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親父補完委員会((笑))【ゲンドウ
日時: 2011/10/25 23:53
名前: 何処

【ゲンドウ・心の向こう側−残渣−】


夢を見た。


懐かしい夢だった。


夢と言うより思い出か。

…否、夢物語の様な思い出だから夢かも知れない。

あれは何度目の事だったか、私が妻と映画館へ行った時の夢だ。

夢の中私は妻と映画を見ている。
妻と二人、ポップコーン片手に益躰も無い…いや、他愛ないストーリーを眺める。

隣には空虚な在り来たりの子供騙しを楽しむ妻。幸せに満ち日々の暮らしに充足した日常に育った女…

私は何故ここに…この女の隣に居るのだろう。

…自ら望んだ筈の存在になり居場所を得ながら、苛立ちを抑えられずに居心地の悪い椅子の上に身動ぎして一人背を伸ばす。

ふと掌を眺める。

何時でもこの掌が私を現実へ…過去へと引き戻す。
…あの地獄こそが私の現実だったから。

治療の甲斐無く倒れ行く飢えた難民、痩せ衰えこの手の内で息絶える子供、意味無く撃たれる市民、僅かな水と食糧の為身を売り盗み奪い殺し合う民衆、それを助長する狂信者共…

只一欠片の食糧が、只一錠の薬品が、只一本の注射が無いだけで目の前の死を避けられぬ人々を一体何人看取ったのだろう。

僅かな食糧の為子を売る親、援助物資を横流しする役人、薬品の注文書を書き換える上司、援助額を水増しする政府、支援の成果を吹聴する団体、これを機会に領土を狙う隣国、子供達を兵士に徴収する軍隊、利権に群がる企業…人間不信にもなろう。

…だが、私は彼等を笑えまい。自らの幸せこそが一番だと知った今となれば。

この手に残る死の感触を、私は忘れる事無く生きて来た…ユイの手を取るまで。
…良いのだろうか、このまま流されて…
今の私は…


気が付けば既に映画は終わっていた。
立ち去る人々を見送りながら私は座り心地の悪い椅子に沈んだまま。
その時、妻が私の耳許に囁いた。

妻は告げた…彼女が母になる事を。

その瞬間、私の掌は過去を取り落とした。

気が付けば、周囲の目も忘れ私の手は今を…妻ともう一人…二人かもしれないが…抱き上げていた。


▲▽▲



「夢か…」

仮眠室のベッドに靴も脱がず倒れこんだ姿のまま、一人呟く。
私を眠りから引き戻した原因…枕元の携帯端末機が呼んでいる…

身を起こし眼鏡を掛け携帯端末を開く

「…私だ。」

『お早うございます司令、現在06:07です、申し訳ございません指定時間より二分遅くなりました。』

「…構わん。誤差範囲内だ。本日のスケジュールは予定通りだな?」

「は。メインの零号機起動試験は1045予定変わらず。レイの体調も万全です。」

「…ご苦労…1015にはそちらに向かう、準備を頼む。」

「は。」


…一瞬、ユイと赤木君がだぶって見えた。

端末を切り、頭を振りながらシャワーを浴びる為浴室へ向かう。

「…男ならシンジ、女ならレイ…か…」

無意識に私は呟いていた。
…つい力が入った様だ。浴室の扉が音を立てた


△▼△


「レイ!?」

気が付いた時にはもう射出されたエントリープラグへ走り出していた。

非常口開閉ハンドルに手を伸ばす…余りの熱さに手を放しかけ、再びハンドルを握る。

掌が、焼ける。

苦痛が、襲う。


やっと開けたプラグの中…レイは生きていた。

一瞬、掌の痛みを、思い出を忘れた。



…眼鏡を無くした事に気付いたのは暫く後だった。



初音ミク 【VOiCE】

http://www.youtube.com/watch?v=yvTZnxm7u-I&sns=em

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.38 )
日時: 2014/03/22 23:46
名前: tamb

> 「葛城さん…これ全部…赤木博士が…1日で?本当に?」

加速装置がついてるんだな、きっと。



> 筑波−箱根はむっちゃ遠いです。おまけにルート設定だけ見ても

 全翼の輸送機があるじゃないですか。JAが出てきた時に初号機を運んだ奴。あれ使って飛んでったんじゃないかなと漠然と思ってたんですけど、向こうに行く時はともかく、帰ってくる時に陽電子砲を持ったエヴァを搭載してどう離陸するのかという問題がありますな。
 ……まず輸送機を離陸させ、エヴァが走って追いかけて飛び乗る(爆)。

> て言うと仮装巡洋艦出さないと駄目っすか?それともイルカとか(笑)

 渡り鳥でいいんじゃないすかね。

 つか、読んでるのかー!
 何となくマニアな香りはしてたんだけど。うーむ(笑)。

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.39 )
日時: 2014/04/13 22:04
名前: 何処

「目標に高エネルギー反応!」

「っ!?シンジ君避けて!」

「え?う、うわぁあああぁぁぁぁぁぁっっっ!」



【−月光−】



「…はぁ…」

「…溜め息しか出ないわね…」

「…唯の一撃でエヴァ初号機は小破、発進口を使徒から遮蔽していた装甲ビルは1棟消失2棟が全壊…か。
周囲の商業ビルも1棟は消失1棟全壊2棟半壊、兵装ビル1棟全壊2棟半壊、その他被害多数…頭が痛いわ。」

「最もその装甲ビルのお陰で初号機は小破で済んだわ。
もし遮蔽物の無い状態で直撃されていたら…小破では済まなかったでしょうね。」

「…わーってるわよんな事。
あの熱量モロに喰らったらいくらATフィールド展張しても中身…機体はともかくパイロットが先に殺られてたわね、パイロットが生きてただけ未だ幸運だったわ。」

「本当に幸運だわ…今、整備班が初号機の胸部装甲板外して破損部を調査してるけど…」

「さっき見て来た。特殊強化表面塗装は完全蒸発、表層多重装甲及び内部第一層特殊合金装甲貫通、第二層の強化セラミックは命中部完全融解、各保持中間層のゲル化衝撃吸収材および保持骨材の軽合金は完全に蒸発してたそうよ。第三層の斜傾材装甲も命中中心部は半ばまで融解、最終装甲部だけ辛うじて繋がってたわ。」

「三層六重の特殊装甲が只の一撃で貫通寸前とはね…
それにしても完全に視界から遮蔽された地点に射出された初号機を探知し正確に狙撃したあの能力、危険ね。解析の必要があるわ」

「今んとこ判明してるのはその攻撃力だけだしねー、
射程なんか想定値だし探知能力は未知、射角や反応速度も不明、連射可能なのかさえこの威力じゃ被害が怖くてロクに探れないもの。」

「もし無差別に一定範囲内の移動存在を攻撃する存在ならば…お手上げね、現状打つ手は無いって事になるわ。」

「ええ、兎に角使徒の能力を解析しないと対策すら出来ないわ…」

「空港が近くに在るのが痛いわね、下手すると撃たれるから現状偵察無人機すら万が一の被害が怖くて飛ばせないもの。」

「車載偵察機だって同じよ、打ち出した途端ランチャーどころか周辺地域ごと機体焼かれて終わりってなる可能性が高いんじゃロクに観測すら出来ないわ。」

「蝸牛は秒四回の移動速度を認識出来ないけど使徒はどうかしら?
逆に移動物体や高熱量にしか反応しないなら…対策を打つ手がかりになるわ。」

「う〜ん…先ずは演習用ダミーバルーンで様子を見るか。
使徒の反応、連続射撃時間と射撃間隔、それに射程と死角も調査の必要があるわね。」

「それと空間偏向率を測定して頂戴、ATフィールド強度を知りたいの。」

「空間偏向率?…一体ATフィールドの強度測ってどうすんのよリツコ。」

「…可能性の話よ、もし想定が正しければ…」

「?」

「ミサト、貴女の思い付きが役に立つかも知れないわ。」

「思い付…まさかリツコ!?」

「ええ、ポジトロンキャノンよ。射程外からの超遠距離狙撃なら…」

「確実性は高いか…確かにそれしか無いかも。
それにしても…まさか昨日の今日で紙上プランが現実的になるとはツイてるのやらツイて無いのやら。
…まさか違う何かが憑いてるのかしら、お祓い受けてこようかな?」

「笑えないわよミサト、でも“準備に早過ぎは無い”とはこの事ね。
最もレポートに書いた通り、現状あのポジトロンキャノンは現状最大限で計画出力の約1/3の威力しか無いわ、
調査結果によっては射程外からの狙撃ではATフィールド突破は困難かも知れないわね。」

「その時は最悪刺し違え覚悟で使徒の有効射程内から撃つしか無いわ。
先制一撃に賭けるか囮使って相手に一撃打たせてその隙を狙うか…」

「最もあれだけの威力ならそもそも相手の射程の方が長いかもね。」

「その時は相手の懐に飛び込むだけよ。
まぁ元々ポジトロンキャノンはポジトロンの性質から地磁気やら大気やら何かと外的要因の影響が大き過ぎて本来精密狙撃には向いて無いもの。
その分威力で帳消しって基本設計だし多少のリスクはしゃーないわ。」

「…となれば防護策も考えないと…あの熱量に耐えるとなれば…」

「それより初号機が修理中の今、ポジトロンキャノンの徴用には零号機を使うしか無いってのがどーも不安なのよね…」

「確かに問題ね…レイによる零号機起動試験自体は成功したわ。
でも実際に稼働させるとなれば…」

「暴走した機体の初稼働、それもバッテリー交換しながらの長時間連続稼働…
しかも往復行程全部歩行となれば最低6時間はレイに搭乗し続けて貰う事になるわ。
シンジ君も未だ回復してないし、パイロットの負担を考えると厳しいわよね…。」

「…それでも他の手段を考える時間は無いわ、現段階ではこの計画が最も可能性が高い。」

「となれば今はレイを信じて計画を推進するしか無いか。
リツコ、ポジトロンキャノンの徴発計画先行して進めて頂戴。」

「ええ…それにしても空港が使徒の射程内ってのは痛いわ。
空港が使えるなら行きは機体空輸出来る分時間短縮出来るのだけれど…」

「あの規模の機体飛ばして迎撃されない方がおかしいわ、リスクは最低限に抑えたいし無理は禁物よ。」

「そうね、一応両方で計画は立ててみるけど空輸の可能性は少ないわね。使徒の能力解析は任せるわ。」

「能力解析か…とすれば威力偵察しか無いわね…しかし空間偏向率ねぇ…あれ使うか。」

「あれ?」

「62cmレーザー臼砲。」

「え?良いのミサト?都市防衛の切り札じゃ無かった?」

「例え切り札でも今現在必要なのは使徒相手に確実なダメージを与えられる兵器よ、
幾ら高出力高威力でも使徒のATフィールド完全中和した時点で漸く使える邪魔くさい代物なんか不要ね。
どうせ初戦から使い所無くて埃被ってるんだから現状で一番役に立つ使い方だわ。」

「又税金の無駄遣いって叩かれるわね。」

「維持費もタダじゃ無いわ、寧ろ経費削減の一環よ。
そもそも兵器なんて消耗品なんだから勿体振って後生大事に取って置いても意味無いじゃない、
寧ろ囮なり威力偵察なりに使って結果が出れば倉庫の肥やしにするよりよっぽどマシね。」

「ふう…流石は作戦部長、その割り切りは貴女か司令にしか出来ないわ。
じゃあ早速私は徴発の準備に掛かるわね、ミサトは使徒の能力解析を進めて頂戴。」

「了ー解。」



―――



「…解釈では槍の筈ではないのか?」

「…槍を既に碇が保持していると?」

「未だ槍は碇の手に無いのは確かなのか?」

「もしや我々を謀って…」

「否、かの槍は未だ南極にて彼を抑えておる。我等が手にしたその枝は未だ枝のまま、すなわち未だ槍は…」

「となれば…槍無くして使徒を還すつもりか?」

「まずいぞ、もし槍が無ければ記述が…」

「まさか碇は記述に反するつもりなのでは!?」

「そんな事は許されんぞ!」

「…鎮まれ…」

「「「「…」」」」

「我等は碇に対使徒の全権を与えた。奴に任せておけば良い…」

「…しかし議長、このままでは記述を違えてしまいますぞ。」

「盟約を違える訳には…」

「…議長、如何致します?」

「碇は何と?」

「…碇は解釈の問題と言っておる。奴に任せた以上見守るしかあるまい…今はな。」

「…」「うむ…」「やむを得んか」「しかし…」

「何れにせよシナリオの改変は認められぬ、首に鈴を着ける前に碇には釘を刺しておこう。ではこれで緊急招集会議を終了する…諸君、御苦労であった。」



―――



「はいリツコ、これが現在判明した使徒のデータよ。」

「…成る程、やはりあの使徒はその体内を粒子加速機にしているのね。この威力も納得出来るわ…
ミサト、ATフィールド突破にはやっぱり相手の射程内に踏み込む必要があるわ。」

「あ、やっぱそう?」

「朗報も有るわよ…この使徒は接近する高速移動物体と熱量に反応するわ、これなら架線工事や変電設備仮設工事を狙われる心配は無いわね。
それに輻射熱の発生する日中は兎も角夜間ならエヴァを射程内へ動かせるわ…やれるわよミサト。」

「んじゃ後はポジトロンキャノンね、ちょっち取って来るわ。」

「え?」

「未だリツコはやる事残ってんでしょ?
バッテリー基地局の設営も済んだしあたしはもうやる事無いわ、後は作戦通りに行動するだけよ。
改修工事の用意頼むわね、レイとでっかいお土産持って帰って来るから」

「ミサト!貴女寝てないでしょ!?せめて仮眠」
「だーい丈夫よぉ往復の車内で鼾掻いて寝るからぁ、リツコこそ休みなさいよ髪ボッサボサよぉ?あんたの本番はこれからなんだしぃ。」

「やれやれ…でも、そうね。私もシャワー浴びて少し仮眠するわね。詰めてる皆も交代で休ませるわ。」

「話速くて助かるわ、んじゃ行ってくるから後、頼むわね。」

「お互いにね。」


―――−−−----


「笑えば…良いと思うよ…」

「…」
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.40 )
日時: 2014/04/15 10:02
名前: 史燕

>「まずいぞ、もし槍が無ければ記述が…」

>「まさか碇は記述に反するつもりなのでは!?」

>「そんな事は許されんぞ!」
>この作戦なら槍の召喚無しであの使徒を還せるだろう。
まさかヤシマ作戦時点で槍使用が本筋とは……。
でもラミエル要塞はたしかに槍ないと普通は無理な気がしますね。

>「で碇、この艦には未だ呼称が無い。船と判らんような仮称をつけねばならんのだが…」

>「…ヴンダー…」
えっ!?
これ用意したのゲンドウたちなんですね。
たしかに資金とか資材とか、この二人が用意した方があり得そうですけど……。

とりあえず、ミサトさんとリツコさんは体壊さないといいなあ。

続き、お待ちしてます。

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.41 )
日時: 2014/04/20 04:05
名前: tamb

> 「…ヴンダー…」

やはりここに反応することになりますが、なるほど、という感じではあります。ヴィレがサードインパクト後に作ったというよりよほど筋が通ってる。
しかしこういう流れになるとは。Q以降まで行くということになるかと。頑張って頂きたいものです。中途半端は嫌よ(笑)。
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.42 )
日時: 2014/04/20 09:08
名前: 何処

「笑えば…良いと思うよ…」

「…」



【−月光U−】


―――


「ふむ、碇はシナリオの消化に成功したようだな。」

「うむ、記述通り“第五の御使い ”はエヴァンゲリオンにより殲滅された。」

「“槍は雷と化し彼の御使いを貫き”…確かに解釈通りの展開ではあったな。」

「しかし議長、碇をこのまま野放しにして良いのか?」

「確かに今回の戦闘はシナリオより逸脱してはいない、
だがシナリオの改変に繋がる要素は極力排除すべきであろう。」

「うむ、今回は確かにシナリオの解釈範囲内かも知れん。しかし生命の樹は未だ回収されておらぬ。」

「その通り、幾ら彼の者を抑える為とは言え解釈を変え槍を使わぬなど本末転倒ではないのですかな?」

「奴が有能である事は認めよう。
だが議長、このまま碇を使い続けて本当に良いのか?」

「シナリオのタイムスケジュールを狂わせてはならん、盟約に叛けば予定外の使徒が現れかねん。
今の碇の行動は余りに危険だ、予定を早め鈴を付ける事としよう。
では諸君、今回の会議はこれにて終了する…」


―――


執務室に私と冬月、そして統括主任研究員と作戦部長の4名が机を挟み向かい合っている。


「…以上が今回の対使徒戦における該当作戦の報告書とその概要です。」

「…了解した。で、次は…」

「エヴァンゲリオン次期兵装開発計画に於ける状況変更報告及び新規開発兵装案趣旨説明です。」

「続けたまえ。」

「は。技術開発班からの報告書によれば、自衛隊より接収したポジトロンキャノンの実射及び運用解析により大部分の問題点が設計上解消され、次期兵装計画のポジトロンライフルは現開発想定期間を約40%短縮出来る見通しとなりました。」

「ほう、大した物だ。」

「威力及び使用電力についてはどうか?」

「威力につきましては受電設備の関係で現状においてはほぼ当初計画通り、具体的には接収したポジトロンキャノンのおよそ38%に止まります。
 しかしながら今回の交戦範囲内でならその出力でもATフィールドの突破には計算上問題無く、寧ろ次発用ポジトロン生成充填時間の大幅短縮及び改設計による可能照射時間の延長により戦闘力自体は大幅に向上が見込まれ、又使用電力については…」

「私から説明致します。
 使用電力については接収兵器解析により判明した問題点の効率化と省電力化を進め加えて新素材技術の併用、変電設備の改良等により今回の1/3弱、当初計画値の8割程度に短縮される予定です。
 この電力消費量ならば多方面の電力供給遮断をせずに運用可能であり、現在近隣都市に建設中の発電ビル及び建設予定のコンデンサーシステムの構築が完了すれば計算上は連続射撃が可能です。
又、現在予定されているジオフロント変電設備の更新が完了すれば更に消費電力は低減出来ます。」

「どの程度の低減になるのかね?」

「は、具体的には現在のエヴァンゲリオン2機同時稼働に対応した電気設備ではこの新型兵器・ポジトロンライフル1門を使用する為に2機中1機の稼働を制限しなければなりません。
ですがこの機器更新によってエヴァ2機同時稼働時におけるポジトロンキャノン2機同時運用にも問題無く対応・給電可能となります。
又、将来的な複数機体同時運用に対処する為現在増設予定の蓄電施設ですが既に起工済みの部分が完成すれば3機、総完成時にはエヴァ4機の同時運用に対応可能となります。」

「ほう…それは凄い。」

「…では次、この新規開発兵装案を説明しろ。」

「は、申請に上げたエヴァンゲリオン用の超大型無反動砲と超大型整形炸薬弾頭ロケット弾ですが、エヴァの戦闘時における火力付与の必要性から提案させて戴きました。
 現在のエヴァは中・遠距離戦闘において火力が不足しております。
現武装のパレットライフルは短距離での制圧力はともかく中、遠距離戦闘においては威力も射程も不足しており、有効威力の確認出来たポジトロンキャノンも接収品は運用時の諸問題から事実上超遠距離狙撃専用。
開発中の新型は有望ですが未だ実験段階であり、その実用化までただ手をこまねいて待っている訳にはいきません。」

「うむ…確かに。新兵器の実用化まで使徒は大人しく待ってはくれんだろうからな。」

「…趣旨は了解した。その有効性はどうか。」

「は、提案したロケット弾と無反動砲は言わば既製品の拡大版です。
 何れも原型が既に完成された物であり運用に支障を来す問題点はほぼ解消済み、規模拡大に伴う要改修・改良点も既存技術により容易に想定・改設計が可能、
生産性についても現行設備で即時量産が開始出来、更にロケットブースター等資材の大半も既製品の流用により対応出来る事から予定製作期間及び製作費用の短縮低減に効奏しております。
又、その量産性と低価格性による使用コスト低減も見込まれ、想定値ではありますが信頼性・射程・威力の面から見ても充分作戦部の要求を満たしております。
 以上の理由から、最も早期に実用化出来る新型火力支援兵器として私は当提案の早期認証を求める次第であります。」

「成る程。碇…どうする?」


執務机の前に立った2人を見遣りながら私の隣に立つ冬月が問い掛けて来た。


「今年度当初計画より変電設備の更新と蓄電設備の増築は予定されている。
他都市の施設建設支援予算については災害対策の一環として年度予算に盛り込み済み、問題は無い。」

「だが碇、今回の被害額からしても委員会は色々煩かろう。」

「寧ろ今回の被害程度で済んだ事が僥幸だ。」

「しかし…」


冬月の台詞を遮り、話を継ぐ。


「あの強大な使徒を相手にエヴァンゲリオンを1機も喪失せず撃破に成功、それだけで充分だ。
加えて有力な対使徒兵器、耐熱シールド、更に新たな使徒のサンプルまで手に入れた。
確かに物的被害は甚大だ。だがそれ以上に成果を得られたと委員会には私から説明する。」

「「「…」」」

「そして何より最大の成果は人的被害を最低限に留められた事だ。」

「…それは確かにそうだな。レイも無事だったし、何よりあれだけの被害で死傷者が殆どおらぬのはもっけの幸いだった。」

「葛城三佐、赤木博士…良くやってくれた。」

「「はっ!」」


「…うむ、では都市再建計画はこちらで処理しよう。後は…」


再び冬月の台詞を継いで私は答える


「今回の戦闘で被害を受けた防衛設備の規模は膨大な物だ。
その復旧費に鑑み、次期兵装及び新型兵装の開発については遺憾ながら年度当初予算内で抑えるように。」

「…はい。」

「…了解しました。」

「尚、今回破壊された迎撃ビルの内3棟を申請の新型ロケット弾運用仕様に変更、既存迎撃装備補充予算により先行して新型ロケット弾の試作と試験配備を優先して行え。」

「「はっ!」」


私の台詞に頷く冬月


「では委員会の方は任せたぞ碇。儂は市長と今後の打ち合わせをしてくる。」

「頼む。」


踵を返し出口に向かう冬月を不動の姿勢で見送る二人に、私は声を掛ける。


「二人共ご苦労だった。下がって良い。」

「処で碇司令、お話が」

「…何だ。」

「ご子息の事ですが…」

「シンジの事が何か?」

「…パイロット辞任騒動の事です、あの後司令には未だ謝罪を…」「必要無い。」

「…は?」

「シンジはエヴァンゲリオンパイロットとして私がこの街に呼んだ、つまり責任者は私だ。君が謝る必要は無い。」

「し、しかし…」

「辞める辞めないは本人の判断であり、我々にそれを止める権利は無い。そしてその決断の責任を負うべきは本人だ、君ではない。
 そしてここにはパイロットとして不適な者を置いておく余裕は無い、君の判断は正しかった。」

「…いえ、私の監督責任です…」

「…君は良くやっている。色々雑音もあるだろうが気にする必要は無い。」

「しかし…」

「シンジは戻って来た、自らの意思で。
 今現在何の問題も無い上に全て使徒戦前の事柄、今更蒸し返し君の責任を問う必要は無い。」

「…そうでしょうか…」

「ここで今シンジを私の手元に置けば憶測を招き更に問題が大きくなる。
シンジの我儘で君には迷惑を掛けた。」

「…いえ…」

「息子を頼む。」

「…は。では失礼します…」


作戦部長が自動ドアの向こうへ消える姿を見送った統括主任研究員は、何故か私以外誰も居ない執務室に残った。


無闇に広い部屋の中心、一卓の執務机に座る男と、向かいに立つ女


「…何か用か?用件が有るなら話せ。」

「は…その前にお詫びしなければならない事が…」

「…」

「前回は申し訳ありません、私とした事が失神など…」

「…いや、私に配慮が足りなかった。やはりあの映像は…」

「いいえ、私に覚悟が足りませんでした。とんだ醜態を晒してしまい…」

「…止めよう、切りが無い。
それより要件だ、話せ。」

「…はい、一つはチルドレンの現状報告です、現在レイの容態は安定しています。そちらは報告書をご覧下さい。
もう一つは…前回聞き損なった質問についてです。」

「…続けろ。」

「は、先ずはこのデータをご覧下さい。」

「…これは?」

「第4使徒との戦闘記録です。戦闘行動に伴う通信不良で欠損した幾つかのデータの修復とノイズ除去、裁ち切れ部分の仮想修正を行いました。」

「…」

「端的に申し上げます。エントリープラグ内に収容された少年二名、彼等はオーナインシステムに適合する可能性が有ります。」

「…あの少年達の事か。」

「はい。司令、それとこのレポートをご覧下さい、先日交付されたID証による情報開示により私が独自に調査した結果です。」

「…要点を言え。」

「…結論から言います、マルドゥクは機能を果たしていません。」

「…ほう。」

「何を呑気な!適格者の探索保護機関が機能していないのです!オーナインシステム適合者探索、その為のマルドゥクだった筈です、これではまるでザルではないですか!」

「…君は実に優秀だ。この短期間で良くそこまで調べ上げた。」

「…どう言う意味です?」

「今回の少年達…彼等は既にマルドゥクに登録されている。」

「?マルドゥクにより把握されていた…と?」

「ああ、彼等の通う学校の全学生、学校職員は身元、各種履歴、家庭構成、二代前までの家歴は既に押さえられている。」

「どう言う事です?新規パイロット捜索は急務の課題、なのに何故マルドゥク…否、司令は既に発見されている候補者の存在を明かさなかったのです?」

「…彼等だけではないからだ。」

「…は?」

「…ここに一冊のファイルがある。」

「…?」

「このファイルこそが君の疑問の回答になる。」

「?そのファイルが?」

「そうだ…これこそがマルドゥク機関そのもの、これはエヴァンゲリオンパイロット候補者名簿だ。」

「な!?」



《FIRST》
http://www.youtube.com/watch?v=8A3xX1MzxHk&sns=em
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.43 )
日時: 2014/04/27 22:44
名前: 何処

【−月光V−】


『…かな?』

「はい、連絡が来ました。
UNからの都市復興予算無償貸与及び使徒迎撃設備緊急復旧予算の拠出執行は申請通り無事認可されました、総理。」

『うん、セカンドインパクト後の復興事業が一段落し低迷する国内産業には朗報だ。
碇君、君の尽力には感謝するよ。』

「しかし、今回は些か被害額が多くなりました。」

『構わんよ、人類の未来と言う大義名分もある。
寧ろ今回の被害は使徒の脅威を喧伝するのには具合が良い位だ。』

「人は見た目で判断する、と言う事ですね。」

『ああ、前回までの戦闘は専門家はともかく民衆に使徒の力を見せ付けるにはややインパクトが薄かったからな。
今回の戦闘記録は政府やネルフに対する反論を抑えるに充分な迫力だった。
そして人的被害を抑えられたのが一番効果的だったよ、これなら世論の誘導も楽だ。』

「反ネルフを唱える団体は未だ多い筈でしたが?」

『いつ、どこにでも反対派は居るよ碇君。
要は彼等を追い詰めない事だよ、過激派にならず且つ少数派に成らざるを得ない発言と表現の自由を保証しておけば良いんだ。』

「自由…ですか。」

『ああ、反対派は常にある程度存在する、言わば少数派だ。
統制は集結を呼ぶが自由である限り彼等は纏まらんよ、妥協出来ぬ故に彼等は少数派なのだから。
複数に分派してくれれば手間は更に掛からなくなるな。』

「私には纏まった方が楽に思えますが。」

『なあに、手数は掛かるが労力は少ないよ。
要は利害でお互いを牽制させれば済む話だ。』

「…流石は総理。」

『神輿相手におためごかしは止めたまえ碇君。
君程辣腕で無い凡夫が経験から編み出した苦肉の策さ。』

「総理の御苦労はお察ししますよ。
何しろこの国で使徒迎撃を行うネルフと言う組織に反感を持つ存在は多方面に広く居ますから。」

『それはネルフの責任では無いよ、
どうせ使徒に負ければ世界中が旧東京や南極と同じく滅ぶしか無いのだ、ならば何処で戦おうと一緒だ。
寧ろ使徒迎撃都市を設営したお陰で他国に先駆けて復興を成し遂げたのだからリスクは甘んじねばならん。』

「ご理解感謝いたします。党への力添えも微力ながら…」

『期待させて貰うよ…で、碇君。君は‘JAプロジェクト’と言う話を聞いた事があるかね?実は…』


―――


市内のホテルで行われた総理との極秘回線による密談が終わり、私は待ち受ける車両へ乗り込むべくロビーを出た。

既に街は夜の帳に覆われている、私を迎えたのは二台の護衛車両、一台のロールスロイス、SP達、そして…


独り夜空に輝く月だった。


車に乗り込み、貴重な時間を仮眠に充てるべく瞼を閉じる。

睡魔に身を委ねながら私は先日の赤木博士とのやり取りを思い出していた…


―――


執務卓を挟み一組の男女が向き合っている。

固い表情のまま立っている女に、男は手にした一冊のファイルを示して事実を告げた。


「そうだ…これこそがマルドゥク機関そのもの、これはエヴァンゲリオンパイロット候補者名簿だ。」

「な!?」


珍しく慌てた様子の女に男は何時もの姿勢のまま答える。


「もう一度言おう、このファイルにはエヴァンゲリオンパイロット候補チルドレン達が記されている。」

「そ、そんな!?既に候補者が?だってまさか…」

「…エヴァンゲリオンパイロット適格者たるチルドレン、オーナインシステム適合こそがその条件…確率的には千億分の1。
しかしチルドレンは3名…確率的にほぼあり得ない事は君も理解している筈だ。」

「…つまりオーナインシステムは…虚偽だと?」

「否、確かにオーナインシステムは存在し、その同期確率は千億分の1だ。しかしそれはある条件下において変更される…」

「条件?」

「エヴァンゲリオンパイロットたるチルドレン、彼等が何故シンクロ出来るのかは承知しているな?」

「…拝見した画像で…」

「ファーストチルドレンを除けばエヴァンゲリオンに血縁者…母親を取り込まれた存在がチルドレンとなっている。」

「それは納得出来ます、しかし今回のあの2人はエヴァと直接関係は」

「そうだ。エヴァとあの2人の接点は無い…」

「ならば何故あの2人がシンクロ出来るのです!確かにシンクロ率自体は数%に留まり起動数値には達していません、しかしそのシンクロ出来た事自体が異常です!
シンクロ反応を出すだけでも確率はオーセブン…10億分の1です、それが2人揃うなど」

「有る。」

「!?」

「エントリープラグのブラックボックスは君も知っているな?」

「はい…新規導入システムのデータ収集装置…ではないのですか?」

「そう、確かにあれはデータ収集も行っている。そしてそれはデバイス機能と簡易バックアップ及びブースト機能も備えた言わばチューニング装置だ。つまりこのブラックボックスは搭乗者のシンクロ補助を行っている。」

「何ですって!?」

「サードのエヴァンゲリオンへの急速なシンクロ適応を見て気付かなかったか?
言わばつたい歩きの赤ん坊がこの短期間に駆け足はおろか道具の使用、それどころか近接格闘までをもこなすその異常性に。」

「…それは…」

「初号機初陣のあの有り様を考えれば判るだろう、あの局面で暴走…自己防衛機能発現により機体保護機構の自律戦闘プログラムが起動しなければ使徒撃滅はおろか戦闘行動すら出来ずに全てが終わっていた筈だ。」

「しかし司令は出撃させ…暴走を予期されていたのですね?」

「…話を続ける、シンジのエヴァンゲリオンとのシンクロが如何に深化しようが機体に基礎稼働能力が無ければ人の行動思考をトレースして稼働は出来ん。
そしてエヴァンゲリオンへの基礎行動情報入力は二度失敗している…あの画像の通り。」

「…」

「しかし現実はどうだ?本人と機体の適性だけでは説明出来まい。
当然だ、レイによる基礎稼働データを元に基本稼働補正情報を得たブラックボックスの恩恵こそがその理由なのだから。」

「成る程…」

「ブラックボックスはシンクロ試験毎にその情報から学習・自己進化し、機体特性に特化し成長する。
1度の試験で0,001%の情報でも100回で0,1%…10年に渡るレイによる実験は2%の確率上昇を生んだ。
即ち全く適性の無い者でもブラックボックスを搭載したエントリープラグに搭乗すればシンクロ率は2%程度記録される。」

「…それにしてもこの数値は異常です。それに何故その情報が極秘なのです?
確かに無人運用システム化計画は機密扱いですが誰でもエヴァに乗れる様になれば…」

「ああ、君も知っての通りエヴァンゲリオンは将来パイロット不要になる…だがそれは誰しもが乗れる事を示す訳では無い。」

「…何故です?」

「その理由は後で説明する。加えてこのブラックボックスは簡単に生産出来ない。」

「は?」

「このブラックボックスは人間を利用して作られているからだ。」

「!?」

「このブラックボックスの製作には生贄が必要なのだ。」

「生…け…贄…」

「君に見せた実験映像…あれが決め手になった。彼女により初号機はインフィニティ化したと考えられる…」

「…インフィニティ?」

「使徒人間…疑似使徒と言える存在だ。君が極秘に調べている旧東京壊滅、その発端はインフィニティ…そしてそれがが全ての元凶だった。」

「…全てお見通しでしたか…」

「話を続けよう。壊滅の原因となった使徒は首都に出現すると同時に人々を同化して行った。今我々はこれを使徒汚染と呼んでいる。」

「使徒…汚染…」

「そうだ。そして我々は使徒と共に彼等をも処分せねばならなかった…最初のエヴァンゲリオンを犠牲にして。」

「最初!?まさか!」

「その説明も後だ。この使徒に同化され半使徒化した人間達を我々はインフィニティと呼称した。南極においてもインフィニティ化した犠牲者は存在する。その数15名…」

「15…!?そ…それはもしや…」

「そうだ、使徒とは彼等の成れの果てだ。
インフィニティと化した彼等は本来不死身、だが彼等はセカンドインパクトにより発生したアンチATフィールドにより個体を消失し…彼等エルダー達はLCLと化した。」

「A…T…フィー…ルドの…喪失…な、なんて事…それでは人間…いえ、全ての生物がその存在を保持出来なくなる…」

「セカンドインパクトにより発生したアンチATフィールドの広域展開により南極圏全ての生命は無に帰した筈だった。
だが個を喪失し肉体を消滅され尚彼等インフィニティはLCLより進化、アダム化して復活した。
彼等は人の殻を棄て遂に記憶と個性を無くし全ての意識が共有された存在…使徒となり甦ったのだ。
即ち使徒とは15の魂を持った同一の存在、彼等を完全に無に還すには15回彼等を倒さねばならない…これが15使徒が存在する理由であり一度の出現個体が一体である訳だ。」

女の顔に再び緊張が走る

「そ…そこまで判明していて何故…い、いえ!それより!今の話とブラックボックスやあの少年達のシンクロ率に何の関連が?」

「先ずはシンクロ率から説明する、エヴァンゲリオンは元来人造人間に改造を加えた無人稼働の自律戦闘機械…言わば一種のサイボーグ、或いは生体兵器だ。
だがその無制限な能力を我々人類はコントロール出来なかった。
やむを得ず性能低下を忍びデチューンと有人化が図られた結果が現在の機体だ。
だが有人稼働には問題があった…機体の暴走を抑え人間のコントロール出来るレベルへの改造を以てしても未だ機体の能力は人間の操れるレベルを遥かに越えていた。
しかし使徒を倒す為にはこれ以上のデチューンは不可能、故にチルドレン…エヴァンゲリオン同調適格者の捜索が始まった。」

「チルドレンの条件…機体と同調し、人間の域を越えた感覚を受け止められるのは成長期の若者のみ、それもヒトとしての自我が確立していなければならない…でしたね?」

「そうだ、さも無ければエヴァンゲリオンに過剰同調し精神を汚染され最悪あの映像の様に自我境界線を喪失しLCL化する。
もし生き延びたとしてもヒトとしての自我は崩壊しエヴァンゲリオンと同様意思の無い人形と化すだろう。
ブラックボックスはエヴァンゲリオンとの緩衝材…同調抑制装置としても機能している。」

「…」

「このブラックボックスと新規開発中のシステムを組み込んだエントリープラグ…我々はダミープラグと呼んでいる、これは人工的自律戦闘行動補助システムだ。
このダミーシステムの核は搭乗者の運転の癖や反応を自ら学び、成長するブラックボックスにより成立している。」

「…マギと一緒ですね…」

「そうだ。だが説明の通り誰しもがエヴァンゲリオンのパイロットになれる事は出来ない。
確かに最低稼働シンクロ率を越える確率は在るが、チルドレン以外エヴァンゲリオンを動かす事は出来ん。
言い方を変えよう、チルドレンとはブラックボックスに同調出来る人間の事だ。」

「ブラックボックスに同調…生け贄…チルドレンと言う呼称…もしやブラックボックスとは…」

「話が早くて助かる。
そうだ、このブラックボックスはインフィニティと化した人間を利用して作られた。
そしてこのファイルには旧東京でインフィニティ化したであろう人物とその血縁者のリストが有る。」

「…インフィニティ化した人物の…血縁…?
しかし旧東京の犠牲者は全て消滅したのでは?
ブラックボックスの元になる人間自体が存在していないのにどう製さ…まさか…そのリスト内の生き延びた誰かを…」

「違う。
ブラックボックスに使用しているインフィニティだが、このリストには記載されていない。
何故ならこのインフィニティは旧東京を壊滅に追い遣った使徒に列なる存在だからだ。」

「使徒に列なる…言わば半使徒ですね、いつ使徒化してもおかしくない…」

「…このネルフにはエヴァンゲリオン初号機以外のインフィニティが存在する、それは君や私の側に居る。」

「!」

「…レイだ。」



《FIRST》
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.44 )
日時: 2014/04/29 02:48
名前: tamb

今回の二話、シナリオってのを憲法と読み替えると、とか(ナンセンス)、ゲンドウかっちょいいなぁ、とか、解釈がかなり難解だな、とか思いながら読んでたんですが、最後の一行で思わず声を出してげげとか言ってしまった。これは凄いインパクトだ。

ちなみに見てる人はいないと思うけどオンエア中の仮面ライダー鎧武、エヴァ的なシーンがあった。起動実験みたいなのがあって、信号拒絶! 的な。エヴァってそういう所にいるんだなって、改めて思ったのだった。

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.45 )
日時: 2014/05/28 18:11
名前: 何処

【−月光W−】

さっきから私は只天井を見上げている。

片手には一口分しか減っていないすっかり冷め切ってしまった珈琲入りのマグカップ、反対側の手には火のついてないメンソールが一本指先に挟まったまま。

ふと視線を下ろせば卓上には積み上がる書類の束と吹かした煙草の吸殻が山になった灰皿が鎮座している。
溜め息一つ

仕事を片付ける気にもなれず、さりとて椅子から重い腰を上げる気にもならず再び天井を見上げる。

ここ数日、私はレイに会いに行っていない。
彼女の衰弱は激しく、現在も入院中だ。
荷電粒子の直撃により外装全般に交換が必要な程ダメージを受けた機体に搭乗していたのだ、当然だろう。

想像してみれば良い、何しろ大気圏往復機を利用したシールドすら焼き崩す程の熱量に直撃されたのだ。

…それにしても私達は何と言う非道な行為をうら若い少女に強いたのだろう。
幾ら射撃体勢の初号機が無防備だからとしてもあの荷電粒子の奔流を機体を盾に防がせるなど、どう考えても危険を通り越して無謀極まり無い行為。

そして私達…ネルフは一人の少女にそんな事を命令し、実行を強いた。
悪虐非道の謗りを受けて然るべきだろう。

他に手立ても無く作戦としてやむを得なかったとは言え、命令内容の辛辣さ、非情さに変わりは無い。

状況的には言わばエヴァをいきなり太陽表層に2分間直接立たせた様な物だ。
幾らATフィールドに守られたエヴァに耐熱盾を持たせ、更にその機体最深部に位置する乗員保護機構満載のエントリープラグ内だったとしても安全な筈が無い。

現に応急的な対策として追加装備したプラグ内緊急冷却装置など気休めにもならなかった。
搭乗員保護機構は簡単に容量を越えLCLは熱湯に近い程の温水と化していて。

シンジ君の救出が後少し遅れていれば彼女は良くて半年程の入院を余儀無くされる事になっていたかも知れない。

…実際にはそうはならなかったが。

低温火傷の恐れと感染症防止の為ICUに入れられてはいるが、今の所彼女の意識ははっきりしているし特に面会謝絶と言う訳でも無い。

…しかし私は見舞いにすら行かなかった。

見舞いはおろか本来なら上司…否、彼女の管理責任者としての義務である面談すらマヤに丸投げしている現状は決して褒められた物ではない。
寧ろ非難されて然るべきだ。

そう頭では理解していても私はレイと会う気にはなれず、最低限の接触すら図ろうともせずに…寧ろ避けていた。

そう、避けていたのだ。





…白状しよう、私は彼女…綾波レイと言う存在に怖れを抱いているのだ。

はっきり言えば彼女と言う存在…現実を受け止めきれず半ば逃避している。
其程に…真実は重く、苦く、そして…

恐ろしかった。



―――



「…このネルフにはエヴァンゲリオン初号機以外のインフィニティが存在する、それは君や私の側に居る。」

「!」

「…レイだ。」


その司令の発言を私は直ぐには理解出来なかった。

レイが…半使徒?

瞬き二つ程の時間経過の後、司令の発言が示す意味を漸く理解する。
だが私の知識と理性、そして感情がその情報を否定した。

当たり前だ、何故なら私は知っているのだから。

彼女の健康管理や精神分析、肉体調整を長く担当する私の知る限り彼女は精神的、肉体的にも…具体的に言うならば肉体構成物質的にも遺伝子情報的にも間違い無く人間だ。

そう、彼女は紛れも無く人間だ。

数多幾多の検査結果を熟知し、私自らも幾度と無くこの手で測定し分析している。
繰り返すが彼女・綾波レイは間違い無く人間だ。


確かにレイはその佇まいや言動に浮世離れした面を持ち、それを宜しからざると見て“無機質”、或いは“非人間的”と評する向きの職員が少なからず居るのは事実だ。
だが彼女のそんな一面は決して非人間的な物では無い。理由がある。

それは幼少期からここネルフで司令以外は身寄りも無く唯一人孤独に暮らし育った故のやむを得ない環境適応の結果なのだ。
 以前心理学者とカウンセラーを交えてレイに行った精神分析は集団から孤立化した体験…疎外感こそが今現在彼女の晒す態度の理由と診断した。

私に言わせればこれは環境の病だ。

最も多感な筈の幼少期を彼女は同世代との交流すら無いこの地底都市に唯一人で生き、只独りで暮らしていた。

 思えば哀れな娘だ。
同年代の子供達が親の愛情に守られ仲間と遊び、人としての社会性を学んでいる頃、この少女は科学者と機械に囲まれて孤独な日々を過ごしていたのだから。

そしてその未だ幼い少女に対し、司令は各方面から招集した各分野の専門家によってそれこそ大人顔負けな程の英才教育を施させていた。
その様子たるや、それはもう傍目にはまるで虐待の様な訓練と教育を受けさせていたのだ。

公園や遊園地代わりのジムでのトレーニング、玩具や絵本の代わりに与えられたのはテキストや専門書。
分刻みのスケジュールに従う少女の様子はまるで何かに追われているようで。

 後にセカンドチルドレンが見出されるまでは彼女だけが唯一のエヴァンゲリオン搭乗適格者であった事を差し引いてもその教育内容は厳し…否、過酷とも言える程だった。

基礎的な対人交流や情操教育も無いままひたすらエヴァのパイロットとしてのエキスパート専門教育と訓練、そしてそれらの合間を縫って行われるシンクロ試験。
まるで兵士…否、機械の様な扱いの中、組織の命ずるままスケジュールに追われていたあの少女に果して年齢に見合う全うな人格形成を期待出来たのだろうか?

 そうした諸々の事情が偏見を呼び、偏見がその評価に影響し、悪評の流布に寄与しただろう事は言うまでも無い。

…それにしても少し考えてみれば直ぐ解るそんな理屈を無責任にも考えようとすらしない人物の何と多い事か。
加えて言うならば聞こえて来る彼女への噂は偏見と中傷に満ちた何の根拠も無い嘘ばかりだ。

そしてその理由の下らなさには閉口する。

司令以外身寄りの無い事然り
一人暮らしの事然り
年齢に見合わぬ大人びた…否、どこか達観したかのような態度然り
感情表現力の欠如然り
世間知らずな所然り

そして何より彼女が外観に於いてある種の疾病患者と共通する特徴点…
 (色素減少による銀とも青ともつかぬ髪、瞳孔虹彩の色素欠落による赤い瞳、メラニン生成異常による雪のような肌、etc…) 
…を持つ故にか、まるで彼女をネルフの実験動物かの様に評する向きまで居る。
…扱いが悪いのは認めるが流石に実験動物は…

…これからチルドレン達の待遇改善を検討しよう…

それはともかく。

レイへの質の悪い噂は止まる様子も無く、遂には“実は彼女はネルフのロボットだ”などと言う根も葉も無い荒唐無稽な与太話まで出る始末。

理不尽にもそんな差別的な扱いを彼女は今の今まで受けてきた。

そして恐ろしい事に、“その扱い”はこのジオフロント本部の一部職員内においても暗黙の内に半ば肯定されていたのだ。

断言する。彼女に非は無い、全く無い。言わば風評被害だ。
責められるべきは保護者である司令であり、私達ネルフである。

ネルフの道具、エヴァンゲリオンの人柱、つまり人類存続の為の計画における犠牲者ファーストチルドレン・綾波レイ。
それが半使徒、インフィニティなど…

インフィニティ?

私は司令の話に感じた違和感の原因に気付いた。

司令は確かブラックボックスの中にはインフィニティが…と言った。
そして司令はレイがインフィニティであるとも言った。

単純に話の流れからすればつまりあのエントリープラグのブラックボックスにはレイが…え?

矛盾だ。あり得ない。何故なら

…レイは今生きている…

私は混乱した。混乱しながらその原因たる司令の発言の矛盾をまくし立てていた。


「ま、待って下さい!レ、レイは生きています!生きてい…」


その時、私はある考えに至り、その発想の意味する所に想像を巡らせ…

その可能性に恐怖した。


「!?ま…まさかレイの血縁者…家族を使用したのでは…」


司令は無言で首を横に振った。
ややあって司令が口を開く


「口で説明するより見た方が早い…これからドグマに降りる、附いてこい。」


言うが早いか席を立ち、扉へと歩き出した司令。
その背中に私は掛ける言葉すら浮かばす唯慌てながら歩み去る姿の後を追うしか無かった。


―――





「こ、これは!?」

「使徒アダム…最初の人間だ。使徒はこのアダムと融合する為にこの第三新東京を目指している…」

「…これが…アダム…南極を壊滅させた使徒がこんな場所に…」

「…と言うのは建前だ。」

「え?」

「ここに封印され存在しているこのモノは…アダムでは無い…」

「で、ではこれは一体…」

「これは旧首都東京を壊滅に追い遣った元凶…使徒リリスだ。」

「!?」



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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.46 )
日時: 2014/06/08 20:48
名前: tamb

ちょっと目を離してたら話が佳境に入りつつある。ドキドキするね。
続き待ち。

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.47 )
日時: 2014/06/13 05:42
名前: 何処

【−月光X−】

「これは旧首都東京を壊滅に追い遣った元凶…使徒リリスだ。」

「!?」

「セカンドインパクト当日、旧東京に突如出現した首都壊滅の原因、使徒汚染を引き起こした元凶たる存在、それがこの使徒リリスだ。」

「これが…ですが司令、エヴァは最終艤装中の弐号機を含め三機しか無い筈です。
ではこのリリスを倒した最初のエヴァンゲリオンとは…」

「確かに既存の機体は三機、だが欠番がある。
我々は既にエヴァンゲリオンを一機喪失している。」

「え?」

「この使徒リリスは旧東京において対使徒用決戦兵器エヴァンゲリオン壱号機により倒され、このジオフロントに封印された…」

「壱号機?最初のエヴァンゲリオンと言うのならば零号機なのではないのですか?」

「確かに最初に建造されたのは零号機だ。だが零号機と初号機は人間の造り出した存在では無い。」

「!?」

「君も気付いているだろう。
改めて考えてみろ、これ程巨大な人造人間を何の資料も無く零から建造する労力と時間を。
そして見ろ、ここに有るそのエヴァンゲリオン用支援設備の数々を。
 このドッグ型調整槽、輸送架条、カタパルト、発電設備、工厰、皆エヴァンゲリオン運用の為にエヴァンゲリオンに合わせた規格で用意されている。
 ではこれら全ての設備を今運用する為にはどれ程前から準備する必要がある?
建造する時間を逆算してみれば良い、つまり…」

「…既に…エヴァは存在していた…」

「ああ、人類補完計画成立前からエヴァンゲリオンは存在していた。」

「ではエヴァとは一体何なのです!」

「…判っている筈だ。」

「…まさか!?…まさかエヴァは…人の造りし物では…無い…」

「そうだ、我々がこの巨大な人造人間を今この時の為に作り上げた訳では無い、この巨人は今この時の為に用意されていたのだ。」

「そんな…」

「補足しよう、初号機は南極で使徒アダムを封印していた巨人体を回収再生した機体…正に人類が初めて手にした人造人間だ。」

「初号機が…」

「順を追って説明する、南極で発見された巨人は以前にここ、ジオフロント最深部ターミナルドグマで発見され発掘されたた巨人の残骸達とほぼ同一の存在と判明、
原型を保っていたその巨人はザ・ファーストと呼称された…」

「…ザ・ファースト…だから初号機…」

「我々はこの巨大地下空間から発掘された巨人の残骸を繋ぎ合わせて一体の巨人を再生した。
その巨人を我々はエヴァンゲリオンと命名、機体をプロトゼロと呼称した…そう、零号機の事だ。」

「…それで…ゼロ…」

「ザ・ファースト…初号機の解析と零号機再生計画で得たノウハウにより我々は一体の巨人を制作する事にした。
過去の遺産に頼らず現代の人類が自らの力で建造した機体故に製造番号が付けられた。試作1号(プロトワン)…即ち壱号機と。」

「…成る程…」

「エヴァンゲリオンとは何かと聞いたな?
答えよう、超古代の先史文明がその前に出現した天敵・使徒アダムに対抗すべくアダムの使徒細胞より作り出した巨人…それが人造人間エヴァンゲリオンの正体だ。」

「…アダムの肋骨より主はその伴侶を創られし…正しくエヴァ…」

「リリスについても話しておこう。
南極で使徒アダムを封じていた存在…それがリリスだ。
リリスとはエヴァンゲリオンとは違う方向性で使徒から創られた対使徒生物兵器だ。
そして先史文明が苦渋の決断により生み出した方舟でもある。」

「方舟…ですか?」

「それについては後で説明する、話を進めよう。
 前大戦中、この国で地下壕制作中に発見されたこのジオフロントは長期に渡り特別機密に指定、極一部の人間以外立ち入りは禁止され一般人にはその存在すら知られなかった。
存在が公になったのは君の知る通り90年代…半世紀過ぎてからだ。
何故か?
前大戦が休戦に至った理由もここ、ジオフロント発見に端を発する、それほどここの発見は重大だったからだ。
 その後世界規模での極秘探索が行われ、実に数十箇所に及ぶ地下大空洞の存在が確認された…裏死海文書の記述通りに。」

「裏死海文書…ゴシップや噂では聞いていましたが…良く有るタブロイドのスパム記事だと思っていました。」

「ああ、発見当初は古の説法や神話の曲解を記した偽書の類と思われていたからな。
タブロイドやゴシップ誌に出た情報の大部分はこの解読当初の物だ。

 実際その判読可能な部分の解読が進むにつれその真贋性は更に疑問視された。
解読が進む程内容が意味不明となっていったからだ。その内容は荒唐無稽且つ支離滅裂、前後の繋がりすら無い上にあやふやな代物だった。
 既知の神話の旧解釈や伝承されなかった部位でも無い、未知の断絶した宗教神話等では説明のつかぬその内容を揶揄して“翻訳者の小遣い稼ぎ”“アーカム図書館の落書き”“プラスチック製象牙の書”等と称する向きさえ有った程だ…」

「…しかしそれは事実であり、実際現実となった…と言う事ですね?」

「ああ、1968年の国連による第8次南極特別探査隊によって発見された巨大地下大空洞、その内部調査に当たった第11次探査隊が見た物こそ裏死海文書の記述を真実と確信させるに足る代物だった。」

「…」

「探査隊の見た物…それは半透明の巨大な繭の中、異形を槍で貫く巨人の姿だった。

アダムは記述通り繭状の物質に覆われエヴァンゲリオン初号機に槍で縫止められた状態で発見されたのだ。

同年設立されたネルフの前身である人工進化研究所、ここは本来この巨人解析を目的に開設された施設だ。
 既にここ、ジオフロントにおいて多数の巨人残骸を発見回収しその調査研究に当たっていたこの組織が南極の巨人も調査する事となり、巨人…エヴァンゲリオン初号機は日本へ極秘輸送後このジオフロントに運び込まれた。
同時にサンプルとして採取した幾つかのサンプル片…アダムの一部とその周りを覆う繭状の物質もここに届けられた。

 しかし巨人も、アダムとその繭のサンプルも…生きていた。
初号機は仮死状態、繭とアダムは休眠状態だったのだ、そして繭とアダムの結合部位のサンプルは驚くべき事実を我々に伝えた…アダムはリリスに半融合された状態だったのだ。
 我々は裏死海文書の記述から繭を構成している物質を“封印細胞”、アダムのサンプルを“使徒細胞”と名付けた。」

「封印細胞!?」

「そうだ。我々はそのサンプルを分析後当時旧東京にしか無かったP4級隔離設備に保管した。葛城調査隊発足前の話だ。」

「葛城調査隊…セカンドインパクトに巻き込まれミサ…1名を除き全滅したあの…」

「国連を通じ人工進化研究所は巨人とアダムの調査を平行して行っていた。
 謎に満ちた巨人とアダム、調査の結果その遺伝子構成や肉体素材から巨人はアダムを元に造られていた事は既に判明していた。
だがその両者に備わっている球体…コアの正体は一切が不明、我々は世界中から当時最高の研究者達を全ての分野から極秘召集、解析を依頼した。」

「…その一員に葛城博士も…」

「そうだ、そしてSS理論提唱者でありN2開発の父でもある葛城博士は検討の結果コアをアダムの動力…SS機関と判断した。
この発想に全ての研究者が賛同し、ある提言が為された。

 そのコアを分離し、構造を調査する事によってエヴァンゲリオンのコアを動かす手掛かりを得られるのでは…否、人類がSS機関を開発する事すら可能なのでは…と。

 そして調査チームが南極へ送られる事になった。」

「…それが葛城調査隊発足の経緯…」

「そうだ。たがアダムより分離されたSS機関への接触実験は最悪の事態を引き起こしたと見られる。
予想外にSS機関は稼働を始め、分離されているアダムが再生を初めてしまったのだ。

 ここからは以後の事態推移からの推測だ。
目覚めたアダムは自らを汚染し取り込もうとするリリスを排除する為に反ATフィールドを展開、南極は死の世界と化した…セカンドインパクトの始まりだ。

 だがセカンドインパクト発生に伴う反ATフィールドの範囲拡大は葛城博士に阻止された。
制御棒たる槍のコア挿入と熱核反応弾によるアダム本体の破壊によって反ATフィールドは消失、エネルギー源を失いアダム達は初期化されたと見られる。」

「?待って下さい、アダム…達?」

「ああ、覚醒したアダムは同時に成長、周囲の接触した人間達を同化し増殖した。」

「増殖!?」

「アダムとリリスの伝承は地父神ガイヤやイザナギ神話の様に変質しながらも世界中に残っている。
産めよ育てよ地に満ちよ…アダムの司る能力、それは増殖。リリスの能力たる同化とは似て非なるモノだ。

 本来ウロボロスの如くアダムとリリスは互いを抑える存在、アダムの肋骨より作られたエヴァにより人は地に満ちる事を許された。
だが南極でアダムを封じていたエヴァンゲリオンと槍は排除され、接触実験によりアダムは活動を再開…枷たるリリスを排除した。
 アダムの目覚め、その余波こそがセカンドインパクトだ。」

「…そしてその初期化されたアダム達こそが…」

「そう、使徒だ。
 同時に旧東京にも異変が起きた。
セカンドインパクト発生による南極の敵…アダムの覚醒に呼応して封印細胞も目覚め…使徒と化したのだ。
 P4施設を突破し封印細胞は旧東京に出現、汚染された人間達はインフィニティと化した。
人々を同化したインフィニティは融合を繰り返し使徒リリスとして覚醒、迎撃へ向かったエヴァンゲリオン試作機…つまり壱号機は暴走し…否、本来の敵に対峙し本能に目覚めたのだ。

 人の手を離れ壱号機はその真の力を発揮した…使徒リリスを圧倒後バーサーカーと化しあらゆる存在を破壊しだした。
しかし暴走中の壱号機は再生したリリスより逆襲を受け壱号機は使徒に完全同化される寸前に自爆し使徒を倒した。
…その機体と旧東京湾岸部一帯を巻き添えにして。」

「…それが…旧東京壊滅の真実…」

「話は未だ終わらない。
旧東京の被害は甚大だったが更に脅威的だったのは使徒が未だ生きていた事だ。」

「!?」

「隔離封鎖された旧東京に入った調査団が発見した溶解した使徒の残骸、だがそれには生命反応が認められた。
我々はその残骸を回収し…インフィニティ化した人々と共にここ、セントラルドグマ内へ封印した。
あのリリスに融合した無数の足、あれこそがインフィニティ化した人間の末路だ。
彼らは本能のまま融合し合いながらリリスを目指し、自ら吸収されて行った…
あの仮面は成長を抑える為の封印、だが完璧ではない。このままでは遠からず再びリリスは目覚める。
南極でアダムを封じていた生命の樹…ロンギヌスの槍によってその生命力を吸収させ続けねばリリスは復活し、アダムと共に世界を滅びに導く。
リリスを固定するあの十字架と周りに浮かぶ艦船には各々ギガトンクラスの熱核反応爆弾が搭載されている、非常時にはターミナルドグマごと焼灼出来る用に。」

「何て事…」

「この結果から我々はエヴァンゲリオンを更に改修した。
君も知っての通り今のエヴァンゲリオンは暴走を防ぐ為本来の機体能力を人間が操れる程度にデチューンした半端な代物だ。
 そもそも有人操作…パイロットが搭乗すれば既にその時点で機体能力の完全解放など出来る筈がない。
当然だ、エヴァンゲリオンは本来自律戦闘機体、その戦闘能力は人間の知覚能力を遥かに越えたレベルに有る。
端的に言えば人が操縦するどころか搭乗させる事自体が誤りなのだ。

 では暴走を防ぎつつ能力を完全に解放し戦闘プログラムを完全発動させるにはどうすれば良いか。
その答えが…我々ネルフの出した結論がここに有る。」

「…このエレベーターの先に…」

「これは最後のチャンスだ。今なら何も見なかった事に出来る…全て忘れるか全てを知るか後は君次第だ。」

「…」「…」

「…」

「そうか…では共に来い。」


カシュッ・ピッピッピッピッ…ピーッ“プシュン”


「地獄へようこそ、赤木リツコ博士。」




《FIRST》
http://www.youtube.com/watch?v=SwA-LXw18qc&sns=em
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メンテ

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