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隠し味は秘密
日時: 2009/05/31 00:00
名前: DRA

【タイトル】隠し味は秘密
【記事番号】-2147483081 (2147483647)
【 日時 】05/08/01 19:47
【 発言者 】DRA

そのきっかけはエヴァのパイロットをしていた頃。
その頃の私の食事といえば栄養剤などだった。
そんな私を見かねてか、碇君はたびたび私が住んでいたマンションへ食事を作りに来てくれた。
楽しそうに料理をする碇君。
私が美味しいと言うと微笑んでくれる碇君。
そんな彼を見ていると心が温かくなった。

最近になってから私も料理をやってみたいと思った。
彼に美味しいって言ってもらいたいから。
私も彼の心を温かくしてみたかったから。

碇君と一緒に暮らせるようになったある日の日曜日。
特にする事が無く暇だった私と碇君は罰ゲームを賭けたポーカーをやった。
碇君は麻雀に目覚めてから賭け事が好きになったみたい。
時々、ユイさんに内緒で第3新宿や第3上野に行ったりしている。
健さんや、最近知り合ったという哲也さん、出目徳さん達と一緒に。
そんな彼についた通り名が「ジゴロのシン」
つけられた本人はそうとう嫌がっていたけど。

「ご飯を食べて美味しかったら、ちゃんと美味しいよって言う事。」
勝った私が出した条件を彼は了解してくれた。


碇君との賭け勝負に勝った日の夕方。
用事を済ませ帰宅したユイさんにお願いした。
急に料理を習いたいだなんて、でも嬉しいわ。
そう言って私の頭を撫でてくれた。
母さんだけに任せるわけにはいかない。
レイの為だ。私も協力する。
そう言って碇君や碇司令も手伝ってくれた。


最初の頃は本当に大変だった。

包丁の持ち方が分からず、プログナイフの持ち方で野菜を切った。
「キャー。レイちゃん。包丁の持ち方が違う。両手で持つんじゃ無くて片手で。」

ゆで卵を作ろうとしてレンジに入れた。
「綾波―。タマゴをレンジに入れちゃダメだよ。爆発する。」

お米を研ぐとき、洗えばいいと勘違いして洗剤を使った。
「レイー。米は水で研ぐものだ。」

包丁で指を切ったり、ナベを焦がしてしまったりと失敗は数え切れなかった。
ユイさん、碇君、碇司令。3人に迷惑を掛けた。
でも、3人とも優しいから何も言わなかった。

幾度と無く料理を止めようと思った。
でも、碇君に美味しいものを食べてもらいたい。
碇君から美味しかったよ、ごちそうさま。

そう言われたい。
だからあきらめずに続けた。
その甲斐あってか2週間も経つとだいぶ慣れてきた。

もう指を切る事もなくなったし、ナベを焦がすこともなくなった。
みんなのおかげでここまできた。
だから今日は腕によりを掛けて作る。
だって碇君に初めて私の料理を食べてもらう日だから。


16時過ぎになり私は一人で買い物に出かけた。
自分で作るから自分で買い物をしたかった。
ユイさんと何度も来た事があるスーパーへ足を伸ばす。

にんじん。
たまねぎ。
じゃがいも。
りんご。

それらをカゴに入れていく。
料理はカレーに決定。
ユイさんから碇君の好物を聞いた時。
カレーが好きって言ってたから。
好物ならきっと碇君も喜んでくれる。

でも私はまだお肉が食べられない。
少し考えてからお魚をカゴに入れた。
料理はその都度、味見をしなければいけない。
ユイさんに教わった事。
お魚なら私も食べれる。
碇君もお魚は嫌いではないはず。
ルゥをカゴに入れ、レジへと並ぶ。

「あら、レイちゃん。今日はお母さんと一緒じゃなくて一人なの?」
「はい。」
レジ係のこの人とは顔馴染み。
いつもユイさんとここで買い物をしてるから。
カゴをレジカウンターに置く。
目の前の彼女の視線が私の服へ移った。

「可愛いわね。エプロンなんてつけて、まるで奥さんみたい。」
「ありがとうございます。」
可愛いって言われて少し嬉しくなった。
奥さんって言われてもっと嬉しくなった。
着ているヒマワリの刺繍が入ったエプロンはユイさんから貰ったもの。
なんだかずっと着ていたい気分になった。


清算をすませ、少し重い袋を持つ。
碇君に美味しい料理を食べさせてあげたい。
碇君に美味しいって言われたい。
碇君の喜ぶ顔が見たい。
いつの間にか袋の重さを感じなくなっていた。


今日は日曜日。
碇司令は私の料理を食べたい理由で仕事を早く切り上げて帰ってきた。
碇司令も私の料理はまだ食べた事がない。
いつも作った料理はユイさんに食べてもらってるから。
3人がキッチンのテーブルに座る。
みんな心配そうにキッチンに立つ私を見ている。

失敗は許されない。
碇君に美味しいって言ってもらうために。
しかし、そう思えば思うほど空回りをした。
調味料の分量を間違えたり、野菜が上手く切れなかったり。
いつもならできる事が上手くいかない。
綾波、大丈夫?
心配そうな碇君の声が聞こえた。

なんだか自分が情けなくなってきて、すこし涙が出た。
味見の際、涙が混じってしょっぱく感じた。


悪戦苦闘の末、完成したカレーはカレーとは程遠いものになった。
野菜は包丁を上手く使えず、皮が残った。
お魚は骨を上手く抜く事ができず、身がバラバラになった。
ルゥはものすごく甘くなり、激甘を軽く超越していた。


今から作り直すには時間が足りなかった。
しかたなくそんな出来損ないのカレーを食卓に出す事にした。
テーブルにナベを置いた時、ユイさんと碇司令の顔を見た。
私を心配してくれているような顔をしていた。
そんな声に出さない優しさにまた涙が出そうになった。


食器にカレーを盛り付ける。
盛り付け終わった食器を碇司令の前に出す。

何も言わず、スプーンを手にした。
それをスプーンですくって口へ。
すこし口元が動いて、それから大量の汗を流した。
やっぱりまずかったのね。
ごめんなさい、私のために仕事を早く切り上げてもらったのに。
でも碇司令は盛られたカレーを残さず食べてくれた。
「美味しかったぞ。レイ。」
少しぎこちない笑顔を浮かべ口元を拭く。
その笑顔と言葉に胸が苦しくなった。


ユイさんにも同量のカレーを出す。
「いただくわ、レイちゃん。」
心配そうだった顔は消え、いつもの優しい顔に戻っていた。
しかし食べ始めてから、眉間にシワが寄ってきた。
ユイさん、ごめんなさい。あんなに親身になって教えてくれたのに、こんなものしかできなくて。
でもユイさんも残さず食べてくれた。
「美味しかったわ、レイちゃん。」
眉間からシワがとれ、また優しい顔に戻る。
普段は、心が温かくなるその顔も今はただ辛かった。


これ以上、辛い思いはしたくない。
みんなを困らせたくない。
「ごめんなさい、みんなを無理させて。もったいないけど捨てるわ。」
「ちょっと綾波、僕まだ食べてないよ。」
ナベを持ち上げて流しへ持っていこうとした時、碇君が慌てたように立ち上がった。


これを碇君の前に出すのは気が引けたが、しかたなく食器に盛って前に出した。
「碇君、無理しなくていいから。」

彼は黙ったまま、出来損ないのカレーを口にした。
彼がそれを口に運ぶたび、悲しくなってきた。

ごめんなさい、こんなはずじゃなかったの。
あなたに食べてもらう料理はもっと美味しくしたかったの。
これで美味しいなんて言って欲しくない。
立ったまま俯き、涙が流れた。
自分のふがいなさに。

どれくらいの時間が経ったのだろうか、いつのまにか金属がぶつかり合う音がしなくなった。
少し顔を上げてみてみると、食器に盛られたカレーがなくなっている。

「綾波、美味しかったよ。ごちそうさま。」
「どうして?美味しくなんかないはずよ。」
お願い、優しいウソはつかないで。
惨めになるだけだから。
止まらないほど涙が流れ、手で赤い瞳を覆った。


「綾波は大切なことを忘れてるよ。」
大切な事?
「料理で一番大切なのは食べてもらう人に対する愛情だよ。綾波は無意識のうちにそれを入れたと思う。だから美味しかったんだ。」
濡れた手をゆっくりと外し、周りを見た。
ユイさん、碇司令は頷きながら微笑んでいた。


だから、みんな残さず食べてくれた。
私が一生懸命作ったから、みんな美味しいって言ってくれた。
これが愛情なのね。
それが嬉しくて、自然に微笑む。
涙はもう消えた。
「碇君、ユイさん、碇司令。ありがとうございます。」
みんなの顔を見て、心が温かくなってきた。


「カレーだけじゃ足りないでしょ。僕が何か作るよ。綾波、手伝って。」
碇君はキッチンへ入り、冷蔵庫を開けて、食材を取り出す。
私はテーブルに置かれた食器と空になったナベを洗うため、流しへ持っていく。
野菜を洗う彼を横で感じながら、そっと呟く。


また、あなたの為にカレー作っていいですか?

聞こえないような小さな声だったけど、彼は小さく頷いてくれた。


【タイトル】Re: 隠し味は秘密
【記事番号】-2147483080 (-2147483081)
【 日時 】05/08/01 20:38
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 萌えだ。

 これ、ちゃんと書けばちゃんといい話になるで。長さは十倍くらいになると思うけど。

 個人的な感覚なんだけど、

>また、あなたの為にカレー作っていいですか?

 ここがすごくいい。ですますなのがいい。私も、何か話があって、ずーっと「うん」で、
ラストに「はい」ってのを使ったりするんだけど、この「ですか」は萌えた。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: 隠し味は秘密
【記事番号】-2147483073 (-2147483081)
【 日時 】05/08/01 22:07
【 発言者 】DRA

>ちゃんと書けばちゃんといい話になるで。長さは十倍くらいになるけど。

ワイには無理や。文章が思いつかん。これ以上、長くは書けへんでホンマ。
正直、これでもけっこう長いほうや思っててん。
掲示板に出すか、普通に投稿するか迷ってたんや昨日の夜まで。せやけど学校があるねん。
行かなあかん思ったんや、せやからこっちに出したんや。ワイ、けっこう横着やから。

っと一応、関西人なんで。
これで「お返し」の続きは終わりかな。
でも料理っていうのはまた別の話にでも使おうと思ってます。


【タイトル】Re: 隠し味は秘密
【記事番号】-2147483072 (-2147483081)
【 日時 】05/08/01 23:57
【 発言者 】なお。

>長さは十倍くらいになるけど。

 カレーの辛さみたいにサラッと書きますねw
 十倍は難しいかもしれないけど、読んでてここはこう書きたい、こう表現したいって色々
と脳内補完したりしたので、要所要所ではもうちょっと書けそうなところはありそうです。

 せっかくですので正式に投稿するつもりで加筆や推敲をしてみては?

 でも

>ワイには無理や。文章が思いつかん。これ以上、長くは書けへんでホンマ。

と、あるので無理しちゃうと冗長になりがちだけど、このペースでこれだけ書いてくるので
すからまだ書けますよ、きっと。『心の成長』の続編としての話しでしたが、その性質を持
っているのは、ほぼ前半の説明部分だけに留まっちゃってますので、そのあたりの話しを絡
めていけばもっと膨らみそうです。今のままだと前半の説明を省いて別の話しとして仕上げ
た方がいいかも。

 と、こんな感想ばっかり書いてるので、自分の首がどんどん締ってきていて書きづらいっ
たらありゃしない(爆)

 感想で書いた事を自分の作品に反映できてるのかと問われれば、否。そうできるのが理想
だけど、それとこれとは別(爆)

 ってか、書けよってw


>また、あなたの為にカレー作っていいですか?

 ここは本当にいいね!


【タイトル】Re: 隠し味は秘密
【記事番号】-2147483067 (-2147483081)
【 日時 】05/08/02 20:00
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

>ワイには無理や。文章が思いつかん。これ以上、長くは書けへんでホンマ。

正直、もったいない。これを書き直すのは厳しいのかもしれないけど、ネタとしてはいい
と思うんで、ギャンブルとかと離れた形で別の話として書いてみるといいかも。

>でも料理っていうのはまた別の話にでも使おうと思ってます。

みたいに。しばらく寝かせて別の話を書いて、忘れた頃に書いてみるのがいいかな。
忘れなければ(笑)。


>っと一応、関西人なんで。

お。関西人多いなぁ。


■なお。さん
>自分の首がどんどん締ってきていて書きづらいったらありゃしない(爆)

良くわかる(笑)。でも私はもう吹っ切りました。感想書いたり指摘したりしてる私と、物
書きとしての私は別人です(爆)。なので、

>それとこれとは別(爆)

渾身の力を込めて同意します(笑)。

mailto:tamb○cube-web.net

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ロレックス サブマリーナ 50周年 ( No.1 )
日時: 2021/12/05 15:17
名前: 5536  <vcvnlo@gmail.com>
参照: https://www.wellkopi.com/17041.html

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