[734] 誕生日プレゼント
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- 日時: 2017/06/10 20:59
- 名前: 史燕
- 誕生日プレゼント
Written by史燕
2017年6月。 僕らはいつの間にか高校生になって、第三新東京市での数々の出来事も過去のものになろうとしていた。 僕はサードインパクトの後いつの間にか元通りになった世界で、世界を滅ぼし、そして救った英雄ではなく、今日もまたどこにでもいるただの一般人として生活をしている。 結局、第三新東京市は都市としての機能を失い、その結果として、僕たちNERVの関係者はバラバラにそれぞれの道を歩き始めた。 僕は進学の都合もあり第二東京市に戻り、最近ではかつての仲間たちと連絡を取る事さえなくなっていた。 そんなある日のことだった。
「来い ゲンドウ」
いつかどこかでみたような、それでいてなぜか懐かしい手紙が、父さんから届いた。 父さんとは数か月に一度顔を合わせるようになったけど、まだ少し距離感がつかめないでいる。 それでも、こんな形での呼び出しは、あの運命の日以来一度もなかった。
「ひとまず、行ってみようかな」
平日だけどね。 こっちの都合は考えてくれないのは、相変わらず。 それもそれで父さんらしいと思える程度には、僕も父さんのことを理解し始めたのかもしれない。
そして、僕は指定された日に再びこの、第三新東京市の土を踏みしめていた。
「シンちゃ〜ん、お久しぶり」
お迎えはこれもいつかのように、ミサトさんの青いルノー。
「まさか、またN2に巻き込まれたりしませんよね」
何か作為的なものを感じて、思わず言ってしまった。
「じょーだんじゃないわ。その前に逃げ切ってやるんだから」
クラッチを入れながら、ミサトさんは言った。 なんというか、運転の方も相変わらずだった。
ところが行先は、NERV本部ではなかった。
「どこに行くんですか?」 「気になる? 大丈夫、いいところよ」
そう言ってはぐらかして、結局ミサトさんは最後まで教えてくれなかった。
「着いたわよ」
僕はミサトさんに連れられてきたのは、小さな小さな教会だった。
「えっ、ここですか?」 「そうよ、みんなあなたを待ってるわ」
ミサトさんに促されるままに、僕は教会の扉を開いた。 すると――
「「「「おめでとう」」」」
勢ぞろいしているNERVのみんなが、いきなり僕に祝いの言葉をかけてきた。
扉を開いた先には奥の祭壇へと続くヴァージンロード。
「さあ、行くぞ」
呆然としている僕の手を引いて、なぜか正装をした父さんがヴァージンロードを進んでいく。
「さて、片方の主役は登場したな。それでは、次はもう片方の主役の登場と行こうか」
なぜか祭壇の前にいた副司令が、戸惑う僕をよそに、当然のように話を進める。
そして、僕の前へもう一人の主役が姿を現した。
薄いヴェールに包まれた、特徴的な碧い髪。 僕の中でもっとも強く記憶に残っているプラグスーツとは、同じ色でありながら全く違う純白のドレス。 そして、僕の視線を掴まえて放さない、真紅の瞳。
そう、綾波レイだ。
「……碇君」 「久しぶりだね、綾波」
そう、ほんとうに久しぶりだ。 「なぜここにいるのか」とか「どうしてそんな姿なのか」とか、本来ならば口から飛び出す疑問の一切を消却して。 僕はただ、彼女に会えたことがうれしかった。
「……碇君、私、16歳になったの」 「うん、知ってるよ」
僕と同い年なのだから、知らないわけがない。
「……碇君、今日は何月何日?」 「え…っと、6月6日かな」 「……だから、私をもらって」
コクン、と首をかしげながらそう言う彼女に思わず「うん」と首を縦に振りそうになる。
「あの、綾波。僕は確かに16歳になったけど、結婚はできないんだよ?」
なにかいつも通り勘違いしてる――そして周囲はそれをなぜか止めていない――ことに気づきつつ、僕は理性を総動員して彼女に言った。
「……わかっているわ。でも、私を今日あなたの物にしてほしいの。それが、私からの誕生日プレゼント」
説明を、いや助けを求めて、周囲を見渡すが、誰も彼女を止めてくれそうにない。 そこで、この中で(悔しいけれど)一番彼女のことを理解しているであろう人物にして、おそらくはこの一連の騒動の元凶であるであろう人物――父さんに声をかけた。
「父さん!!」 「問題ない」
ダメだった。ある意味いつもどおりだったけど。
さすがに見かねたのか、副司令が説明をしてくれた。
「シンジ君」 「はい」 「これは、彼女が言い出した願いを碇が形にしたものなんだ。君と一緒になりたいというね」 「それは、わかりますけど」
続いてミサトさんが、言葉を発した。
「私たちは、幸せになってほしいのよ。レイにも、もちろんあなたにもね」 「もしそうだとしても、いくらなんでも急過ぎますよ」 「それは済まないと思っているわ。でも、私たちも形にしてあげたかったの。あくまで仮の、だけど」
ただのおふざけではない。 それが伝わってきた。 もちろん、結婚式なんてまだ僕たちには早い。 それは織り込み済みで、それでもこうして茶番じみたサプライズを僕の誕生日にしてくれたのだと思う。
「……碇君、ダメ?」
そう彼女に言われて、断ることができるはずもない。
「大人って、ずるいですね」 「それが、大人になるということだからな」
父さんが、珍しく微笑みながら、僕にそういった。
「それじゃ、神様に代わって、僕が証人を務めようか」
祭壇の奥からひょっこり、いつもとまるで変わらない気軽さで、カヲル君が姿を現した。
「カヲル君、どうしてそこに?」 「君のためなら、一肌脱ぐのは当たり前だろう?」
いつものように笑いながら、カヲル君はそう言ってのけた。
「神の使いが直々に証人をしてしまうとは、なんとも剛毅なものだな」 「それだけ、彼と彼女の幸せには価値があると思いませんか?」 「たしかに、君の言う通りだ」
こうして僕と綾波は、たくさんの証人たちの前で誓いを交わす。 彼女と僕がたとえ死が二人を分かつとも共に在るということを。
〜〜Fin〜〜

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