050606:いつもと同じ、じゃない |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: aba-m.a-kkv
- 【タイトル】050606:いつもと同じ、じゃない
【記事番号】-2147483231 (2147483647) 【 日時 】05/06/06 01:44 【 発言者 】aba-m.a-kkv
朝五時半に目が醒めた。
いつもと同じように、そういつもと同じように。
変わることは無い、ベッドから抜け出し、カーテンを開けて、背伸びをして無理やり意識を身体に貼り付けた。
洗面所に向かって顔を洗い、部屋にまた戻って着替えを終えるとキッチンに向かった。
外は白み始めているが、太陽はまだベッドの中。
ベランダに出ればまだ月を見ることも出来るだろう。
でも、そんな余裕は無い。
今日から僕とアスカは学校だし、ミサトさんは出勤だから。
三人分の朝食と、四人分の朝食と、夕飯の下準備をしなきゃならない。
大変さにも、もう慣れた。
いつもと同じ、そういつもと同じだから。
朝食が出来上がった頃に、アスカが起きてきて、その後いつもどおりミサトさんを起こして、いつもどおりの朝食の時間を過ごした。
そして、学校に行く。
いつもと変わらない、いつもと同じ、外を雲が流れて行く。
「今日って、何日だったっけ」
空はいつも通り青く、いつも通り雲が流れて、教室ではいつもの老教師が授業を脱線していた。
「まっ、いっか」
そう呟いて、机に突っ伏した。
紅い視線には気がつかないまま。
そして亜麻色の髪が同じく机に突っ伏していることも。
ジャージ姿や眼鏡はいつも通りだとして、委員長の声が無かったのは少しいつもと違ったことだけど、気には留めなかった。
いつも通りの日常が流れて行く。
学校が終わり、クラスメートたちが引き上げ始めるのを横目で眺めながら、日直の仕事をこなしていく。
いつもとは変わったことだが、クラス人数が少ない分すぐに回ってくるから、大した変化じゃない。
それにやってることもほとんど変わらないから、いつもと同じ、といえばいつもと同じだ。
「日が、長くなり始めたなぁ」
そんなことを呟きながら、仕事を終えて帰り支度をし、学校を出ようとした時だった。
いつもと変わらない、いつもと同じ、はずだった今日が、いつもとは違った。
「綾波……?」
紅い眸が佇んでいた。
鞄を手に提げて、少しだけこちらを見て、微笑んだような気がして、驚いた。
でも、次の瞬間にはそれも消えて、驚いた僕に小首を傾げるようにして尋ねた。
「どうかした、碇くん?」
「それは僕の台詞だよ、綾波。どうしたのこんなところで」
綾波はその問に答えなかった。幾許かの静寂が流れ、レイは言葉を紡ぐ。
「貴方が考えてるみたいに、いつもと同じではないのよ。今日は違う」
「えっ?どういう……」
「帰りましょう?」
綾波は言葉を遮ってそういうと、靴を履いて外へ出て行ってしまった。
慌てて追いかけると、もう靴がそろえて置いてあって、不思議に思いながら、綾波の後を追いかけていた。
― なんでわかったんだろう?いつもと同じだって考えてたこと ―
でも、その疑問を尋ねられなかった。
綾波は僕の前を歩き、僕は綾波の背中をついて歩いて、どこまでも静かだった。
いつもなら慌てるはずの状況も、何故かそうならないで、導かれるように綾波の後をついていった。
そして、綾波はいつもと同じ、いつもと変わらない道を行く、僕にとっての。
彼女にとっては違う、僕たちの家へと真っ直ぐ向かっていった。
その歩幅はゆっくり、ゆったり。
向こうの方で夕陽がベッドへの道を歩む中、二人夕陽の赤に照らされて、微かな温もりを帯びながら静かに家路を進む。
― なんで、綾波、この道を行くんだろう? ―
でも、聞けなかった。
もしかしたら、いつもと違う、いつもと同じじゃない、この状況を楽しんでいたのかもしれない。
幾許かが過ぎ、夕陽がその半身をベッドの中に埋めた頃、家の玄関の前に二つの影が伸びていた。
「ねえ、綾波、これって……?」
「碇くん、いつもと同じじゃないわ、今日は違う。
そして今日から変わるの、貴方はまた一つ変わる。
でも、碇くんは、碇くんだから。
さあ、一歩踏み出して。
今日は、いつもと同じじゃない。
今日は、いつもと同じに、貴方が次の日を迎えることはないから」
綾波が扉を開けた。
幾つものクラッカーの音と、紙ふぶきと、フラッシュと、歓声と、料理のいい匂いとが、迎えてくれた。
リビングに見える幕にかかれた文字を見て、忘れていたことを思い出した。
この十数年間、気にも留めなかったこの日のことを。
「あっ……」
振り返ると、紅い眸が微笑んで、僕を背中を押してくれた。
すごく綺麗な微笑だった。
いつもと変わらない、いつもと同じ今日、ではなかった。
今日はいつもとは違う、今日はいつもと同じじゃない。
それが、嬉しかった。
シンジ君へ、今年一年ありがとうございました。 これからの一年もよろしく。
【タイトル】Re: 050606:いつもと同じ、じゃない 【記事番号】-2147483224 (-2147483231) 【 日時 】05/06/07 00:00 【 発言者 】なお。
私もシンジ君のはお世話になっているはずなのに 何も用意してません(爆)
シンジの一人称ですね。私もそれで書いたんだけど エライ違いよう! なんか文章全体が粋なんです。出来ないけど真似したい。
シンジの気持ちを察知しているレイって、なにげにお姉さんな感じ。 「いつもと同じだ」なんてシンジがぼやいていたのを聞いてたのかな、なんて想像しました。 そうじゃなくても勘付いたのでしょうが、そういうのもお姉さんっぽくて(笑)
【タイトル】Re: 050606:いつもと同じ、じゃない 【記事番号】-2147483223 (-2147483231) 【 日時 】05/06/07 19:57 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
とにかくですね、私は、こういうみんなが笑顔な話が大好きなのです。
レイがいつものように意味深なことを言ってますが、きっと笑いをこらえて、必死に真面 目というかいつもの無表情を保ってたんでしょうね。で、最後にはやっぱり微笑むと。み んなで相談してる図を思うと、ほんとに楽しそうでいい。GOODです。
ののさんの「目の前の同じ明日」と併せて読むとさらに味わい深いかも。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 050606:いつもと同じ、じゃない 【記事番号】-2147483212 (-2147483231) 【 日時 】05/06/13 21:19 【 発言者 】みれあ
いいですねぇ。 散々逃げ回っていたせいで(ぁ)何も今年は書けませんでした。
いや、最初はまじめに感想しようと思ったんですが > 三人分の朝食と、四人分の朝食と、夕飯の下準備をしなきゃならない。 朝食が二回ですかw これがツボに入って続きませんでした、ごめんなさい(w)m(_ _)m
【タイトル】Re: 050606:いつもと同じ、じゃない 【記事番号】-2147483185 (-2147483231) 【 日時 】05/06/19 15:03 【 発言者 】tama
誕生日おめでとう。 こういうのは自分が忘れているときに起きると、うれしさも倍増しますよね。 1年ってお正月や年末が節目じゃ本当はないわけで、 誕生日が他の誰でもないその人の1年の終わりと始まりの日なので、大事にしたいですよね。
でも >ジャージ姿と眼鏡
これはケンスケかわいそうです(°□°‖ せめてプラモとかカメラいじってる姿とかの表現にしてあげてください(笑 眼鏡がサングラスに変わってるって言う姿もそうそうないだろうし。眼鏡って(笑
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