メガラニカ大事変 ( No.24 ) |
- 日時: 2021/08/17 09:02
- 名前: 月影桜花姫
- 第一話
開戦
世界暦五百二十二年五月十七日午前八時未明の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『アプセラス帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。戦後の疲弊した世界各国を牛耳れる超大国としての地位と資源を獲得したのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得したアプセラス帝国であるが…。アプセラス帝国の存在に反対する一部の反政府勢力と敗戦国の各残党勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名されアプセラス帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧したアプセラス帝国はメガラニカ自由区に宣戦布告…。翌日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。アプセラス帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦アスピドケロンにはアプセラス帝国国家元首である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。 「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」 「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国であるアプセラス帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」 ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦アスピドケロンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではアスピドケロン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。 「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」 「全軍を警戒態勢に移行させろ…」 「承知しました…」 ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。 「全軍…警戒態勢に移行せよ…」 すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦アスピドケロンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。 「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」 スーパーレーダーはアプセラス帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在アプセラス帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。 「何事だ?」 ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。 「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」 スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。 「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」 すると直後…。 「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」 四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。 「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」 ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。 「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」 各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年アプセラス帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。 「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」 「最先端の科学技術の結晶であるアプセラス帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」 ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。 「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」 総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。アプセラス帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。 「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」 メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。 「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」 ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。アプセラス帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。 「味方艦隊の圧倒的優勢です!」 旗艦アスピドケロンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。 「アプセラス帝国軍の圧勝は確実だな…」 「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」 乗組員達はアプセラス帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。 「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」 「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…アプセラス帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」 乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。 「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」 「狼狽えるな…」 ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。 「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛隊が圧倒的に不利ですよ…」 ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。 「時間だな…」 周囲の乗組員達はハッとした表情で…。 「えっ…何が時間なのですか!?」 一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。 「作戦を開始する…」 ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。 「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」 「はっ!」 周囲の者達はポカンとする。 「一体何を開始するのか?」 同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景にアプセラス帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。 「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」 「はっ!」 ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死にアプセラス帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦アスピドケロンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。 「大総統♪アプセラス帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」 副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。 「当然の結果だな…」 ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。 「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」 「承知しました…」 ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。 「スーパーレーダーが反応しました!」 特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。 「今度は何事だ!?」 ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。 「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」 「移動物体だと?敵機か?」 ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。 「此奴は…」 飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。 「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」 「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」 「戦闘用ドローンですと?」 ブラッドフォードは一息するなり…。 「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」 「承知しました…大総統…」 戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。 「大総統…敵軍のドローンです…」 「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」 ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦アスピドケロンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。 「なっ!?シールドでしょうか!?」 「シールドだと?」 「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」 「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」 電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年ではアプセラス帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。 「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」 ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区がアプセラス帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛隊にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方のアプセラス帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。 「艦長…上空より敵機が接近中です!」 対空パルスレーザーの弾幕がアプセラス帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。 「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」 「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」 本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。 「大昔の大戦だな…」 アプセラス帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。 「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」 特殊無線技士が報告する。 「即刻回避だ!」 ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦アスピドケロンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦アスピドケロンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。 「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」 メガラニカ防衛隊のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローンも艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。 「大総統…アプセラス帝国軍の劣勢です…」 形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦アスピドケロンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。 「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」 同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦アスピドケロンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。 「大総統!現状ではアプセラス帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」 撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。 「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」 実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。 「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」 ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。 「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」 特殊無線技士が報告する。 「敵機だと?」 数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦アスピドケロンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。 「ぐっ!」 艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。 「大総統!大丈夫ですか!?」 副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。 「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」 先程のドローンの攻撃により旗艦アスピドケロンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。 「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」 「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」 「であればダメージコントロールを急行せよ…」 乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。 (戦闘を続行し続ければアプセラス帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…) 味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。 「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」 ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始したアプセラス帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛隊のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦でアプセラス帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛隊はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。アプセラス帝国の権威が失墜したのである。
第二話
大艦巨砲主義
メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛隊はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力によりアプセラス帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。アプセラス帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。 「大総統…一週間の短期間でアプセラス帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛隊の猛反撃により占拠されました…アプセラス帝国軍は劣勢の状態です…」 「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」 ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。 「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区はアプセラス帝国以上に消耗した状態です!」 今現在のメガラニカ自由区とアプセラス帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛隊はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量のアプセラス帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛隊の快進撃によりアプセラス帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛隊は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。 「メガラニカ防衛隊は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来るチャンスですよ!」 するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。 「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」 「訓練中のホムンクルスですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」 ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前のアプセラス帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治のアプセラス帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来たのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。 「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」 ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。アプセラス帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。 「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」 近日ではアプセラス帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛隊に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続けるアプセラス帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。 「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」 開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。 「戦闘用ドローン…『ケルベロス』?」 「ケルベロスは…」 ケルベロスとはアプセラス帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。 「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛隊のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」 メガラニカ南方海戦でアプセラス帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦でアプセラス帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛隊のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。 「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」 二枚目の設計図を直視する。 「ん?此奴は…」 「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『ティタニア』です…」 「超砲撃型戦艦…ティタニア?」 正式名は超砲撃型戦艦ティタニアであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるがティタニアは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。 「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」 ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるが…。 「戦艦ティタニアは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…」 「電磁投射砲か…」 電磁投射砲は現在アプセラス帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。 「海軍開発部の大計画では戦艦ティタニアの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」 「エターナルメタルだと?」 エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。 「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも安価ですからね♪」 「であれば建造を急行するべきだな…」 直後である。 「大総統!緊急事態です!」 通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。 「緊急事態だと?何事だ?」 ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。 「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍に占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…部隊は玉砕したとの情報です…」 「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」 「残念ですが…」 ルーヴェルハルトは驚愕したのである。メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人ものアプセラス帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛隊の強襲で全滅したのである。 「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…アポロゾーン基地だな…」 アポロゾーン基地とは最南端に位置する離島…。アポロゾーン本島を防衛するアプセラス帝国軍守備隊の本拠地である。アプセラス帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。 「大総統…即刻アポロゾーン本島に援軍を派遣させますか?」 「援軍は不要だ…」 「えっ!?」 ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。 「本気ですか!?大総統!?」 「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」 「如何して援軍を派遣しないのですか!?アポロゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」 ブラッドフォードは再度無表情で返答する。 「アポロゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」 「陽動作戦ですと?」 「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…アポロゾーンに侵攻中のメガラニカ防衛隊を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」 アポロゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。アポロゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。 「特殊弾頭ミサイルですと!?アポロゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」 特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。 「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」 小国家だったアプセラス帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。 「敵味方諸共…殲滅するのですか?」 「最早多少の犠牲は止むを得ない…」 ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。 「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもアポロゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」 「承知しました…」 ルーヴェルハルトは不本意であるが承諾したのである。
第三話
攻防戦
五月二十七日早朝…。メガラニカ防衛隊の大艦隊がアプセラス帝国最終防衛区域アポロゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。アポロゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。 「一体何事だ!?」 「スーパーレーダーが反応したぞ!」 即座に立体映像のホログラムで確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。 「此奴はメガラニカ防衛隊の艦隊だな…アポロゾーンを攻略するみたいだ…」 「如何しましょう…総司令官…」 守備隊の陸軍総司令官が各員に指示したのである。 「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!アポロゾーンは徹底的に死守しろ!」 アポロゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありアポロゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。 「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」 「はっ!」 通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ防衛隊の大艦隊がアポロゾーンの防衛区域へと到達したのである。 「総司令官…メガラニカの大艦隊が防衛区域に到達しました…」 「防衛戦を開始するか…」 攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻もの魚雷艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。
|
|