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日時: 2026/07/29 20:17
名前: 黒狼武者 ID:eSd4Sxzo

>>1

第一話

隕石
太平洋の中央には小大陸〔エルピスコロニア〕と呼称される辺境の絶島が存在する。此処は自然が豊富であり大勢の原住民達が安住したのである。世界暦五千七百二十一年六月中旬の時期…。小大陸エルピスコロニアでの出来事である。島内の中心部に聳え立つ最高峰ギガントロックの頂上にて一人の青年が広大無辺の青空を眺望する。
『やっぱり此処は長閑だな…』
地上は大戦争によって世界各地の彼方此方が荒廃化したのである。世界全体は空前絶後の大混乱期であったが…。文明やら科学技術とは無縁のエルピスコロニアだけは平和だったのである。
『宇宙の彼方には何が存在するのかな?』
青年の名前は【ストレイダス】…。体格は男性としては比較的小柄であり頭髪が黒髪なのが特徴的である。年齢は二十九歳であるが…。常日頃から自由自在に広大無辺の大空を浮遊したいと夢見る。
『俺も鳥類みたいに大空を飛行したいな…』
ストレイダスは村落一番の力自慢であり力仕事のみなら彼に拮抗する人物は存在しない。上記の理由により次期村長候補に任命されるのだが彼自身は非常に大雑把であり面倒に感じる。
『北方地帯に戻らないと村長の野郎が口煩いからな…』
生真面目の村長とは性格が不一致であり落胆したのである。
「はぁ…」
ストレイダスが一息した直後…。
「ん?」
突如として頭上から轟音が響き渡る。
『轟音か?』
ストレイダスは恐る恐る上空を直視したのである。
「えっ…」
上空の光景に絶句…。脳内が白色化したのである。
『一体何が!?』
上空には三十センチメートルサイズの隕石が超高速で急接近…。対するストレイダスは目前の光景に絶句する。
『隕石なのか!?』
上空の物体が小型の隕石であると認識した直後…。小型の隕石はギガントロックの頂上へと落下したのである。小型隕石の爆発音は近辺の村落は勿論…。エルピスコロニア全域へと響き渡ったのである。
「うわっ!」
ストレイダスの現在地は小型隕石の落下地点から数メートル程度の近距離とされ…。爆風と衝撃波が彼を強襲したのである。ストレイダスは隕石の落下地点から十数メートル程度吹っ飛ばされ…。
「ぐっ!」
全身が地面に激突する。
「ぐっ…」
『畜生が…』
ストレイダスは地面の激突により全身を骨折したのである。
『身動き出来ないか…』
全身の苦痛により身動き出来なくなる。
「はぁ…」
すると目前の視界が黒化し始め…。
『俺は…こんな場所で死んじまうのか?』
次第に意識が遠退き始める。
『正直…もう少しだけ…』
ストレイダスは自身の最期を覚悟したのである。
『もう少しだけでも…長生きしたかったな…』
数秒間が経過…。ストレイダスの意識が消失したのである。

第二話

治癒
最高峰ギガントロックの頂上へと落下した小型の隕石はエルピスコロニア全域へと響き渡る。
「一体何が…」
「轟音は…頂上からだったよな?」
登山中の二人の村民達は畏怖するも頂上へと移動したのである。
「うわっ…」
「クレーターか…一体如何してこんな状態に?」
頂上の光景に驚愕する。頂上には直径二十メートル前後のクレーターが形作られ…。クレーターの中心部には三十センチメートルサイズの岩石が確認出来る。
「此奴は隕石なのか?」
「ん!?誰だ!?」
クレーターの近辺にて地面に横たわった状態の怪我人を発見する。
「怪我人だぞ!大丈夫か!?」
怪我人は小柄の成人男性だったのである。上半身は血塗れ…。全身の衣服はボロボロであり瀕死の状態だったのである。
「隕石で吹っ飛ばされたのか?」
「不運だったな…こんな状態では…」
生存は絶望的であり二人は瀕死の成人男性を気の毒に感じる。すると直後…。
「えっ…」
「現実なのか?」
成人男性は瀕死の状態であったが突如として全身の外傷が治癒し始める。外傷は数秒間で完治…。成人男性は目覚めたのである。
「うっ!俺は…死んじまったのか?此処は天国なのか?」
成人男性は記憶が曖昧なのか周囲をキョロキョロさせる。
「誰かと思いきや…あんたは力自慢のストレイダス!?」
「大丈夫なのかよ!?」
成人男性は誰であろう力自慢のストレイダスだったのである。
「えっ?大丈夫そうだが…」
ストレイダスは自身の全身を確認すると絶句し始める。
『衣服がボロボロだな…上着は血塗れだし…』
鮮血により白色の上着が赤化したのである。
「戻って入浴しないと…」
ストレイダスが歩行する直前…。
「ストレイダス?歩いて大丈夫なのか?」
「血塗れだし…」
二人の村民達はストレイダスを心配する。
「大丈夫だよ…外傷は無さそうだし手足はピンピンに動けるからさ…」
ストレイダスはピンピンした様子であり下山したのである。
「ストレイダス…本当に元気だな…」
「彼奴は不死身なのか?」
小柄の村民が恐る恐る…。
「先程のストレイダスの治癒力…異常だったよな?全身血塗れの状態だったのに…数秒間で治癒するなんて…」
すると大柄の村民も小声で発言する。
「ストレイダスは人一倍元気だけど…普通は失血死しても可笑しくないよ…彼奴は如何しちまったのやら…ストレイダスは本当に不死身だったのか?」
ストレイダスは幼少期から免疫力は人一倍根強く怪我も一日で治癒したのである。二人の村民達はストレイダスの様子に愕然とする。

第三話

次期村長候補
同日の夕方…。ストレイダスは自宅でゴロゴロする。
「はぁ…」
『今日は草臥れたぜ…隕石で吹っ飛ばされるなんて予想外だな…』
すると誰かがコンコンッと自宅のドアをノックしたのである。
「ん?こんな時間帯に誰だろう?」
ストレイダスは玄関へと移動するとドアを開放させる。
「ストレイダスよ…体調は如何なのだ?」
「えっ…村長!?」
訪問者は村長のウィルフィールドでありストレイダスは驚愕する。
「村民達の噂話では隕石で吹っ飛ばされたとか…其方は大丈夫なのか?」
ウィルフィールドはストレイダスの状態を心配したのである。
「俺なら大丈夫ですよ♪俺は肉体だけなら人一倍頑丈なので石ころなんかで死にませんよ!村長は心配性ですね♪」
ストレイダスは自負する。
「ストレイダスが元気なのは周知の事実だが…無理するなよ…何たって其方は次期村長候補なのだからな…」
「えっ?はぁ…」
ストレイダスは次期村長候補の発言に苦笑いしたのである。
『やっぱり村長の口癖は面倒臭いな…次期村長なんて御免だよ…』
彼にとってウィルフィールドの口癖はストレスに感じる。するとウィルフィールドは小声で…。
「偶然にも…天空世界から隕石が落下するとは…恐らく今後…世界各地で天変地異が発生するかも知れないな…」
「天変地異ですって?」
ストレイダスはウィルフィールドの小声に反応したのである。
「近頃…感じるのだよ…」
時たまであるが…。ウィルフィールドは未来を予知出来る。契機としては幼少期の海水浴で事故に遭遇…。海中に溺れ掛けるも両親に救助されたのである。事故から数日後…。未来の出来事を予見出来る能力が発現したのである。
「村長?一体…世界では何が発生するのですか?」
ストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「非常に曖昧かも知れないが…世界各地に怪物らしき巨体が暴れ回り…各国は停戦するだろう…」
「えっ…停戦ですって!?」
今現在世界各国は経済の不景気により戦争中である。世界各地の彼方此方が戦争の影響で荒廃化…。戦争による被害は拡大化する。
「怪物を相手に奮闘中の戦士らしき存在も認識出来たのだ…ひょっとして世界の救世主だろうか?」
「怪物と…戦士ですって?」
ウィルフィールドの表現は非常に曖昧であり現実味は皆無である。
『本当に曖昧だな…怪物とか戦士って何だろう?』
一方のストレイダスは内心珍粉漢粉であり苦笑いする。
「少なくとも世界全体で異変が発生するのは事実だろう…」
数秒間が経過するとウィルフィールドは自宅へと戻ったのである。
「世界全体で天変地異なんて…」
『本当に発生するのかな?巨体の怪物とか…世界の救世主とか…古代の神話みたいな内容だよな…』
先程のウィルフィールドの発言は非現実的であり大昔の神話みたいに感じられる。

第四話

停戦
隕石事故から半年後の十二月中旬の時期である。世界各国は依然として戦争中であったが…。十二月が経過した時期から海中より正体不明の移動物体の目撃情報が世界各地に伝播したのである。同年の十二月十三日…。とある大国の大型潜水艦が正体不明の巨大移動物体と衝突する大事故が発生したのである。大型潜水艦は沈没こそ免れたが…。艦体は大破したのである。正体不明の巨大移動物体による大型潜水艦の衝突事故から二日後…。今度は別の国軍の艦隊が作戦行動中に正体不明の巨大移動物体と遭遇する。魚類らしき背鰭と尾鰭が確認出来…。正体不明の巨大移動物体は全長数十メートル規模の魚類であると判明したのである。艦隊は回避行動を開始するのだが…。一隻のミサイル艦が魚類らしき移動物体と衝突したのである。巨大移動物体と衝突した影響によりミサイル艦は沈没…。艦隊は即座に対潜戦闘を開始するのだが巨大移動物体は想像以上に高速であり行方を見失ったのである。以後も各海域で各種船舶が魚類らしき巨大移動物体と遭遇…。場合によっては衝突する事故が多発したのである。一連の超常現象から月日が経過…。世界暦五千七百二十二年五月七日未明の出来事である。午前八時半…。
「各国の停戦って本当なのかよ!?」
「えっ…長期化した戦闘がこんなにもピタッと停戦するなんて…」
各国間の停戦の情報は辺境のエルピスコロニア全域にも知れ渡ったのである。エルピスコロニアは各国の停戦の動向により各村落が騒然とする。
「開戦から七年以上経過したけれど…各国が停戦するとは何が契機で?」
各村落は突然の朗報により騒然としたものの…。大勢の村民達は各国の停戦にホッとしたのである。すると一人の村民が恐る恐る…。
「各国が停戦した理由だけど…如何やら規格外の怪物が戦場に出現したらしいぞ…」
「えっ!?規格外の怪物だって!?」
周囲の者達は怪物の一言に反応する。
「世界各地の戦場で巨体の怪物が何体も出現したらしいぞ…」
各国が戦争中に規格外の巨大不明生物の出現で各国軍の損害が増大化したのである。対する各国軍も通常兵器で巨大不明生物に応戦するのだが…。巨大不明生物には各国軍の如何なる兵器も通用しなかったのである。各国の首脳陣は巨大不明生物の出現により停戦を決行…。各国軍は巨大不明生物の排除を優先したのである。
「非現実的だな…怪物の出現なんて本当なのかよ?」
「怪物の出現で終戦なんて皮肉だよな…」
「本当に怪物が出現するなんて…村落に出現しないか心配だよ…」
「やっぱりウィルフィールド村長の未来予知は本当だったのか…」
大半の者達がウィルフィールドの予言を単なる妄言程度の認識であったが…。今回の超常現象から怪物の存在を確信したのである。
『怪物か…やっぱり村長の予言は本当だったな…』
村道を通り掛かったストレイダスは村民達の噂話を盗み聞きする。
『村長の予言では地球上に救世主が出現するらしいけれど…一体誰なのかな?』
ストレイダスは救世主の存在が何者なのか気になったのである。

第五話

恐竜型
全世界各国の停戦表明から五日後の深夜帯…。エルピスコロニア北方地帯での出来事である。村民達はスヤスヤと睡眠中だったのだが…。突如として北方の海岸から爆発音と猛獣らしき咆哮が北方地帯全域に響き渡ったのである。
「うわっ!」
一方のストレイダスは自宅の寝室にて熟睡中であったが…。突然の爆発音と猛獣らしき轟音により飛び起きたのである。
『一体何が!?』
今度は大勢の村民達の悲鳴が響き渡る。気になったストレイダスは恐る恐る外部へと移動したのである。大勢の村民達が村道を逃走…。反対方向から弓矢を装備した義勇兵達が総動員で海岸へと急行中だったのである。
「えっ…」
ストレイダスは外部の光景に愕然とする。
『前代未聞の光景だな…』
ストレイダスは村道へと移動…。義勇兵達に追尾したのである。移動中…。再度爆発音と猛獣らしき咆哮が響き渡る。
『咆哮だ…海岸には何が出撃したのかな?』
義勇兵達を追尾してより数分後…。ストレイダスは海岸へと到達したのである。
「なっ!?」
ストレイダスは海岸の光景に驚愕…。現実の出来事なのか理解出来なくなる。
『此奴は…恐竜なのか!?』
海岸の砂浜には体高十二メートル前後の恐竜らしき怪物が直立…。全身が凸凹の岩石らしき皮膚が特徴的である。
「狼狽えるな!此処で怪物を仕留めろ!」
義勇兵の部隊長が攻撃を指示…。数十本もの毒矢が発射されたのである。多数の毒矢が怪物の皮膚に命中するのだが…。
「畜生…ビクともしないな…」
怪物の皮膚は岩石みたいに硬質であり毒矢は非力だったのである。
「部隊長殿…駄目です…」
「こんな装備では…」
周囲の義勇兵達は毒矢が通用しない怪物に畏怖し始め…。絶望する。現実問題としてエルピスコロニアは外界の科学技術とは無縁の排他的社会である。当然として科学技術は未発達であり外界では主流とされる近代的装備は皆無…。武器は時代錯誤の棍棒やら弓矢が関の山だったのである。
「駄目だ!此処で怪物を仕留めなければ村落が壊滅するのだぞ!」
部隊長は怒号するのだが…。
「怪物が!?」
直後である。恐竜型の怪物が口部を開口し始め…。口内から高熱の火球を放射したのである。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
火球は義勇兵達に直撃…。彼等の肉片が一瞬で炭化したのである。海岸の砂浜には炭化した義勇兵達の肉片が彼方此方に散乱する。
「えっ…」
ストレイダスは彼等の惨劇に恐怖したのである。一方恐竜型の怪物がストレイダスの方向を直視し始め…。ギロリと睥睨したのである。
「ひっ!」
ストレイダスは極度の恐怖心により身動き出来なくなる。
『畜生…逃げたいのに逃げられない…』
すると恐竜型の怪物は再度口部を開口…。ストレイダスを標的に口内から高熱の火球を放射したのである。
「はぁ…」
『今日が…俺の命日か…』
ストレイダスは自身の最期を覚悟する。

第六話

協力者
ストレイダスは火球に直撃…。意識が消失したのである。火球が直撃してより時間が経過…。
「ん?えっ…此処は?」
ストレイダスはとある密室にて目覚める。
『俺は恐竜みたいな怪物に遭遇してから殺されて…此処は死後の世界なのか?』
ストレイダスは周囲をキョロキョロさせる。すると目前のドアが開放され…。背広姿の男性が入室する。
「目覚められましたか…ストレイダス様…」
背広姿の男性は頭髪が金髪…。瞳孔は碧眼であり大柄の白人男性だったのである。
「えっ…はぁ…」
ストレイダスは状況が理解出来ず返答に困惑する。
『誰だろう?天使なのか?姿形だけなら人間みたいだな…』
目前の白人男性が天使なのか思考したのである。
「私の名前は【フィルドルク】です♪突然の出来事なので貴方が理解出来ないのは当然でしょう♪」
フィルドルクと名乗る白人男性は満面の笑顔で発言する。一方のストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「俺は怪物に殺されて…此処は死後の世界の天国ですか?貴方は天使ですか?」
フィルドルクはストレイダスの問い掛けにクスクスと微笑し始める。
「こんなにも連続的に超自然的現象と遭遇すれば混乱するでしょうね♪此処は潜水艇の内部ですよ♪天国とは無縁の世界です♪」
「潜水艇の…内部?」
「貴方は正真正銘完全なる生者なのですから♪」
「えっ…俺が…生者ですって!?」
『俺は怪物の火球で吹っ飛ばされたのに…命拾い出来たのか!?』
ストレイダスは自身が生者である事実に驚愕し始め…。再度混乱したのである。
「貴方は地上の怪物と遭遇してから…」
ストレイダスは先程の恐竜型の怪物に攻撃され…。海面上へと吹っ飛ばされたのである。一方のフィルドルクは潜水艇で航行中…。暗闇の海中にてストレイダスを発見したのである。
「俺は貴方に救助されたのですね…感謝します…」
ストレイダスは命拾い出来…。フィルドルクに感謝したのである。
「私の正体は民間の宇宙開発企業の社長とでも♪当然として貴方の協力者なのは断言出来ますが♪」
「えっ…宇宙?開発企業の…社長?」
『俺の協力者だって?失礼かも知れないけれど…』
ストレイダスはフィルドルクに警戒する。
『正直胡散臭い雰囲気だな…』
フィルドルクは見ず知らずの人物であり内心胡散臭いと感じる。
「貴方が俺を此処に移送したのですか?」
「無論ですね♪」
フィルドルクはストレイダスの問い掛けに満面の笑顔で返答する。
「貴方は唯一無二の地球の救世主なのですから♪ストレイダス様が死去されたら一体誰が地球を守護されるのでしょうか?」
「俺が…地球の救世主ですって?」
「貴方は去年の六月頃…隕石で大怪我されたでしょう?私は後日…隕石の落下地点で落下した隕石と…貴方の血液を入手したのですよ♪」
去年の六月…。隕石の落下を察知したフィルドルクは単独調査を目的にエルピスコロニアへと上陸したのである。最高峰のギガントロック頂上にて隕石とストレイダスの血液を入手…。独自で隕石の詳細とストレイダスの血液を調査したのである。
「調査の結果…世紀の大発見ですよ♪人類の歴史が変化するでしょうね♪」
フィルドルクは大喜びする。
「えっ…はぁ…」
ストレイダスは珍粉漢粉であり再度苦笑いしたのである。
「ギガントロックに落下した隕石はペストロと命名される深宇宙の特殊性物質なのですよ♪」
「ペストロ?」
ストレイダスは専門用語に困惑する。
「ペストロは惑星の爆発によって発生する物質なのですよ♪恐らく辺境の宙域で惑星が爆発したのでしょう…」
特定の惑星の爆発によってペストロと呼称される特殊性の物質が発生…。隕石として地球上に落下したのである。
「ですがペストロって物質と落下地点の血液が如何したのですか?」
ストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「隕石の落下地点の血液を調査した結果…ペストロの物質が検出されたのです…今現在のストレイダス様の血液と一致したのですよ…」
フィルドルクはストレイダスの身体髪膚を検査した結果…。ストレイダスの血液がギガントロックで発見した血液と一致したのである。
「えっ…」
ストレイダスは絶句する。
「今現在の貴方の肉体は常人とは比較出来ない領域へと進化したのです…」
ストレイダスは隕石の影響から全身がペストロの細胞へと変異したのである。
「えっ…進化?」
「貴方は隕石の影響により…細胞レベルで変異したのでしょう…」
ストレイダスは恐る恐る全身の皮膚に接触し始める。皮膚に接触すると筋肉が金属類みたいに硬質だったのである。
「実際ストレイダス様は怪物に攻撃されても死にませんでした…貴方の生命力が超越的だと証明されたのです♪」
フィルドルクは満面の笑顔で銀色の密着性の全身スーツ…。携帯型の電子機器を手渡したのである。
「全身タイツと…小箱みたいな小道具ですね…一体何でしょうか?」
エルピスコロニアでは文明社会の電子機器が出回らずストレイダスは携帯型の電子機器に興味深くなる。
「本日より貴方はペストロの超人…【ペストロマン】なのです♪」
フィルドルクはストレイダスをペストロマンと命名する。
「ペストロマン!?」
「今現在の貴方であれば先程の怪物と互角以上に接戦出来るでしょう♪貴方は地球上で最強の戦士なのですから♪」
ストレイダスはフィルドルクの発言に動揺し始める。
「フィルドルクさん!無茶ですよ!先程の恐竜みたいな怪物に…真正面から接戦なんて正気ですか!?」
「ストレイダス様は心配性ですね♪」
対するフィルドルクは動揺し続けるストレイダスに断言する。
「心配しなくてもストレイダス様のデータを計算した結果…今現在の貴方はペストロの効果によって常人の三百人分のパワーは発揮出来ましょう♪」
「三百人分って…」
『大袈裟だし…胡散臭いな…』
フィルドルクの発言が信用出来なかったのである。
「先程貴方に手渡した必須アイテムですが…一つ目はペストロマンが着用するので〔ペストロスーツ〕とでも命名しましょうか♪」
ペストロスーツは宇宙で発見された特殊繊維で製造…。密着性の全身スーツである。本来は宇宙空間での活用を目的に製造された代物とされ…。太陽型の恒星内部でも活動出来るとされる。
「二つ目のアイテムは怪物を発見するのに必須の〔ハイパーセンサー〕です♪」
ハイパーセンサーとは近年発生した巨大未確認不明生物の出現に対応する目的で開発された代物である。地球上であれば巨大未確認不明生物があらゆる場所に出現しても生体反応を正確にキャッチ出来…。瞬時に出現地点を特定出来る。
「当然としてペストロスーツとハイパーセンサーは無料で提供しますからね♪」
すると直後…。ハイパーセンサーの中心部のレンズが点滅したのである。
「うわっ!中心の硝子が点滅した!?」
ストレイダスは突然のハイパーセンサーの点滅に驚愕する。
「如何やらハイパーセンサーが怪物の生体の居場所をキャッチしたみたいですね♪」
「一体如何すれば…」
ストレイダスは困惑したのである。
「貴方が出動する以外に選択肢は存在しません…早速ストレイダス様は怪物を退治するべきかと…」
フィルドルクは携帯型のホログラム装置を作動させる。
「えっ…一体何が!?」
ストレイダスはホログラム装置に反応したのである。するとホログラム装置の上部にて立体化された恐竜型の怪物が映写される。
「怪物だ…」
恐竜型の怪物は村里を襲撃…。大勢の村民達が逃亡する光景がホログラム装置から鮮明に確認出来る。
「ストレイダス様…此処で長居し続ければ村落の被害が拡大する一方ですよ…」
ストレイダスは両目を瞑目し始め…。沈黙したのである。
『一か八かだな…』
一息する。
「承知しました…俺は…怪物を退治しますよ…」
ストレイダスは決意したのである。
「ストレイダス様♪決断されたのですね♪」
フィルドルクはストレイダスの決意に大喜びする。一方のストレイダスはペストロスーツを凝視し続ける。
『神話の…英雄みたいな衣装だけど…』
ペストロスーツの着用には抵抗を感じるのだが…。
『止むを得ないな…』
ストレイダスはペストロスーツを着用したのである。数分後…。
「少しだけチクチクしますが…やっぱり動き易いですね…」
ペストロスーツは全身にフィット…。全体的に動き易いと感じる。
「ですがやっぱりストレイダス様は屈強の体格ですね…」
ストレイダスは全体的に筋肉質であり余計に屈強さが際立ったのである。
「実際俺は村里では一番の力自慢ですからね…」
「であれば怪物相手でも大丈夫でしょう♪」
ストレイダスは恐る恐る…。
「早速此処から脱出したいのですが…一体如何すれば?」
「心配しなくても大丈夫ですよ♪ストレイダス様♪」
フィルドルクはストレイダスをとある密室へと案内したのである。
「床下の装置は…何ですか?」
床下には円形の装置が確認出来る。
「床下の装置は最新型のテレポート装置ですよ♪円内であればあらゆる物体を目的地にワープさせられます♪」
密室の装置はオーバーテクノロジーによって開発されたテレポート装置である。円形の内部に特定の物体を設置…。目的地を設定すると数秒間で物体をワープさせられる。

第七話

開戦
ストレイダスはテレポート装置によって海岸の砂浜へとワープする。
『此処は海岸の砂浜だな…』
先程の出来事を想起…。
『フィルドルクさんもだけど…』
先程の数多くの未来的道具に愕然とする。
『やっぱり外界の文明レベルは桁違いだな…』
すると直後…。頭部がズキズキする。
「うっ…」
『何だろう?遠方から気配を感じる…』
何故なのかは不明だが…。村落から気配を察知出来たのである。
『ひょっとするとペストロって隕石の影響なのかな?』
ストレイダスは自身の肉体の異変を自覚し始める。
『先程の怪物…仕留められるのかな?』
正直不安であったが…。村落へと急行したのである。移動中…。爆発音やら大勢の村民達の悲鳴が響き渡る。
『物凄い騒音だ…やっぱり怪物は村落に進攻したみたいだな…』
移動してより数分後…。
「えっ…」
北方地帯の彼方此方が火炎の地獄であり各家屋が炎上したのである。
『北方地帯が…』
ストレイダスは非日常的光景に絶句…。真夜中の深夜帯なのに火災の影響で北方地帯全域が赤色に染色する。
『怪物を発見し次第仕留めないと…』
すると近辺の山奥より…。怪物の咆哮が響き渡る。
『怪物か…』
ストレイダスは山奥へと急行する。急行してより数分後…。山道にて先程の恐竜型の怪物を発見したのである。
「怪物だ!」
一方の恐竜型の怪物は反応し始め…。背後のストレイダスを凝視したのである。怪物は殺気立った形相でギロリと睥睨する。
「うっ…」
『こんな怪物…本当に俺だけで仕留められるのか?』
ストレイダスは恐怖…。全身がプルプルと身震いしたのである。すると携帯式のハイパーセンサーがピピッと作動し始める。
「ん?ハイパーセンサーか?」
恐る恐るハイパーセンサーを起動…。
「何だろう?」
すると画面より怪物の名称と危険度が表示されたのである。
「【ギガントサウルス】?危険度は…中度?」
恐竜型の怪物は高熱恐竜ギガントサウルスと表示され…。危険度は中度と表示されたのである。
『怪物はギガントサウルスって名前なのか…』

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桜花姫 ( No.25 )
日時: 2021/08/17 09:38
名前: 月影桜花姫

第二部

第一話

斬首

世界樹の霊魂巨神木との死闘から半年後の天地歴四千二十年十二月中旬…。太平神国に安寧秩序が到来したものの近頃東国の中心街では何者かによって頭首を斬首される連続殺人事件が多発したのである。殺人事件の発生に町民達は畏怖する。真夜中に二人の鎮守府常備軍の邏卒が東国の中心街を夜番したのである。
「折角平穏が戻ったのに…殺人事件が三件も連続的に発生するなんて物騒だな…」
「恐らく匪賊の仕業だろうが…斬首するなんて随分悪質だよな…」
殺害された被害者達は三人とも頭首を斬首された状態であり翌朝には斬首された頭部と遺体が事件現場で発見される。すると小柄の邏卒がブルブルと寒気を感じる。
「こんな真夜中に人殺しなんかと出くわしたくないぜ…勘弁しろよな…」
「東国の武士団である俺達が人殺しに畏怖して如何する?こんな小事件で畏怖しちまったら俺達は世間様の笑い者だぜ…」
「今回も月影桜花姫様の出番だよな…彼女だったら百人力?千人力だろうし…」
邏卒が口走った月影桜花姫の一言に大柄の邏卒が苛立ち始める。
「桜花姫…桜花姫って…毎回不寝番の桜花姫に頼りっ放しだと東国の武士団は不必要だって村人達から造反されちまうよ!好い加減武士団の上役達も内部を改革させないと形骸化しちまうぞ…」
近年では不寝番の最上級妖女…。月影桜花姫の悪霊征伐により東国武士団の権威が失墜したのである。東国武士団の形骸化と他力本願が問題視され武士団内部からも改革派が出現…。武士団全体の再構築が公言されたのである。
「相手が匪賊だけなら俺達でも対処出来るかも知れないが…神出鬼没の悪霊なんて俺達では頑張っても如何にも出来ないだろ…」
「相手が悪霊だったらな…」
彼等が雑談中…。
「ん?」
東国と北国に国境に直結する両国橋より番傘を所持した赤色の着物姿の女性がポツンと佇立した様子であり天空の満月を眺望する。
「一体誰だろう?」
「こんな真夜中に女人が一人で何を…」
彼等は恐る恐る両国橋へと移動するなり…。番傘の女性の背後に近寄ったのである。女性は小柄の背丈であるが非常に美的の雰囲気であり頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。
「真夜中だぞ…近頃は斬首事件で物騒だしこんな真夜中にあんたみたいな小町娘が一人で出歩くのは危険だぜ!即刻家屋敷に戻りやがれ!」
大柄の邏卒は強気の態度で女性に命令する。大柄の邏卒は強気であったが女性は無反応であり見向きすらしなかったのである。
「此奴…」
(畜生が…無視しやがって!)
大柄の邏卒は女性の態度に苛立ったのかピリピリする。すると小柄の邏卒が恐る恐る…。
「失礼なのですが…貴女様みたいな美人さんがこんな真夜中に一人で出歩かれたら人攫いに遭遇するかも知れませんし…即刻家屋敷に戻られませんか?」
小柄の邏卒が物静かに発言するも女性は反応しない。
「此奴…聾者っぽいな…」
「彼女は雛人形みたいだな…私達の問い掛けには反応しないし…」
(不吉だな…)
ゾッとした小柄の邏卒は女性の雰囲気に畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
「貴様…こんな小町娘に畏怖するなんて♪余程の小心者だな♪」
大柄の邏卒は女性の背後へと移動するなり…。
「外見だけなら可愛らしい雰囲気だな♪素顔は別嬪かな?」
小柄の邏卒はビクビクした様子で大柄の邏卒に制止する。
「女人に手出しするなよ!任務は如何する!?」
制止する小柄の邏卒に大柄の邏卒は強気で反論したのである。
「任務なんて後回しだよ♪後回し♪」
「後回しって…」
大柄の邏卒の無責任さに呆れ果てる。
「真夜中だし…人目は貴様だけだからな♪」
大柄の邏卒はムラムラした様子で赤面するなり…。
「小町娘の姉ちゃんよ♪俺と一緒に夜遊びしないか?」
小柄の邏卒は膠着したのである。
(一体如何すれば…)
困惑した直後…。女性が背後を直視したのである。
「えっ?」
女性は半透明の血紅色の瞳孔であり無表情で大柄の邏卒を凝視する。
「素顔も別嬪だな♪」
大柄の邏卒が微笑した直後…。大柄の邏卒の喉元から血液が流れ出る。
「えっ?流血だと?」
大柄の邏卒は恐る恐る喉元に接触する。
「如何して流血した?」
すると直後…。
「えっ?」
大柄の邏卒の頭首がポロッと橋板に落下したのである。
「ひっ!」
(一体何が!?)
小柄の邏卒は極度の恐怖心により恐る恐る後退り…。一目散に逃走したのである。翌朝…。東国と北国の国境に直結する両国橋にて斬首された大柄の邏卒の遺体が発見される。当日の真昼…。最上級妖女の月影桜花姫は久方振りに東国の三蔵郎の寺院へと訪問したのである。
「三蔵郎様♪」
「桜花姫様でしたか♪久方振りですな♪本日は如何されましたか?」
三蔵郎は久方振りの桜花姫の訪問に大喜びする。
「勿論暇潰しよ♪」
「承知しました♪折角ですし昼食でも如何でしょうか?」
「昼食ですって♪空腹だから頂戴するわね♪」
三蔵郎は桜花姫に客室へと案内したのである。
「早速食事を用意しますので…」
三蔵郎は客室から退室する。
「霊魂巨神木の事件は無事に解決したけれど…悪霊が出現しないと面白くないわね…」
半年前に発生した霊魂巨神木の事件は無事に解決したが…。
「毎日が退屈だわ…」
平和が到来すると非常に退屈なのか普通の日常生活が憂鬱に感じられる。
「今後如何しましょう…」
すると三蔵郎が恐る恐る客室へと戻ったのである。
「桜花姫♪」
「三蔵郎様…食事は何かしら?」
「本日の昼食は天丼ですよ♪」
三蔵郎が用意した食事は美味しそうな天丼であり桜花姫は頬張りたくなる。
「天丼なのね♪美味しそうだわ♪」
海老天を頬張る直前…。何者かが寺院の客室へと乱入したのである。
「失礼します!」
突然の出来事に桜花姫と三蔵郎は驚愕する。
「きゃっ!」
「うわっ!」
「突然何事よ!?」
客室へと乱入した人物とは小柄の邏卒である。
「誰かと思いきや…鎮守府の駐在員さんでしょうか?」
「如何して鎮守府の駐在員さんが三蔵郎様の寺院なんかに?」
小柄の邏卒は桜花姫を直視するなり…。
「ひっ!悪霊!?」
「なっ!」
邏卒の悪霊発言に桜花姫はムッとする。
「失礼しちゃうわね!地上界の女神様である私に悪霊ですって!」
失言した邏卒を睥睨するなり…。
「命知らずのあんたは招き猫に変化しなさい♪」
すると小柄の邏卒は桜花姫の変化の妖術によって招き猫に変化させられる。
「えっ!?駐在員さんが招き猫に!?」
三蔵郎は一瞬で招き猫に変化した邏卒を直視すると驚愕したのである。
「私の天道眼は変化の妖術で多種多様の物体を別物に変化させられるのよ♪悪霊は勿論…人間だって無条件に変化させられるからね♪」
すると三蔵郎は恐る恐る桜花姫に…。
「ですが桜花姫様…遣り過ぎでは?彼を元通りには戻せないのでしょうか?」
「勿論戻せるわよ♪」
変化の妖術を解除…。妖術で招き猫に変化させられた邏卒は元通りの人間の姿形に戻ったのである。
「元通りに戻れた…」
小柄の邏卒はホッとする。
「反省しなさいね♪」
桜花姫は笑顔で発言したのである。すると邏卒はビクビクした様子で恐る恐る…。
「失礼しました…桜花姫様…」
桜花姫に謝罪したのである。
「気にしないで♪金輪際地上界の女神様である私に悪霊なんて失言したら今度こそ桜餅に変化させてあんたを食い殺しちゃうからね♪」
邏卒は勿論…。
(桜花姫様…)
三蔵郎も苦笑いする。
「ですが突然如何されたのですか?重役である東国武士団の駐在員さんがこんな寺院に訪問されるなんて…事件でも発生したのでしょうか?」
「昨夜の出来事なのですが…」
邏卒は昨夜の出来事は勿論…。昨今に頻発した連続斬首事件を洗い浚い告白したのである。
「真夜中の連続斬首事件ですか…一大事ですね…」
「昨夜に遭遇した小町娘によって私の仲間が殺されましたからね…」
(小町娘?)
小町娘の一言に桜花姫が反応する。
「駐在員さんの仲間は小町娘に殺されたの?」
桜花姫が質問すると邏卒は恐る恐る…。
「彼女は妖術らしき摩訶不思議の効力で…私の仲間の頭首を斬首されたのです…被害者達は全員共通して頭首を斬撃された状態でしたからね…」
「ひょっとして妖女の仕業かしら?」
「妖女ですと?」
三蔵郎と邏卒は桜花姫の妖女の一言に反応したのである。
「真犯人が妖女なのかは現段階では断定は出来ないけれど…彼女の特徴とかは?」
桜花姫の質問に邏卒は恐る恐る返答する。
「私が遭遇した小町娘の特徴ですか…特徴であれば赤色の着物姿でしたね…頭髪には寒椿の髪装飾…右手には番傘でした…」
「赤色の着物姿…寒椿の髪装飾…番傘ね…」
桜花姫は一瞬沈黙したのである。
「桜花姫様…如何されましたか?」
「ひょっとすると今回の連続斬首事件も…悪霊の仕業かも知れないわ…」
「悪霊ですと!?」
三蔵郎と邏卒は悪霊の一言に反応する。
「ひょっとすると【椿女郎】って名前の小町娘の悪霊の仕業よ…」
「椿女郎ですと?椿女郎とは一体何者なのでしょうか?」
「椿女郎はね…」
椿女郎とは戦乱時代に極悪非道の荒武者によって頭部を斬首された村娘の亡霊である。外見のみなら容姿端麗の小町娘であるが…。霊力は非常に強力であり彼女の瞳孔を直視した人間は彼女の霊力により頭首を斬首される。今現在でも成仏出来ずに各地を徘徊しては遭遇した人間の頭首を自身の霊能力で斬首したのである。
「戦乱時代に斬首された村娘の悪霊でしたか…非常に気の毒ですね…」
「椿女郎の瞳孔を直視すれば彼女の霊能力によって頭首を斬首されるわ…」
「私が彼女に斬首されなかったのは…」
「あんたが斬首されなかったのは幸運にも彼女の瞳孔を直視しなかったからよ…」
命拾いした邏卒であるが…。
「ですが正直…私も彼女の素顔を拝見したかったですよ♪彼女は別嬪っぽかったし…」
「駐在員さんが死にたくなったら彼女の素顔を直視しなさいよ♪」
桜花姫は笑顔で発言する。
「桜花姫様は意地悪ですね♪」
談笑した桜花姫と邏卒であるが桜花姫は邏卒に質問したのである。
「如何してあんたは初対面の私を悪霊と勘違いしたのよ?」
邏卒は苦笑いするなり…。
「椿女郎と命名される悪霊が奇遇にも桜花姫様と姿形が一致しましてね…桜花姫様が一瞬悪霊かと勘違いしちゃったのですよ♪」
「桜花姫様は普段から赤色の着物姿ですからね♪」
「三蔵郎様も…失礼しちゃうわね…」
三蔵郎に揶揄された桜花姫は表情が赤面する。
「勿論桜花姫様は別嬪ですよ♪」
「勿論ですとも♪」
「私が別嬪なんて三蔵郎様も駐在員さんも大袈裟ね♪」
桜花姫は内心大喜びしたのである。
「椿女郎は即刻仕留めないと温厚篤実の女神様である私が悪霊と勘違いされちゃうからね!傍迷惑だわ…」
「桜花姫様の風評被害は勿論ですが…今回の問題を放置し続ければ大勢の町民達が斬首されますからね!」
三蔵郎は桜花姫を凝視するなり…。
「桜花姫様…即刻悪霊の椿女郎を征伐しなくては…」
「本来なら即刻征伐したいのだけれど…生憎椿女郎が出現するのは真夜中だけなのよね…」
椿女郎が出現するのは真夜中のみであり日中では出現しない。桜花姫は邏卒に指示する。
「駐在員さんは武士団の役人達に今夜の夜番活動を中止させなさい…勿論東国の町民達には夜間の外出を厳禁させてね♪」
「承知しました…私は失礼しますね…」
承諾した邏卒は外出したのである。
「ですが今回の悪霊事件も非常に厄介そうですね…」
「厄介かしら?悪霊退治屋の私にとっては好都合だけれどね♪何よりも悪霊征伐なんて久方振りだし♪」
久方振りの悪霊出現に桜花姫は大喜びする。
「ですが奇妙ですね…」
三蔵郎の表情が険悪化したのである。
「何が奇妙なの?三蔵郎様?」
「霊魂巨神木の悪霊の集合体を桜花姫様が成仏させたのに…今回は女人の悪霊が出現しました…」
半年前に霊魂巨神木に憑霊した悪霊の集合体は桜花姫の神通力によって成仏されたが…。近頃は各地に悪霊が再出現し始めたのである。少数であるが悪霊の再出現に三蔵郎は極度の胸騒ぎを感じる。
「桜花姫様…私は極度の胸騒ぎを感じるのです…」
「胸騒ぎですって…」
「今迄に出現した以上の悪霊が出現するかも知れません…」
三蔵郎は今迄に出現した悪霊とは桁外れの霊力を保持…。強大なる悪霊の出現を危惧したのである。三蔵郎は人一倍心配性の性格であるが桜花姫も悪霊の再出現は非常に気になる。
「兎にも角にも私は今回の悪霊を征伐するわね…」
「承知しました…桜花姫様…」
「早速昼食を頂戴するわね♪」
桜花姫と三蔵郎は昼食の天丼を食事したのである。当日の真夜中…。桜花姫は久方振りの悪霊征伐にワクワクした様子で闇夜の東国に直行する。
(椿女郎…今夜は出現するかしら♪)
一時間後…。東国の中心街へと到達する。
「真夜中の東国って普段は都会なのに無人の過疎地みたいだわ…」
日中は人通りが過多である東国の中心街であるが…。真夜中では人通りは皆無であり武士団の夜間の外出禁止命令によって町民は誰一人として確認出来ない。
「好都合ね♪」
今夜は武士団の巡邏も禁止される。
「悪霊を仕留めて思う存分熟睡するわよ♪」
適当に中心街を出回るのだが…。霊力らしい霊力を感じられず悪霊らしき物体は何一つ発見出来ない。
「はぁ…」
(霊力も感じられないわね…)
困惑した桜花姫であるが…。
「両国橋は如何かしら…」
事件現場である東国と北国を直結する両国橋を想起したのである。
「両国橋に直行するわよ♪」
即座に両国橋へと移動する。数分後…。両国橋へと到達したのである。
「両国橋に到着したけれど…」
周囲を警戒するが霊力も人影も皆無であり桜花姫は落胆する。
「如何しましょう…」
(真夜中に発見出来なければ悪霊を仕留められなくなるわ…)
一息したのである。
「今夜は出直しかしら…」
西国に戻ろうかと思いきや…。突如として背後より人気を感じる。
「えっ?」
(人気かしら?)
彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「こんな真夜中に誰かしら?」
桜花姫の背後には番傘を所持した赤色の着物姿の女性が真夜中の満月を眺望する。彼女の頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。
(番傘と寒椿の髪装飾…ひょっとして彼女は…)
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る一歩ずつ番傘を所持する女性へと近寄る。
「あんたは悪霊の椿女郎ね…こんな真夜中にあんたみたいな村娘が一人で外出するなんて不自然だわ…」
桜花姫は女性に問い掛けるが…。番傘の女性は沈黙した様子であり只管天空の満月を眺望し続けるだけである。
(私の問い掛けに無視するなんて…腹立たしい悪霊ね…)
彼女の態度に桜花姫はピリピリする。すると椿女郎は背後に位置する桜花姫の方向を直視する直前…。
「えっ!?」
桜花姫は即座に両目を瞑目させる。
(危機一髪だったわ!下手に彼女の瞳孔を直視すると斬首されちゃうのよね…)
桜花姫は瞑目した状態で恐る恐る後退りする。
(非常に厄介だわ…如何しましょう…)
瞑目し続けた状態では身動きすら不安定であり妖術を発動したくても集中出来ず思う存分に妖術を発動出来ない。
(こんな状態では不利だわ…)
「一か八か逃げましょう!」
桜花姫は両国橋から一目散に逃走したのである。
(緊張しちゃったから変化の妖術も発動出来ないわね…)
緊張したのと椿女郎の素顔が気になり変化の妖術を発動したくても発動出来なかったのである。
(彼女の素顔も気になるし…)
「一か八か…」
桜花姫は斬首を覚悟…。再度両国橋へと戻ったのである。数分後…。桜花姫は両国橋に到達する。両国橋には満月を眺望し続ける椿女郎が確認出来る。
(椿女郎だわ…今度こそ妖術で仕留めるわよ♪)
桜花姫は恐る恐る椿女郎に近寄る。
「椿女郎!今度こそあんたを成仏させるからね!覚悟しなさいよ!」
すると数秒後…。椿女郎は桜花姫に反応したのか再度背後の彼女を直視するなり無表情で桜花姫を凝視する。
(椿女郎って…悪霊なのに意外と美人さんなのね♪)
彼女の素顔は非常に美的であり桜花姫でさえも容姿端麗であると感じる。
(本当に斬首されるかしら?)
数秒間が経過したものの…。何も発生しない。
「別に大丈夫そうね♪」
大丈夫であると確信した直後…。
「えっ?」
喉元からポタポタッと赤色の液体が流れ出る。
「何かしら?」
桜花姫は恐る恐る首筋の液体に接触したのである。
「流血だわ…」
皮膚から流れ出る赤色の液体が血液であると確信した直後…。桜花姫の頭首がポロっと橋板に落下したのである。椿女郎は霊能力で桜花姫の頭首を斬首すると不吉の表情で微笑する。彼女は再度満月を眺望するのだが…。
「残念だったわね♪椿女郎♪」
椿女郎は女性の美声に反応したのか背後を直視すると両目を瞑目した無傷の桜花姫が佇立する。すると椿女郎の霊能力によって斬首された桜花姫の肉体と頭首がポンッと白煙により消滅したのである。無表情だった椿女郎であるがハッとした表情で桜花姫を凝視する。
「あんたの表情を直視出来ないのは非常に残念だけれど♪あんたが霊能力で斬首したのは私の分身体なのよね♪」
桜花姫は分身の妖術で形作った分身体を利用して椿女郎と接触…。彼女の形相を認識させたのである。桜花姫は変化の妖術を発動…。
「あんたの素顔は分身体で確認したからね♪あんたは桜餅に変化しなさい♪」
椿女郎を桜餅に変化させる。
「消耗した妖力を回復させないと♪」
桜餅に変化した椿女郎をパクッと頬張る。
「美味だわ♪」
すると両国橋から感じられた不吉の霊力が消失する。
「事件解決ね♪私は西国に戻って思う存分熟睡するわよ♪」
無事事件を解決させた桜花姫は即座に西国へと戻ったのである。

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