Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.3 ) |
- 日時: 2011/07/12 23:41
- 名前: 何処 ID:Ut3rr90QYOo
- あれは蒸し暑い夏の夕暮れ時の事。
全ては偶然と言う名の宿命…
あの時、ふと感じた視線の先に目を遣り… 私は運命と出会ってしまった。
世界が、変わる。
その瞳、その姿態、その存在がそれまでの私を一瞬で打ち壊した。
そう、それは革命。
硬直する私、重なる視線、永遠とも言える一瞬…
それを裁ち切ったのは彼女の一声だった。
「…な〜お〜…」
【猫の居る風景】
「…」
「あんたねえ…」
あの時の母の呆れ顔は未だに忘れられない。 それはそうだろう、高校生にもなった娘がまるで小学生の様に段ボールごと仔猫を抱え玄関に立っていれば、呆れて当然だ。 最も、私も週に一,二回しか顔を合わせる事の無い母がまさか帰宅しているなどと言う事態は想定していなかったから、仔猫入り段ボール箱を抱え只茫然としていた。恐らく私も相当間抜けな顔をしていたに違い無い。
気まずい雰囲気を裁ち切ったのは、またしても彼女の鳴き声だった。
「…な〜ゔ〜…」
「「…」」
「うな?」
「「…ぷっ!!」」
“…全く仕方がないわねぇ、貴女が面倒見るのよ?”と苦笑した母の眼差しは久々に優しげだった。
そして今…
「あれ?リツコさん何見てるんです?」 「え?あ、シンジ君か、まぁ見てご覧なさいあれあれ」
私の目前にはあの日の…あの時の私が居る。
「…」「??」
「?あれって…猫?…綾波?…何してるんだろ?」 「クスクス…」
多分あの時の私もあの蒼い髪の少女の様に硬直していたのだろう。
「…」「…」
「ミィ!ミィ!」「!?」
「…どうしたんだろ…硬直してるみたいだけど…」 「…多分初めて見る仔猫にどうすればいいのか判らないのよ…」
「…」「…」「「…」」
おずおずと指先を差し出す少女、仔猫がその指を捕まえようと前肢で…あ、手を引いたわ。 …あの娘の驚きの表情なんて滅多に見れないわね…
「…ぷっ!」「…僕ちょっと行ってきます…」
少年が少女の元へ歩き出す。 どうやら仔猫の扱いをレクチャーするつもりらしい、ふと気付けばいつの間にか少女の周りに野良猫が集まって遠巻きに眺めている。
「…あなたたちも心配?大丈夫よ…彼がいるもの。」 「…ナァ。」
一匹の雉虎が私に応える様に鳴いた。
改めて二人を眺める。 目前には微笑ましい光景。
テ・゙ジャ・ヴ…既視感。
ふと私は記憶の波に拐われた。
◇◆◇
「失礼…赤木博士のお宅はこちらですか?」
玄関先で仔猫と遊ぶ私に声を掛けたあの人は、未だ髭を生やしていなかった…
「は?はい。赤木ナオコの家はここですが…あ!こら駄目!」
不意に走り出した仔猫を軽く抱き上げ、その長身の男は優しく子猫に話しかけた。
「お前も家の子供も落ち着きが無いな…猫も人間も子供のやる事は一緒か…」
「あ、お子様居られるのですか?」
思わず反射的に質問した私を見ず子猫を構いながら男は答えた。
「ええ、息子が一人。シンジと言います…名前は?」 「え?あ、リツコです!あ!?いえリツコは私の名前でその仔は未だ名前を決めてなくて…あ!?そ、その、貴方のお名前は…」
「私か?ああ、未だ名乗っていませんでしたね。私の名前は…」
振り向いたあの人と目が合って…
◇◆◇
「ミィ!ミィ!ミィ!」
「!?」
白昼夢から醒めた私の前には、子猫を胸に抱いた少女が笑みを溢れさせ、少年は少女を優しく見守っている。 その光景はまるであの日見せて貰ったあの人とその妻と未だ赤ん坊の少年が写った一枚の銀塩写真。
私はすぐそこにいる眩しい二人を只眺めていた…羨望と郷愁に駈られながら、遥か彼方から。
仔猫が、又鳴いた。
《目が合う瞬間》ゲーム“アイドルマスター”楽曲より http://www.youtube.com/watch?v=Ut3rr90QYOo&sns=em
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