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サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
日時: 2010/11/02 04:40
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・息も絶え絶え
・こんにちは、使徒です。いつもお世話になってます。
・雨を見たかい

です。
八月〜十月の企画及び1111111ヒット記念企画も鋭意継続中です。

お題の困難さに拍車がかかってますが、頑張ってください。私も頑張ります。
では、どうぞ。

メンテ

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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.6 )
日時: 2010/11/08 18:01
名前: のの

感想は後日。

上記の【Have you ever seen the rain?】(裏)は、タン塩さんの投下作品にインスパイアされて書いたものです。
勝手に(裏)とかつけるのは失礼千万とは思いつつ、承諾も得ないまま投下してしまいました。タン塩さん、すみません。

まあ、どこらへんが影響受けたんだって、ほんとに一文です。

>あの時はあの時で後悔したけれど

ってところを、14歳当時のレイを設定に書いてみました。
タン塩さんの今回の投下作品。すげえdoc_itohさんの短編ぽい(ちがうんだけど)気がしました。大好きです。嬉しくなってついつい乗っかって書いちゃいました。
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.7 )
日時: 2010/11/09 19:11
名前: タン塩

最近裏づいてますなののさん。さすが綾幸の裏番長(爆)裏はウェルカムだす。
というかののさんに作品を褒めてもらったのは初めてな気が。
企画が始まってから何も書いてないので、焦って2時間でデッチ上げたインチキ
作品にアンサーソングを頂いて、汗顔の至りでござるの巻。

追記:
改めてエヴァを見直したら、アメリカのNERV第二支部はネバダ州だった。
まいったねこりゃ(笑)ネバダだと砂漠ばかりで雨が降りそうにないし。
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.8 )
日時: 2010/11/15 12:52
名前: calu

タン塩さん

まさしくキター!ですね。お待ち申し上げておりました。(レス遅くてスイマセン^^;;)

>薄汚れたレースのカーテンみたいな雨が、泥混じりの雪玉みたいな白
>と灰色と黒の雲にぶら下がっていた。
凄い情景描写です。個人的な経験で恐縮なのですが、かつて見たイベリアの
砂漠の地平線に降りしだく雨を思い出してしまいました。

この作品好きです。またの投下をお待ちしてます。

ps. タン塩さんに焚きつけられた『婚前旅行/バリ島編』は20行位書いたところで突然死に(爆)

メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.9 )
日時: 2010/11/18 06:37
名前: tamb

■ラブラブ仕様/何処
( No.1 )

 男の場合、こういう状況(いきなり呼び出した的な)だとジーンズにトレーナー的なラフな
格好の方が萌えるし、お風呂上りで髪が濡れてたりしたら完全に失神するものなのだが、女の
子はそうは思わないのであろう。そのほうが男の子は喜ぶ、と理解するのはもう少しお互いを
知ってからになる。でもこうやってじたばたするのは本当に恋する女の子だ。
 使徒が関西弁っぽいのは良い(笑)。

 初音ミクのライブ映像は、これが観客含めてフルCGだったらすげえぞと思ったけど、こうい
うイベントがあったんだな。初音ミクそのものはどうやって投影したんだろう?
 どうしても気になるので調べてみた。DILADボードなるそれ用の透明なスクリーンに投影し
たんだそうだ。なるほど。


■Have you ever seen the rain?/タン塩
( No.2 )

 満を持してタン塩さん登場。まるで片岡義男の小説に出てくるような古き良きアメリカ。
 自己嫌悪的な部分も含めてお互いがお互いの部分になっているような、ある意味では老夫婦
のような境地に達している感じがいい。期待に違わぬ小品でした。良かった。


■雨を見たかい/何処
( No.3 )

 これはいい話だ。今の話と昔の話が交互に出てくるのがすごく効果的で、しかもあざとさが
ない。そして過去が今に生きてる。こういう話はなかなか書けない。
 そして

> 私達はお日様に内緒で唇を交わした。

 このフレーズがあまりに秀逸。
 脱帽です。


■ごちそうさま/何処
( No.4 )

 これはこれでとても面白いが感想は書きにくい(笑)。
 そういや新婚の奥さんとビデオチャットだかなんだかやってた人がいたな。ああいうのって、
マジで何を話すんだろう? 愛してるとかなんとか? マジで?
 ほんとに「ごちそうさま」だ。


■【Have you ever seen the rain?】(裏)/のの
( No.5 )

 こういう一シーンを切り取って書くことに関してはまさにお家芸とも言えるほど安定感があ
る。
 レイがとてつもなくレイらしい。「家路の途中で雨に降られていることを碇くんに知って」
もらうことが贅沢だと感じてしまうレイ。このレイが、かつて良く書いていた大学生くらいの
レイに繋がると思うと、やっぱり嬉しくなる。
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.10 )
日時: 2010/11/18 10:01
名前: タン塩

■caluさん
お待たせして申し訳ない(笑)お題がなかなか合わない。波長が合うとすぐ書け
るんですが。しかしいろんなところに行ってますね(`∀´)

■tamb組長
片岡義男とか村上春樹とか、その手は読んだことない(爆)一番影響を受けたの
は獅子文六かな。古い(笑)一番最近買った本は『フロイス日本史全訳「第一巻
:将軍義輝の最期及び自由都市堺」』これは面白い。16世紀のポルトガル人宣教
師の、当時の日本人とも今の日本人とも全く違う発想や思考回路が面白い。
つまり、ブンガクは苦手です(笑)


ぶっちゃけこの作品はメセニー的なものをイメージして書きました。というと、
tamb組長あたりからは「やっぱりな」と言われそうな気が。舞台がカンザスなの
はそういう訳だ。As falls Wichita.
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Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.11 )
日時: 2010/11/20 22:51
名前: 何処

ネッ、ネッ、ネルフの大爆笑〜♪

…え?あ!す、すいません、い、碇シンジです今晩は!

女の子って良く判かりませんよね?例えば…


【罪無き罪】


◇◆◇


「ん…あれ?綾波?どうしたの?」

「碇君…」

「何?急に一体?」

「…」

「?」

「…」

「…?ど、どうしたの?」

「…ごめんなさい…」

「は?」

「もう…駄目なの…」

「え?」

「…さよなら…」

「ち、ちょっと待って綾波?綾波!?綾波!!」


◆◇◆


「はぁ、はぁ、あ、綾波何処に…あれ?」

キーコ、キーコ…

「こ、こんな所にいた…はぁぁ〜、さ、探したょぉ綾波ぃ。」

「碇…君…」

「…理由を…聞かせて」

「…言えない…」

「へ?」

「だって…碇君は悪く無い…うっ…うっうっ…」

「あああ綾波ななな泣かないで泣かないでぇ…」

「ひくっ…うぅっ…」

「ああぁぁ、ど、どうしようか…」

ギュキャキャー!ガウン!キュキキキィィ〜〜!バタム!

「あ、ミサ」「貴様何女の子泣かしとるかぁ!!」

ボクッ!


◇◆◇


「…ミサト、一つ質問があるんだけど。」

「あによ?」

「…泣いてるファーストはともかくさぁ…何でシンジが気絶して簀巻きにされてる訳?」

「…シンジ君がレイの事泣かせてたからよ。全く男って奴は皆」「えくっ、違うんです…」

「…ファースト、何も馬鹿シンジの事庇わなくても」「碇君は馬鹿じゃない!」

「…あり?」「ミサト…何か違わなくない?」

「悪いのは私…ご、ごめんなさい碇君…うぇ…」

「…ねえファースト、一体何で泣いてるの?理由を聞かせて?」

「ヒック…わ…私…私…とんでもない事を…」

「…ねえレイ、一体何をしたの?」

「い…碇君に…い、いつも面倒みてもらってるから、えぐ…お、お礼に、さ、財布を買って…プレゼントしたの…」

「は?」「財布?」

「…そ、そうしたらい、碇君喜んでくれて…」

「?いい話じゃない?」
「?なのに何か問題あったの?」

「う、ううっ…そ、それでお礼にって碇君が、ご、ご飯を一緒に、た、食べに出ようって…」

「何よりじゃない。」「ねえ、何処で何食べたの?」

「イタ、イタリア料理…」

「おおー、シンジ君たらやるじゃない!」「ま、これもあたしの教育の賜物ね!」

「…碇君が、一度連れて来たかったんだって…」

「ふんふん。」「それで?」

「お、お会計の時、碇君が払ってくれて…」

「ほー、シンジも一応気を利かせる様になったか。」
「…アスカ、貴女もシンジ君見習ったら?」
「っさいわね!で、ファーストそれでどうしたの?」

「…お、お会計したら…お会計したら…う、うぁぁ…」

「ち、ちょっとファースト、泣いてちゃわからないわよ、一体どうしたのよ!?」
「ああ泣かない泣かない、ほら話聞いたげるから。鼻かんで」

「チーン…あ゙…有難うございます…その…皆引いたの…財布の音に…」
「へ?」「音?」

「私…知らなかったの…碇君に買った財布が…財布が…」

「あ」「まさか…」

「お財布がマジックテープ止めだったなんて!」

「…あ〜あ〜あ〜…」「やっちゃったわね…」

「あの…あのベリベリ音に…あの視線に…た、耐えられなくて…わ、私、私!」

「…逃げたのね…」
「判る!判るわファースト!!」

「でも…でも私!碇君見捨てて逃げた!ああごめんなさい碇君!」

「…仕方ないわ…」
「…正解よ、ファーストあんたは悪くない!」

「…グスッ…あ…有難うございます葛城さん…セカンド…」


◇◆◇


…結局瀕死の僕が解放されたのは翌朝でした…

息も絶え絶えな僕にミサトさんは「ごっみ〜ん忘れてたぁ!」の一言。
「あんたはつくづくウルトラ馬鹿ね、雰囲気読みなさいよ!」とアスカには何故か怒られ。
泣いて謝る綾波の手前「…もういいですよ…」と答えたけど…



ねえ、何で僕が問答無用で殴られて気絶したまま簀巻きにされて次の日まで放置されなきゃならなかったの?

ちなみに綾波から貰った財布は使用禁止だそうで…


何で?



【彼氏の財布がマジックテープ式だった】歌・初音ミク
http://www.youtube.com/watch?v=iPZruZY0pno&sns=em
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.12 )
日時: 2010/11/21 13:28
名前: JUN

息も絶え絶えに



 味噌汁の匂い。鰹出汁だな、とシンジは一瞬で判断した。この匂いで目覚める幸せを、シンジは噛みしめていた。朝起きたら朝食が出来ている。それは素晴らしいことだ
 枕元にある時計は、七時を回る少し前だった。そろそろ起きよう、と瞼に纏わりつく眠気を指先で拭い、上半身を起こす。寝起きは悪い方ではないにしろ、冬に入ると布団から出たくなくなるのは人の性だろう。
 寝室を出、台所へ向かう。匂いの源に会うために。
「レイ、おはよう」
「おはよう、シンジさん……」
 見慣れたエプロン姿の背中に声をかける。眠いのか、声色はどこかふわふわとして捉えどころがない。珍しいことでもないので、テーブルに置かれた新聞を広げる。
 一面に一通り目を通したところで、目の前に塩じゃけとご飯、そして味噌汁が置かれる。相変わらずタイミングがいいな、とシンジは感心せずにいられない。
「ありがとう」
 言って早速味噌汁をすする。うん、完璧だ。
「おいしいよ、レイ」
「よかった」
 エプロンの後姿が答える。弁当を作っているのだろう。それに満足したシンジは、ハンガーにかけられたワイシャツに腕を通し、スーツを羽織る。アイロン当てはあの頃から得意だ。一人暮らしをしていたのだから、当然といえば当然だが。
 振り向くと、レイが弁当箱を差し出していた。特に抵抗もなく受け取る。
「シンジさん、お弁当」
「ありがと。じゃあ――」
 行ってきます、いつものように抱き締めて言おうとした時、シンジの動きが止まった。
「……レイ、熱がない?」
「え……」
 腕の中のレイは、いつもより異常に熱い。足元も、どこか覚束ないように見える。半ば反射的に、シンジはレイの額に手を当てた。
「やっぱり。レイ、熱がある」
「…………」
「熱があるなら、僕も今日は会社――」
「ダメ!」
 普段とは想像もつかない鋭い声で、レイは叫んだ。
「わたし……は、大丈夫だから。シンジさんは、会社…………」
 強引に腕を振り解くと、レイはシンジの背を押した。その力も、今となっては幾分弱々しい。
「レイ!」
 振り向きざまにレイの肩を掴み、シンジは言った。
「無理しないで。今日は休む。レイがなんて言っても、僕は休むからね」
 シンジがそう言った途端――――レイは、その場に崩れ落ちた。



 息も絶え絶えのレイをベッドに運び、そっと布団をかける。頬は普段の雪のように白い肌とは想像もつかないほどに紅潮しており、異変に気づけなかった自分を恥じるには十分すぎるものだった。
「ごめんね、レイ……」
 いつの間にか“当たり前”になってしまっていたのかもしれない。いつでもレイは、会社に行くシンジを笑顔で送り出してくれた。何の不満も漏らさず、いつでも手を抜かず弁当を作り、帰ってくると既に温かい夕食が出来ている。そしてそれをシンジが帰ってくるまで食べずに待っていてくれる。それがどんなに温かく優しいことか、シンジが理解できないはずはなかったのに。
 水で濡らしたタオルを額にそっとのせ、シンジはレイの頬を撫でた。眼の下には、うっすらとクマができていた。知らない間に無理をさせていたことに、シンジは改めて気づいた。
「シンジ、さん……」
 弱々しくレイが声を上げ、閉じられた瞼が震えながら開く。
「レイ、レイ」
 細い手首を握り、指を絡めると、レイは一筋涙を流した。
「シンジさん。ごめんなさい、ごめんなさい…………」
「何言ってるのさ。レイに謝ることなんて――」
「だって、家のことはちゃんとするって、シンジさんと、約束、したのに……」
「……レイ。僕は召使いが欲しくてレイと結婚した訳じゃないんだよ。レイと一緒に生きていきたいと思ったから、レイを幸せにしたいと思ったから、結婚したんだ」
 ゆっくり諭すように言うと、レイはようやく表情を和らげた。
「レイ、食欲ある?」
「……あんまり」
「じゃあ、お粥と雑炊、どっちがいい?」
「……お雑炊が、いい」
「分かった。すぐ作るからね」
 手早くエプロンをつけ、台所に向かう。一人分だけでいいだろう。自分はレイの作ってくれたお弁当を食べればいい。
 昨日の寄せ鍋の残り汁から手早く雑炊を作る。たまには料理もしなくちゃな。なまっちゃうよ。
「七味は?」
「おねがい、します」
「分かった」
 辛すぎない程度にふりかけ、出来上がり。悪くない、とシンジは一人ごちた。
お盆に載せベッドに横たわるレイの元へ運ぶ。折りたたみ式の小さなテーブルを取り出し、その上に置く。
 レイの上半身を背中から支えて起こし、レンゲを手に取る。
「レイ。ほら、あーん」
「…………」
「どうしたの?」
「子供みたいだわ」
「気にしたら負けだよ。いいじゃない、たまには」
 微笑むシンジに、レイも毒気を抜かれたのか、小さな口をぱくっと開けた。息を吹きかけ冷ました雑炊を、レイの口元に運ぶ。
「おいしい?」
「うん」

 レイが食べ終わると、シンジは弁当を広げる。風邪で辛かった筈なのに、やはり手抜きはない。
「レイ、ごめんね。辛いのにお弁当なんて」
「ううん。いいの……」
 弱々しく微笑み、レイはかぶりを振った。シンジはそれに笑顔を返し、玉子焼きを口に運んだ。
「美味しいよ、レイ。さすがだね」
「うれしい……」
「レイの前でお弁当食べるの、考えると久しぶりだね」
「そう?」
「うん。一緒にご飯は食べてるけど、お弁当は久しぶりだな」
 そんな話をするうちに、シンジの弁当は早くも空になった。レイは思わず目を丸くする。
「早いのね、シンジさん」
「あ、うん。会社で早食いの習慣が付いちゃってさ。晩御飯はレイに合わせてるんだけど」
 軽く頭を掻きつつ、シンジは言った。
「会社は、どう?」
「悪くないよ。ただ、やっぱりレイに会いたいかな。寂しいし」
「……そう」

「汗、かかない?」
「少し」
「拭いてあげる。待ってて」
 シンジは立ち上がり、湯で濡らしたタオルを持って戻ってくる。レイは耳を紅くして俯き気味だ。
「脱いでくれるかな」
「へんなこと、しない?」
「しないよ。弱ってるレイを襲う趣味なんてないしね。恥ずかしかったら背中だけ拭くよ。前は自分で拭けるでしょ?」
「ん……」
 そこまで言われることかえって渋りづらいのか、レイはもぞもぞとパジャマを脱ぐ。シンジは微笑んで、レイの背中を優しくこすった。
「どう?」
「気持ちいい」
「そう、よかった。痛かったりしたら、言ってね」
「平気」
 背中の汗を拭き取り、そこで一度タオルを濡らし直して、今度はうなじと髪を拭いた。
「前、自分で拭く?」
「ううん。やっぱり平気」
「そっか」
 本当に邪気もなく、ただ愛おしさと労わりを込めて身体を拭うシンジに、レイは安心したように眼を閉じた。
「なんだか……お姫様になったみたい」
 うっとりして言うレイに、シンジはその身体を拭きながら笑って、
「昔から、レイはお姫様だよ。たった一人しかない、僕の宝物だからね」
 たった一人。そのフレーズに力を込めたと思ったのは、きっとレイの気のせいではないはずだった。
「……だから、勝手にいなくなったら、許さないから」
 レイはそれには応えず、ただシンジの胸に背中を預けた。それで十分だった。
「会社も、もしレイが寂しいなら、休み増やしてもらうよ。今はそんなに忙しい時期じゃないし……ていうか、NERVからもらったお金で、生活はどうとでもなるしね。だから――」
「ううん」
 シンジの言葉を遮り、レイは言った。
「大丈夫。私……少し寂しいけど、でも、シンジさんのご飯作って待ってるの、嫌いじゃないもの。それに――」
 シンジの胸から体を起こし、レイは言った。
「いつまでもNERVに頼ってるわけにいかないし、私、普通の主婦になりたいから」
「……そっか」
 シンジは言うと、レイに服を着せ、再び布団に寝かせた。
「明日には治るかな」
「多分」
「何か、して欲しいこと、ある?」
「……手、握って」
 レイが布団の端から腕を出すと、シンジはそれを優しく取った。
「たまにはこういう日もいいね」
「うん」
 もう大分よくなったのか、レイの表情も普段のそれと変わりなくなっていた。額に手を乗せ、シンジは嬉しげに微笑み、立ち上がった。
「晩御飯、今作るね」
「……待って」
「ん?」
「キス」
「へ?」
「早く」
 虚を衝かれたシンジはしばしうろたえていたが、それでも優しく覆いかぶさるようにして、レイの唇を奪った。
「ふ……」
 初めて交わしたキスも、そういえば看病中だったかもしれない。半ば不意打ちのような形ではあったが、彼女は怒らなかった。
 結局二人仲良く風邪を引くという失態を犯し、散々ミサトやアスカにからかわれたのも今となってはいい思い出だった。
「好き、シンジさん……」
「こら」
「痛っ」
 急に額を弾かれたレイが、涙ぐんでシンジを見る。心持ち表情を硬くしたシンジに、レイは抗議の目線を向けた。
「何するの」
「耳元でそんなイケナイこと囁くんじゃありません」
「シンジさんがちゃんと空気を読んでたら、でこピンなんてしないわ」
「空気を読んだらキスで終わんなくなることくらい、レイもそろそろ理解して」
「……ばか」
 と、一応言ってはみるが、シンジが耳を紅くしていただけでも、レイは十分に満足だった。
「ほら、もう寝て。明日は元気になれるように」
「わかった。……ねえ、シンジさん」
「ん?」
「今度、お休みが取れたら……旅行に行きたい」
 シンジはにっこり笑って、頬をそっと撫でた。
「分かった。今月末にはどこか行こう。どこがいい?」
「……食べ物が美味しいところ」
「ん、分かった。探しとくよ。お肉よりお魚がいいよね」
「うん」
「……下関でも行ってみようか。河豚食べようよ、河豚」
「素敵……」
「だから、おやすみ」
「おやすみなさい……」
 レイの目を掌で閉じて、シンジが電気を消す。シャワーは明日でいい。
 額は通常の体温に戻っていた。無理をさせた自分を反省する。ゆっくりでいいのだ。どんなものを手に入れても、彼女がいなければ意味が無いのだから。
「愛してるよ、レイ……」
 ちゅ、とレイの瞼に口付け、隣に横たわる。普段は少し距離を取るダブルベッドも、今日はそっと寄り添った。
「ぅうん……」
 シンジが横たわるやいなや寝返りを打ち、胴に抱きつく。ふくよかな胸が押し付けられ、シンジは瞬時息を止めた。
「シンジさん、だいすき……」
天然でこれをしてるんだから、恐ろしいな。そう苦笑しながら、シンジも眼を閉じた。


明日のお弁当は、久しぶりに自分で作ろう……

彼女に初めて作ったお弁当のおかずは、たしか――



                 おしまい

メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.13 )
日時: 2010/11/21 13:29
名前: JUN

無理やりすぎてごめんなさい
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.14 )
日時: 2010/11/22 02:03
名前: tamb

■タン塩さん
 何が文学で何がブンガクで何がそうでないかという議論はさておき、

> 片岡義男とか村上春樹とか、その手は読んだことない(爆)

> つまり、ブンガクは苦手です(笑)

 片岡義男って文学か? と思ったのは事実です(笑)。いや、結構好きだけど。文学を志向し
てないならブンガクでもないよなとは思うんだけど。

> フロイス日本史全訳

 驚くほど興味がない(笑)。レビューを見ると、読むと面白いんだろうなとは思うけど。古本
屋にもそうそう並んでないだろうしな。というか、そういうコーナーに行かないし(^^;)。

> ぶっちゃけこの作品はメセニー的なものをイメージして書きました。

 パットメセニーには造詣が深くないので「やっぱりな」とは思わんのだけど(^^;)、私にと
ってのメセニーは独特のスライドとマークイーガンの「ぱああぁぁん」というフレットレスな
ので(あと歯ブラシも)、これよりはAirstreamの方がそれらしい。同じアルバムだけど。普
通の人には何をいってるのかわからんと思うけど(^^;)、そーゆーこと。


■罪無き罪/何処
( No.11 )

 流行ったよなーマジックテープの財布。回りにも結構持ってる奴がいたけど、あれは当時か
ら謎だった。あまりにも必要性がないわな。あれって今でもあるの?
 それはそれとして「いくらどんがたべたかったわー」が頭から離れないんですけど。なんと
かしてもらえませんかね?


■息も絶え絶えに/JUN
( No.12 )

 ぶっちゃけ色々お世話しなくていいから寝かせてやれよという気もしなくもないが(^^;)、
まあこれはこれでいいかなと。というか、普通に主婦業をやってて無理して体調崩すならそれ
はあまりに虚弱体質なので、まずは体力増強をお勧めしたい(笑)。

メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.15 )
日時: 2010/11/26 00:02
名前: 何処

ジオフロントを出ると外は雨だった。


【雨を見たかい-S-】


「うわぁ本当だ、雨…」

僕は思わず驚きを口に出していた。

「綾波良く判ったね…外が雨だなんて…」

運転席の彼女は軽く微笑み車を加速させた。
青い車体は豪雨の中を駆けて行く。

僕達はここ数日ジオフロントに籠りきりだった。
漸く一段落したマギ-2ndの調整作業。激務から解放され、明日は二人揃って公休日。残業も奇跡的に一時間で済み久々の解放感に僕も綾波も浮かれていた。

引き継ぎを終わらせ留守の続いた新居へ帰るべく本部棟から一歩出た時、隣を歩く綾波が傘を用意する様にと言ったのだ。

僕は余程妙な表情をしたらしい。外は雨だと告げた綾波はクスクス笑っていた。

「凄いな、予知能力?」

「内緒。」

綾波は少し得意気に言い、ハンドルを切る。

雨か…

雨の匂いの無いジオフロントはやはりどこか人工的だ。

雨の匂い…これを教えてくれたのは先生だった。


***


『今日は雨か…』

『あめ?』

僕の隣を歩く先生は曇天を眺め呟く。
僕の倍はある楽器ケースを持つ小柄な先生を見上げて僕は聞いたんだ。

『何で判るんですか?』

『匂い。』

『匂い?』

『そう…風に混じる埃や水分が肌触りや匂いで私達に雨の来る事を伝えてくれる。』

『雨の…匂い?…判らないや…』

『判らないんじゃない…どう言う匂いか知らないだけ。』

『え?』

『今、シンジ君は私の話を聞いて雨の匂いや肌触りの感触の存在を知った。が、どんな匂いや感触かは知らない。だから知る事ができない。』

『…?…』

『例えば…チェロも呼吸をしている、雨の日は空気の水分で僅かに音が変わる。知らない人にはチェロの音としか判らない。が、知っている人には明らかに違う。』

『へえ…』

『それに気温が低ければチェロも寒がり、暑ければ暑がる。』

『まるで生き物だ…』

『生きてる。』

『え?』

『楽器も音楽も生きている。奏者は楽器と言うパートナーと音楽と言う生き物を育ててる。』

『生き物…楽器も、音楽も…』


…今になって僕は人に説明する事の難しさに直面し、先生の苦労を思い改めて尊敬する。
先生の音楽教室には色々な年代の生徒が集まっていたが、僕ら子供達へも先生は敬語を使い、疑問を誤魔化さず正しく説明しようとしていた。

…綾波にも先生を紹介したかったな…

そんな事を思いながら視線を左へ。左の席で車と対話する様にハンドルを握りシフトチェンジする綾波の手先は弦を持つ先生の手を連想させる優雅さと激しさを宿して動いている。

…僕は一瞬その姿に見とれた…


***


雨は益々激しく、フロントガラスを水流が覆いワイパーはその存在意義を無くしつつある。
流石に綾波も疲れたのか、僕に休憩の意図を伝えてウインカーを出した。

…たまに僕が運転するとウインカーとワイパー間違えるんだよね…

ファミレスの駐車場へ入り停車。僕は傘を差し助手席から降りた。
青のFRPボディを激しく雨粒が叩き、弾ける散弾が僕の胸に飛ぶ。
運転席側へ周りドアを開ける。車から降り立つ綾波は後ろ手にドアを閉め、僕の傘を持つ右手に腕を絡めた。

毎度の事ながら…女性って何でこんなに華奢でいい匂いで柔らかいんだろう?

二人向き直り車に施錠。綾波の為だ、背広の背中に少し耐えて貰い綾波に傘を傾ける。

…華奢だよな…

彼女をエスコートしながらファミレスへ。パンプスで水溜まりを蹴破る様に早足で進む綾波。
傘を叩く雨音は激しく、綾波はそっと身を寄せて首を傾け頭を凭れ掛けてきた。

…こっそり雨に感謝。


***


熱い珈琲に安堵の吐息。
最初の二口をブラックで楽しみ、熱と苦味が胃から脳に伝わった所でスティックシュガーを一本。
目の前で珈琲に砂糖を入れる蒼銀の髪が微かに揺れる。
彼女と夫婦になってもう二年、彼女が別姓にした理由を僕は知らない。
僕が判っている事は彼女が“綾波”と言う名を選んだという事実だけ。

最も、たかが名前だ。喩え姓を変えなくても何の問題も無い。

だが他人は時として“綾波”姓を名乗る妻に、その外見を絡めて憶測と偏見を交えた好意と言う干渉をしたがる。
けど僕は決めたのだ。彼女を妻に迎えると決めた時に『彼女を守る』と。

名も、瞳の色も、髪も彼女の持つ個性だ。もし変えるにしてもそれは僕や周りが決める事ではない。
それは“綾波レイ”が自ら選択する事だから。


窓の外を眺める彼女。窓ガラスを滑る水滴に彼女は何を見、何を思うのだろう。
雨の景色…僕は綾波やアスカやミサトさんや先生と見た雨を思い出していた。


***


『何を見てるの?』

唐突に金色の髪の少女が問い掛けた。音楽を聞く気にもならず壁に凭れて座り只ぼんやりしてた僕はやっぱりぼんやりしながら“雨”と一言呟くように彼女に答えた。

何を思ったのか、彼女も僕の隣に腰掛け、窓の外を眺める。

『止まないわね…』『うん…』

隣の体温が気持ち良くて逃げ出したくなる。だけど動く気にもならず僕は只外を眺め…

二人揃って寝転けていたらしい。僕らは頭を凭れ合って寝ていて…ミサトさんに毛布を掛けられた僕らの姿を証拠画像に撮られていてあの後大変だった…


ミサトさんは帰ってこなかった。遺された遺言状には財産の相続人としてアスカ、綾波、僕の三人が指定されていて、僕らが成人した日、アスカはフェラーリ、綾波はもう一台のルノーを受け取り、僕はマンションを相続した。
ミサトさんと最後に見た雨の風景は…


『雨ね…』

『折角の休みに残念でしたね。』

『…ねぇシンジ君…』

『はい?』

『雨の海って見た事ある?』

ミサトさんの顔を見上げながら“否”と首を横に振る。

『…じゃ、今から見に行きましょ!』

『え!?い、今からですかぁ!?』

『そ!思い付いたが吉日よ!』

『…結局自分が行きたいだけじゃ…』『あんか言った?』『いえ何も』

そして僕はミサトさんのドライブに付き合う事になった。着いた海は…

『誰も…居ませんね…』

『そうね…』

車を降りた僕らの前には荒れる海。
鉛色の空、降り頻る雨、波頭は白く砕け灰色の砂浜を洗う…その景色に僕は圧倒された。

『…こんな海、初めて見ました…』

『…私は…何度か…』

…ミサトさんもこんな顔をするんだ…

『…何でここに来たんです?』

『…私が最後に笑った海…だからかな?』

『え?』

『…シンジ君…心から笑うってとても大切な事なの…』

僕は何も言えず、ミサトさんと暫く海を見ていた。

『…帰りましょ。』

『…はい。』

帰りの車内でもミサトさんは無言だった。

…あんな寂しそうな姿を、僕はもう一人しか知らない。
そのもう一人…綾波と雨を最初に見た時…あれはシンクロテストの日だった…


ジオフロント入口前、不意に少女が傘を畳み空を見上げる。

『!?…綾波、何を…』

『…雨に当たっているの…』

目の前に立つ少女は振り向かず告げる。その彫像の様な姿は遠く…美しかった。

『濡れるよ…』

『…これからシンクロテストだから濡れるのは一緒…』

『だ…だけどさ…』

『時間ね…じゃ、行きましょ。』

『あ、ま、待って綾波!?』

歩き出した綾波を慌てて追いかける。

『…何故?』

『何?』

『何で傘を閉じたの?』

『…雨を感じたかったの。』

『だからってわざわざ濡れるなんて…』

『?…良く判らない…雨に当たれば当然濡れるわ…』
『そ、そう言う意味じゃ…はぁ。』

『?』


雨に打たれる綾波を再び見たのは全てが終わり、又始まって一年が過ぎた頃だった。


***


回想に耽る僕に不意に声が掛かる。

「お待たせいたしました、ケーキセットの苺ミルフィールとザッハトルテになります。」

「「あ、ありがとう。」」

僕らは同時に同じ台詞を口にし、思わず顔を見合せた。
その間抜けさに思わず僕と綾波は同時に吹き出してしまい、可愛らしい店員にまで笑われてしまった。

「ご夫婦ですか?」

「ええ、もう二年になります。」

未だ笑いの止まらない僕の代わりに答える彼女。

「いいなぁお二人仲良さそうで。」

「そう?ありがとう。」

未だ少女らしさの残る店員は“私もあんな車で迎えに来て欲しい”と僕を見る。
…僕ペーパードライバーなんだけどな…

夢を壊さぬ様に笑顔で“でも車のローンで大変だから”とそっと話題をすり替える綾波。
その気遣いが又何故か可笑しくて僕は笑いを止められずにいた。
暫く話をして彼女が去り、向き直った綾波は僕がまだ笑っているのを見て不機嫌な様子だ。

「碇君、笑いすぎ。」

「ごめんごめん、何か可笑しくってさ。」

「もう…」

ハムスターみたいに頬を膨らませ綾波は僕のミルフィールから苺を取…あああああああっっっ!?

…それは無いよ綾波ぃ…


***


あれは高校の夏休み、雨の中買い物に出た僕は公園に佇む蒼銀の髪の少女を見た。
傘も挿さず雨に打たれて空を見上げている。

『綾波!?』

走り寄り傘の外に手を伸ばし、少女の手を掴む。
その冷たさに思わず手を戻しそうになり、なんとか踏み止まって僕は彼女の手を握り続けた。

『冷たい。』

『…雨に濡れるとはそう言う事。』

『…知ってる…』

『…そう…』

…そう、知っている。あの日の僕も雨粒に叩かれながら空を見上げていたから。

雨粒に叩かれながら空を見上げる綾波。
雨粒に叩かれながら空を見上げる僕。

先生は何も言わず僕を見ていた。
僕は何も言えず綾波の手を握っていた。

あの日の少年が呟く
『…僕は…いらない子供なのかな…』

目の前で天を仰ぐ少女が呟く
『…私…人…それとも…』


視界が急に黒くなる。振り返れば先生が傘を差し伸べていた。

僕は綾波に傘を差し伸べていた。驚いた様に振り返る少女に僕はあの日の先生と同じ事を告げる。

『『…そのままでは風邪を引くよ。帰って風呂に入って服を着替えて美味しいご飯を食べよう。』』


『…はい。』
僕は答える
『…はい。』
綾波が答える


先生は僕の手を取り歩き出した。
僕は綾波の腕を握ったまま歩き出した。

この手は錨、僕を停める錨。錨を握り返す僕の腕は錨鎖。
僕の手は錨、引き留める為に掴む君の腕は絆。

先生…
綾波…


***


あの時何故綾波が雨に打たれていたのか、理由は今でも知らない。
けれど、僕は覚えている。あの雨と、僕の手を引く先生の姿と掌の熱さ、雨に打たれてなお美しい少女の姿とその身体の冷たさを。

雨の度思い出す記憶…忘れる事は無いだろう。

「そろそろ行こうか。」
「ええ。」

会計を済ませ外へ。雨脚は弱まったが相変わらず止む気配は無い。
僕らは一本の傘の下に身を寄せ合い車へ歩く。

「子供…未だ作らないで欲しいみたい…託児所の拡張計画が来期まで伸びたみたいで…」

綾波が告げる。

「未だ子供は早いんじゃ無いかな…」

苦笑混じりに答える僕は、言葉を継いだ。

「…出来ちゃえば関係無いけどね。カヲル君の処みたいに。」

あ、綾波がむくれてる。

「…そのせいで私有給消化出来ないのよ?」

それはそうだ。今日の残業だって本来は彼女の領分の筈だったのだ。

「…産休から彼女が帰るまで半年か…」

綾波がふと視線を遠くに向けた。雨煙る景色の向こう側に…
その表情はあの日の綾波と同じ。
…だけど綾波は僕に手を絡めている。その手は僕の錨、君の絆。

「…ねえ碇君、雨は好き?」

不意に綾波が問い掛ける。

「うーん洗濯は乾かないし」「そう言う事じゃ無くて」

わざと言う僕を振り向き睨む綾波。何と言うか…可愛い…

「…今は好きだな。こうして相合い傘が出来るし。」「私も。」

傘の中二人、雨の天幕の下で僕らは太陽に隠れてこっそりキスをした…





…新居への帰宅が次の日になった事は秘密。



【I Sing For You】巡音ルカ
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