巨大不明生物の出現で各国軍の損害が増大化したのである。対する各国軍も通常兵器で巨大不明生物に応戦するのだが…。巨大不明生物には各国軍の如何なる兵器も通用しなかったのである。各国の首脳陣は巨大不明生物の出現により停戦を決行…。各国軍は巨大不明生物の排除を優先したのである。
「非現実的だな…怪物の出現なんて本当なのかよ?」
「怪物の出現で終戦なんて皮肉だよな…」
「本当に怪物が出現するなんて…村落に出現しないか心配だよ…」
「やっぱりウィルフィールド村長の未来予知は本当だったのか…」
大半の者達がウィルフィールドの予言を単なる妄言程度の認識であったが…。今回の超常現象から怪物の存在を確信したのである。
『怪物か…やっぱり村長の予言は本当だったな…』
村道を通り掛かったストレイダスは村民達の噂話を盗み聞きする。
『村長の予言では地球上に救世主が出現するらしいけれど…一体誰なのかな?』
ストレイダスは救世主の存在が何者なのか気になったのである。

第五話

恐竜型
全世界各国の停戦表明から五日後の深夜帯…。エルピスコロニア北方地帯での出来事である。村民達はスヤスヤと睡眠中だったのだが…。突如として北方の海岸から爆発音と猛獣らしき咆哮が北方地帯全域に響き渡ったのである。
「うわっ!」
一方のストレイダスは自宅の寝室にて熟睡中であったが…。突然の爆発音と猛獣らしき轟音により飛び起きたのである。
『一体何が!?』
今度は大勢の村民達の悲鳴が響き渡る。気になったストレイダスは恐る恐る外部へと移動したのである。大勢の村民達が村道を逃走…。反対方向から弓矢を装備した義勇兵達が総動員で海岸へと急行中だったのである。
「えっ…」
ストレイダスは外部の光景に愕然とする。
『前代未聞の光景だな…』
ストレイダスは村道へと移動…。義勇兵達に追尾したのである。移動中…。再度爆発音と猛獣らしき咆哮が響き渡る。
『咆哮だ…海岸には何が出撃したのかな?』
義勇兵達を追尾してより数分後…。ストレイダスは海岸へと到達したのである。
「なっ!?」
ストレイダスは海岸の光景に驚愕…。現実の出来事なのか理解出来なくなる。
『此奴は…恐竜なのか!?』
海岸の砂浜には体高十二メートル前後の恐竜らしき怪物が直立…。全身が凸凹の岩石らしき皮膚が特徴的である。
「狼狽えるな!此処で怪物を仕留めろ!」
義勇兵の部隊長が攻撃を指示…。数十本もの毒矢が発射されたのである。多数の毒矢が怪物の皮膚に命中するのだが…。
「畜生…ビクともしないな…」
怪物の皮膚は岩石みたいに硬質であり毒矢は非力だったのである。
「部隊長殿…駄目です…」
「こんな装備では…」
周囲の義勇兵達は毒矢が通用しない怪物に畏怖し始め…。絶望する。現実問題としてエルピスコロニアは外界の科学技術とは無縁の排他的社会である。当然として科学技術は未発達であり外界では主流とされる近代的装備は皆無…。武器は時代錯誤の棍棒やら弓矢が関の山だったのである。
「駄目だ!此処で怪物を仕留めなければ村落が壊滅するのだぞ!」
部隊長は怒号するのだが…。
「怪物が!?」
直後である。恐竜型の怪物が口部を開口し始め…。口内から高熱の火球を放射したのである。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
火球は義勇兵達に直撃…。彼等の肉片が一瞬で炭化したのである。海岸の砂浜には炭化した義勇兵達の肉片が彼方此方に散乱する。
「えっ…」
ストレイダスは彼等の惨劇に恐怖したのである。一方恐竜型の怪物がストレイダスの方向を直視し始め…。ギロリと睥睨したのである。
「ひっ!」
ストレイダスは極度の恐怖心により身動き出来なくなる。
『畜生…逃げたいのに逃げられない…』
すると恐竜型の怪物は再度口部を開口…。ストレイダスを標的に口内から高熱の火球を放射したのである。
「はぁ…」
『今日が…俺の命日か…』
ストレイダスは自身の最期を覚悟する。

第六話

協力者
ストレイダスは火球に直撃…。意識が消失したのである。火球が直撃してより時間が経過…。
「ん?えっ…此処は?」
ストレイダスはとある密室にて目覚める。
『俺は恐竜みたいな怪物に遭遇してから殺されて…此処は死後の世界なのか?』
ストレイダスは周囲をキョロキョロさせる。すると目前のドアが開放され…。背広姿の男性が入室する。
「目覚められましたか…ストレイダス様…」
背広姿の男性は頭髪が金髪…。瞳孔は碧眼であり大柄の白人男性だったのである。
「えっ…はぁ…」
ストレイダスは状況が理解出来ず返答に困惑する。
『誰だろう?天使なのか?姿形だけなら人間みたいだな…』
目前の白人男性が天使なのか思考したのである。
「私の名前は【フィルドルク】です♪突然の出来事なので貴方が理解出来ないのは当然でしょう♪」
フィルドルクと名乗る白人男性は満面の笑顔で発言する。一方のストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「俺は怪物に殺されて…此処は死後の世界の天国ですか?貴方は天使ですか?」
フィルドルクはストレイダスの問い掛けにクスクスと微笑し始める。
「こんなにも連続的に超自然的現象と遭遇すれば混乱するでしょうね♪此処は潜水艇の内部ですよ♪天国とは無縁の世界です♪」
「潜水艇の…内部?」
「貴方は正真正銘完全なる生者なのですから♪」
「えっ…俺が…生者ですって!?」
『俺は怪物の火球で吹っ飛ばされたのに…命拾い出来たのか!?』
ストレイダスは自身が生者である事実に驚愕し始め…。再度混乱したのである。
「貴方は地上の怪物と遭遇してから…」
ストレイダスは先程の恐竜型の怪物に攻撃され…。海面上へと吹っ飛ばされたのである。一方のフィルドルクは潜水艇で航行中…。暗闇の海中にてストレイダスを発見したのである。
「俺は貴方に救助されたのですね…感謝します…」
ストレイダスは命拾い出来…。フィルドルクに感謝したのである。
「私の正体は民間の宇宙開発企業の社長とでも♪当然として貴方の協力者なのは断言出来ますが♪」
「えっ…宇宙?開発企業の…社長?」
『俺の協力者だって?失礼かも知れないけれど…』
ストレイダスはフィルドルクに警戒する。
『正直胡散臭い雰囲気だな…』
フィルドルクは見ず知らずの人物であり内心胡散臭いと感じる。
「貴方が俺を此処に移送したのですか?」
「無論ですね♪」
フィルドルクはストレイダスの問い掛けに満面の笑顔で返答する。
「貴方は唯一無二の地球の救世主なのですから♪ストレイダス様が死去されたら一体誰が地球を守護されるのでしょうか?」
「俺が…地球の救世主ですって?」
「貴方は去年の六月頃…隕石で大怪我されたでしょう?私は後日…隕石の落下地点で落下した隕石と…貴方の血液を入手したのですよ♪」
去年の六月…。隕石の落下を察知したフィルドルクは単独調査を目的にエルピスコロニアへと上陸したのである。最高峰のギガントロック頂上にて隕石とストレイダスの血液を入手…。独自で隕石の詳細とストレイダスの血液を調査したのである。
「調査の結果…世紀の大発見ですよ♪人類の歴史が変化するでしょうね♪」
フィルドルクは大喜びする。
「えっ…はぁ…」
ストレイダスは珍粉漢粉であり再度苦笑いしたのである。
「ギガントロックに落下した隕石はペストロと命名される深宇宙の特殊性物質なのですよ♪」
「ペストロ?」
ストレイダスは専門用語に困惑する。
「ペストロは惑星の爆発によって発生する物質なのですよ♪恐らく辺境の宙域で惑星が爆発したのでしょう…」
特定の惑星の爆発によってペストロと呼称される特殊性の物質が発生…。隕石として地球上に落下したのである。
「ですがペストロって物質と落下地点の血液が如何したのですか?」
ストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「隕石の落下地点の血液を調査した結果…ペストロの物質が検出されたのです…今現在のストレイダス様の血液と一致したのですよ…」
フィルドルクはストレイダスの身体髪膚を検査した結果…。ストレイダスの血液がギガントロックで発見した血液と一致したのである。
「えっ…」
ストレイダスは絶句する。
「今現在の貴方の肉体は常人とは比較出来ない領域へと進化したのです…」
ストレイダスは隕石の影響から全身がペストロの細胞へと変異したのである。
「えっ…進化?」
「貴方は隕石の影響により…細胞レベルで変異したのでしょう…」
ストレイダスは恐る恐る全身の皮膚に接触し始める。皮膚に接触すると筋肉が金属類みたいに硬質だったのである。
「実際ストレイダス様は怪物に攻撃されても死にませんでした…貴方の生命力が超越的だと証明されたのです♪」
フィルドルクは満面の笑顔で銀色の密着性の全身スーツ…。携帯型の電子機器を手渡したのである。
「全身タイツと…小箱みたいな小道具ですね…一体何でしょうか?」
エルピスコロニアでは文明社会の電子機器が出回らずストレイダスは携帯型の電子機器に興味深くなる。
「本日より貴方はペストロの超人…【ペストロマン】なのです♪」
フィルドルクはストレイダスをペストロマンと命名する。
「ペストロマン!?」
「今現在の貴方であれば先程の怪物と互角以上に接戦出来るでしょう♪貴方は地球上で最強の戦士なのですから♪」
ストレイダスはフィルドルクの発言に動揺し始める。
「フィルドルクさん!無茶ですよ!先程の恐竜みたいな怪物に…真正面から接戦なんて正気ですか!?」
「ストレイダス様は心配性ですね♪」
対するフィルドルクは動揺し続けるストレイダスに断言する。
「心配しなくてもストレイダス様のデータを計算した結果…今現在の貴方はペストロの効果によって常人の三百人分のパワーは発揮出来ましょう♪」
「三百人分って…」
『大袈裟だし…胡散臭いな…』
フィルドルクの発言が信用出来なかったのである。
「先程貴方に手渡した必須アイテムですが…一つ目はペストロマンが着用するので〔ペストロスーツ〕とでも命名しましょうか♪」
ペストロスーツは宇宙で発見された特殊繊維で製造…。密着性の全身スーツである。本来は宇宙空間での活用を目的に製造された代物とされ…。太陽型の恒星内部でも活動出来るとされる。
「二つ目のアイテムは怪物を発見するのに必須の〔ハイパーセンサー〕です♪」
ハイパーセンサーとは近年発生した巨大未確認不明生物の出現に対応する目的で開発された代物である。地球上であれば巨大未確認不明生物があらゆる場所に出現しても生体反応を正確にキャッチ出来…。瞬時に出現地点を特定出来る。
「当然としてペストロスーツとハイパーセンサーは無料で提供しますからね♪」
すると直後…。ハイパーセンサーの中心部のレンズが点滅したのである。
「うわっ!中心の硝子が点滅した!?」
ストレイダスは突然のハイパーセンサーの点滅に驚愕する。
「如何やらハイパーセンサーが怪物の生体の居場所をキャッチしたみたいですね♪」
「一体如何すれば…」
ストレイダスは困惑したのである。
「貴方が出動する以外に選択肢は存在しません…早速ストレイダス様は怪物を退治するべきかと…」
フィルドルクは携帯型のホログラム装置を作動させる。
「えっ…一体何が!?」
ストレイダスはホログラム装置に反応したのである。するとホログラム装置の上部にて立体化された恐竜型の怪物が映写される。
「怪物だ…」
恐竜型の怪物は村里を襲撃…。大勢の村民達が逃亡する光景がホログラム装置から鮮明に確認出来る。
「ストレイダス様…此処で長居し続ければ村落の被害が拡大する一方ですよ…」
ストレイダスは両目を瞑目し始め…。沈黙したのである。
『一か八かだな…』
一息する。
「承知しました…俺は…怪物を退治しますよ…」
ストレイダスは決意したのである。
「ストレイダス様♪決断されたのですね♪」
フィルドルクはストレイダスの決意に大喜びする。一方のストレイダスはペストロスーツを凝視し続ける。
『神話の…英雄みたいな衣装だけど…』
ペストロスーツの着用には抵抗を感じるのだが…。
『止むを得ないな…』
ストレイダスはペストロスーツを着用したのである。数分後…。
「少しだけチクチクしますが…やっぱり動き易いですね…」
ペストロスーツは全身にフィット…。全体的に動き易いと感じる。
「ですがやっぱりストレイダス様は屈強の体格ですね…」
ストレイダスは全体的に筋肉質であり余計に屈強さが際立ったのである。
「実際俺は村里では一番の力自慢ですからね…」
「であれば怪物相手でも大丈夫でしょう♪」
ストレイダスは恐る恐る…。
「早速此処から脱出したいのですが…一体如何すれば?」
「心配しなくても大丈夫ですよ♪ストレイダス様♪」
フィルドルクはストレイダスをとある密室へと案内したのである。
「床下の装置は…何ですか?」
床下には円形の装置が確認出来る。
「床下の装置は最新型のテレポート装置ですよ♪円内であればあらゆる物体を目的地にワープさせられます♪」
密室の装置はオーバーテクノロジーによって開発されたテレポート装置である。円形の内部に特定の物体を設置…。目的地を設定すると数秒間で物体をワープさせられる。

第七話

開戦
ストレイダスはテレポート装置によって海岸の砂浜へとワープする。
『此処は海岸の砂浜だな…』
先程の出来事を想起…。
『フィルドルクさんもだけど…』
先程の数多くの未来的道具に愕然とする。
『やっぱり外界の文明レベルは桁違いだな…』
すると直後…。頭部がズキズキする。
「うっ…」
『何だろう?遠方から気配を感じる…』
何故なのかは不明だが…。村落から気配を察知出来たのである。
『ひょっとするとペストロって隕石の影響なのかな?』
ストレイダスは自身の肉体の異変を自覚し始める。
『先程の怪物…仕留められるのかな?』
正直不安であったが…。村落へと急行したのである。移動中…。爆発音やら大勢の村民達の悲鳴が響き渡る。
『物凄い騒音だ…やっぱり怪物は村落に進攻したみたいだな…』
移動してより数分後…。
「えっ…」
北方地帯の彼方此方が火炎の地獄であり各家屋が炎上したのである。
『北方地帯が…』
ストレイダスは非日常的光景に絶句…。真夜中の深夜帯なのに火災の影響で北方地帯全域が赤色に染色する。
『怪物を発見し次第仕留めないと…』
すると近辺の山奥より…。怪物の咆哮が響き渡る。
『怪物か…』
ストレイダスは山奥へと急行する。急行してより数分後…。山道にて先程の恐竜型の怪物を発見したのである。
「怪物だ!」
一方の恐竜型の怪物は反応し始め…。背後のストレイダスを凝視したのである。怪物は殺気立った形相でギロリと睥睨する。
「うっ…」
『こんな怪物…本当に俺だけで仕留められるのか?』
ストレイダスは恐怖…。全身がプルプルと身震いしたのである。すると携帯式のハイパーセンサーがピピッと作動し始める。
「ん?ハイパーセンサーか?」
恐る恐るハイパーセンサーを起動…。
「何だろう?」
すると画面より怪物の名称と危険度が表示されたのである。
「【ギガントサウルス】?危険度は…中度?」
恐竜型の怪物は高熱恐竜ギガントサウルスと表示され…。危険度は中度と表示されたのである。
『怪物はギガントサウルスって名前なのか…』
メンテ

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桜花姫 ( No.22 )
日時: 2021/08/16 20:14
名前: 月影桜花姫

第九話

強敵

亡霊女房が退治されてより三日後の真夜中…。北国に位置する山奥のとある洞窟では白装束の集団が集結する。
「全員終結したな…」
集団の人数は六人であり松明を所持する集団の頭領が五人の若者達の人数を確認したのである。
「頭領…こんな洞窟に私達を集合させるなんて…」
「今回は何事でしょうか…」
「不吉だな…村里に戻りたいよ…」
「早速私が道案内する…私に追尾せよ…」
頭領は洞窟の奥底へと移動する。数分後…。洞窟の奥底へと到達すると奥底の地面には一体の木乃伊が確認出来る。
「えっ!木乃伊ですか?」
彼等は木乃伊を直視すると一瞬畏怖する。木乃伊は野犬によって食い殺された状態であり老若男女の区別は不可能である。
「一体誰の誰なのでしょうか?」
集団の一人が頭首に問い掛ける。
「彼こそは私達北国の英雄…鬼殺丸様の遺体であるぞ!」
「木乃伊が鬼殺丸様ですか!?」
鬼殺丸とは戦乱時代に活躍した北国最強の武士である。生前は北軍の鬼神と呼称され各国の領主達は勿論…。大勢の武士達から畏怖されたのである。戦乱時代当時は北国最強の英雄として扱われるものの…。彼によって大勢の味方も殺され憎悪する者達により安穏時代では極悪非道の人物として扱われる。世間では極悪非道の大悪党と認識される反面…。一部の村里では今現在でも英雄として神格化される。
「鬼殺丸様は死去されたのですか?」
「残念であるが鬼殺丸が死去されたのは事実だ…鬼殺丸様は山中の野犬によって食い殺されたのかも知れない…」
今迄鬼殺丸の生死は不明であったが…。死因こそは不明瞭であるものの鬼殺丸は死亡したと判明する。
「勿論事実を熟知したのは私達だけだぞ…鬼殺丸様の遺体を発見したのは誰であろう私なのだからな…」
集団の頭首は十五年前の戦乱時代末期…。生前当時から鬼殺丸を神格化する一人であり奇遇にも鬼殺丸が死去した数日後に鬼殺丸の遺体を発見したのである。
「頭領は鬼殺丸様の遺体を如何されるのですか?」
頭領は一息するなり…。
「黄泉の国から鬼殺丸様を…生者として復活させる…」
「なっ!?」
彼等は頭領の発言に驚愕したのである。
「最早死没者である鬼殺丸様を…完全なる生者として復活させられるのですか?」
「死没者を復活させるなんて…実現出来るのでしょうか?」
問い掛けられた頭領は即答する。
「出来るとも…無論死没者を復活させるには犠牲が必要不可欠であるが…」
すると頭領は隠し持った拳銃を所持するなり…。
「えっ?拳銃ですか?」
「此奴は異国の拳銃だ…貴様達の生命を頂戴する…」
「ひっ!」
「殺される!逃げろ!」
五人の若者達は頭領の所持する拳銃に畏怖したのか即座に逃走する。
「安眠せよ…」
頭領は背後から四人の若者達に発砲…。
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
拳銃で四人を殺害したのである。最後の一人は畏怖した様子で全身が膠着化…。身動き出来ず地面に横たわる。
「頭領…俺を…俺を殺さないで…」
極度の恐怖心からか身震いした様子で涙腺からは涙が零れ落ちる。
「貴様が恐怖するのは勿論理解出来るが…本来死没者を復活させるには百人もの人身御供が必要不可欠なのだよ…」
戦乱時代以前の旧時代…。一人の死没者を復活させるのに百人の人間を人身御供として利用した儀式が各地で実行されたのである。当時は頻繁に実行されたが死没者が復活した事例は実質皆無であり非人道的理由から今現在の安穏時代は勿論…。弱肉強食の戦乱時代でさえも儀式は禁止される。
「私は今迄に九十五人の人間達を人身御供として殺害したが…今回で無事に達成出来そうだ…」
弾丸を装填させるなり…。
「南国の鬼神…鬼殺丸様を完全なる生者として復活させるには貴様の犠牲が必要不可欠なのだ…成仏せよ…」
銃弾が若者の頭部を貫通…。
「ぐっ!」
即死させたのである。
「鬼殺丸様を復活させるには…彼等の血液が必要だな…」
頭首は今迄に九十五人の人間達を殺害…。鬼殺丸の木乃伊に殺害した人間の血液を含有させたのである。
「今回で五人の血液を入手出来たぞ…」
(五人の血液を…)
殺害した五人の遺体から血液を指先に採取…。鬼殺丸の木乃伊に接触したのである。
「英雄…鬼殺丸様♪」
死没者である鬼殺丸の復活に期待する。
「黄泉の国から俗界に戻られよ…」
一分間が経過するのだが…。鬼殺丸の木乃伊は復活せず身動きしない。
「鬼殺丸様!?何故復活されない!?」
(ひょっとして儀式に不備が…)
直後である。突如として鬼殺丸の遺体が破裂…。洞窟内部に鬼殺丸の血肉が飛散する。
「ひっ!」
突然の超常現象に頭領は畏怖したのである。
「一体何が…なっ!?」
破裂した鬼殺丸の肉片に頭領は驚愕する。
「鬼殺丸様の…肉体が…」
(如何してこんな…こんな状態では鬼殺丸様は二度と復活出来ない…)
頭領は涙腺より涙が零れ落ちる。
「死没者を復活させる儀式とは…出鱈目だったのか…」
頭領は出鱈目の儀式に後悔したのである。
(結局…私は単なる人殺しだったのか…)
自身の行動が単なる殺人であると自覚した直後…。背後より不吉の胸騒ぎを感じる。
「えっ…」
恐る恐る背後を直視すると背後には不定形の黒雲が存在する。
「一体何が!?」
すると不定形の黒雲が人語で発言し始める。
「愚劣なる人間よ…一人の死没者を復活させるのに百人もの人間を惨殺するとは…人間とは非常に愚劣であり…醜悪であるな…」
頭領は恐る恐る…。
「貴方様は一体何者なのでしょうか?」
問い掛けられた不定形の黒雲は即答する。
「私は…大勢の亡者達の集合体だ…」
「亡者達の…集合体ですと?」
不定形の黒雲は自身を大勢の亡者達から誕生した集合体であると名乗る。
「貴様は…戦乱時代の鬼殺丸と名乗る…極悪非道の亡者を復活させたいみたいだな…」
問い掛けられた頭領は恐る恐る返答する。
「勿論ですとも…私にとって鬼殺丸様は未来永劫北国の英雄であり…北国の武神なのですから…」
「貴様の崇拝する鬼殺丸を復活させたいのであれば…貴様自身の生命を授与せよ…」
「私自身の生命ですと…」
「亡者を復活させるには生者の生身の肉体が必要不可欠だ…」
頭領は一瞬躊躇うものの…。
「承知しました…私自身の生命を授与しましょう…」
不本意であるが頭領は承諾したのである。
「であれば鬼殺丸を…悪霊として復活させる…」
直後…。
「なっ!?発火!?」
頭領の皮膚が突発的に発火したのである。高熱の火炎は一瞬で全身へと覆い包まれ…。頭領の肉体は黒焦げの焼死体へと変化したのである。すると焼死した頭領の肉体が瞬間的に再生…。全身が筋肉質で素肌が灰白色の美青年へと変化したのである。
「ぐっ!私は…一体…」
地面に横たわった美青年が恐る恐る目覚める。
「目覚めたか…鬼殺丸よ…」
鬼殺丸は素肌が灰白色であったが生前と同様の姿形に復活したのである。
「私は…野犬の亡霊に食い殺されて…」
「鬼殺丸…貴様は…」
不定形の黒雲が復活した経緯を説明する。
「私は黄泉の国から復活したのか…」
「悪霊の肉体であるが…今現在の貴様は生前よりも強力だ…其処等の悪霊とは別格の霊力であるぞ…」
普段は無表情の鬼殺丸であるが…。微笑したのである。
「悪霊の肉体なのは気に入らないが…彼奴に復讐出来るなら悪霊の肉体でも止むを得ないな♪」
「彼奴とは?」
鬼殺丸は即答する。
「東国の軍神…夜桜崇徳丸…私が唯一憎悪する人間だ…」
「貴様が夜桜崇徳丸と名乗る人間を殺したいのであれば思う存分殺せ…」
すると不定形の黒雲は復活した代償として条件を提示したのである。
「条件として…愚劣なる大勢の人間達を殲滅せよ…悪霊として復活した貴様であれば出来るよな?」
問い掛けられた鬼殺丸は一瞬沈黙するが…。
「折角復活したのであれば…貴様との約束は厳守するさ…」
交渉成立する。鬼殺丸は不定形の黒雲に問い掛ける。
「貴様は一体何者だ?人間達を憎悪するみたいだが…」
「私は亡者達の集合体とでも…」
問い掛けられた不定形の黒雲は自身を亡者達の集合体と名乗る。
「亡者達の集合体か…」
数秒後…。
「鬼殺丸よ…黄泉の国に戻りたくなければ思う存分人間達を殺せ…」
不定形の黒雲は消滅したのである。
「思う存分人間達を殺せとは…」
(亡者達の集合体に命令されるのは正直気に入らないが…悪霊の肉体でも折角復活出来たのだからな…)
心情より人間達への殺意が芽生える。
「近日中にでも…思う存分人間達を蹴散らせるか…」
六日後の早朝…。西国と東国の国境に位置する廃村から大量の人骨が発見されたのである。近隣の村里では地獄から出現した怨霊達の仕業であるとの噂話が国全体に出回る。同日の早朝には東国の連山から大量発生した食人餓鬼の大群が隣接する各農村にて出没したのである。気になった小梅姫は即刻問題の廃村へと出発する。
(村人達の行方不明事件と廃村の大量の人骨…そして食人餓鬼の大群…)
「今回の事件と無関係では無さそうだわ…」
東国からは非常に近辺なのか徒歩でも数分間で到着する短距離である。彼女は山岳地帯から貝塚村の様子を眺望するなり…。
(随分殺風景ね…)
村里の雰囲気から徘徊した無人の城下町であり中心地には廃城が確認出来る。
「悪霊が出現しても可笑しくない雰囲気ね…」
誰一人として人間が存在しない廃村であり無数の霊力が潜伏するのは察知出来る。時間帯は真昼であるものの…。廃村の雰囲気から夕方同然である。非常に重苦しい空気であり普通の人間であれば卒倒しても可笑しくない感覚である。
(恐らく今回は今迄の悪霊とは比較出来ない悪霊が出現しそうだわ…)
村里の雰囲気から気力が格段に低下したものの…。廃村の中心地に位置する廃城から強烈なる霊力を察知したのである。
(村里中心部の廃城が非常に奇怪だわ…)
「妖力を過剰に消耗するのも面倒臭いし…強行突破よ!」
彼女は鈍足であるものの廃村へと正面から進行し始める。すると周囲の土中から無数の食人餓鬼が出現…。
「食人餓鬼?」
無防備状態の小梅姫へと殺到する。
(彼等の招待状かしら?)
「大歓迎みたいね…」
小梅姫は即座に妖力の防壁を発生させたのである。今度は防壁を攻撃用に転用させた半透明の魔手を形成…。防壁の表面より無数の魔手が形作られる。魔手は外敵である食人餓鬼の猛攻から小梅姫本体を守備しては自動的に動作し続ける。
「鬱陶しいわね…」
魔手の発動によって殺到し続ける食人餓鬼の大群を容易に駆逐したのである。魔手に接触した食人餓鬼は只管全身が粉砕される。小梅姫が通過すれば大量の肉塊と鮮血が彼女の道端に散乱し続ける。一直線に進行し続ければ中心地の廃城へと到達する。
「廃城から霊力を感じるわね…」
恐る恐る廃城へと進入する。城内は家具が散乱した状態であり当然として住民は誰一人確認出来ない。
(戦乱時代で処分された根城かしら?)
全体的に純和風ではなく異国風の雰囲気である。
「異国の文化財だわ…」
(ひょっとして城主は異国愛好家かしらね…)
階段を利用しては最上階へと到達する。最上階には高価値の骨董品が発見されたのである。
(廃城の城主は異国の愛好家なのね…)
すると室内中心部にて摩訶不思議なる骨董品を発見する。
「一体何かしら?」
(ひょっとして能面?)
彼女が注目したのは内壁に装飾された能面であるものの…。能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。
「えっ…悪趣味だわ…」
(正直能面とか般若の仮面って外見的にも不吉なのよね…私は大嫌いだわ…)
彼女は室内に装飾された巨大能面を気味悪がる。
「私には所有者の感受性が理解出来ないわね…」
迂闊にも巨大能面に接触する。
「普通の能面よりも随分特大なのね…」
(本当に能面なのかしら?単なる装飾品っぽいわね…)
先程から疑問であったのか彼女が廃城へと進入した途端に城内の霊力が一瞬で消失したのである。
「霊力が感じられないわ…」
霊力が皆無であると判断した小梅姫は即座に石庭へと戻ろうかと思いきや…。背後から物音が響き渡る。
「えっ…」
彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「一体何事かしら?」
背後の内壁に装飾された巨大能面の両目が蛍光色に発光した状態であり八本の蜘蛛脚が生成される。形状的には巨大蜘蛛であり中心部の胴体部分は巨大能面である。
「此奴はひょっとして…悪霊の小面蜘蛛かしら!?」
油断した小梅姫は愕然とする。内壁の巨大能面の正体とは器物の悪霊…。小面蜘蛛であり装飾品の巨大能面に憑依した悪霊である。特定の地方では付喪神とも呼称される。特定の道具への憑依が可能であり小梅姫をも油断させる。胴体の両目が小梅姫を凝視し始めるなり口先から白色の粘液を噴出する。粘液が彼女の皮膚に接触した瞬間…。体内の妖力が急速に消耗し始める。
(何かしら?妖力が消耗するなんて…)
妖力のみならず…。体力が半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。
「ぐっ…迂闊だったわ…」
(能面の正体が小面蜘蛛だったなんて…)
小面蜘蛛の体内から噴出される粘液は妖力を消耗させる効力を発揮出来る。妖力を多用する攻撃法では小面蜘蛛を攻略するのは非常に困難である。莫大なる妖力を所持…。自由自在に操作出来る小梅姫にとって小面蜘蛛を相手するのは圧倒的に不利である。
(私は小面蜘蛛の餌食に…)
小梅姫は莫大なる妖力によって力尽きたのか横たわる。寝転び始める彼女の視界間近に小面蜘蛛が急接近…。
「私を捕食したければ捕食しなさいよ…」
彼女は覚悟したものの…。
(妖女の私が…)
「こんな悪霊を相手に敗北するなんて…」
彼女は僅少の妖力によって時空間停止の妖術使用を決意する。
(一か八か…)
金縛りの妖術を発動すると一時的に小面蜘蛛は身動きしなくなる。金縛りの妖術は相手の身動きを長時間封殺出来る妖術である。
「今度は…」
瞬身の妖術を発動…。即座に安全地帯へと移動したのである。小梅姫は瞬身の妖術の使用により廃城から無事脱出…。近辺の山道へと移動したのである。
(危機一髪だったわね…)
「一瞬食い殺されるかと…」
小梅姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に廃城から脱出出来たのである。
「脱出には成功したみたいね…」
妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。
(時空間停止の妖術は解除されたし…即刻戻らないと…)
東国の家屋敷へと戻ろうかと思いきや…。地面より数体の食人餓鬼が小梅姫の視界間近へと突発的に出現したのである。
「えっ!?今度は食人餓鬼!?」
最早小梅姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり本来ならば雑魚である複数の食人餓鬼ですらも攻略不可能である。
(本調子なら食人餓鬼なんて楽勝なのに…)
彼女にとって食人餓鬼程度は雑魚同然であるものの…。衰弱化した状態では非常に脅威である。
「きゃっ!」
大量の妖力を消耗した状態では食人餓鬼でさえも恐怖の対象であり小梅姫は一歩ずつ後退りする。
(私…食人餓鬼に捕食されるのね…)
食人餓鬼が彼女の視界間近へと殺到する寸前…。食人餓鬼は突発的に身動きしなくなる。
「えっ…」
(一体何が?)
彼等の足場を直視すれば白色の粘液を発見する。
「ひょっとして…」
彼等の背後には獲物である小梅姫を追撃する小面蜘蛛が急接近したのである。小面蜘蛛に畏怖した彼女は全身が膠着する。
「小面蜘蛛!?」
廃城からは危機一髪脱出したものの小面蜘蛛は彼女の妖力を目印に小梅姫の居場所を察知…。小梅姫の行方を見逃さなかったのである。小面蜘蛛は粘液によって捕獲した数体の食人餓鬼を捕食し始める。
(此奴…)
「仲間の食人餓鬼を食い殺すなんて…」
凄惨なる光景に小梅姫は恐怖したのである。最早自分自身も彼等と同様に捕食されるのかと思考すると自殺願望が芽生え始める。小面蜘蛛の鋭利なる脚部が小梅姫の胸部を貫通させる。
「ぐっ!」
心臓を貫通させられた直後…。彼女の胸部から大量の鮮血が流血し始める。流血により地面が赤色に染色したのである。
(私は今度こそ…小面蜘蛛に捕食されるのね…)
最早即死しても可笑しくない致命傷であるものの…。神経の麻痺によって苦痛すらも感じられなくなる。抵抗出来なくなった小梅姫は観念する。両目を瞑目したと同時に耳元から爆発音が響き渡る。
「えっ?」
(今度は何事かしら?)
恐る恐る両目を開眼すれば…。
(誰かしら?)
粉砕された小面蜘蛛の血肉が散乱した状態であり背後には焙烙火矢を装備した僧侶服の小柄の男性が横たわる小梅姫に近寄る。
「僧侶?」
「小梅姫…」
「貴方は…」
僧侶の正体とは父親の夜桜崇徳丸であり脆弱化した小梅姫にとって崇徳丸は救済の守護神同然である。
「ひょっとして父様なの…」
「大丈夫か?小梅姫…なっ!?」
小梅姫の胸部の外傷を直視すると身震いする。すると直後…。
「小梅姫…傷口が…」
小梅姫の腹部の外傷は妖力によって数秒間で治癒する。
「父様…私は大丈夫よ…外傷なら自力で治癒出来るから…」
「本当に大丈夫なのか?小梅姫…」
「私なら大丈夫よ…父様は心配性ね…」
(彼女は大丈夫そうだが…出血多量の影響で大分衰弱化した状態だな…)
小梅姫は肉体的にも精神的にも疲弊した様子である。
「父様…感謝するわね…私…もう少しで小面蜘蛛に食い殺されるかと…」
小梅姫は涙腺より涙が零れ落ちる。
「大丈夫だ…小梅姫…小梅姫が無事で何よりだ…」
「父様…」
すると小梅姫は恐る恐る…。
「如何して人間の父様が小面蜘蛛を簡単に仕留められたのよ?妖女の私がこんなにも苦戦した強敵なのに…」
「恐らく小面蜘蛛は妖力を使用しない方法によって退治出来る悪霊みたいだな…今回の相手は妖術を多用する妖女では最悪の天敵だろうよ…」
妖力を使用しない戦法こそが小面蜘蛛の弱点であると推測する。妖術を使用する妖女が相手では相性的にも最悪である反面…。武装した人間には滅法貧弱である。崇徳丸は彼女に麦飯を譲渡する。
「空腹だろ?」
「御免なさい…」
「小梅姫…一人で無茶するなよ…」
すると崇徳丸は笑顔で…。
「小梅姫は私の宝物だ♪悪霊なんかに殺されるなよ…」
「父様♪」
小梅姫は内心嬉しくなる。
「空腹だから食べろよ…」
小梅姫は麦飯を一瞬で頬張ったのである。
(相当空腹だったのか…)
麦飯を一瞬で頬張る小梅姫に崇徳丸は苦笑いする。小梅姫は極度の不安が解消したのか再活動を開始しなければと意気込み始める。
(こんな山道で長居し続ければ悪霊が村里全域に…)
「ん?小梅姫?」
「無数の霊力が国全体に蔓延したみたいなの…」
突如として莫大なる食人餓鬼の気配を瞬時に察知したのである。
「霊力だと?」
「恐らく食人餓鬼の仕業ね…」
「こんな短期間で国全体に蔓延するとは…」
「原因は不明なのよね…」
すると小梅姫は崇徳丸に依頼する。
「今回ばかりは父様の協力が必要なの…」
先程の戦闘によって彼女は余程自信を喪失したのである。
「勿論…私は小梅姫に協力するよ♪安心しろ♪」
「父様と一緒なら心強いわ♪」
二人は行動を開始する。強大なる無数の霊力の感じる東国へと急行したのである。
「えっ…」
「戦乱時代だな…」
東国は主戦場であり地面には赤色の鮮血…。散乱した臓器やら胃腸らしき肉塊が無数に確認出来る。先程遭遇した食人餓鬼の大群が爆発的に出現したらしく村人達に殺到しては村人達の人肉を咀嚼し始める。
「東国では一体何が…」
徘徊中である無数の食人餓鬼が移動中の小梅姫と崇徳丸に反応するなり…。二人に襲撃するものの小梅姫の火炎の妖術によって瞬殺される。地面には無数の焼死体が埋没する。
「浄化したわね…」
「小梅姫の妖術を肉眼で拝見したが…予想外に絶大だな…」
崇徳丸は小梅姫の摩訶不思議の妖術に驚愕したのである。小梅姫は只管村人達の遺体を捕食し続ける食人餓鬼の大群を相手に逆襲…。爆破の妖術により食人餓鬼を仕留めたのである。爆破の妖術で頭部を破壊された食人餓鬼は途端に身動きしなくなる。
「食人餓鬼が相手ならば…小梅姫の妖力は天下無敵だな…」
「天下無敵なんて大袈裟ね…」
(正直妖力の消耗で息苦しいのよね…)
彼女にとって通常の悪霊が相手ならば余裕であるものの…。先程の悪戦苦闘による妖力の消耗が影響したのか重苦しい深呼吸が目立ち始める。
「小梅姫?」
「何よ?」
「大丈夫か?先程から顔色が…」
崇徳丸は彼女の様子を心配する。
「別に…私なら大丈夫よ…」
「本当に大丈夫なのか?」
「私は大丈夫だよ…父様は極度の心配性なのね…」
城下町の中央区へと進行するものの生存者は誰一人として発見出来ない。
「無人地帯だわ…領民達は?」
「領民は根城に避難したみたいだな…最早東国は悪霊の巣窟だ…」
すると崇徳丸は彼女に助言する。
「妖力は非常に強力だが油断すれば食人餓鬼が相手でも苦戦するかも知れないからな…小梅姫も武器も装備するべきだ…」
「武器ですって?」
「私が武士団の駐屯地に案内する…」
崇徳丸は東国武士団の駐屯地へと案内したのである。
「廃屋だわ…」
「駐屯地も悪霊に襲撃されたからな…」
如何やら駐屯地は無人地帯であり駐屯地の守備隊は食人餓鬼の襲撃により撤退…。本拠地である都城へと移動したのである。
「鎮守府の守備隊は退却したのかしら?」
「今回の相手は悪霊の大群だからな…東国の武士達が屈強でも相手が大群では対抗出来ないよ…」
最早武器庫は警備が手薄状態であり無力の町民でも容易に潜入出来る。
「先程は私も武器庫で焙烙火矢を入手出来たからな…」
小梅姫は恐る恐る慎重に武器庫へと入室する。多種多様の刀剣やら弓矢は勿論…。火縄銃やら焙烙火矢が確認出来る。
「拳銃でも装備するか?此奴なら小梅姫でも扱えるよ…」
崇徳丸は比較的素人でも扱えそうな軽量の拳銃を小梅姫に手渡したのである。
「拳銃なんて物騒ね…」
小梅姫は武術が苦手であり拳銃の使用を拒否する。軽量の小刀を発見…。
「私は小刀を所持するわ…」
護身用に軽量の小刀を携帯したのである。
「小刀でも食人餓鬼なら仕留められるか…」
「駐屯地から脱出しましょう…父様…」
すると廊下から物音が響き渡る。
「ん?」
「物音だわ…一体何かしら?」
「物音は廊下からだな…」
(無数の霊力が一点に集中した状態だわ…今度は何が出現したのかしら?)
彼女は無数の霊力を瞬時に察知したのである。小梅姫と崇徳丸は警戒した四数で恐る恐る武器庫から脱出…。すると直後である。
「怪物!?」
(食人餓鬼とは別物だわ…此奴はひょっとして…)
小梅姫の視界間近に佇立する怪物とは無数の食人餓鬼が融合した人型の肉塊…。等身大の人間よりも一回り巨大であり廊下を牛歩する。すると小梅姫の背後より…。
「此奴は悪霊の百鬼食人餓鬼だな…」
「父様…厄介なのが出現したわね…」
体表の食人餓鬼の頭部が小梅姫と崇徳丸を睥睨したのである。
「私が万全の状態であれば食人餓鬼の集合体なんて楽勝に仕留められるでしょうけれども…」
すると百鬼食人餓鬼は全身の口先から高熱の熱風を放射し始める。小梅姫は咄嗟に妖力によって妖力の防壁を形成させたのである。無防備である崇徳丸にも防壁の形成によって守護する。
「父様…命拾いしたわね…」
「小梅姫…感謝する!」
(先程の同時結界で大半の妖力を消耗しちゃったのよね…)
百鬼食人餓鬼と交戦したとしても敗北は濃厚であると判断した小梅姫は崇徳丸に逃亡を合図したのである。
「父様!逃走しましょう…」
「逃走だと?」
小梅姫の様子を直視すると彼女は満身創痍の状態であると察知する。
(小梅姫…)
「承知した…」
小梅姫と崇徳丸は全力疾走により駐屯地から無事脱出したのである。
メンテ

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