[711] 幸せな日々(綾波レイ誕生日)
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- 日時: 2015/04/19 02:56
- 名前: tamb
***** 幸せな日々 *****
今年もまた誕生日がやってきて、シンジは相変わらず苦悩する。ほとんど苦行の様相すら呈しつつあるが、それはまた喜びでもあった。他の誰でもない、レイの誕生日なのだ。日常としての一日を積み重ね、その結果としての一年が平和に過ぎてゆく。これ以上の幸せがあるだろうか。
シンジがレイに渡すプレゼントで悩むのは、レイの驚き喜ぶ顔が見たいからだ。それには彼女が予想せず、かつ実は欲しかったという物でなければならない。自分が欲しいと意識せず欲しい物などそうそうあるはずはない。しかも安い物でなければならぬ。金はない。乏しい小遣いの中からこの日の為にため込んでいるとはいえ、その金額はたかが知れているのだ。 欲しい物はないか聞いても意味はない。それでは驚いてもらうという目的は果たせない上、何もいらない、碇くんがいてくれればそれだけでいい、などという泣かせるセリフが返ってくるだけだからだ。 だが毎年恒例ということもあるし、このセリフを言ってもらうのはキスのきっかけとしても自然でいい流れなので、一応言ってみた。
「綾波、今年の誕生日、どうする? 何か欲しい物はない?」
返ってきた答えはシンジを驚愕させるに十分なものだった。
「壁どん」 「……え?」 「壁どん。して欲しいの。なんだか流行ってるみたいだし」 「壁ドン?」 「うん」
わからないものだとシンジは思う。彼女は流行とかそういう所からは遠い場所にいると漠然と思っていたのだが、やはり女の子だということなのだろうか。これは喜ぶべきことなのかもしれない。
「その……好きな人にしてもらうと、すごくどきどきしちゃうって、アスカもヒカリも言ってたし……」
シンジの沈黙を困惑と受け取ったのか、レイがしどろもどろに言う。
「なんか……追い詰められて逃げられない感じがいいって言うから……ちょっと想像したらそれだけでどきどきしちゃって……ちょっとされてみたいかなって……あの、別にどうしてもってわけじゃ――きゃっ!」
シンジはためらっていたわけではなかった。壁ドンが成立している状態はわかる。だがその状態にもって行くためにはレイを壁際に連れていかなけれならない。それをどうするかを考えていたのだ。手を引いて連れて行くのは違う気がする。ではどうするのか。いったいどうすればいいのか。 だが頬をピンクに染め目を泳がせながら言い訳を口にするレイを見ていて、シンジは炎上してしまったのだ。しかもだ。彼女は「好きな人にしてもらうと」などと口走ったではないか。 レイの肩を押し、問答無用で最も近い壁に押し付ける。彼女の肩越しに左手を壁につく。紅い瞳をじっと見つめた。 彼女は伏せていた顔をそっと上げ、シンジをちらと見てまたすぐにうつむいた。
「はずかし……」
無理だ。 シンジは桜の花びらのようなレイの頬に手を添え、そっとくちづけた。その口唇は溶けてしまいそうなほど柔らかく、甘かった。
「壁ドン?」 「うん」 「古いわね」 「え?」 「これからは天ドンの時代よ」 「……てんどん?」 「そう。二人でタレたっぷりの天丼を食べて食べて食べまくって、それからキス。天丼キスよ。レイ、あたしとする? 天ドン」 「えっと……」 「関わらない方がいいわよ、レイ」 「アスカはどうしちゃったの?」 「渚君に壁ドンしたら、壁が壊れちゃったんだって。思いっきりし過ぎ」 「最初っから壊れかけてたのって言ったでしょ!」 「A.T.フィールドにどんっていうのはどうかしら」 「ヒカリ、行くわよ」 「待って。カツ丼してあげるから」 「天丼だってば!」 「プテラノドンは?」 「やってもらおうじゃないの」 「ごめんなさい。もう言いません」
---------- 遅くなりました。

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