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サイト開設十周年カウントダウン企画・十二月
日時: 2010/12/01 18:31
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・悪女になるなら
・うさぎさんとくまさんが恋をしました
・胸いっぱいの愛を

です。
八月〜十一月の企画及び1111111ヒット記念企画も鋭意継続中です。

お題の困難さに拍車がかかってますが、頑張ってください。私も頑張ります。
では、どうぞ。

以上、例によってほぼコピペ(笑)。だって書くことないもん。

メンテ

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Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.1 )
日時: 2010/12/03 03:29
名前: 何処

OP【ワンダーラスト】巡音ルカ
http://www.youtube.com/watch?v=9DGQWrQYYxM&sns=em


『碇君…』

「綾波…」

『教えて…』

「え?」

『愛って何?』

「…愛って何だろう」

『解らない…』

「判らない…」

『「わからない…」』


【世界の終わりの果ての先】


…起きた?

…起こされたのよ…うなされてたわよ又…

…ホットミルクでいいわよね?

…シンジ、又ファーストの事考えてたでしょ…分かるわよそれくらい、もう何年一緒に暮らしてると思ってるのよ。

…いない人間相手じゃ勝負にすらならないわ。勝ち逃げって奴ね。

…謝らなくていいわ。あたしは納得してここに居る訳だし。

…ファーストは、あの娘は帰ってこなかった、けれど私達は還って来た。それが事実…又泣いて…仕方無いわねもう、ほらこっち来なさいよ。





…落ち着いた?

…ファーストを怖がった事、そんなに悔やんでるの?

…あたしがもしそんな光景を見たらあんた処の騒ぎじゃなかったわね。

…言葉通りの意味よ。だって普通そんな同じ人間が何人も水槽の中に居るなんて見たらパニックよ間違い無く。

…怖いわよ、そんな相手が隣にいたら。だって…判らないじゃない、本人か別人か、それに…

…もしも、もしもよ、仮に私も同じ様に沢山の自分がいてその中の一つだったら…

…怖いの…

私…あの娘と違うわよね?…私も沢山の私の中の一人なんて事無いわよね?

…あたしね、あの娘に言った事があるのよ…人形の癖にって…

私…私…馬鹿、どうしようも無い位の馬鹿!あの娘は…人間だったのよ…

…何よその目は…又私を憐れむの!?ハン!あんたに憐れみ掛けられるのは御免だわ!

私は私よ!嫌な所も臆病な所も醜い卑怯な所も全て私!私の罪も罰もそれが私の証だもの、誰にも渡さない!

触らないで!私は慰めなん…なん…うぇぇ…

…エクッ、ヒクッ…



…お願い…

…離さないで…

…もっとギュッとして…


◆*◆


「…マイク切るぞ、後は赤外線に切り替える。」
「…私達、いつまでこの子達を苦しめなければならないのかしら…」

「…さあな…」

「…」

「…交替だ。君は寝てろ。」
「…先輩…いえ、赤木博士が生前私に言ったわ…潔癖症は辛いわよって…」
「…そうか…」

「…赤木博士は…悪女になりたかったのかも知れないわ…」
「?」
「だって…悪女になれば罪の意識に苦しめられずに済むもの…」
「君も悪女を目指すか?」

「…悪女になるなら自分を誤魔化す為に総てを先…赤木博士や葛城さんや、誰かに擦り付けないと…」

「出来るのかい?」
「…無理ね、私には葛城さんみたいに子供達を支えるなんて出来なかったし赤木博士みたいに割り切る事も出来なかったわ…」

「…つくづく碇司令には頭が下がる…総ての責任を引き受けるなんて他の誰にも出来はしない…」

「…そう言えば日向君、内調に戻ったのよね…」
「“諜報員”か…因果な商売だよな…挙げ句に使い捨てにされて…」

「…司令も葛城さんも知ってたそうよ…」
「“情報はギブアンドテイク”か…日向の奴、葛城さんに惚れてたんだぜ?惚れた相手と化かしあいか…やれやれ、俺にゃ無理だな…」
「…死体も見付からなかったのよね、葛城さん…」
「…ん?あれは…」「…レイちゃん!?」
「…ロストした。マイクとカメラを!」
「室内は異常無し!直ちに保安部に連絡!電磁シールドは既に展開!」
「行くぜマヤ!ロンギヌスブレッドは五発だ!亡霊退治にゃ厳しいか!」
「…大丈夫!未だATフィールドは感知して無い!」


◆*◆


碇君…碇君…碇君…

「レイちゃん!」

碇君…碇君…

「…残留思念だ…」
「…未だ実体化してないわね…」
「…哀れだな…」
「電磁シールドに引っ掛かっているわ…お願い、早く」
「オーケイ、一発で楽にしてやる。」
「レイちゃん…ごめんなさい…貴女はもう…私達にはこうするしか…」

碇君…碇君…いか“ドシュッ!”

碇君碇君碇君イカリクンイカリクンイカリクンイカリク…

「目標…消滅…」
「…こんな事あの子達にゃ言えねえな…」
「…まるで怪談よね…」
「…耳無し芳一だっけ…」
「牡丹燈籠ね…」
「そうか…牡丹燈籠か…」

「今保安部に連絡したわ…後は任せましょう。」
「ああ…」
「私達…いつ贖罪できるのかしら…」
「無理だろうな…ま、いずれ共に地獄だ、一人じゃ無いだけマシだろうぜ」
「…行きましょう。」
「…今回も満月か…」


… イ  カ   リ   ク
ン   





『…綾波?』



ED【ワールズエンド・ダンスホール】初音ミク・巡音ルカ
http://www.youtube.com/watch?v=L0gYBduknLI&sns=em
YouTube 動画ポップアップ再生
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十二月 ( No.2 )
日時: 2010/12/04 08:38
名前: tamb

■世界の終わりの果ての先/何処
( No.1 )

 満月の夜が来るたびにシンジはうなされアスカが泣き、レイが現れるのだとしたら、こんな
に悲しい話はない。そしてラストが秀逸。こういうのは結構すごい。『…綾波?』なんて誰で
も書けるけど、結構書けないもんだよ。

> ワンダーラスト
 エフェクトというかCGIというか、そういったものをもう少し2D方向に振れればもっと溶け
ると思う。言うほど簡単じゃないけど。勇気もいるし。

> ワールズエンド・ダンスホール
 これは特にコメントないな(^^;)。
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十二月 ( No.3 )
日時: 2010/12/16 20:10
名前: JUN

胸いっぱいの愛を/Written By JUN


 ミサトの鋭い眼光が、一人の男を射抜いていた。男の蒼白になった顔からは、恐怖だけが浮かんで
いた。シンジの保護者代理、という肩書きは今となっては意味を成さず、幾度となく死線をくぐりぬ
けた作戦部長として、ひいては一人の女として、ミサトはそこに立っていた。
 その部屋の隅には、一人の少女が細かく震えながら、簡素なパイプ椅子に腰掛けていた。普段は冷
淡なリツコが、温かいミルクを差し出す。リツコは幾度か退室を勧めたが、少女は頑なに断り、一人
の想い人がやって来るのを、ただひたすら待っていた。
 諦めたリツコが、携帯電話を取り出し、誰かと小声で話す。そう、分かった、などのやり取りが交
わされた後、少女の方に向き直った。
「……来たわよ、彼」
 その声に、少女はぱっと顔を上げて、立ち上がる。それと同時に、部屋の扉ががん、と大きな音を
立てて開いた。
「綾波!」
 現れた彼に、少女は力の限り飛びつき、激しく嗚咽を漏らした。決して涙を流すことが無かった少
女の異常事態に、少年の眸は怒りに燃えた。
「……あんたか」
 その声は、長く付き合ったミサトでもたじろぐほどの迫力を孕んでいた。












 その日は、珍しく一人で電車に乗った日だった。シンジにお弁当を作ろうと思い立ち、弁当箱を買
うために二駅隣のデパートへと足を伸ばしていた、その帰り道のことだった。
 混んでいるな、と思う。買い物の時間帯をもう少し早くすべきだったかもしれない。人ごみは今で
もあまり好きでない。暖房の効きすぎで暑いのも不快感を誘発した。
 早く着け、と念じてみる。気を紛らわすために、先ほど購入したばかりの弁当箱を考えた。シンジ
が自分に渡してくれる弁当箱は水色なので、お揃いがいいかもしれない。しかしどっちがどっちか分
からなくなるのは困るので、別の色にしようか。シンプルなデザインが好きそうだから、柄はなくて
いいかもしれない。でも水色もやっぱり――悩んだ末、結局水色になった。お揃いの魅力に抗えなか
ったといえばそれまでだが、男の子の弁当箱なので少し大きめにした分、間違えることは無いと思う。
受け取ったシンジはどんな顔をするだろう。喜んでくれて、あの朗らかな笑顔が見られるなら、多少
の絆創膏も貼り甲斐があるというものだ。
 彼と付き合うことは、レイにとっては新たな感情の発見の連続であると同時に、この上ない喜びだ
った。いつも優しく、いつもレイを気遣ってくれる彼に、少しでも恩返しをしたい、と思い立ったの
は、料理を作ることだった。
 お弁当の交換、と考えるだけで胸が弾んだ。技量という点では今の自分は彼に到底及ばない。しか
し彼の恋人として――そして未来のお嫁さんとして――料理を作れるようになりたい。彼が自分に注
いでくれる愛の内少しでも、彼に返せるような、そんな人間になりたい。弁当箱を入れた鞄を、レイ
はそっと抱き締めた。
 そんなことを考えていると、多少気分も晴れる。しかし自分にとって当面の問題は、彼に食べさせ
られる代物が作れるかどうかだ。簡単な料理ならできるはず、と希望を託してみるがやはり不安だ。
彼はどんなものでも食べてくれるだろうが、やはり美味しいものを食べて欲しい。


 新たに乗客が乗り込み、背中を押される。やっぱり人ごみは嫌い、などと思ったのも束の間だった。
不意に、鞄のように硬質な感触が腰の辺りに走った。混んでいるのだ、仕方が無い。
 しかし、その感触の位置が次第に下がってきた時、レイの呼吸が止まった。鞄じゃない――手だ。
無骨な男の。

 クラスメートが話しているのを聞いたことはあったし、その存在も知っていた。まさか自分が、と
いうのは使い古された言葉だが、使い古された言葉には使い古されるだけの理由がある。レイが潜在
的に自分の容姿に自信が無かった、というのも影響していた、といえる。
 恐怖で声が出なくなるなど、迷信だと思っていた。痴漢くらい大声を出せばそれで済む話だと、た
かを括っていた。声が出なくなるのは、恐怖のためばかりではない。今更ながらに身についた羞恥心。
それもまた声帯を締め付けていた。
 次第に手の位置が下がってくる。長くて煩わしいと思っていた制服のスカートに、初めて感謝した。
「や……」
 決心して大声を出そうとしても、意に反して喉からはかすれた声しか出ず、情けなくなる。足が震
え、力が出ない中せめて鞄だけでも守ろうと、いっそう強くそれを抱き締めるが、それも覚束ない。
無遠慮にまさぐる手が怖かった。シンジだけに許したい。そう思っていた領域だった。触ってよいの
はシンジだけ、そう心に誓っていたのに。気持ち悪くて、怖くて、腹が立って――


 ――碇くん、助けて……

「やめろ!」

 見知らぬ男性の叫び声は、レイにとって天の助けだった。




 普通なら警察に送られる所を、被害者がNERV関係者ということでそちらに回された。勤め先は名
の知れた大企業だった。

「クズね」

 開口一番、ミサトはそう斬って捨てた。男の肩がびくりと震える。美人な彼女がそう刺すとやはり
相応に効くのか、男は白い顔をますます白くした。

 来たばかりのシンジは、侮蔑の眼差しで男を睨んでいた。男はそちらと目も合わせようとしなかっ
た。
「なんなら、ここで撃ち殺してあげてもいいんだけど」
 ミサトが懐から拳銃を取り出すと、男は、狼狽した様子で初めて声を上げた。
「そ、そんなこと――」
 精一杯の虚勢を張ったつもりかもしれないが、それを相手にする彼女ではない。
「出来ない組織だと思うのかしら?」
 あまりに強いミサトの目線に、男はかえって視線を逸らすことができなくなった。眉間に銃口を突
きつけ「もちろん実弾だから、忘れないでね」と釘を刺した、
「あんた、NERVの逆鱗に触れたのよ。警察じゃなくてここに渡された意味を、一度じっくり考えて
みることね。きっちり覚えておきなさい。あんたを闇に葬り去ることが、いかに簡単かということを。
そして――」
 一瞬だけレイとシンジの方へ目をやって、
「彼らを守るためなら、NERVはどんな法を犯すことも辞さないということを」
 その脅しに、男はわなわなと身を震わせた。それでもレイに謝罪をしないのは、自分の経歴に対す
る自尊心からか。

「どうする?シンジ君。好きにしていいわ」
「殺してくださって構いません」
 一片の躊躇いも無く、そして恐ろしく低い声で、シンジは言った。ミサトも驚いたが、誰より驚い
たのはレイだった。一人の人間の命を永遠に奪うことの苦しみを、彼は誰よりも知っていたからだ。
激しく震える男を見据えて、言う。
「綾波を傷つけた人を、許す気なんてない」
「だめ……」
 その時になって、レイが初めて声を上げた。シンジが気遣わしげに彼女を見る。
「綾波」
「あんな、あんな人のために、碇くんが傷つく必要なんてない……」
「でも、あの男のせいで、綾波は――」
「シンジ君」
 二人の会話を遮って、ミサトが声をかけた。
「レイの意志を尊重するわ。……リツコ」
 リツコは頷いて、薄い手帳を取り出した。
「三十四歳。実名、社名も公表可能ね。せいぜいその名前と薄汚い顔を世間に晒してくるといいわ。
ニュース番組から安い週刊誌まで食いつくわよ。NERVの情報だと、あなたの会社には政界への癒着
もあるみたいだし、そっちもまとめて吊るし上げって所かしら」
 がた、と席を揺らした男に、
「終わったのよ、アンタ」
 ミサトの一言に、男は今度こそ立ち直りようもなく机の上に突っ伏した。







 帰路についたレイを、シンジは送って行く。いつもより二人の間にある距離が遠いのは、シンジの
迷いだった。下手に触れれば、彼女は電車内での行為を思い出してしまうかもしれないと思ったから
だ。
 レイも、それ以上近づこうとはしない。当然といえば当然だが、二人の間にはかつて無いほど冷た
い空気が流れていた。
 レイを護れなかった。シンジはその後悔を噛み締めていた。ずっと側にいて護ると誓ったのに、そ
れすら果たせなかったことは、シンジを大きく傷つけた。しかし、自分に傷つく権利は無い。誰より
傷ついているのは――

「……消して」

 かすれた声で、搾り出すようにレイは言った。

「綾波……?」
「あんな男に触られたなんて、考えたくない。だから……」
 遠慮がちに、レイはシンジに抱きついた。
「碇くんで、上書き、して…………」
 普段、道の真ん中でレイを抱き締めるような暴挙は犯さない。だが、シンジはレイを、いつもする
それとは比べ物にならないほど強く、抱き締めた。
 シンジの耳元で苦しげな喘ぎが漏れる。しかし、シンジは力を緩めることをしなかった。自分に抱
き締められているという実感を出来るだけ多く、レイに残したかったからだ。――胸の中で溢れんば
かりの愛を、少なくとも彼女が不安にならないだけの愛を、彼女に注ぎたい、そう思ったからだ。

「ごめん、綾波。護ってあげられなくて、ごめん……」
 背中に回された腕が激しく震える。レイはふるふるとかぶりを振った。
「碇くんの、せいじゃない……」
 レイはそのまま、シンジの頬に口付ける。レイの唇は涙のせいか、いつもより濡れていた。
 シンジは不安だった。自分がそれに応えてよいのか。男性に対する恐怖を、呼び覚ましてしまうの
ではないかと――。
「碇くんも、キス、して……」
「怖く、ない?」
「初めから、私、碇くんに全部あげたいって、思ってたから。だから……私の頭の中も、心も、全部
碇くんで、塗りつぶして……」
 その声に、シンジは貪るように、レイの唇を奪った。レイは目を閉じ、精一杯それに応えた。

 帰りたくない、そうシンジは思った。出来ることなら、彼女の家で、一晩を共にしたい。正真正銘、
彼女を自分だけのものにしたい。
 今彼女を抱くことを、自分は望んでいる。或いは、彼女も望んでいるのかもしれない。しかし、そ
れは彼女の心に出来た傷に付け込んでいるだけではないのか、そう思うと、シンジは最後の一歩を踏
み出せなかった。
 名残を残しながら、シンジはレイの唇を離した。涙に潤んだ紅い眸を見ると、たまらなく愛しい気
持ちになる。もう一度だけ強く抱き締め、シンジはレイの背中に回した腕を緩めた。
「……次から、買い物は一緒に行こう。二度と、怖い思いはさせないから」
「でも……」
「ん?」
 レイは、提げていた鞄を開き、その中から小さな紙袋を取り出した。その中身を認め、シンジはも
う一度、レイを抱き寄せる。
「大好きだ、綾波……」
「ん……」
 彼女の深い想いは、どこまでもシンジの胸を打った。どこかで彼女を子ども扱いしていたシンジは、
まず自分を恥じた。彼女を支えているという自負もあった。しかし、今考えてみれば、むしろ彼女に
支えられているのだった。シンジを拒まず抱き返してくれる腕は、いつでも温かい。

「碇くん、お願いが、あるの」
「ん?」
 甘えるようにシンジの胸に鼻をこすりつけ、レイは言った。
「明日まで、一緒にいて……」

 細い声だった。しかし、強い声だった。その中にあるのは、数少ないレイの確固たる自己主張だっ
た。彼女の身体の柔らかさに、理性のたがが外れそうになる。しかし、彼女が望んでいるのは、きっ
とそういうことじゃない、とシンジは結論付ける。本当に明日まで一緒にいて欲しいのだ。彼女の心
についた傷を癒してあげられるのは、自分しかいない。
 だが、自分にそれが出来るのか。彼女に襲い掛からない確証など無い。肌で感じるレイの柔らかさ
は、どこまでも魅力的だった。かつて一度だけ触れたことがあるその胸。その柔らかさを、自分は皮
肉にも知っているのだ。
 する時は、本当に心から満たされた状態でしたい。それはシンジの望みだった。彼女の傷につけこ
むような形にはしたくない。それが卑怯な逃げだと分かっていたからこそ、シンジはそれを曲げたく
なかった。

「でも、綾波。僕は……」
「だめ……?」
 途端にレイの声が寂しげなものになる。背中に回された腕が、少しだけ緩んだ。
「僕じゃ、明日まで、我慢できないかもしれないんだ。だから――」
「……なら」
 再び、レイは腕に力を込めた。
「……すればいい」
「でも」
「私は、いつでも構わない。碇くんの好きな時にすればいい。もし今じゃなくたって、私は、絶対碇
くんとって、決めてるから……」
 レイの言葉は、シンジにとって純粋に驚きだった。どうしてそこまで、という思いもあった。
「だから今日、すごく嫌だった。碇くんのためにあるのに、碇くんじゃなきゃだめなのに。触ってる
のが碇くんだったら、どんなによかっただろうって。知らない男に触られた身体なんて、碇くんにし
てもらう権利、ないかもしれないけど、でも――」
「どうして、そんなに僕のこと……」
「……碇くんは、いつでも温かいから。ヤシマ作戦の時に触れた感覚、今でもちゃんと覚えてる。碇
くんは、わたしをヒトにしてくれた。だから、碇くんの腕の中で、私の心も身体も、全部碇くんで満
たしてもらえるなら、それより欲しいものなんて、もう、何も無い……」
 レイの口から紡ぎだされる言葉は、一つ一つがシンジの心を揺さぶった。自分の躊躇いがいかに情
けないか、そしていかに自己中心的だったか、それを実感せずにいられない。
「それとも、やっぱり、嫌……?」
 不安に大きく揺れる声。しかしその声が、シンジに最後の決意を促した。

「……分かった、綾波。明日まで、ううん、それからもずっと、一緒にいよう」
 今度こそ迷いなく、シンジは言った。レイの眸が歓喜に溢れ、もう一度強く抱き締める。

「ごめんね、意気地なしで。女の子にここまで言わせるなんて、情けないよね」
「そんなことない」
 腕をほどいて、レイはシンジの目を見据えた。
「碇くんは、優しいから。そういうところも、好きだから」
「……ありがと、綾波」
 左手を差し出すと、レイはそれにそっと自分の手を重ねた。
「行こうか、綾波」
「……私の家は、あっち」
 いつもと違う方向に歩き出したシンジに、レイは正しい方向を指差す。
「晩御飯、食べないの?一緒に作ろう」
 微笑むシンジに、レイも笑みを返した。自然に笑うことが出来るようになったのも、思えばシンジ
のお陰だ。

「何がいい?」
 レイは考える。彼がくれた温もりを、少しでも返せるのは――
「お味噌汁、教えて……」



 Fin…

メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十二月 ( No.4 )
日時: 2010/12/16 20:11
名前: JUN

おうういつもと同じ
テコ入れしなきゃ……
メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.5 )
日時: 2010/12/17 00:12
名前: 何処

【幸せになれ】

妻と歩く。

小柄な妻は跳ねる様に歩く。大柄な私からすれば苦労そうに見えるが妻に言わせればこれが楽なんだとか。
対して私の歩みはゆっくりだ。初めてのデートは子犬にまとわりつかれた牛の気分だった…

あの時妻の動きに合わせて跳ねていた長い髪は今は無い。
戦自侵攻の数ヶ月後、妻は髪を切り、私と共にネルフを辞めた。
今日は二人の娘へのプレゼントを買うつもりだ。
未だ幼い二人だが長女はプーさん、次女はミっヒーがお気に入りだ。

「あら?あなたアレ…」

「?」

不意に立ち止まった妻。その視線の先には…

「…シンジ君だよ…」

「やっぱり…」

間違い無い。そしてあの着ぐるみから二つ風船を貰っているのは…

「…レイちゃん…」

「生きてた…あの二人も生きてたんだ…」

私達は呆然としていた。
少女は少年に風船を一つ渡して微笑んでいる。
そして仲良く風船片手に手を繋いで歩む二人を只眺め、いつしか私達は涙を流していた。
妻は夢見る様に呟く…

「…あの風船、プーさんとミっヒーだったわ…」

「…二人らしいかもな。」

二人の背中が視界を去るまで私達はその場に立ち尽くしていた。

「…くまさんとうさぎさんは恋をしました。そして二人は無事結ばれました…」

涙を拭いて妻は笑顔で私に告げる。

「…貴方、警備部の女子から整備課の熊さんって呼ばれてたのよ?無精髭にいっつも黒ずくめで背も大きいから。」

「整備課じゃ君は警備部の兎さんと言われてたがね。歩き方がぴょんぴょんしてて…」

「「クスクス…」」

私達は着ぐるみに足を向けた。風船を貰う為に。
そう、娘達にも風船を渡そう、どんな高いプレゼントよりその方がいい。
あの二人の様な笑顔を娘達も浮かべられれば…最高じゃないか!

私達は足を早める。あの二人の様に笑顔で、手を繋いで。

この胸一杯の愛を、君達に与える為に。



【無条件幸福】初音ミク
http://www.youtube.com/watch?v=rS1A8wef1L4&sns=em


風邪で瀕死…皆様風邪とインフルエンザ流行ってますからお気をつけあれ…
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十二月 ( No.6 )
日時: 2010/12/21 03:41
名前: tamb

■胸いっぱいの愛を/JUN
( No.3 )

 原則として綾波レイには碇シンジ以外の男性は指一本触れてはならない、という不文律が私
の中にはあるので(あくまでも原則で例外はあるんですが)、これは題材的に読めませんでし
た。すいません。読める人の評価を待ちます。


■幸せになれ/何処
( No.5 )

 これもいい話だなぁ。うさぎはミっヒーじゃなくてミッフィーだと思うけど(^^;)。
 にしても、このお題で書けるとは思ってなかった(爆)。

> 皆様風邪とインフルエンザ流行ってますからお気をつけあれ

 遅かったのだった(笑)。

> 無条件幸福

 とてもオープニングっぽくていい。しかしいわゆるVOCALOIDってのは才能発掘しまくってる
ような気がするな。

メンテ
Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十二月 ( No.7 )
日時: 2010/12/25 00:40
名前: ねも

お題 悪女になるなら


……「なるなら」ってどう表現すればよかったのやら。

というわけで初めまして。ねもと申します。
不躾ながら飛び入りで参加させていただきました。
ご笑覧くださいませ。
添付:1293205226-1.jpg
メンテ

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