桜花姫 ( No.61 ) |
- 日時: 2021/08/30 08:44
- 名前: 月影桜花姫
- 第六話
斬首
亡霊新婦との戦闘から六日後の真夜中…。東国の中心街では何者かによって頭首を斬首される連続殺人事件が多発したのである。多発する殺人事件の発生に町民達は畏怖する。真夜中に二人組の武士団の邏卒が東国の中心街を夜番したのである。 「折角平穏が戻ったのに…殺人事件が三件も連続的に発生するなんて物騒だな…」 「恐らく匪賊の仕業だろうが…斬首するなんて随分悪質だよな…」 殺害された被害者達は三人とも頭首を斬首された状態であり翌朝には斬首された頭部と遺体が事件現場で発見される。すると小柄の邏卒がブルブルと寒気を感じる。 「こんな真夜中に人殺しなんかと出くわしたくないぜ…勘弁しろよな…」 「東国の武士団である俺達が人殺しに畏怖して如何する?こんな小事件で畏怖しちまったら俺達は世間様の笑い者だぜ…」 「今回も月影桜花姫様の出番だよな…彼女だったら百人力?千人力だろうし…」 邏卒が口走った月影桜花姫の一言に大柄の邏卒が苛立ち始める。 「桜花姫…桜花姫って…毎回不寝番の桜花姫に頼りっ放しだと東国の武士団は不必要だって村人達から造反されちまうよ!好い加減武士団の上役達も内部を改革させないと形骸化しちまうぞ…」 近年では不寝番の最上級妖女…。月影桜花姫の悪霊征伐により東国武士団の権威が失墜したのである。東国武士団の形骸化と他力本願が問題視され武士団内部からも改革派が出現…。武士団全体の再構築が公言されたのである。 「相手が匪賊だけなら俺達でも対処出来るかも知れないが…神出鬼没の悪霊なんて俺達では頑張っても如何にも出来ないだろ…」 「相手が悪霊だったらな…」 彼等が雑談中…。 「ん?」 東国と北国に国境に直結する両国橋より番傘を所持した赤色の着物姿の女性がポツンと佇立した様子であり天空の満月を眺望する。 「一体誰だろう?」 「こんな真夜中に女人が一人で何を…」 彼等は恐る恐る両国橋へと移動するなり…。番傘の女性の背後に近寄ったのである。女性は小柄の背丈であるが非常に美的の雰囲気であり頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。 「真夜中だぞ…近頃は斬首事件で物騒だしこんな真夜中にあんたみたいな小町娘が一人で出歩くのは危険だぜ!即刻家屋敷に戻りやがれ!」 大柄の邏卒は強気の態度で女性に命令する。大柄の邏卒は強気であったが女性は無反応であり見向きすらしなかったのである。 「此奴…」 大柄の邏卒は女性の態度に苛立ったのか腹立たしくなる。 (畜生が…無視しやがって!) すると小柄の邏卒が恐る恐る…。 「失礼なのですが…貴女様みたいな美人さんがこんな真夜中に一人で出歩かれたら人攫いに遭遇するかも知れませんし…即刻家屋敷に戻られませんか?」 小柄の邏卒が物静かに発言するも女性は反応しない。 「此奴…聾者っぽいな…」 「彼女は雛人形みたいだな…私達の問い掛けには反応しないし…」 (不吉だな…) 小柄の邏卒は女性の雰囲気に畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。 「貴様…こんな小町娘に畏怖するなんて♪余程の小心者だな♪」 大柄の邏卒は女性の背後へと移動するなり…。 「外見だけなら可愛らしい雰囲気だな♪素顔は別嬪かな?」 小柄の邏卒は身震いした様子で大柄の邏卒に制止する。 「女人に手出しするなよ!任務は如何する!?」 制止する小柄の邏卒に大柄の邏卒は強気で反論したのである。 「任務なんて後回しだよ♪後回し♪」 「後回しって…」 大柄の邏卒の無責任さに呆れ果てる。 「真夜中だし…人目は貴様だけだからな♪」 大柄の邏卒は欲情した様子であり赤面する。 「小町娘の姉ちゃんよ♪俺と一緒に夜遊びしないか?」 小柄の邏卒は膠着したのである。 (一体如何すれば…) 困惑した直後…。女性が背後を直視したのである。 「えっ?」 女性は半透明の血紅色の瞳孔であり無表情で大柄の邏卒を凝視する。 「素顔も別嬪だな♪」 大柄の邏卒が微笑した直後…。大柄の邏卒の喉元から血液が流れ出る。 「えっ?流血だと?」 大柄の邏卒は恐る恐る喉元に接触する。 「如何して流血した?」 すると直後…。 「えっ?」 大柄の邏卒の頭首が橋板に落下したのである。 「ひっ!」 (一体何が!?) 小柄の邏卒は極度の恐怖心により恐る恐る後退りし始め…。一目散に逃走したのである。翌朝…。東国と北国の国境に直結する両国橋にて斬首された大柄の邏卒の遺体が発見される。事件発生から三日後の真夜中…。東国の噂話を熟知した桜花姫は興味本位に闇夜の東国へと直行する。 (椿女郎…今夜は出現するかしら♪) 一時間後…。東国の中心街へと到達する。 「真夜中の東国って都会なのに無人の過疎地みたいだわ…」 日中は人通りが過多である東方国の中心街であるが…。真夜中では人通りは皆無であり東国武士団の夜間の外出禁止令により誰一人として通行者は確認出来ない。 「好都合ね♪」 今夜は武士団の巡邏も禁止される。 「悪霊を仕留めて思う存分熟睡するわよ♪」 適当に中心街を出回るのだが…。霊力らしい霊力を感じられず悪霊らしき物体は何一つとして発見出来ない。 「はぁ…」 (霊力も感じられないわね…普通の殺人事件かしら?) 困惑した桜花姫であるが…。 「両国橋は如何かしら…」 事件現場である東国と北国を直結する両国橋を想起したのである。 「両国橋に直行するわよ♪」 即座に両国橋へと移動する。数分後…。両国橋へと到達したのである。 「両国橋に到着したけれど…」 周囲を警戒するのだが…。霊力も人影も皆無であり桜花姫は落胆する。 「如何しましょう…」 (悪霊は発見出来ないし…無駄足だったわね…) 一息したのである。 「出直しかしら…」 西国に戻ろうかと思いきや…。突如として背後より人気を感じる。 「えっ?」 (人気かしら?) 彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。 「誰かしら?」 桜花姫の背後には番傘を所持した赤色の着物姿の女性が真夜中の満月を眺望する。 (こんな真夜中に小町娘?) 彼女の頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。 (番傘と寒椿の髪装飾…ひょっとして彼女は…) 桜花姫は警戒した様子で恐る恐る一歩ずつ番傘を所持する女性へと近寄る。 「あんたは悪霊の椿女郎ね…こんな真夜中にあんたみたいな小町娘が一人で出歩くなんて不自然だわ…」 椿女郎とは戦乱時代に極悪非道の荒武者によって頭部を斬首された村娘の亡霊である。外見のみなら容姿端麗の小町娘であるが…。霊力は非常に強力であり彼女の瞳孔を直視した人間は彼女の霊力により頭首を斬首される。今現在でも成仏出来ずに各地を徘徊しては遭遇した人間の頭首を自身の霊能力で斬首したのである。桜花姫は女性に問い掛けるが…。番傘の女性は沈黙した様子であり只管天空の満月を眺望し続けるだけである。 (私の問い掛けに無視するなんて…腹立たしい悪霊ね…) 彼女の態度に桜花姫は腹立たしくなる。すると椿女郎は背後に位置する桜花姫の方向を直視する直前…。 「えっ!?」 桜花姫は即座に両目を瞑目させる。 (危機一髪だったわ…下手に彼女の瞳孔を直視すると斬首されちゃうのよね…) 桜花姫は瞑目した状態で恐る恐る後退りする。 (非常に厄介だわ…如何しましょう…) 瞑目し続けた状態では身動きすら不安定であり妖術を発動したくても集中出来ず思う存分に妖術も発動出来ない。 (こんな状態では不利だわ…) 「一か八か逃げましょう…」 桜花姫は両国橋から一目散に逃走したのである。 (緊張しちゃったから変化の妖術も発動出来ないわね…) 緊張したのと椿女郎の素顔が気になり変化の妖術を発動したくても発動出来なかったのである。 (彼女の素顔も気になるし…) 「一か八か…」 桜花姫は斬首を覚悟…。再度両国橋へと戻ったのである。数分後…。桜花姫は両国橋に到達する。両国橋には満月を眺望し続ける椿女郎が確認出来る。 (椿女郎だわ…今度こそ妖術で仕留めるわよ♪) 桜花姫は恐る恐る椿女郎に近寄る。 「椿女郎!今度こそあんたを成仏させるからね!覚悟しなさいよ!」 すると数秒後…。椿女郎は桜花姫に反応したのか再度背後の彼女を直視するなり無表情で桜花姫を凝視する。 (椿女郎って…悪霊なのに意外と美人さんなのね♪) 彼女の素顔は非常に美的であり桜花姫でさえも容姿端麗であると感じる。 (本当に斬首されるかしら?) 数秒間が経過したものの…。何も発生しない。 「別に大丈夫そうね♪」 大丈夫であると確信した直後…。 「えっ?」 喉元から赤色の液体が流れ出る。 「何かしら?」 桜花姫は恐る恐る首筋の液体に接触したのである。 「流血だわ…」 皮膚から流れ出る赤色の液体が血液であると確信した直後…。桜花姫の頭首が橋板に落下したのである。椿女郎は霊能力で桜花姫の頭首を斬首すると不吉の表情で微笑する。彼女は再度満月を眺望するのだが…。 「残念だったわね♪椿女郎♪」 椿女郎は女性の美声に反応したのか背後を直視すると両目を瞑目した無傷の桜花姫が佇立する。すると椿女郎の霊能力によって斬首された桜花姫の肉体と頭首から白煙が発生…。消滅したのである。無表情だった椿女郎であるが驚愕した表情で桜花姫を凝視する。 「あんたの表情を直視出来ないのは非常に残念だったけどね♪あんたが霊能力で斬首したのは私の分身体なのよ♪」 桜花姫は分身の妖術で形作った分身体を利用して椿女郎と接触…。彼女の形相を認識させたのである。桜花姫は変化の妖術を発動…。 「あんたの素顔は分身体で確認したからね♪あんたは桜餅に変化しなさい♪」 椿女郎を桜餅に変化させる。 「消耗した妖力を回復させないと♪」 桜餅に変化した椿女郎を一口で頬張る。 「美味だわ♪」 すると両国橋から感じられた不吉の霊力が消失する。 「事件解決ね♪私は西国に戻って思う存分熟睡するわよ♪」 無事事件を解決させた桜花姫は即座に西国へと戻ったのである。
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