◆ Chapter xxx ( No.4 ) |
- 日時: 2011/04/09 02:11
- 名前: ななし
「さて、今日も頑張るか」
口に咥えていたタバコを名残惜しそうに外し火を消した。そして見上げる。 派手に壊れてきた零号機。まぁ、ちょっくらまってな。俺が直ぐに治してやるからよ。 特注のメスとドライバーを両手に持ち、ひょいひょいと作業台を登る。途中で仲間に出会った。挨拶代わりに軽口を叩いたら小突かれた。まぁ、日常茶判事だ。 頭甲部に行くリフトへ乗って、上昇ボタンを押す。ガコンと言う音と共にリフトは登っていく。ゆっくり、ゆっくりと。その間、俺は胸ポケットからタバコを取り出し一服する。 タバコ一本吸い終わる頃、ちょうどリフトが止まった。天辺に着いたようだ。タバコの始末をしながらリフトを降り後頭へ歩いていく。 そしたら、珍しく先客がいた。こいつは、えっと、あぁ、そうだ。数ヶ月前に新しく入ったばかりの奴だ。パッと見、少し生気が抜けているような気がした。まぁ、最近の仕事量を考えれば元気な奴の方が珍しい。俺は声をかけた。奴はぺこりと頭を下げた。なんでここにいるんだ?と疑問に思ったが時間が惜しいのでそのまま作業に入る。後頭のカバー部分をマジマジと見つめ「よしっ」と気合を入れて作業しようとした、その時だった。
「俺、あと、どんだけ治せばいいんでしょうか」 「どんだけと言うと?」
昨日一日かけて切り抜いた装甲カバーを固定している螺子を特注ドライバーで外していく。この奥にある機械を引っ張り出したら俺の仕事は一旦終わりだ。後は赤木博士を呼ぶ。そしたら赤木博士はパソコンに繋いでプログラムを組むだろう。組み終わったらまた俺の仕事。今度は新しい装甲を付け替えるんだ。
「何回も何回もボロボロになって帰ってくるコイツ等を、何度治せば平和が来るでしょうか」 「難しい話だな」
一つ目の螺子が外れた。長さ75cm。重くて持ってられないから床に置く。2つめの螺子を外しながら俺は奴の言葉に答える。
「でも、俺達が治さなきゃこいつは戦えねぇ」
そう、治らなければこいつは動かない。そしたら俺達は使徒っつう怪物に殺られちまう。世界はジ・エンド。終わっちまうんだ。
「零号機班の奴、愚痴いてました。もう、これ以上頑張れないって。疲れたって」 「ほう」 「それだけですか?」 「あぁ」 「……酷いですね」 「どっちが酷いんだ?」
二つ目の螺子が外れた。床に置く。螺子と螺子がカツンとぶつかった。少し転がったが直ぐに止まった。落ちる事はないだろう。螺子から目を移動し奴の顔を見た。不細工な顔だった。今にも泣きそうな醜い顔だった。奴から目を離し三つ目の螺子外しに取り掛かる。
「他人の愚痴を受け止めて共感しちゃってるお前は、これからどうするんだ?そいつと一緒に諦めるのか?」 「それは……」
三つ目は意外に早く外せた。装甲カバーが振り子のようにぶら下がった。中からピンク色の皮膚体らしきものが見えた。それは人間の脳みそに似ていた。
「俺は諦めねぇ」
最後の螺子外しに取り掛かる。俺は背を向けたまま、奴に語る。
「不幸に共感しちゃいけねぇ。自分のできる事を最大限に考えて、行動しろ。自分のやってる事が正しければ道は開ける」
四つ目の螺子が外れた。カバーがガタンと落ちた。床が響いた。足がしびれる。
「下手な同情は確かに届かねぇ。なら、自分の背中を見せな。愚痴をネタにするくらいならな」
四つ目の螺子を床に置く。4本の螺子が転がらないよう直したら俺は零号機の中身を触った。温かい、気がした。いや、エンジンは切っている筈だから熱は持っていないはず。でも、何故かぬくもりを感じられた。 俺は皮膚と皮膚の割れ目に右腕を突っ込む。この奥に、確か、ある、筈、なんだ……が?あれ?ない?
「すいません」
人差し指にカツッと何かがぶつかった。あぁ、あった。手探り状態でそのぶつかった物を引き寄せ掴むと一気に引っこ抜いた。取り出したのは複数のUSB接続の穴がついたポートだった。情報通りだ。ポートを垂れ下がるように放置する。後は赤木博士の出番だ。 俺は後ろを振り向いた。奴の顔はやっぱり疲れは消えてない。でも気合が入っていた。死んだような目が少しだけ輝きを取り戻したような感じだった。こういう姿を見るとやっぱり人間ってのは強い生き物だよな、とふと思う。なんらかのきっかけがあれば人は歩き出せるし強くなれるのだから。
「わかりゃいいってことよ」
俺はこの場を後にしてリフトへと戻る。奴も着いてきた。リフトでタバコを取り出すと「禁煙です」と注意してきやがった。小言を言えるならもう大丈夫だな、と思った。 赤木博士を呼んだら今度は初号機班の手伝いだ。こいつも持ち場に戻って精を出すだろう。休んでる暇はない。使徒はいつ来るか分かったもんじゃないからな。
「さて、今日も頑張るか」 「うぃっす!」
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