桜花姫 ( No.22 ) |
- 日時: 2021/08/16 20:14
- 名前: 月影桜花姫
- 第九話
強敵
亡霊女房が退治されてより三日後の真夜中…。北国に位置する山奥のとある洞窟では白装束の集団が集結する。 「全員終結したな…」 集団の人数は六人であり松明を所持する集団の頭領が五人の若者達の人数を確認したのである。 「頭領…こんな洞窟に私達を集合させるなんて…」 「今回は何事でしょうか…」 「不吉だな…村里に戻りたいよ…」 「早速私が道案内する…私に追尾せよ…」 頭領は洞窟の奥底へと移動する。数分後…。洞窟の奥底へと到達すると奥底の地面には一体の木乃伊が確認出来る。 「えっ!木乃伊ですか?」 彼等は木乃伊を直視すると一瞬畏怖する。木乃伊は野犬によって食い殺された状態であり老若男女の区別は不可能である。 「一体誰の誰なのでしょうか?」 集団の一人が頭首に問い掛ける。 「彼こそは私達北国の英雄…鬼殺丸様の遺体であるぞ!」 「木乃伊が鬼殺丸様ですか!?」 鬼殺丸とは戦乱時代に活躍した北国最強の武士である。生前は北軍の鬼神と呼称され各国の領主達は勿論…。大勢の武士達から畏怖されたのである。戦乱時代当時は北国最強の英雄として扱われるものの…。彼によって大勢の味方も殺され憎悪する者達により安穏時代では極悪非道の人物として扱われる。世間では極悪非道の大悪党と認識される反面…。一部の村里では今現在でも英雄として神格化される。 「鬼殺丸様は死去されたのですか?」 「残念であるが鬼殺丸が死去されたのは事実だ…鬼殺丸様は山中の野犬によって食い殺されたのかも知れない…」 今迄鬼殺丸の生死は不明であったが…。死因こそは不明瞭であるものの鬼殺丸は死亡したと判明する。 「勿論事実を熟知したのは私達だけだぞ…鬼殺丸様の遺体を発見したのは誰であろう私なのだからな…」 集団の頭首は十五年前の戦乱時代末期…。生前当時から鬼殺丸を神格化する一人であり奇遇にも鬼殺丸が死去した数日後に鬼殺丸の遺体を発見したのである。 「頭領は鬼殺丸様の遺体を如何されるのですか?」 頭領は一息するなり…。 「黄泉の国から鬼殺丸様を…生者として復活させる…」 「なっ!?」 彼等は頭領の発言に驚愕したのである。 「最早死没者である鬼殺丸様を…完全なる生者として復活させられるのですか?」 「死没者を復活させるなんて…実現出来るのでしょうか?」 問い掛けられた頭領は即答する。 「出来るとも…無論死没者を復活させるには犠牲が必要不可欠であるが…」 すると頭領は隠し持った拳銃を所持するなり…。 「えっ?拳銃ですか?」 「此奴は異国の拳銃だ…貴様達の生命を頂戴する…」 「ひっ!」 「殺される!逃げろ!」 五人の若者達は頭領の所持する拳銃に畏怖したのか即座に逃走する。 「安眠せよ…」 頭領は背後から四人の若者達に発砲…。 「ぎゃっ!」 「ぐっ!」 拳銃で四人を殺害したのである。最後の一人は畏怖した様子で全身が膠着化…。身動き出来ず地面に横たわる。 「頭領…俺を…俺を殺さないで…」 極度の恐怖心からか身震いした様子で涙腺からは涙が零れ落ちる。 「貴様が恐怖するのは勿論理解出来るが…本来死没者を復活させるには百人もの人身御供が必要不可欠なのだよ…」 戦乱時代以前の旧時代…。一人の死没者を復活させるのに百人の人間を人身御供として利用した儀式が各地で実行されたのである。当時は頻繁に実行されたが死没者が復活した事例は実質皆無であり非人道的理由から今現在の安穏時代は勿論…。弱肉強食の戦乱時代でさえも儀式は禁止される。 「私は今迄に九十五人の人間達を人身御供として殺害したが…今回で無事に達成出来そうだ…」 弾丸を装填させるなり…。 「南国の鬼神…鬼殺丸様を完全なる生者として復活させるには貴様の犠牲が必要不可欠なのだ…成仏せよ…」 銃弾が若者の頭部を貫通…。 「ぐっ!」 即死させたのである。 「鬼殺丸様を復活させるには…彼等の血液が必要だな…」 頭首は今迄に九十五人の人間達を殺害…。鬼殺丸の木乃伊に殺害した人間の血液を含有させたのである。 「今回で五人の血液を入手出来たぞ…」 (五人の血液を…) 殺害した五人の遺体から血液を指先に採取…。鬼殺丸の木乃伊に接触したのである。 「英雄…鬼殺丸様♪」 死没者である鬼殺丸の復活に期待する。 「黄泉の国から俗界に戻られよ…」 一分間が経過するのだが…。鬼殺丸の木乃伊は復活せず身動きしない。 「鬼殺丸様!?何故復活されない!?」 (ひょっとして儀式に不備が…) 直後である。突如として鬼殺丸の遺体が破裂…。洞窟内部に鬼殺丸の血肉が飛散する。 「ひっ!」 突然の超常現象に頭領は畏怖したのである。 「一体何が…なっ!?」 破裂した鬼殺丸の肉片に頭領は驚愕する。 「鬼殺丸様の…肉体が…」 (如何してこんな…こんな状態では鬼殺丸様は二度と復活出来ない…) 頭領は涙腺より涙が零れ落ちる。 「死没者を復活させる儀式とは…出鱈目だったのか…」 頭領は出鱈目の儀式に後悔したのである。 (結局…私は単なる人殺しだったのか…) 自身の行動が単なる殺人であると自覚した直後…。背後より不吉の胸騒ぎを感じる。 「えっ…」 恐る恐る背後を直視すると背後には不定形の黒雲が存在する。 「一体何が!?」 すると不定形の黒雲が人語で発言し始める。 「愚劣なる人間よ…一人の死没者を復活させるのに百人もの人間を惨殺するとは…人間とは非常に愚劣であり…醜悪であるな…」 頭領は恐る恐る…。 「貴方様は一体何者なのでしょうか?」 問い掛けられた不定形の黒雲は即答する。 「私は…大勢の亡者達の集合体だ…」 「亡者達の…集合体ですと?」 不定形の黒雲は自身を大勢の亡者達から誕生した集合体であると名乗る。 「貴様は…戦乱時代の鬼殺丸と名乗る…極悪非道の亡者を復活させたいみたいだな…」 問い掛けられた頭領は恐る恐る返答する。 「勿論ですとも…私にとって鬼殺丸様は未来永劫北国の英雄であり…北国の武神なのですから…」 「貴様の崇拝する鬼殺丸を復活させたいのであれば…貴様自身の生命を授与せよ…」 「私自身の生命ですと…」 「亡者を復活させるには生者の生身の肉体が必要不可欠だ…」 頭領は一瞬躊躇うものの…。 「承知しました…私自身の生命を授与しましょう…」 不本意であるが頭領は承諾したのである。 「であれば鬼殺丸を…悪霊として復活させる…」 直後…。 「なっ!?発火!?」 頭領の皮膚が突発的に発火したのである。高熱の火炎は一瞬で全身へと覆い包まれ…。頭領の肉体は黒焦げの焼死体へと変化したのである。すると焼死した頭領の肉体が瞬間的に再生…。全身が筋肉質で素肌が灰白色の美青年へと変化したのである。 「ぐっ!私は…一体…」 地面に横たわった美青年が恐る恐る目覚める。 「目覚めたか…鬼殺丸よ…」 鬼殺丸は素肌が灰白色であったが生前と同様の姿形に復活したのである。 「私は…野犬の亡霊に食い殺されて…」 「鬼殺丸…貴様は…」 不定形の黒雲が復活した経緯を説明する。 「私は黄泉の国から復活したのか…」 「悪霊の肉体であるが…今現在の貴様は生前よりも強力だ…其処等の悪霊とは別格の霊力であるぞ…」 普段は無表情の鬼殺丸であるが…。微笑したのである。 「悪霊の肉体なのは気に入らないが…彼奴に復讐出来るなら悪霊の肉体でも止むを得ないな♪」 「彼奴とは?」 鬼殺丸は即答する。 「東国の軍神…夜桜崇徳丸…私が唯一憎悪する人間だ…」 「貴様が夜桜崇徳丸と名乗る人間を殺したいのであれば思う存分殺せ…」 すると不定形の黒雲は復活した代償として条件を提示したのである。 「条件として…愚劣なる大勢の人間達を殲滅せよ…悪霊として復活した貴様であれば出来るよな?」 問い掛けられた鬼殺丸は一瞬沈黙するが…。 「折角復活したのであれば…貴様との約束は厳守するさ…」 交渉成立する。鬼殺丸は不定形の黒雲に問い掛ける。 「貴様は一体何者だ?人間達を憎悪するみたいだが…」 「私は亡者達の集合体とでも…」 問い掛けられた不定形の黒雲は自身を亡者達の集合体と名乗る。 「亡者達の集合体か…」 数秒後…。 「鬼殺丸よ…黄泉の国に戻りたくなければ思う存分人間達を殺せ…」 不定形の黒雲は消滅したのである。 「思う存分人間達を殺せとは…」 (亡者達の集合体に命令されるのは正直気に入らないが…悪霊の肉体でも折角復活出来たのだからな…) 心情より人間達への殺意が芽生える。 「近日中にでも…思う存分人間達を蹴散らせるか…」 六日後の早朝…。西国と東国の国境に位置する廃村から大量の人骨が発見されたのである。近隣の村里では地獄から出現した怨霊達の仕業であるとの噂話が国全体に出回る。同日の早朝には東国の連山から大量発生した食人餓鬼の大群が隣接する各農村にて出没したのである。気になった小梅姫は即刻問題の廃村へと出発する。 (村人達の行方不明事件と廃村の大量の人骨…そして食人餓鬼の大群…) 「今回の事件と無関係では無さそうだわ…」 東国からは非常に近辺なのか徒歩でも数分間で到着する短距離である。彼女は山岳地帯から貝塚村の様子を眺望するなり…。 (随分殺風景ね…) 村里の雰囲気から徘徊した無人の城下町であり中心地には廃城が確認出来る。 「悪霊が出現しても可笑しくない雰囲気ね…」 誰一人として人間が存在しない廃村であり無数の霊力が潜伏するのは察知出来る。時間帯は真昼であるものの…。廃村の雰囲気から夕方同然である。非常に重苦しい空気であり普通の人間であれば卒倒しても可笑しくない感覚である。 (恐らく今回は今迄の悪霊とは比較出来ない悪霊が出現しそうだわ…) 村里の雰囲気から気力が格段に低下したものの…。廃村の中心地に位置する廃城から強烈なる霊力を察知したのである。 (村里中心部の廃城が非常に奇怪だわ…) 「妖力を過剰に消耗するのも面倒臭いし…強行突破よ!」 彼女は鈍足であるものの廃村へと正面から進行し始める。すると周囲の土中から無数の食人餓鬼が出現…。 「食人餓鬼?」 無防備状態の小梅姫へと殺到する。 (彼等の招待状かしら?) 「大歓迎みたいね…」 小梅姫は即座に妖力の防壁を発生させたのである。今度は防壁を攻撃用に転用させた半透明の魔手を形成…。防壁の表面より無数の魔手が形作られる。魔手は外敵である食人餓鬼の猛攻から小梅姫本体を守備しては自動的に動作し続ける。 「鬱陶しいわね…」 魔手の発動によって殺到し続ける食人餓鬼の大群を容易に駆逐したのである。魔手に接触した食人餓鬼は只管全身が粉砕される。小梅姫が通過すれば大量の肉塊と鮮血が彼女の道端に散乱し続ける。一直線に進行し続ければ中心地の廃城へと到達する。 「廃城から霊力を感じるわね…」 恐る恐る廃城へと進入する。城内は家具が散乱した状態であり当然として住民は誰一人確認出来ない。 (戦乱時代で処分された根城かしら?) 全体的に純和風ではなく異国風の雰囲気である。 「異国の文化財だわ…」 (ひょっとして城主は異国愛好家かしらね…) 階段を利用しては最上階へと到達する。最上階には高価値の骨董品が発見されたのである。 (廃城の城主は異国の愛好家なのね…) すると室内中心部にて摩訶不思議なる骨董品を発見する。 「一体何かしら?」 (ひょっとして能面?) 彼女が注目したのは内壁に装飾された能面であるものの…。能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。 「えっ…悪趣味だわ…」 (正直能面とか般若の仮面って外見的にも不吉なのよね…私は大嫌いだわ…) 彼女は室内に装飾された巨大能面を気味悪がる。 「私には所有者の感受性が理解出来ないわね…」 迂闊にも巨大能面に接触する。 「普通の能面よりも随分特大なのね…」 (本当に能面なのかしら?単なる装飾品っぽいわね…) 先程から疑問であったのか彼女が廃城へと進入した途端に城内の霊力が一瞬で消失したのである。 「霊力が感じられないわ…」 霊力が皆無であると判断した小梅姫は即座に石庭へと戻ろうかと思いきや…。背後から物音が響き渡る。 「えっ…」 彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。 「一体何事かしら?」 背後の内壁に装飾された巨大能面の両目が蛍光色に発光した状態であり八本の蜘蛛脚が生成される。形状的には巨大蜘蛛であり中心部の胴体部分は巨大能面である。 「此奴はひょっとして…悪霊の小面蜘蛛かしら!?」 油断した小梅姫は愕然とする。内壁の巨大能面の正体とは器物の悪霊…。小面蜘蛛であり装飾品の巨大能面に憑依した悪霊である。特定の地方では付喪神とも呼称される。特定の道具への憑依が可能であり小梅姫をも油断させる。胴体の両目が小梅姫を凝視し始めるなり口先から白色の粘液を噴出する。粘液が彼女の皮膚に接触した瞬間…。体内の妖力が急速に消耗し始める。 (何かしら?妖力が消耗するなんて…) 妖力のみならず…。体力が半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。 「ぐっ…迂闊だったわ…」 (能面の正体が小面蜘蛛だったなんて…) 小面蜘蛛の体内から噴出される粘液は妖力を消耗させる効力を発揮出来る。妖力を多用する攻撃法では小面蜘蛛を攻略するのは非常に困難である。莫大なる妖力を所持…。自由自在に操作出来る小梅姫にとって小面蜘蛛を相手するのは圧倒的に不利である。 (私は小面蜘蛛の餌食に…) 小梅姫は莫大なる妖力によって力尽きたのか横たわる。寝転び始める彼女の視界間近に小面蜘蛛が急接近…。 「私を捕食したければ捕食しなさいよ…」 彼女は覚悟したものの…。 (妖女の私が…) 「こんな悪霊を相手に敗北するなんて…」 彼女は僅少の妖力によって時空間停止の妖術使用を決意する。 (一か八か…) 金縛りの妖術を発動すると一時的に小面蜘蛛は身動きしなくなる。金縛りの妖術は相手の身動きを長時間封殺出来る妖術である。 「今度は…」 瞬身の妖術を発動…。即座に安全地帯へと移動したのである。小梅姫は瞬身の妖術の使用により廃城から無事脱出…。近辺の山道へと移動したのである。 (危機一髪だったわね…) 「一瞬食い殺されるかと…」 小梅姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に廃城から脱出出来たのである。 「脱出には成功したみたいね…」 妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。 (時空間停止の妖術は解除されたし…即刻戻らないと…) 東国の家屋敷へと戻ろうかと思いきや…。地面より数体の食人餓鬼が小梅姫の視界間近へと突発的に出現したのである。 「えっ!?今度は食人餓鬼!?」 最早小梅姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり本来ならば雑魚である複数の食人餓鬼ですらも攻略不可能である。 (本調子なら食人餓鬼なんて楽勝なのに…) 彼女にとって食人餓鬼程度は雑魚同然であるものの…。衰弱化した状態では非常に脅威である。 「きゃっ!」 大量の妖力を消耗した状態では食人餓鬼でさえも恐怖の対象であり小梅姫は一歩ずつ後退りする。 (私…食人餓鬼に捕食されるのね…) 食人餓鬼が彼女の視界間近へと殺到する寸前…。食人餓鬼は突発的に身動きしなくなる。 「えっ…」 (一体何が?) 彼等の足場を直視すれば白色の粘液を発見する。 「ひょっとして…」 彼等の背後には獲物である小梅姫を追撃する小面蜘蛛が急接近したのである。小面蜘蛛に畏怖した彼女は全身が膠着する。 「小面蜘蛛!?」 廃城からは危機一髪脱出したものの小面蜘蛛は彼女の妖力を目印に小梅姫の居場所を察知…。小梅姫の行方を見逃さなかったのである。小面蜘蛛は粘液によって捕獲した数体の食人餓鬼を捕食し始める。 (此奴…) 「仲間の食人餓鬼を食い殺すなんて…」 凄惨なる光景に小梅姫は恐怖したのである。最早自分自身も彼等と同様に捕食されるのかと思考すると自殺願望が芽生え始める。小面蜘蛛の鋭利なる脚部が小梅姫の胸部を貫通させる。 「ぐっ!」 心臓を貫通させられた直後…。彼女の胸部から大量の鮮血が流血し始める。流血により地面が赤色に染色したのである。 (私は今度こそ…小面蜘蛛に捕食されるのね…) 最早即死しても可笑しくない致命傷であるものの…。神経の麻痺によって苦痛すらも感じられなくなる。抵抗出来なくなった小梅姫は観念する。両目を瞑目したと同時に耳元から爆発音が響き渡る。 「えっ?」 (今度は何事かしら?) 恐る恐る両目を開眼すれば…。 (誰かしら?) 粉砕された小面蜘蛛の血肉が散乱した状態であり背後には焙烙火矢を装備した僧侶服の小柄の男性が横たわる小梅姫に近寄る。 「僧侶?」 「小梅姫…」 「貴方は…」 僧侶の正体とは父親の夜桜崇徳丸であり脆弱化した小梅姫にとって崇徳丸は救済の守護神同然である。 「ひょっとして父様なの…」 「大丈夫か?小梅姫…なっ!?」 小梅姫の胸部の外傷を直視すると身震いする。すると直後…。 「小梅姫…傷口が…」 小梅姫の腹部の外傷は妖力によって数秒間で治癒する。 「父様…私は大丈夫よ…外傷なら自力で治癒出来るから…」 「本当に大丈夫なのか?小梅姫…」 「私なら大丈夫よ…父様は心配性ね…」 (彼女は大丈夫そうだが…出血多量の影響で大分衰弱化した状態だな…) 小梅姫は肉体的にも精神的にも疲弊した様子である。 「父様…感謝するわね…私…もう少しで小面蜘蛛に食い殺されるかと…」 小梅姫は涙腺より涙が零れ落ちる。 「大丈夫だ…小梅姫…小梅姫が無事で何よりだ…」 「父様…」 すると小梅姫は恐る恐る…。 「如何して人間の父様が小面蜘蛛を簡単に仕留められたのよ?妖女の私がこんなにも苦戦した強敵なのに…」 「恐らく小面蜘蛛は妖力を使用しない方法によって退治出来る悪霊みたいだな…今回の相手は妖術を多用する妖女では最悪の天敵だろうよ…」 妖力を使用しない戦法こそが小面蜘蛛の弱点であると推測する。妖術を使用する妖女が相手では相性的にも最悪である反面…。武装した人間には滅法貧弱である。崇徳丸は彼女に麦飯を譲渡する。 「空腹だろ?」 「御免なさい…」 「小梅姫…一人で無茶するなよ…」 すると崇徳丸は笑顔で…。 「小梅姫は私の宝物だ♪悪霊なんかに殺されるなよ…」 「父様♪」 小梅姫は内心嬉しくなる。 「空腹だから食べろよ…」 小梅姫は麦飯を一瞬で頬張ったのである。 (相当空腹だったのか…) 麦飯を一瞬で頬張る小梅姫に崇徳丸は苦笑いする。小梅姫は極度の不安が解消したのか再活動を開始しなければと意気込み始める。 (こんな山道で長居し続ければ悪霊が村里全域に…) 「ん?小梅姫?」 「無数の霊力が国全体に蔓延したみたいなの…」 突如として莫大なる食人餓鬼の気配を瞬時に察知したのである。 「霊力だと?」 「恐らく食人餓鬼の仕業ね…」 「こんな短期間で国全体に蔓延するとは…」 「原因は不明なのよね…」 すると小梅姫は崇徳丸に依頼する。 「今回ばかりは父様の協力が必要なの…」 先程の戦闘によって彼女は余程自信を喪失したのである。 「勿論…私は小梅姫に協力するよ♪安心しろ♪」 「父様と一緒なら心強いわ♪」 二人は行動を開始する。強大なる無数の霊力の感じる東国へと急行したのである。 「えっ…」 「戦乱時代だな…」 東国は主戦場であり地面には赤色の鮮血…。散乱した臓器やら胃腸らしき肉塊が無数に確認出来る。先程遭遇した食人餓鬼の大群が爆発的に出現したらしく村人達に殺到しては村人達の人肉を咀嚼し始める。 「東国では一体何が…」 徘徊中である無数の食人餓鬼が移動中の小梅姫と崇徳丸に反応するなり…。二人に襲撃するものの小梅姫の火炎の妖術によって瞬殺される。地面には無数の焼死体が埋没する。 「浄化したわね…」 「小梅姫の妖術を肉眼で拝見したが…予想外に絶大だな…」 崇徳丸は小梅姫の摩訶不思議の妖術に驚愕したのである。小梅姫は只管村人達の遺体を捕食し続ける食人餓鬼の大群を相手に逆襲…。爆破の妖術により食人餓鬼を仕留めたのである。爆破の妖術で頭部を破壊された食人餓鬼は途端に身動きしなくなる。 「食人餓鬼が相手ならば…小梅姫の妖力は天下無敵だな…」 「天下無敵なんて大袈裟ね…」 (正直妖力の消耗で息苦しいのよね…) 彼女にとって通常の悪霊が相手ならば余裕であるものの…。先程の悪戦苦闘による妖力の消耗が影響したのか重苦しい深呼吸が目立ち始める。 「小梅姫?」 「何よ?」 「大丈夫か?先程から顔色が…」 崇徳丸は彼女の様子を心配する。 「別に…私なら大丈夫よ…」 「本当に大丈夫なのか?」 「私は大丈夫だよ…父様は極度の心配性なのね…」 城下町の中央区へと進行するものの生存者は誰一人として発見出来ない。 「無人地帯だわ…領民達は?」 「領民は根城に避難したみたいだな…最早東国は悪霊の巣窟だ…」 すると崇徳丸は彼女に助言する。 「妖力は非常に強力だが油断すれば食人餓鬼が相手でも苦戦するかも知れないからな…小梅姫も武器も装備するべきだ…」 「武器ですって?」 「私が武士団の駐屯地に案内する…」 崇徳丸は東国武士団の駐屯地へと案内したのである。 「廃屋だわ…」 「駐屯地も悪霊に襲撃されたからな…」 如何やら駐屯地は無人地帯であり駐屯地の守備隊は食人餓鬼の襲撃により撤退…。本拠地である都城へと移動したのである。 「鎮守府の守備隊は退却したのかしら?」 「今回の相手は悪霊の大群だからな…東国の武士達が屈強でも相手が大群では対抗出来ないよ…」 最早武器庫は警備が手薄状態であり無力の町民でも容易に潜入出来る。 「先程は私も武器庫で焙烙火矢を入手出来たからな…」 小梅姫は恐る恐る慎重に武器庫へと入室する。多種多様の刀剣やら弓矢は勿論…。火縄銃やら焙烙火矢が確認出来る。 「拳銃でも装備するか?此奴なら小梅姫でも扱えるよ…」 崇徳丸は比較的素人でも扱えそうな軽量の拳銃を小梅姫に手渡したのである。 「拳銃なんて物騒ね…」 小梅姫は武術が苦手であり拳銃の使用を拒否する。軽量の小刀を発見…。 「私は小刀を所持するわ…」 護身用に軽量の小刀を携帯したのである。 「小刀でも食人餓鬼なら仕留められるか…」 「駐屯地から脱出しましょう…父様…」 すると廊下から物音が響き渡る。 「ん?」 「物音だわ…一体何かしら?」 「物音は廊下からだな…」 (無数の霊力が一点に集中した状態だわ…今度は何が出現したのかしら?) 彼女は無数の霊力を瞬時に察知したのである。小梅姫と崇徳丸は警戒した四数で恐る恐る武器庫から脱出…。すると直後である。 「怪物!?」 (食人餓鬼とは別物だわ…此奴はひょっとして…) 小梅姫の視界間近に佇立する怪物とは無数の食人餓鬼が融合した人型の肉塊…。等身大の人間よりも一回り巨大であり廊下を牛歩する。すると小梅姫の背後より…。 「此奴は悪霊の百鬼食人餓鬼だな…」 「父様…厄介なのが出現したわね…」 体表の食人餓鬼の頭部が小梅姫と崇徳丸を睥睨したのである。 「私が万全の状態であれば食人餓鬼の集合体なんて楽勝に仕留められるでしょうけれども…」 すると百鬼食人餓鬼は全身の口先から高熱の熱風を放射し始める。小梅姫は咄嗟に妖力によって妖力の防壁を形成させたのである。無防備である崇徳丸にも防壁の形成によって守護する。 「父様…命拾いしたわね…」 「小梅姫…感謝する!」 (先程の同時結界で大半の妖力を消耗しちゃったのよね…) 百鬼食人餓鬼と交戦したとしても敗北は濃厚であると判断した小梅姫は崇徳丸に逃亡を合図したのである。 「父様!逃走しましょう…」 「逃走だと?」 小梅姫の様子を直視すると彼女は満身創痍の状態であると察知する。 (小梅姫…) 「承知した…」 小梅姫と崇徳丸は全力疾走により駐屯地から無事脱出したのである。
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