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[592] サイト開設十周年カウントダウン企画・二月
日時: 2011/02/03 00:47
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・お引越し
・バレンタイン
・ハートブレイカー

です。
八月〜一月の企画及び1111111ヒット記念企画も鋭意継続中です。

サイト移転騒動でわちゃわちゃしてますが、よろしくどぞー。
メンテ

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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・二月 ( No.4 )
日時: 2011/07/26 08:19
名前: tamb

 *****朝も夜も*****

 引越しをした。

 今日から葛城さんの部屋で、アスカと碇くんと四人で住むことになる。

 きっかけはこのアパートが取り壊しになるという妙に現実的な話だった。
 どこかに別の部屋を借りてまた独りで住むことを最初に考えたが、葛城さんは一言のもとに
それを却下した。
 あなたは集団生活を通してもっと人間関係を学ぶ必要がある――。
 そう言われると反論の余地はなかった。もっとも、いつも碇くんと一緒にいられると思えば
それは素敵なことに違いない。二人っきりになるチャンスは少なくなるかもしれないけれど、
葛城さんが当直勤務の時にアスカを渚君のところにでも追い出すとか、方法はいくつかあるだ
ろう。

「あの子、昔から良く言ってたわ」赤木博士は葛城さんのことを「あの子」と言った。
「たくさんの人とおしくらまんじゅうみたいにして暮らしたいって。どこかに必ず誰かがいて、
一人で部屋にいても良く知っている人の気配がするのがいいんだって」

 それはわかるような気がする。

「渚君やマリも引き込む機会を狙ってるわ。加持君も引っ張り込むかもね」

 そうなるといくらなんでも人口密度が高すぎるような気もするけれど。

「どうしようもなくなったら壁をぶち抜いて隣の部屋も使うわよ。あの子なら」

 やりかねない。



 物がなんにもなくなった部屋をこうして見渡していると、少しだけ寂しい気持ちになる。
 もちろんこの部屋には最初から物なんてほとんど何もなかった。でも、少しだけれど大切な
思い出はあった。
 ほんの少しの荷物と大切な思い出を持って、これから新しい暮らしが始まる。

 引越しって何だろうと思う。

 自分の部屋というのは、わたしにとって長いあいだ単に眠る場所という以上の意味はなかっ
た。ならば、一時期のわたしは病院に引越しをしていたことになる。病院からネルフに行き、
様々なテストをこなし、病院に戻って眠っていたのだから。でも普通は病院に引っ越すとは言
わないし、わたしもそうは思っていなかった。
 そこで暮らすという概念もよくわからない。ただ眠るだけなのだから。
 思い出というなら、もちろんこの部屋にもあるけれど、例えば本部にも学校にもエヴァの中
にも、そして病院にもあった。
 ただ、碇くんのことを一番たくさん考えていたのはこの部屋のベッドの上だった。ある時期
からは、この部屋にいるときは彼のことしか考えていなかったような気さえする。
 だからたぶん、わたしの部屋というのは彼のことを一番たくさん考える場所のことだ。これ
からも新しいわたしの部屋で、碇くんのことをたくさん考えよう。碇くんを見つめながら。あ
るいはさりげなく横目で見ながら。

 もうこの部屋に戻ることはない。

 さよなら。

 だからわたしはこの部屋にそう声を掛けて、ドアを閉め階段を下りた。

「お別れの挨拶は終わった?」

 外に出ると、碇くんが待っていた。わたしは黙って頷き、同時に碇くんが手に持っている物
に気づいた。フルーチェとシュークリームのツープラトン攻撃だ。
 わたしは碇くんの手からそれを奪い取り、碇くんの腕も奪い取った。

 腕を絡めたまま振り返ってアパートを見上げる。
 この部屋にとって、わたしはいい住人だっただろうか。もっとちゃんと掃除をしたり、料理
もしたり、家具とかもたくさん置いた方が良かったかもしれない。
 もう一度さよなら、そしてごめんねと言いかけて、思い直した。
 元気でね――。
 心の中でそう言って、隣にいる碇くんを見た。
 もう振り返らない。前だけを見て、歩いていこう。この人と一緒に。

「フルーチェとシュークリームって、あうかな」

 わたしはそう笑顔で聞く。

「一緒に食べるつもり?」
「え? 順番なの?」
「シュークリームはご飯のあと。デザートだよ」

 泣きそうになる。碇くん攻略法を編み出さなければならない。
 一緒に歩くっていうのはこういうことも含むのかなと、ふと思った。
メンテ

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