習作? |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: なお。
- 【タイトル】習作?
【記事番号】-2147482424 (2147483647) 【 日時 】05/12/05 22:28 【 発言者 】なお。
いつものように起きいつものように食事を済ませいつものように家事を、それはいつものように 何事もなくいつものように進む。洗濯をして掃除をして───出かけるアスカとミサトさんを見送 って───それから熱いお茶を飲んで一息ついて。それでようやく僕は自由になり、自分のために さあ何をしようかと考えた。しかしいざ暇になってみると何をしたらいいのかわからない。そう僕 は、せっかくのたまのオフなのに朝っぱらから何もする事がなくなってしまっていたのだ。趣味と 言えるのかどうか微妙なチェロは引っ張り出すのが些か面倒であったので、それはすぐに却下して いた。 最近はことのほか忙しかった。その間、僕の移動した道を辿っていくと、家から学校そしてネル フに行きまた家に戻るといった歪な三角形ができ上がる。家の近くに少しだけ糸のほつれたような ところがあるけど、それは食料を買い込むだけに道を逸れ歩いたところで、他は綺麗な辺になって いるはず。ここのところずっと、そんな決まりのパターンが続いていた。だから友人との付き合い もおざなりになっていた。しかし今日ならその埋め合わせもできると思い、携帯に電話をかけてみ た。電話は少しのコールの後、繋がった。 「あっ、ケンスケ? 碇だけどこれから遊ばない?」 『ああ、碇か?』そう答えた友人、ケンスケの声はいつもより少し音域が高い。声自体も大きいよ うだ。それでも少々聞き取りづらかったのは、一緒に聞こえてくる騒音のせいだった。 『今、トウジと横須賀なんだ。今日は戦自の祝典があってちょっとしたお祭りなんだぜ。トウジと 代わるよ』 ここで会話が途切れると、聞こえた雑音は騒音レベルの大きさの音楽だとはっきりとわかる。マ イクが拾い切れないのかスピーカーが音割れを起こしているのだろう。そんな考えに至るか至らな いかのうちにもうひとりの友人、トウジの声が聞こえた。 『なんやセンセ今日休みやったんか? せならせや言うとーてくれれば誘いよっ───「おいトウ ジ、あっち凄そうだぞ! 行くぞ!」───ちょ、待てやケンスケ! ほな、切るで!』ツー。 電話の先では賑やかにマーチが流れていて、静か過ぎる僕のいる部屋とはまるで対極の場所のよ うに思えた。喧騒と静寂。大勢と一人。陽の光と影。香る潮風と濁った都会の空気。ここはあまり にも静かで、そのわりに情緒がなかった。 オーディオのリモコンを操作する。するとまだ耳も澄ませていないのにわずかな機械音が聞こえ、 そののちにスピーカーから静かに古典的な音色がフェードインされる。何度も聞いて覚えている曲 だ。頭の中ではすでに先行して曲が流れている。スピーカーからの音がしだいに大きくなり後から 被せるようについてくる。それが邪魔になりオーディオの電源を落とした。頭の中の音も電源が落 ちると同時に消えた。
冷蔵庫の中が乏しくなっていたのをふと思い出し、仕方なく買い物に出た。結局する事といえば 家事くらいのものだった。ただ時間潰しにぼーっとしているよりははるかにマシだけど、もっと他 に自分のための何かがしたかった。買い物から帰れば夕食の下ごしらえが始まる。これはやってお けば後が楽だ。楽になるからには自分のための何かに相当するような気もするけど、どうも上手く 騙されているような気がする。僕の人生っていったい何なんだろう。他人のためにあるのだろうか。 今日も暑い。種類のわからぬ程の蝉時雨は一つの塊となって降り注ぐ。僕はその雨の降る木陰の下 を縫うように、スーパーまでの糸のほつれの上を歩いた。意地でも影から出ないようにとしていた らそれが楽しくなってきて、歩みは軽快になっていた。 一通り買い物を済ませ店を出た。むわっとした熱気が僕を襲う。冷房の効いた店内が僕を引き止 めるが、帰るべきだろう。先延ばしにしても涼しくなるまでには6時間以上もかかる。そんなに待 ってはいられない。夕食の下ごしらえだってできなくなってしまう。覚悟を決めて店の軒下を飛び 出した。 今日はこれといった得売品がなくビニール一つで買い物が済んだのは不幸中の幸いだと思った。 せっかく買い物にきてこれだけかと思うやるせない気持ちは一瞬にして吹き飛んだ。僕はツイてい る。また影を移動して帰るのに荷物が少ないのは大いに助かる。しかしそれはとんだ間違いだった 事に少し歩いて気付いた。影はすっかり消えていた。考えてみれば今は正午で日陰はなくて当たり 前だった。それでも意地で少ない木陰を求めて走った。一秒でも陽に当らないようにチョロチョロ と移動をくり返した。そして今、僕は疲れきっていた。
ちょっと前に投下した「石像と猫」のさわりの部分です。 スタイルにこだわってかなり省略した書き方をしていたのでそうでない書き方に変えてみました。 それだけです。はい。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147482422 (-2147482424) 【 日時 】05/12/06 20:29 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
>ちょっと前に投下した「石像と猫」のさわりの部分です。
前のも読み返してみたけど、驚くほど印象が違う。優劣は微妙というか好みの範囲だと思うけど、とりあえずこのスタイルで続きを読ませろって感じです(笑)。でもこういうのって大変だよな。スタイルとしてはののさんに近いんだろうけど、明らかに違いが出てるのが面白い。
>そう僕は、せっかくのたまのオフなのに朝っぱらから何もする事が〜
主格の後の読点って私も癖のように入れたりするけど、このケースだとやっぱり「そう、僕はせっかくのたまのオフなのに朝っぱらから何もする事が〜」でしょうな。句点にしてもいいかも。段落を変える手もあるかな。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147482421 (-2147482424) 【 日時 】05/12/06 22:52 【 発言者 】なお。
実際こう書いてみると、元からズレのようなものが生じてきます。修正しながら書いてい ますが、これがなかなか難しい。そうなってしまうのは仕方がないことなのか、と疑問にも 思う程でした。 これはこれでこういうスタイルにこだわっているから、それがズレになるような気もする のだけれど、ズレるという事は、それだけ伝わらない物を書いていたか何かが不足していた のだとも思ってしまいます。だからといってどちらにしてもズレが生じない物が完璧な作品 だというのも少し違うような気もするし。やはりその時その時の想像力に左右されてしまう ものなのでしょうか。わかりません。
> とりあえずこのスタイルで続きを読ませろって感じです(笑)。
これだけでやる気が出てきます。一度書いたものなのでなおさらです。これは元の投下時 から修正が殆ど終わっていてそのまま投稿しようかと思っていたのですが、これはこれで書 いてみて、スタイルの違う同時投稿というのもアリでしょうか? といってもこのスタイルで書き上げる自信の程はなかったりもします。楽しくやってはい ますがまったく違うものになっていきそうな予感がして確約はできないのです。だから習作 だったという訳で、これは一つの遊びであって逃げだったのです。
今の時点だと、やってみます、としか言えません。努力はするつもりではありますが、ど うなることやら。
> 主格の後の読点って私も癖のように入れたりするけど
ああ、まさにソレだ。これはかなり少なめにしたから余計目立ってしまいますね。間違い ではないのだろうけど、どちらかといかといえばtambさんの付け方のほうが粋だ。 段落を変える手というのは今の私には思い付けません。そういう書き方はおいおいそのう ちにという事で。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147482417 (-2147482424) 【 日時 】05/12/08 20:56 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
>スタイルの違う同時投稿というのもアリでしょうか?
これはダメ(笑)。物語は同じなんだから。その物語を物語る(というのか)時にどういうスタイルがベストなのか、悩んで下さい。書いてみて別の話になったなら同時投稿もOK。結末が全く違うとかね。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147482397 (-2147482424) 【 日時 】05/12/15 23:19 【 発言者 】なお。
進まねえ! 全部をこういった感じで書き直していくとなるとかなりのパワーを必要とします。
「みんな、オラにちょっとずつ現金を分けてくれ!」
違った、元気だった(爆)
でも、疲れるけど楽しいんだよな。まいったなw しかし次は三人称にしようと思ってたのにこれも一人称なんだよね。書けないわけじゃないと思うのだけど、いつになったら書くのだろうか?
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147482241 (-2147482424) 【 日時 】06/01/11 01:20 【 発言者 】なお。
まだやってる。本当に進まない。 作業としてはプロットとして見立てた超大幅加筆なんだけど、これが簡単そうでそうでもない。 1/4から1/5(日にちじゃないよ)くらい終わったところで気に入らなくなってまた修正を入たりなんかとペースは落ちるばかりで書く事の難しさを痛感している次第です。
つーか、正直センス無いねヽ( ´ー`)ノ
このままで行ったら早くて半年はかかる。遅くて一年。 それでもたいしたものにはなりそうもないというダメっぷり。発表するとなると恥ずかしいね。 でも完成したら酷評も甘んじて受けるつもりで投稿はするけど、ひたすら鬱…鬱…鬱…。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481904 (-2147482424) 【 日時 】06/04/23 17:37 【 発言者 】なお。
飽きたので途中までを気分転換に投下。
容赦なく照りつける太陽。 焼けたアスファルトの向こうに蜃気楼が浮かぶ。 吹き出す汗は、飽和した大気に溶けず流れ落ちるだけ。 心頭滅却すれど、鳴くセミに夏であることをますます実感させられ……。
「あづい」
こう呟いたのは、本日何度目だろうか。 前回発してからは、五分と経っていないのは確かだ。時計の針は今も重なっている。 暑さを、昼を告げるサイレンに八つ当たりしたのでそれだけは憶えていた……。
石像と猫 by なお。
いつものように起きいつものように食事を済ませいつものように家事を、それはいつものように滞りなくいつものように進む。洗濯をして掃除をして、その合間に出かけるアスカとミサトさんを見送ったりもする。そうして誰もいなくなると、もう僕の独壇場だった。御飯はまだか、あれはどこだ、なんていちいち邪魔されないから、一連の流れですべてを一気に片付けられる。そうしたら熱いお茶で一息付けよう。言い換えればこのお茶を飲むことで、僕はようやく片が付いたと実感できるのだ。至福の瞬間だとも言えよう。しかしながら不思議なもので、コーヒーだと何度試してもそこまでの気持ちにはなれなかった。 例えば、お茶とコーヒーどちらが好きかと問われても、どう答えたものか。正直なところ優劣は付けがたい。だけどどうしてかここはお茶だった。仕事の合間の一服にならコーヒーも良いかもしれないが、事の締めくくりに落ち着くには、やっぱり僕は、お茶なのだ。それにコーヒーだったら、今朝、トーストと一緒にもう飲んでいる。
僕は湯飲みのお茶を啜りながら、今日になって始めてやっと自分のために、さあ何をしようかと考えた。しかし、いざ暇になってみると、したいことなんてこれっぽっちも思い浮かばない。それでも諦めずにもう一度考えてみる。したいこと……したいこと……。気が付いたらエンドレスにそう呟いていていた。そしてなんとか、今日したかったこと、なら思い出せた。閃いた瞬間「ああ、そういえば……」と、これも口に出していた。でも、それは、もう済ませてしまったものだった。そうだよな、だから今休憩をしているんじゃないか、と僕は自問して答えも出した。こんなにお茶が美味しいのもそのおかげじゃないか……といった具合にだ。 僕はもう一度湯飲みのお茶を啜る。すると熱いお茶がじんわりと咽を潤す。ふうっ、と声も漏れた。僕はそこで、ああそうか、やってしまったのならもう無理に何かをしなくてもいいじゃないか、と納得もした。いや、しそうになったけど踏み止まった。僕がさっきまでしていたのは、溜まっていた洗濯物を普段より多めに片付けただけで、それは自分のためのしたい何かなんかじゃ絶対にない! ようやくのことでトラップから脱出したはずの僕は、なぜかまたふりだしに戻っていた。要するに、暇だった。こんな時、趣味の一つでもあればいいのだけれど、唯一の趣味だと思っていたチェロは押し入れの奥から引っ張り出すのが面倒で、頭に浮かんだ瞬間もう行動の選択からは外している。その時点で、趣味ですらないのだろう……。 だんだん虚しくなってきたとき電子音が聞こえ、そちらを見ると、壁の時計から出てきた天使がダンスを踊り始めた。家主の趣味ではなさそうなこれは、友達の結婚式の引き出物だそうだ。見栄を張って祝儀をはずんだら、後から別に送られてきたらしい。ちなみに取り付けたのは僕だった。その10時の時報だった。天使はしばらくくるくると回ると、やがて扉の向こうへと帰っていった。そしてまた静かになった。何も変わらないように思えた僕の周りも、時間だけは確実に進んでいた。タイム・イズ・マネー。時は金なり。そのありがたい貴重な時間が刻一刻と過ぎている。せっかくのたまのオフだというのに何てことだ。このままでは本当にただのお休みになってしまう。でも、それもいいかと思う気持ちも少しはあった。
思い返すと、最近はことのほか忙しかった。そのあいだ、僕の移動した道を辿っていくと、家から学校そしてネルフに行きまた家に戻るといった歪な三角形ができ上がる。家の近くに少しだけ糸のほつれたようなところができるだろうけど、それは食料を買い込むだけに普段の道を逸れて歩いたところで、他は綺麗な辺になっているはず。ここのところずっと、そんな決まりのパターンが続いていた。おまけに家事までしているから、僕の自由時間は皆無に等しかった。 だから友人との付き合いもおざなりになっていた。学校の休み時間以外に、最後に遊んだのはいつだったか。それすらはっきりと思い出せない。それくらいちっとも遊んでいない。誘われても断っていたのだから仕方がないけど、でも、今日なら……その埋め合わせだってできるじゃないか! 思い立った僕は、慌てて自分の部屋に走る。窓のない僕の部屋は、そのままだと昼でも暗い。それでも目的の物は充電の終わりを告げるランプが点滅していたので照明を付けるまでもなく簡単に見つかった。手にしたのは、最近は持ち歩いても全然使ってなかった携帯電話だ。充電ホルダーから外された携帯電話はランプが消えて、今はシルエットだけになっている。僕はさっそく電話をかけようと、操作画面を呼び出した。すると液晶のバックライトが暗がりに眩し過ぎた。たまらなく僕は明るいリビングに移動する。メモリーから友達の名前を検索しながらゆっくりと。そして、ソファーに腰を掛けるとちょうどに通話開始のボタンを押した。背もたれに体を預け、しばし待つ。電話は少しのコールの後、あっさりと繋がった。
「あっ、ケンスケ? 碇だけどこれから遊ばない?」 『ああ、碇か?!』 そう答えた友人、ケンスケの声はいつもより少し音域が高い。声自体も大きいようだ。それでも少々聞き取りづらかったのは、一緒に聞こえてくる騒音のせいだった。 『今、トウジと横須賀なんだ。今日は戦自の祝典があってちょっとしたお祭りなんだぜ。トウジと代わるよ』 ここで会話が途切れると、聞こえた雑音は騒音レベルの大きさの音楽だとはっきりとわかる。マイクが拾い切れないのかスピーカーが音割れを起こしているのだろう。そんな考えに至るか至らないかのうちにもうひとりの友人、トウジの声が聞こえた。 『なんやセンセ今日休みやったんか? せならせや言うとぅーてくれれば誘いよっ──「おいトウジ、あっち凄そうだぞ! 行くぞ!」──ちょ、待てやケンスケ! ほな、スマンが切るで!』ツー。 電話の先では賑やかにマーチが流れていて、静か過ぎる僕のいる部屋とはまるで対極の場所のように思えた。喧騒と静寂。大勢と一人。陽の光と影。香る潮風と濁った都会の空気。ここはあまりにも静かで、そのわりに情緒がなかった。
携帯電話は畳むとテーブルの上に放り投げた。そいつは一回派手にカチャンと音を立てるとテーブルの端ぎりぎりまで滑っていき、止まる直前にくるりと半周ると結局落ちた。バッテリーが外れてしまったが、どうせ誰からも掛かってきやしないから構いやしない。 ちょうど手元にあったオーディオのリモコンを操作する。するとまだ耳も澄ませていないのにわずかな機械音が聞こえ、そののちにスピーカーから静かに古典的な音色がフェードインされる。何度も聞いてもうすっかり覚えてしまっている曲だ。その証拠に頭の中ではすでに先行して曲が流れている。スピーカーからの音がしだいに大きくなり後から被せるようについてくる。それが邪魔になりオーディオの電源を落とした。頭の中の音も電源が落ちると同時に消えた。
冷蔵庫の中が乏しくなっていたのをふと思い出し、仕方なしに買い物に出る事にした。結局することといえば家事くらいになってしまう。ただ時間潰しにぼーっとしているよりははるかにマシだけど、もっと他に自分のための何かがしたかった。買い物から帰れば夕食の下ごしらえが始まる。これはやっておけば後が楽だ。楽になるからには自分のための何かに相当するような気もするけど、どうも上手く騙されているような気がする。僕の人生っていったい何なんだろう、他人のためにあるのだろうか? そう考えたら知らず溜息が出ていた。 例に洩れず今日も暑く、種類のわからぬ程の蝉時雨は一つの塊となって降りそそぐ。僕はその雨の降る木陰の下を縫うように、スーパーまでの糸のほつれの上を歩いている。道中、意地でも影から出ないようにとしていたらそれがだんだん楽しくなってきて、いつのまにか歩みは軽快になっていた。家を出た時には遠いと感じたスーパーは、もう目と鼻の先だった。
買い物は一時間程で済ませた。レジを通った先の自動ドアの前に立つとすぐにセンサーが感知して、多少立て付けの悪いガラスのドアが、ゴトゴトと音を立てながら開いた。すると、むせかえるような熱気がトアの隙間から瞬時に流れ込んできた。僕はそのとき不快感に顔をしかめただろう。それと同時に冷房の効いた店内が僕の襟首を捕まえてきた。そしてこう呟いてくる。もう少しだけゆっくりしてったら? 僕は開いたドアの間で立ち止まるしかなかった。そこでどうするかなんて悩んだところで何の解決にもならないのはわかっていてもだ。ただの先延ばしだろうって。踏ん切りが付かないだけなのだ。だからこうやって、何やかんやと理由を付けている。 だいいち陽が落ちるまで何をして時間を潰せというのか。涼しくなるまで? あと七時間以上も? 冷凍食品を自然解凍させるのだって二時間もあればじゅうぶんだというのに。夕食の下ごしらえだってできなくなってしまう。 だんだん気持ちが固まってきたところで、すぐ後からきたおばさんに押されて、僕は完全に店の外に出てしまった。文字どおり背中を押されたのだが、文句は言えど、感謝する気持ちになどなれなかった。ガラスのドア超しに覗ける店鋪内は、日影になるこの軒下よりもずっと明るいくせに、青白い照明がわりと涼しそうに見えて──実際に涼しいのだが──それが不思議でなんとなくムカついた。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481903 (-2147482424) 【 日時 】06/04/23 17:38 【 発言者 】なお。
今日はこれといった得売品がなく、買い物はビニール袋一つ分で済んでいた。といってもそれは、かなり強引に詰め込んでの一つだった。二つに分ければ楽に持てそうなところ、ついいつもの癖で詰め込んでいくうちに──いつもは特売品を調べて買いに行く。そして両手にいっぱいになった袋をぶら下げて帰る──なんとか入りそうだったので無理をして一つに纏めてしまった。だからなのか片手に持つ重さは普段に増して重く、しかも片方だけに過重がかかるからバランスがすこぶる悪くひじょうに歩きにくかった。 僕は右肩の下がった姿勢でよたよたとしながら日影を探していた。スーパーを出て少しの間は暑さに耐えられたが、少し歩いただけでかなり厳しくなってきた。ジリジリとした日射は肌を刺し、痛いくらいにもなってきていて、早急にどこかに避難したく歩みを早めた。しかしいくら探しても日影は見当たらない。行きにお世話になったはずの街路樹の影も、今や言葉どおり見る影もなくなっていて、あっても入ることのできない車道側に申し訳程度に存在しているだけだった。 日影はすっかり消えてしまっていた。考えてみれば今は正午、日影はなくて当たり前だった。それでも意地で少なくなった木陰を求めて走った。一秒でも陽に当らないようにとチョロチョロと移動をくり返した。そして僕は疲れきっていた。 影を縫ってひらりひらりと移動して帰る、を想定していた僕は今まさに後悔していた。もうどこに行ってもあるのは焼けたアスファルトだけ。その照り返しも厳しくそして自前の黒髪は嫌でも光を集め熱に変える。頭から足下から両方で蒸し焼きにされている気分だ。噴き出す汗に髪は額に貼り付き鬱陶しく、眉に溜まり溢れ堰を突破してきた汗はそのまま目に流れ込み視界を滲ませた。砂漠に見える蜃気楼とはこういうものだろうかと思う気持ちをすかさず振り払う。食材を詰め込んだ買い物袋が指に食い込んで痛かった。鬱血した指の痛みがかろうじて意識を繋ぎ止めていたようだ。しかしそれすらも感じなくなってきた。 ガサッ! クシャッ! コスン! それは纏まって一つの音で聞こえた。失いそうな意識の中、聴覚だけが妙に鋭くなっていた。そのわりに他の周りの音は何一つ聞こえなかった。車道を走っているであろう車の音も、難聴になりそうなくらいうるさい蝉の鳴き声も一切、何一つとして。ただこの一点にだけ集中して聞こえたようだった。その中にかすかに鈴みたいな音を聞いた気がしたが、それこそ幻聴のようでもあった。いつのまにか、汗ばんだ手が軽くなっていた。
咽、乾いたな……。 揺れる陽炎のなか道を挟んで向こうに飲料の自動販売機が見え、唐突に覚えた咽の乾きは現実にいておきながら急にそこに引き戻されたような感覚だった。 買いに行こう。そう決めた。でも僕は歩き出す前に迷い、そこに立ち止まったままでいた。さすがに足下のぶちまけてしまった物を、放っておくわけにもいかなかった。しかしそう考えたときにはもう、僕の興味はその自動販売機にしかなくなっていた。未練が消えると、僕を引き止めようとするものはもうなくなった。制約のない自由の身に僕はなったのだ。それなのに両の足は地面に貼り付いたままこの場を動こうとしなかった。いつしかすべての欲望というものが僕の中から消え去り、何かから逃れたい、解放されたいという意欲さえなくなってしまっていたようだ。しかしこうしているあいだにも汗だけは流れ続けている。それは足下にポタリと落ちると染みる間もなく乾き、飽和状態に達しようかという周囲の湿度を増して昇げていった。一雫落ちるたびにそのような不快感だけがこの場に蓄積され、居心地は更に悪くなる一方だった。それでも僕はこの場から動かずに、まるでハングアップしたコンピューターのように二つしかない選択肢のどちらも選べないまま、されることのない無意味な問答を飽きることなく何度もくり返していた。拾うか買いに行くか。それを延々とくり返していた。最後には一応人間らしく、このまま干涸びて石像にでもなってみようか……なんて考えに至ってしまったのも、当然のなりゆきでしかなかった。
ガサッ、ガササッ。 足下に突然聞こえた音に、野良猫あたりが漁っているのだろうと見当をつけた。追い払う気にもなれず、もういいや勝手にしてくれ、としたいようにさせておいた。でも何か様子が違った。 猫? 本当に猫なんだろうか? 疑問に思っても確かめようにも、ぼやけた視界の先一点からどうしても目を離せなくなっていた。例えるなら落としてフォーカスの壊れたビデオカメラが流す映像、といった感じで僕の瞳は固定された景色を意味もなく像の結ばないまま映し続けている。たぶん脳から命令を送りさえすればすぐにでも視点を動かせるはずなのに、しようとしていないのをできないとしてしまっていた。一言でいうと自分であることをやめている。それは放棄しているのとは少し違い、自分が自分でなくどこか他人のような、心と体を別々に切り離されたような一体感のなさとでもいうのか、まるで僕が僕でないみたいで意識を主観に置くと体は鏡に映した姿のように直接触れることのできない別のところにありそうな奇妙な感覚。……いや、意識の方が鏡の向こうの僕で、そしてこの実体の僕を他人のように見つめている。 敏感になっていた聴覚が拾うノイズはいつのまにか聞こえなくなっていて、しんと静まり返った世界は外界との完全たる隔たりを意味した。その瞬間から僕の意識は見えない鏡の中に閉じ込められていた。そこには僕一人だけが君臨し、僕そのものがその世界をかたち作るものだった。すべての光を拒む鏡の世界には僕のみが生き、また僕だけが死んでいた。そこは生と死が同居した不快感など無縁な世界で、眠りに落ちる寸前のようなここち良さだけを僕に確実に与えてくれた。 その世界に一つの軽やかな音色が響いた。何者もの進入を許さない僕の領域に割って入ってきたその音はチリン、チリンと鳴る鈴の音だった。それは聞こえたというよりも聞こえたような気がしたといったほうが正しく、そのわりに明確に思い出せる音として聞こえていた。鏡の結界は、音が入ってきた箇所にできた少しのひび割れを次第に大きくしていった。それが全体に広がると一かけらの破片すら残さず飛散して消え去り、跳ね返されていた外界の光が射し込むと、僕の意識はそこで解放された。意識はやがて元の体へと結びつくと実感としてとても暑く、蝉の声が痛いほどに耳を刺激した。そして固着していた視界に変化が起こった。 紅。 やがて目の焦点が合うと、それは僕を覗き込む瞳の色だった。まばたきをしている。僕はこの瞳をよく知っていた。それが少し下がって遠ざかると全身が見えるようになった。目の前の人物は、さっき僕が落とした袋を重たそうに両手で持ち、こちらに差し出していた。僕は黙って受け取った。 「じゃあ」 紅い瞳の持ち主はそう言葉を捨て、立ち去ろうとする。それはあまりにもそっけなく風のように消えようとする。遠ざかりゆく明るい色の髪が強い陽射しに輝いて眩しかった。 「待って!」 僕は慌てて引き止めた。そして振り返った彼女にこう言った。 「お礼に、冷たいものでもどう?」 しかし彼女からの返事はなかった。頷くでもなかった。 ジュースの一本くらいお安いもので、これくらいなら好意を返すに妥当なところだろう。それなのに彼女の反応はあまり良いものではない。眉を寄せた浮かない顔をしている。そして目を瞑ったと思ったらくしゃみをした。口の前に手を合わせると、クシュンとひとつ。そのあと彼女は遠くを眺めるように平手を水平にして額に翳し当てた。どうやら陽が眩しかっただけらしく、僕の誘いはどうにか考えてくれているようだった。 彼女は悩まし気に流し目で、額に当てた手は髪をかきあげる仕種にも似て、その様子はどことなく様になっていて美しかった。しばらくすると彼女は唐突に空を仰ぐようにする。僕も釣られて見たななめ上の空には大きな入道雲が一つ、その手前を小さな塊がゆっくりと流れていた。目を下ろすとそこで彼女と目が合った。瞬間、僕の心臓は大きく跳ねた。それをやり過ごしたころ彼女はゆっくりと頷いた。それを合図に僕達はどちらからともなく蜃気楼の中に歩き出した。
陽炎の河を渡り辿りついた先、自動販売機の前に立ち財布を探す。しかし取り出そうとしたそれは汗で濡れたポケットに引っかかり予想以上の抵抗を見せた。力任せに引き抜こうとしても汗ばんだ手は滑り、しかも握力も低下しているようでなかなか掴めずにいた。ここでもたもたしているとお礼をするつもりが彼女が自分のお金を投入してしまうかもしれない。焦りながらもそうならないように釘を刺す。 「ごめん、ちょっと待って」 しかしそう言っても肝心な、言葉の相手がいない。どこに消えたのか? 見回すと彼女は後ろ姿ですぐ隣の建物に入っていくところだった。華奢な彼女は猫のようにするりと扉の隙間を抜けていった。そして姿が消えると同時にカランコロンとベルが鳴った。 喫茶店……。 思惑は外れたが、かえって好都合かもしれない。少しばかりの飲み物を飲んでも今の僕には一時しのぎにもなりそうにないのは明白で、異常なほどに呼吸が荒かった。それだけ水分を失っているのだろう。だから水分補給と合わせて少し休むべきで僕も彼女の後を追ってカランコロンとペルを鳴らした。
扉を閉めるとそこは天国だった。外気との温度差もさることながら気化する汗がみるみる火照りを鎮めていった。重く纏わりつく湿気が消えると体も軽くなった。しっかりとした喫茶店である証拠ともいえるコーヒーの挽き立てならではの香ばしさは心を落ち着かせ、そして透き通って流れる自鳴琴の音色は、ここに来て体がそうなったように落ち着いた心を更に軽やかにしてくれた。 ひとここちつ付いたところでようやく情報として入ってきた店の造りは、割とシックな感じであまり広くはない。外の歩道に面した窓際のあたりは一段上がっていて手前に小さな階段が付いている。窓は小さなガラスをいくつかはめ込んだ格子状の木枠のついたものだ。そこと下のフロアを隔てるパーテションは腰くらいの高さで多少厚みがあり、上には背の低い観葉植物の鉢植えが載せられている。全体としてスチールやプラスチックを多用しない調度に自然な趣きがあった。壁は漆喰の白壁で床はステイン色のフローリング。天井には花びらをデザインしたガラスの傘を付けた白熱灯をいくつか纏めた照明がぶら下がり、その灯が使い込まれた感のある木彫のカウンターを飴色に溶かして見せていた。
「いらっしゃいませ。お連れさまですか?」 この店の主人だろうか? いかにも紳士といった装いの老人が手のひらを上に奥へ差し出しながら僕に尋ねた。その手の先は一段上がったところ、テーブルに肘を付き窓の外をぼんやりと眺める彼女が一人ぽつんと座っていた。 「そうです」僕は答えた。 「では、こちらへ」彼もすかさず返答をする。 ゆったりとした、かつそつのない動きで老紳士は僕をエスコートする。背筋のしっかりと伸ばされたその身のこなしには気品のようなものがあり、どこか大きなお屋敷で長年執事でもしていたといっても通じるだろう。それくらい丁寧で低い物腰に僕はいささか恐縮しながら、導かれるほどもない距離のテーブルまできっちりと案内された。 短い階段を昇り高い位置に立つと店内の隅々まで見回せた。昼食時だというのに流行っていないのか、僕らの他には誰もいない。見た目の印象と違い、あまり良い店ではないのかもしれない。でも、休息するのに贅沢も言っていられない。それどころか僕は既に満足してしまっているくらいもあった。それだけ店の雰囲気としては悪くなく、むしろ好感が持てた。となると人のこない原因は、基本となるコーヒーがまずいのかもしれない。店に入ったときの匂いは合格点だったけど、これだけは飲んでみないことにはわからない。 老紳士は彼女の着くテーブルの前までくると、彼女の向いにある椅子を引き、「どうぞ」と僕に勧める。僕は椅子を引かれた経験などないので座る瞬間そこに本当に椅子があるのか不安でならなかった。だから後ろを振り返ったぎこちない動作になってしまったのだが、紳士はそういったのにも慣れているのか恐るおそる腰を下ろす僕にもちょうどのタイミングでうまく椅子を押してくれた。着座すると僕の背筋は彼のようにしっかりとしゃんと伸ばされていた。湿ったズボンが腿の裏側で冷たかったけど姿勢は崩してはいけないような気がして、しばらくかしこまっていた。そこで僕は客がこないのは、この堅苦しさのせいかもしれないと思い至った。
コトリ。 氷りの浮かぶグラスが一つ、目の前に置かれる。彼女の分は量の半分となったものが既にテーブルにあった。表面に水滴の浮かぶグラスは涼し気で、パキンと小さく氷の割れる音がいっそうの涼しさを演出していた。 「御注文がお決まりになりましたら御呼び下さい」 紳士は一礼して踵を返すとカウンターの奥に消えてゆく。僕は見送ってから肩の力を抜いた。腰も深くかけなおす。するといつのまにだろう、気がつくとグラスだけでなくさりげなくメニューも一緒に置かれていた。 メニューは革でできた表紙の、わりと薄いものだった。ちなみにグラスに敷かれたコースターも革製だった。それらはわざわざ革で作られているだけあってなかなか凝った造形をしていた。僕は使い込まれしっとりとした艶やかな光沢を帯びた表紙を開く。表紙は滑らずにぴったりと吸い付きとても手に馴染んだ。しかしどうだろう、そこでたちまち僕の期待は裏切られてしまう。メニューに書かれた内容はどうってことのないいたって普通のもので、コースターも革でできているというだけで、当たり前だが何の仕掛けもない、その役目を考えるとごくありふれたコースターだったからだ。そんな面白みの欠片もないつまらないものだった。 興味をなくし顔をあげると正面の彼女は目を閉じグラスを傾けていた。白い咽が波打ってコクコクと鳴っている。やはりあの暑さだから咽が乾いていたのだろう、グラスはすぐ空になり、飲み干したあと膨らんだ頬からポリポリと音がしていた。そんな子供みたいな行動は僕にはちょっと意外であってそれでいて彼女らしくもあり、こうやっていつもひょんなところで驚かされるのが面白くあった。 「何にする?」 「いははい、ほういははいははは」(いらない、もういただいたから) さっそく礼らしきものをしておこうと、僕は彼女に尋ねる。しかし返ってきたのは何を言っているのか……いや、なんとなくはわかるけど、それは謙虚というよりも、ひょっとしてからかわれてる? なんて思えてしまうくらいもので、どうもやりずらいことこの上ない。彼女との会話はだいたいいつもこんな感じで、僕がいけないのだろうが、いつもこちらで無理矢理納得させてしまって、ちゃんとした意思疎通ができているのかあやふやだった。さすがに何か重要なことならばしっかりと聞き直すだろうけど、そういう試しもない。それでいて問題も起きていないのだが、つまりはふだん彼女とは、これといってたいした会話をしていないということになる。しかもその会話というのも僕から話しかけたものが大半で、更にその殆どは彼女と話をしたいというのが理由で、行動そのものが目的だったから、会話そのものに深い意なんてなかった。彼女は二個目の氷を口に入れる。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481902 (-2147482424) 【 日時 】06/04/23 17:39 【 発言者 】なお。
今僕は困ったような情けないような顔をしていると思う。今回はちゃんとした目的があるにせよ意味としては深いものなどないはずの会話なのに、何というかこう、礼くらいは遠慮もなしに自然と受け取ってもらえるくらいの徳というものが僕にはないのだろうかと真剣に考えてしまったからだ。彼女からしれみれば知った仲だから助け合うのも当然という、善意以前のごく当たり前の行動であって礼なんてとんでもない、という考えなのかもしれない。でも僕は好意を好意として受け取ってもらいたい。何も格好つけたいわけじゃなく、素直な感謝の気持ちとして。 こんなとき、コミニュケーションの手段としてある言葉というものは実に不便だ。いっそ言葉などなく心で通じ合えればこのような煩わしさからは解放されそうなものだと思う。しかし考えてみると、これもどうだろう。そうなったらそうなったで僕の気持ちはすべて彼女に筒抜けになってしまう。それはまずい。彼女とは……いろいろしてみたい。 僕は裸になった彼女の足を開き、あらわになった性器を観察するところを想像する。まだ女性器の実物を見たことのない僕のペニスはそんなプロセスだけで勃起を始める。彼女のそこは二つの丘が純潔を守るようにぴったりと閉じられている。僕はその丘を両の指でそっと押し開こうとする。指が触れると彼女は小さく声を出した。しかし指に感触は伝わってこない。経験としてないものを想像するのはこのあたりが限界だったのだ。だからそこから先はどうしても観たことのあるアダルトビデオの画像に置き換わってしまう。甘い幻想とはうって変わった、放出した自分の精液のむっとする臭いだけが妙にリアルに思い出されて最悪だった。そこに空調の風がいたずらに、花の香りを運んできた。鼻孔の奥深くに貼り付いて残る嫌な臭いはそれによってかき消された。そこでようやく僕は我に返る。何が純粋にだ。笑わせる。下心だらけじゃないか。そう考えると、最後の氷を頬張る彼女の膨らんだ顔を僕はまともに見られない。 「でも……さ。それじゃ、お礼にならないから……」 心持ち目を合わせないようにして彼女にメニューを渡す。妄想とはいえ本人を目の前に犯してしまった。そんな自分を罰する気持ちが罪滅ぼし的な自然な態度を僕に取らせたのか、彼女はそれを思ったよりも素直に受け取りパラパラと捲り始めた。なんだかなあ、と深く考えたのがばかばかしくなった。もう何をどうすればいいのか、僕自身がわからなくなった。そしてもちろん彼女のことだって僕は何もわかっちゃいない。とくに彼女にしてみては何を考えどう思っているのか、それは読みようなどもなく、まるで気紛れな猫でも相手にしているようで掴みどころがないところがある。今日だって突然現れて、あっちにいたと思ったらこっちにいたり、連れないなあと思ったらそうでもなさそうだったりと、色々と思い当たる節がある。 そういえばこの感じ、どこかで……? 憶えのありそうな印象に哀愁まで感じた僕は、目を閉じてうつむく。しかしそれはあまりにも漠然としていて思い出すには至らなかった。デジャビュウとでもいうだろうか、気になったわりにそんな記憶は僕の頭の中のどこにも見当たらなかった。それでもやはり懐かしく感じた僕は深く溜息を吐く。それから閉じていた瞼をゆっくりと開いた。するともう暗さに慣れ始めてしまった目は、僕に白ぼけた景色を見せた。目の前は数回まばたきをしてもかろうじてテーブルの上だとわかるくらいで、外から射し込む光と白熱灯の照明の中間に位置したグラスが双方の光を集め中和して、浮かぶ氷の中にその輝きを閉じ込めているのだけが浮かび上がって見えた。溶けた氷はその表面を滑らかにしていて、そこからもれた丸みを帯びた光はグラスの表面に移りそしてそれを透して周りに丸い光の影を落としていた。そこを中心に光は緩やかに広がってゆく。次第に明るさに慣れてきてグラスがはっきりと見えるようになると、もう咽の乾きがそれ以上の思考を許そうとしなかった。幻想的なオブジェのようだったグラスは冷えた水の入ったただの容れ物となり、僕は欲望のままにそれを手に取ると大きく息を吸い込み一気に煽った。 ほどよく氷の溶けた冷たい水は染み入るように咽を潤しネバついた不快感をさっと洗い流していった。グラスを置くまでは一瞬の出来事で、コトンと音が鳴るのと同時にプハーッと長い息を吐き出した。ありきたりな表現だけど生き返ったようだった。まるで植物にでもなったかのように僕の体は隅々までじわじわと音を立てながら水分を汲み上げていく。それでも枯れ切っていた体は満足しなかったのか、口の中には不快感がまだ少し残ったままだった。そこで中途半端に満たされた欲求は、さらなる要求を僕にしてきた。 さて、何を飲もう? 意識はだいぶ健康的な方向にむかったようで、僕は何かを思い出そうとしていたのをすっかりと忘れ、体が求めるものを自然のままに受け入れようとしていた。メニューは口元に指をあてた彼女に取られたままだったので、僕は逆さまのままにそれを覗き込んだ。すると開かれていたのはランチの項だった。そういえばお昼だったとこのときになってようやく気づいた。おそらく彼女もまだ昼食を摂っておらず、それでかえって遠慮していたのかもしれない。 「ついでだから食べていこうか?」 うなずいたのが彼女の返事だった。誘ったはいいが忘れていたくらいで、実のところ僕に食欲はあまりなかった。 「で、もう決まってる?」 今度はフルフルと頭を振る。髪が揺れるとふわっと花のような香りが僕の鼻孔をくすぐった。さっきの匂いと同質の香りでより強く……これはシャンプーの匂い。彼女の近くにいるときに憶えのある、甘くかつすっきりとしてなお微妙に爽やかな酸味を感じさせる、とても魅力的な香り。それに対して僕は酸味だらけの臭いなんだろうな、と自分の体臭が気になってしまい不快な思いをされたくないと覗き込んでいた体を少し引いた。 僕の白いカッターシャツは袖のあたりが未だに素肌に貼り付き、下に着ているTシャツのプリント地を透かして見せていた。それを見て湿った服の感触が急に気持ち悪く感じて胸の辺の生地を摘まみ上げた。すると貼り付いた服の生地が浮きあがる様子は生皮を剥がしているようにも似て気持ちは余計に悪くなり──冷たいので死体の皮膚のようで、それが自分なのでなおさらだった。そして服に付いた汗は摘まみ上げた指先まで濡らしてしまいまさに踏んだり蹴ったりだった。濡れた指をおしぼりで拭おうとしたら──これもいつのまにあったのか──それが実によく冷えていて、つい額にあてがってしまう。 これがことのほか気持ち良かった。さすがに行儀が悪いので顔を拭うのはやめて押さえるに留めておいたが、目の辺を押さえると冷んやりとしたここち良さが頭の奥にまで浸透していきそれだけで満足がいった。しかし残念なことにそのここち良さも長くは続かずおしぼりはすぐに温まってしまい、一度裏返してはみたものの、最初のような冷たさはもう得られなくなっていた。いくばくかのなごり惜しさを感じながら畳んでは置き、僕はそれを彼との別れとした。おかげか、少しだけ食欲が出てきたようだった。
とりあえず軽いものを選ぼう、トーストセットでいいかな。メニューの端にちょこんと書かれた文字を見てそれに決めた。食べないという選択もあるだろうけど食事を誘った僕が何も食べないわけにもいかないし、多少無理をしてでも食べようと思ったのは、たぶんこれくらいなら入るだろうという算段と、ランチメニューの中で一番安い品なので、もし残しても懐があまり痛まないという打算もあってのことだった。でも、だからといってかならずしも嫌々というほどでもなく、付いてくるアイスコーヒーにはそれなりの興味を持っていた。この店のコーヒーを一度飲んでおきたかったのだ。本当はホットで飲む方が好ましいけど、今は冷たいものが飲みたかったから妥協にはなれど不満もなかった。これでも僕はコーヒーには煩い方で、知識はともかく味の善し悪し──どちらかいうと好み、かもしれない──については譲れないものを持っている。朝もトーストだったというのはこの際置いておこうと思う。 彼女は何にするのだろう。見ると彼女はメニューに目をはわせ、まだ考えているようだった。僕は待っているあいだ窓の外をながめる。外の陽射しは未だ強烈なままその力を存分に振るい続け、地表を照らし焼いている。暑さはもう忘れたけれど一時間と経たない頃にはまたあの灼熱地獄に放り出されることを思うとうんざりとしてきた。遠くに雲が厚く見えた。夕方には一雨あるかもしれない。少しは長居したいがそれまでには帰りたい。 視線を戻すとふと彼女と目が合った。彼女はテーブルの上のメニューに指を差し、何か言いたそうにしていた。僕が気づくまでずっとそうしていたのだろうか? 「どうしたの?」僕がこう尋ねると「これ……」と彼女は言った。 「それにするんだ」 僕の言葉に合わせてシャンプーの香りも一緒にもう一度髪も揺れた。違うのだろうか? 「これ、なに?」彼女は小首を傾げる仕種を見せた。 そうか、知らないんだアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ。ずいぶん悩んでいると思ったら、そういうことか……。 「パスタだよ。オリーブオイルで炒めたやつで、味付けは主にニンニク……」 「これでいい」 ほんとうにそれでいいの? 他のも説明してあげるけど……とは思ってもあまりにもはっきりとした返答に、わざわざ聞き返す気も削がれてしまっていた。それくらいに気持ちの良くなる即答だった。 「ドリンクは?」 「オレンジジュース」 テーブルの端に置かれていたブロンズの呼び鈴を振ると、適度に乾燥した空気に軽い音がチリン、チリンとよく響いた。目的を果したそれを元あった場所に戻すとき、赤い瞳が僕の手元を追っていた。しばらくすると先ほどの紳士がいつのまにか気配もなく幽霊のように現れた。足音も聞こえなかったので僕は自分の真横に突然気配を感じると、口から心臓が飛び出すほどに驚いてしまった。おかげで震える声を抑えながらの注文と相成った。 一通り注文を済ませると最後に紳士がこう聞いてきた。 「お飲物はいつお持ちしましょうか?」 咽が乾いていた僕は「先にお願いします」と言った。彼女は「一緒で」と言う。 「かしこまりました。すぐお持ちします」 去りぎわに適度な角度で腰を折りお辞儀をして紳士はテーブルから離れていった。姿が見えなくなると、僕はまたかしこまっていた姿勢を崩した。あとは待つだけのはずが……間が持たない。これってデートみたいだね、とでも言えばいいのだろうか? 「お待たせしました」 「うわっ!」 すぐに持ってくるとは聞いていても、それはあんまりにも唐突すぎた。突然の声に僕はまたもや驚いてしまう。心臓に足でも生え外に向かって蹴られたような衝撃に胸を押さえる。心の準備というものがまったくできていないところへの不意打ちというのは二度目でもさすがに厳しかった。激しい動悸を静めるよう呼吸を整えながら僕は、この人は人を驚かすのが趣味なんじゃないだろうか? なんて紳士を疑う。それなのに紳士は口元を歪めるでもなく真剣な面差しで僕に「どうか、されましたか?」などと心配そうな声をかけた。もしここで笑ってでもいられたならば、まだ楽だった。 「あ、いえ。おかまいなく……」 愛想笑いで返した僕は彼を疑ったことを恥じなければならなかった。そして動悸はまだも続いている。そんな僕に対し正面の彼女は平然としたもので、きょとんとした顔で僕と紳士のやり取りを見ていた。背中を見せていた僕と違い近づいてくる姿が見えるのだから驚かないのは当然であっても、一緒にいて僕だけが驚かなくてはならないのにどこか不公平さを感じてしまう。でもそう思ったのは一人で取り乱してしまったのが単に恥ずかしかったからかもしれない。今からでも座る場所を変わってもらいたいところだけど、どう理由をつけて良いのやらで結局今も同じ場所に座っている。
テーブルには新しいグラスが二つ置かれていて、やはりというか紳士はもういない。僕は手元のアイスコーヒーを手にして口をつける。するととても冷やで飲んでいるとは思えないほどの芳醇な香りが口いっぱいに広がった。 なんだこれ?! 香りは強いのにアイスコーヒーにありがちな、香りを引き出そうと無駄に濃縮したかの粗暴さがない。だから苦味にアクがなく渋みも一切感じさせないから後からくる酸味は舌を麻痺させることもなく咽の手前から上の方に抜けていき、それが消えると豆のロースト感がざらつきもせず残る。実にうまい。好みはあれど少なくとも僕には最高のもののように思えた。 では彼女の飲むオレンジジュースはどうなのだろう。見たところ果汁分の多そうな健康的で自然な色をしている……と、ここで僕は疑問に思う。彼女は『一緒で』と言ったはずのに、どうして今飲んでいるのだろう? 「良かったの?」 僕は出されたタイミングに不満はないのかと聞いたつもりだった。彼女は味わっていたのか閉じていた目をゆっくりと開きストローから口を離した。そのとき小さくチュッという音がして、レモンイエローだったストローはすぐさま元の半透明な白さを取り戻す。そして彼女はおもむろに口を開く。 「何が?」 疑問にも思っていないのか僕の意は伝わらなかったようで、このように普通に聞き返されてしまう。彼女は注文をしたとき確かに『一緒で』と言ったはずだ。憶えていないのだろうか? 「だって、後の方が良かったんじゃないの?」 僕は彼女の飲むグラスに指を差しもう一度聞いた。すると彼女は「どうして?」と言う。 「いや、ほら……」なんだか僕の方が自信なくなってきたけど……「一緒でって言ったよね?」 彼女は小さくうなずく。どうやら僕の聞き間違いではなかったようだ。ではなぜだろう、運ばれてきたオレンジジュースを前にして気でも変わったのだろうか? 「良かったの?」と僕はまた同じことを聞いた。 彼女はそれに短く「うん」と答えた。そして付け足す。「一緒がよかったから……」 今度は彼女が僕に指を差してくる。正確には僕の持つコーヒーのグラスに。これがどうと言いたいのだろうか? 彼女は僕のグラスを差したままに同じ意味の言葉をくり返した。「一緒に持ってきてもらった」 「これと?」 僕は彼女に見せるように自分でもグラスに指を差して質問した。しかし彼女はそれに答えずにストローを銜える。たぶんこの会話はこれで終わり。 手にしたコーヒーのグラスを見つめ僕は考える。これと一緒? 注文の最後に僕は『先に』と言った。そして彼女は『一緒で』と言った。僕の品は希望どおりに先に届いた。それなのに彼女の品は注文の品すべてが同時にではなく飲み物だけ僕のコーヒーと一緒に先に出てきた。僕の頼んだ順番と一緒になったというのにそれで問題がないと言う。これと一緒に出てくるのを望んだと……。あっ、まさか! そうだ、これなら辻褄が合う。僕が『先に』と言って、その僕と『一緒で』という意味だったのか。なるほどようやく合点がいったとわかったとたん、すごく疲れた気がした。それにしてもずいぶんと紛らわしく、紛らわしいながらも彼女のことを少なからずとも知る僕にさえわからなかったものが、よくあの紳士には理解できたものだ。洞察力に優れているのか? はたまた偶然だろうか? 偶然にしても僕だけが蚊屋の外にいたようでそれがなんとも悔しかった。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481901 (-2147482424) 【 日時 】06/04/23 17:40 【 発言者 】なお。
それからというもの会話はすっかりなくなってしまい、沈黙は僕に二人きりの状況というものを深く意識させた。そしてやりきれなくなった僕は何かと話しかけてみたが……。 『ええと、いい天気だね』 『そうね』 『明日も晴れるかなあ?』 『たぶん』 ……このような調子で会話にもならず、試みは失敗に終わるどころか気まずさが余計に増しただけだった。焦れた僕は腕に巻いた時計の針を睨む。何分経った? 五分か十分か? しかしどれくらいの刻が経過したのかは焦りを感じ始めた時間がわからないから計るにも計れず、その行為はまったくもって意味を成さなない。そればかりか秒針の進む速度が酷くゆっくりとしたものに感じられて、なおさら落ち着かなくなってしまった。店内に流れる自鳴琴の優しいはずの音色も、今の僕の心を鎮めるにはまるで役に立っていなかった。トーストはまだ焼けないのだろうか? 背中や脇のあたりに汗が伝い流れだした。冷房は十分に効いているのにだ。もちろん暑くはなく、汗ばんだシャツが冷えてきてむしろ寒いくらいだった。それなのにせっかく補充したはずの水分が何者かの手によって奪われていく。僕はそいつから逃れたい一心で、今すぐにでも外に飛び出していきたくなった。灼熱のアスファルトの上とこの状況、どちらがましなのかは判断に難しいところだけど、今は地獄のような暑さささえも恋しかった。しかしここも外と同じ地獄は地獄であって、灼熱地獄に相対するところの氷結地獄。そう簡単には脱出できない。エスケープを企てようとする僕を氷の悪魔は呪った。ブリザードの吹き荒れる雪原の檻に閉じ込められたように寒さは増して感じるようになり、体が次第に硬直していく。空気さえも凍り付いたのか酸素が薄くなったかのような息苦しさまで感じるようになる。本当に薄くなっていてもしこのまま真空にでもなったならば僕はフリーズドライの乾燥食品みたいにカラカラに干涸びてしまうだろう。唇は舐めると既にカサカサになっていた。自鳴琴の音は今やレクイエムのように響き、今度こそ本当に石像になってしまうのではないかという不吉な予感を、あるはずもない歌詞があたかも現実に起こり得る現象だとでも言うようにメロディーラインに乗せて僕に伝えてくる。その歌詞は耳を塞いでも皮膚から浸透して僕の脳を犯し、身動きも取れず声すら発せられない石の塊になったところを想像した僕は恐怖以上にとてつもない孤独感に襲われた。いや、それそのものが恐怖なのだろう。幼い頃父さんに捨てられ、それ以来心を閉ざしてしまった僕にはこれ以上の恐ろしいものはない。ひとりでいることの恐さを僕はよく知っている。だから助けて欲しいと誰かに縋りたくもなるが、たとえ声を出せたとしてもそれはすべきではない。なぜならこれは僕自身が解決すべき問題で、自分でしか解決できないものだからだ。自分から手を伸ばさなければ、この手は誰も掴んではくれないのだ。でも、具体的にはどうすればいいのだろう? 何かをしようとしても、指針もないから僕は当てずっぽうにしか動けない。いや、恐いから、動けもしないのだ。ただじっとしているだけで、名もない石像程の価値もない。これが今の僕なんだ。 チリン、チリン。 またあの音だ……。メデューサの呪いを打ち破ったのは鏡だったはずなのに、聞こえると半ば石化していた体は僕の意思に添い動くようになった。鳴りやまぬ音に釣られて向いた先にはさっき僕が振った鈴が揺れていた。それで緊張が解けたのだった。振っているのはもちろん彼女だ。 チリン、チリン、チリン、チリン。 チリン、チリン、チリン、チリン。 くり返し何度も振る彼女の瞳は興味ありげに、例えるならねこじゃらしに飛びつく猫そのもの。もし彼女に尻尾があったらきっと、先を少しだけ丸めてまっすぐ伸ばしているに違いない。ところでわかってるよね、その意味? 「お呼びでしょうか」 ……ほら、来たよ。 鈴が鳴ってからずっと警戒していたので、今度は驚かずに済んだ。それでも尋ねられるまで気配というものはなく、足音も立てずにフッと現れた様はまるで幽霊のようだった。それなのにすぐそこにいる実体は透けてもいないし足もちゃんと付いている。幽霊でないとすれば忍者……まさか? ありえない想像に僕は鼻から息を漏らす。緊張したり、はたまたこのようにおかしくなってみたりと、普段はそうでもないのに今日の僕は何かと忙しい。これも彼女と一緒にいるおかげだろうか。平ベったいと思っていた僕の心は、あまり感情を表に出さない彼女といると引き立ったように豊かになる。怒ったり笑ったりが正直になる。でも今のところ彼女の前で泣いたのは一度だけ。だけどいつかはまた泣くこともあるかもしれない。 僕は黙ったまま様子を見てる。彼女は何も言わず紳士も静かに待つ。このまましばらく一枚絵のような時間が続く。紳士と見合ったままの彼女に僕は思う。ここからどうするのかな? するとチリン、チリンと鈴が鳴った。鳴ったのは彼女の手元から。そうきたか。これはさすがに想定外だった。ほら向こうだって戸惑ってる。ニッコリと笑ってくれてはいるけど微妙に引きつっている。注文は……するとは思えない。えっ? なぜそこで僕を見るんだ二人して! 「あ、あのう。チョコレートパフェ、ひとつ」 苦し紛れに僕はこう言った。呼び出しておいてそのまま追い返すわけにもいかなかったから、僕はメニューも見ずに咄嗟にこう言ったのだ。そしてすぐにこれは失敗だったと後悔した。なぜならまだ食事前だというのに僕のアイスコーヒーはもう無くなる寸前で、彼女のグラスなんかはまた氷も残さず空になっているのだ。アドリブにしてももう少し気の利いたものを出せただろうに、僕ってやつは本当に機転の利かないやつだ。しかし困った。どうしよう。そんな考えも纏まらないところに紳士がこう言ってくる。 「サンデーになりますが、よろしいでしょうか?」 それに僕は反射的に答えてしまう。「えっ? は、はい」 やってしまった。注文を変えようかと思った矢先にこれだ。どう考えても僕の責任であっても、どうも一杯食わされた気がしてならない。納得がいかなく取り消そうと声をかけようとしたら紳士はもう注文票にペンを走らせていて、断り切れなくもうどうでもよくなった。パフェ、いやサンデーは彼女にあげよう。女の子の甘いものは別腹というし、たぶん食べてくれるだろう。 「以上でよろしいでしょうか?」 このまま戻ってもらってもよかったけど、一度気になったものだからしょうがない。 「コーヒーを……ブレンドってあります?」 「ホットですね。はい、ございます」 ブレンドなら店の善し悪しを計るにはうってつけだ。仕入れからブレンドされたものなら論外だけど、アイスであれだけ美味しかったのだからこれは期待していいと思う。 「じゃあそれを……」 そうだ、喜んでばかりじゃなく彼女の分も頼まなければ。 「○○は何にする?」 そう言って僕は言葉の端に違和感を感じた。いま彼女の名を何と言った? そう慌てて自問する。しかし何を言ったのかは思い出すことが出来なかった。おそらく彼女のものでないであろうその名はあまりにも自然に出すぎたために、思い出す切っ掛けとして響を手繰り寄せようにもそれは煙を掴むのと同じで、形のはっきりとしないうちに薄まってしまうと最後には米つぶ程の手掛かりも残さず跡形もなく消えてしまった。消えたあと胸の奥が小さく疼いた。そこに「いらない」と彼女が言った。 「えっ……?」 「いらないわ」 彼女の返答はいささかぶっきらぼうな言い方であったが、敢えて僕の無礼に触れないのではない、気を使っているとも思えない、いつもどおりの彼女のもののように思えた。鳴らしはしないがブロンズの呼び鈴をまだ弄んでいる。微妙だけど自然だ。 考えてみると、そもそも間違ったという認識も僕がそう思っただけかもしれない確信を持てない曖昧な疑問でしかなかった。証拠もないし彼女からも気にした様子は窺えない。もちろんすっきりとしないからはっきりとさせたいところだけど、だからといって名前を間違えたかどうかなんてわざわざ確かめるのも憚られる。思い過ごしだったらそれでいいだろう。とりあえず真実はどうであれ、ここは追及しない彼女に甘えておくことにしよう。僕はそう納得することにした。でも、まだ先程の胸の痛みは、その名前が僕にとって大切なものだったような気にさせている。そう感じるからには間違えたのもただ間違えたのではなく、何か重大な意味を持っていたのはたぶん間違いがない。気にはなるが、僕はここでうやむやにさせるつもりもあって、もう一度彼女に質問をした。 「飲み物、いるでしょ?」 わざと名前を避けたところが我ながら計算高い。そして、ここでもやはり彼女ははっきりとした口調で「いらない」と言った。とはいえ空けたグラスに氷も残さないくらいだから断る彼女の言葉には説得力というものがまるでなかった。案外強情なところがある彼女のことだから、ここで無理に勧めても断固として拒否するだろう。だから僕は「オレンジジュースをもうひとつ」と勝手に彼女の分を付け加えて注文を終わらせた。そこまでするとさすがの彼女も断りはしなかった。 紳士は先ほどと変わらない丁寧なお辞儀をひとつ残してカウンターの奥に消えていった。なんとかやり過ごせたと僕はホッと一息吐く。だが気を抜くのはまだ早かった。目を丸くして彼女がこう言ったのだ。 「そんなに咽が乾いていたの?」 そうくるか! おかげで、またまたかしこまっていた姿勢はわざわざ崩さずとも自然に崩れてくれた。
それから間もなく食事が運ばれてきて、僕が食べているのはなぜかペペロンチーノ……。
「では、ごゆっくり」 トーストの皿は僕のところにパスタの皿は彼女の元に、追加のコーヒーとオレンジジュースも添えて。パスタから漂う香りの強烈な自己主張に食欲減退ぎみだった僕も唾液が滲み出る。こんがりときつね色に焼けたトーストは匂いという面では負けてしまっていたが、それでも齧ると香ばしさが鼻に抜けた。サクリとした食感が気持ち良く、足下に置いた買い物袋にある食パンが惨めに思える程に美味い。同じパンでもこうも違うと量販の品には同情の念さえ抱いてしまう。 味というものは、まだ匂いにも馴れていない最初のひとくち目こそ一番強く感じられると僕は思っている。しかし甘味、酸味、苦味、塩味、うま味、それから辛味や香り、歯ごたえ舌ざわり、とそれぞれ伝わってくる順番も違うので、一つの刺激だけに囚われ瞬時に判断を下してしまうとその評価を誤ってしまうこともある。納豆や塩辛のような強烈な個性を持った、いわゆる珍味と言われるものは得にその傾向が強く──鮒寿司やくさやは行き過ぎかとも思うけど──判断が付けづらい。美味い不味いとは全てを総合させてはじめて下せるもので、一つ欠けた時点でそれは正しいものでなくなってしまうということだ。だからしっかりと味わって不味いなら不味いで仕方がなく、美味しければ自信を持って主張すればいい。たとえ一般的な意見から外れていたとしても、そこは好みの問題だ。ここは大事だ。なぜなら同居しているミサトさんの味覚はこの一般から大きく外れていて、僕は最初それを知らなくてずいぶんと自信をなくしたからだ……自分の味覚、料理の腕に。 そんなこともあって、僕は最初のひとくち目というのは何でもよく咀嚼して味わうことにしている。今朝食べたトーストだってそうして食べた。いささか神経質すぎるかもしれないが、おかげで今回その過程の中で、小麦本来のおいしさというものを始めて知ることができたと思う。このパンはパサ付いて味気ないと思っていた耳の部分さえ甘く、そしてよく焼けたなりの香ばしさを持っていた。ただ、飲み込もうとしても乾いた咽を通らなかったので、コーヒーで流し込まなければならないのが残念だった。でもそのコーヒーも僕の予想をより上回り期待を裏切ってくれたので、とても満足がいった。 ふと正面を見るとパスタも美味しそうで、食べる彼女は手も口も慌ただしく動かしている。そんなに慌てなくても逃げないから、なんて言いたくなるくらいの勢いだった。どんな食べ物なのか知らなかったみたいだから、好みには合ったようでまあ何よりだ、と思った矢先、ピタリとその動きが止まった。突然、石像にでもなったみたいに彼女はピクリとも動かなくなった。どうしたのか? 動きの止まった彼女が最初に動かしたのは小さな舌だった。ペロリと出すと「かりゃい」と一言つぶやいて、オレンジジュースという流れを取った。新たにいっぱいまで注がれていたグラスの水位が見る見る減っていく。リアクションとしてはとてもわかりやすい。がっついて食べていたから辛みが後になって一気にきたのだろう。 「辛いのダメだったんだね」 僕はそう言って紙ナプキンを一枚摘んで彼女に渡す。彼女はバタバタともがいていた手でそれを掴むと口に当てた。涙目にもなっていたので僕はハンカチで拭ってあげようかとも思ったが、それはやりすぎのような気がしたので手渡そうとした。彼女は幼い子供ではないのだ。しかしズボンに入れていたハンカチはやはりというか汗を吸い湿っていたので代わりに紙ナプキンをもう一枚摘んで渡した。渡す前にパン屑がつかないようにとしっかりと手をはたいてから。すると彼女は口に当てていた紙ナプキンを捨てて、涙は拭わず受け取ったそっちでまた口を押さえた。瞳の涙はもう、ぎゅっと目を瞑りさえすれば簡単に零れ落ちるであろうまでに湛えられていた。 涙目の彼女はどちらかというと、かわいそうよりもかわいく見える。普段大人びて見えるから、こういうドジなところは強調されて幼く見える。僕はこんなとき、妹を持った兄といった心境になる。できもしないがよしよしと頭を撫でてあげたくなる。 「ひんいふんにょイリワリュ」彼女が言った。 意地悪と言ったのはわかるけど、そこ意外が僕にはよくわからなかった。それよりも、その舌っ足らずの声をなんとかして欲しいという気持ちの方がはるかに強く、何を言ったかなんて、あまり気にはならなかった。 「知らなかったんだよ。それに……」 とにかくやめて欲しかった。でないとある衝動がどんどん膨れ上がって破裂して、果ては押しとどめることのできない想いとなり、それは実現させない限りおさまりが付かないものになりそうだった。実のところさっきも涙を拭おうして思いとどめるのがやっとだったのだ。もしハンカチが乾いて清潔な状態だったらそのまま涙を拭っていたかもしれない、そんな微妙なところだったのだ。できることなら僕は彼女に触れたくて仕方がないのだ。手はもちろん胸や唇、そういった部分をだ。涙を拭うなんてのは、その際たる口実でしかない。つまりは大かれ少なかれ、性欲のはけ口として彼女を見てしまっている。もどかしさの理由を分析すればするほど僕の中にそういった黒い部分があるのだとまざまざと見せつけられるようで、それがとても恐ろしくなった。そこで、好きなら好きで抱きしめたいなどと思うのは正しい感情ではなかろうか、と正当性を考えてみる。慈しみ愛でる、そういった感情ではないのかと。でも今の僕はそのような純粋な気持ちで彼女を見ていないんじゃないか、と疑問に思えて仕方がない。兄のような、なんて考えたのもただ抱き締めたいのを正当化したいだけの、結局は不純な心持ちなのではないかと疑問に思えてくる。今の一時的な感情としては、彼女が彼女であってその内面を知って好きだからではなく、容姿と仕種が相まったものだけに刺激を受けた獣じみた本能的な部分が大きいのではないかと。もし目の前にいるのが彼女そっくりな別の人でも僕は抱きしめたいと思うだろう。きっとそうだ、のしかかっては腰を振る。そんな本心が今にも表に出てしまいそうだった。隠そうとしてもそれは黒い影となってくっきりと浮かびあがり、シルエットとして彼女の前に立つ。そうして知られてしまうのだ。 「ひょえに?」 もうだめだ! 限界だった。 「決めたのはキミだし、最後まで聞かないからでしょ」 僕は彼女の前に立とうとする影を無理矢理引き剥がすように突き放して言った。頭を抱えたい気分だった。ほんとうは──辛かったよねごめんね、と優しく声をかけて清潔な乾いたハンカチで涙を拭い頭を胸に抱きあやすように慰めてあげたいというのに。当然、彼女は恨めしい目を僕に向ける。潤んだ瞳が僕の胸を叩く。辛いじゃないけどこっちがつらい。 「かりゃい」 「……」 「かりゃい」 その後、僕は無言で皿を取り替えた。あげるつもりだったチョコレートサンデーも、じっと見つめる瞳に負けて……。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481900 (-2147482424) 【 日時 】06/04/23 17:42 【 発言者 】なお。
彼女の持つ銀色のスプーンが上に盛られたクリームの部分を掬う。そしてそれは口へと消える。するとそのほんの一匙が、あっさりと彼女の機嫌を直す。僕を悩ませたあの舌っ足らずの声も、これで聞かなくて済むだろう。 余計だったはずものが思いがけないところで役に立つ。幸運と言っていいのか経緯はどうであれ、すべてが効率良く働いたように見えた。互いに関連を持たない数々の事件が、その翌日の朝刊に無駄な隙間を作らずきっちりとおさまってしまうように。とはいえ果してそれが僕にとって本当に幸なのか不幸なのかは判断のつかないところだった。葛藤していたのも喉元を過ぎたところで考えてみると、あれはあれで悪くはなかったからだ。実際そのまま感情に任せて抱きしめていれば良かったのではないかと後悔しているところもある。でも今はこれでいいのだと思う。頭を押さえる彼女を尻目に僕はそんなことを考えていた。彼女が頭を押さえているのはこれも一気に食べたからだ、冷たいものを。さすがの僕もこれ以上面倒を見きれなかった。というよりも、付き合ってしまうとさっきの二の舞いになってしまいそうだったので僕は敢えて放っておいて、自分の皿を片付けるのに専念する事にしたのだった。
食欲のない僕にパスタはちょっとキツそうだったが、残り半分くらいならなんとかなりそうだと見当を付けフォークを手にした。そしてとりあえず味見程度にと控えめに麺を絡め取り啜った。 ほう、こりゃ旨い! スパイシーなのが幸いして今の僕にも食べやすかった。それに彼女が大騒ぎしたほど辛くはなかった。それでもフォークに絡み付く白いパスタに輪切りの鷹の爪は見事なまでに赤く映えていた。それは彼女の紅の瞳によく似ていた。しかしいくら似てるといっても彼女の瞳はこんなにエスニックな味はしないであろう。では瞳ではなく唇だったらどうだろう? 甘いか、あるいは刺激的で熱くまで感じるかもしれない。そんな想像をしていると時間差で伝わってきた辛さが舌先を微かに焦がし始めた。 あっ、これってもしかして! 銜えたばかりのフォークの先からゆっくりと視線を移す。すると真っ赤な瞳が僕のすぐ目の前にあった。僕はいきなりで驚き息を呑む。そのときちょうど咽を通りかかっていたパスタと一緒に鷹の爪までもが気管に入ってしまう。当然僕は酷く咽せてしまった。 カッ……ウハッ、ケホッ! 「からかった?」 「い、いやっ……」カハッ! 「だいじょうぶ?」 「う、うん。なんどが」(なんとか)
少し的外れではあっても心配してくれるのは有難い。でもどうして僕まで涙目にならなきゃならないのか。間接キスの味はあまりにも刺激的で、あくまでマイペースな彼女に僕の馬鹿らしい考えは咽の痛み以上に痛く不様に思えた。
「1760円になります」 お釣を貰うとき触れた老紳士の手は思ったよりも暖かかった。幽霊なんてとんでもない、僕の手のほうがはるかに冷たかった。だからどちらかといえば僕のほうがよりそちらに近いのだろうが、温もりを感じたということは、僕も一応生きているらしかった。 この店に入った時と同じようにカランコロンとベルを鳴らし外に出る。するとあの強烈な陽射しはどこへ行ったのか、辺は薄暗くなっていた。見上げると空は今にも雨が落ちてきそうな、ぎちぎちに綿の詰められた干してない安布団のような重さを持っている。そんなふうに感じたのは相変わらずの蒸し暑さのせいもあっただろう、実際に息苦しかった。だけど直射日光がない分かなり具合はいい。これから歩いて帰るのを考えるとこれで十分だ。雨さえ降らなければ……。 「降るかな?」僕は言った。 「わからない」それに彼女はこう答えた。 聞くまでもなかった。冷たさを感じた瞬間パタパタと音がしだして地面を這うように霧が生まれた。立ちこめる濡れた埃の匂いに僕達は包まれた。もう一度空を仰ぐと顔に叩き付ける水滴は勢いが強く痛くさえあった。 なんでこんな事をしているんだろう? 雨宿りをしようとは思わずに、ただ濡れていた。石像のようにじっと動かず雨粒に打たれるままに僕はそこに突っ立っていた。全身が雨の色に染まっていき、僕はだんだん景色に溶け込んでいく。彼女も濡れてしまうというのに屋根のある場所に逃げようとはせずに、僕に付き合ってすぐ傍にいてくれている、ような気がした。放っておいてくれればいいのにどうしてだろう? 僕のせい? でも……。
こうしていたい。 こうしていると、なんだかすごく気持ちがいいんだ。 腕を引っ張られているけど。 もう少しだけ……。
チリン、チリンと鈴の音が聞こえた。
「ここは?」 見覚えは……ある。何度か入院した病室の天井だ。なぜこんなところに? ふと視界の端に動くものが見えた気がした。
猫 猫かな なぜかそう思った
いい匂いがする シャンプーの香り それも知っている香り
カーテンがはためいている 外は雨 そして埃の匂い この感じ、どこかで……
吹っかけた雫が床を濡らし始めていた。
窓、閉めなきゃ。 体を起こそうとしたら、引っ張られたように腕が重い。
綾波?
背中を丸めてベッドの縁に頭を預ける彼女はまるで……。
クウゥー。
お腹が鳴った。僕じゃない。 ちゃんと食べたのに、変なの。 あれ、僕もお腹が空いているような?
窓は開けたままにしておく事にした。
チリン、チリン……。
どこかで鈴が鳴っていた。
足音が聞こえた。遠く、硬い床にカツン、カツンと響く足音に僕は目を覚ました。足音はこちらに近付いてきている。いつの間に寝てしまったのだろう、雨はもうやんでいるようだった。濡れていたはずの病室の床は水滴ひとつ落ちていない状態になっていて、外の明るさの一部を切り取りそこに張り付けていた。綺麗に磨かれた床はその明かりをあますことなく反射させ、天井の白さをむやみに際立たせ見せていた。それは照明がついているのかいないのかそれすらもわからないくらいに明るくて、どちらにせよつい先程まで眠っていた僕には眩しくて仕方がなかった。カーテンを閉めようと上体を起こすと腕が引っ張られた。何かと思いそちらを見ると、蒼い髪が見えた。綾波レイ。そういえば彼女がいたんだとようやく思い出した。少し迷って僕は眩しさから逃れるのに目を瞑りその場を凌ぐことにした。目を瞑った瞬間、僕の腕を握る彼女の力が多少強くなったような気がした。でも少し経つとそれもわからなくなった。近付いていた足音は僕の病室の前で止まる。誰だろう? 僕は誰が入ってくるのか気になり入り口を見る。すると扉の脇から部屋を覗く顔が半分ほど見えた。長い髪に、誰なのかはすぐにわかった。ミサトさんだ。ミサトさんは僕と目が合うと病室の中に入ってきて話しかけてきた。 「どう、気分は?」 「はい、おかげさまで」 「もう、心配したん……」 口の前に一本指を立てた僕に、ミサトさんは声を小さくして聞いた。 「寝ちゃったのね」 綾波の寝顔を覗き込むミサトさんの顔はとても優しい。綾波の鼻先にかかった髪を、丁寧に耳の後ろへ持っていく。 「でも、なんで綾波が……」 と、いうよりもなんで僕は入院なんかしているのだろう? そちらの方が気になるも、考える余裕なんて僕には与えられなかった。 「ヘヘ〜、知りたい〜?」
ここまで。別に意味はないはずなのに、ちょっと楽になった気がする。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481898 (-2147482424) 【 日時 】06/05/23 19:37 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
私はこの掲示板のチェックにINCMってのを使ってるんだけど、昨日チェックかけた時、このスレの6から10が反応したんだよな。忙しかったんでその時は読まなかったんだけど、あぁ書いたんだなって思って、時間が17時とかになってたから、仕事休んだのかなと思った。 で、今見てみたら、書き込みの日付は4/23になってる。オレ、間違えて削除とかしてないよね?
猫かな。
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【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481897 (-2147482424) 【 日時 】06/05/23 20:55 【 発言者 】なお。
ええ、たぶん猫です。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481896 (-2147482424) 【 日時 】06/05/24 20:37 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
やっぱり猫か。 その時、下げで加筆しても気づかないよって書こうと思ったんだけど、書かなくて良かったな。 気づいたら病院にいるかも。
いや、やっぱり書くべきだったのだろうか?
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【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481893 (-2147482424) 【 日時 】06/05/27 04:38 【 発言者 】なお。
なんで上がってるんだ?
えっと、読まれた方、お疲れさまです。大変読みにくく理解し難い文章だったと思います。(完成してないんで理解しろって方が無理なんだけど)
「王様の耳はロバの耳!」って叫びたかっただけなんです、ごめんなさい!
習作というタイトルの通りですので、続きは期待しないで下さい。それでも読みたいという奇特な方なんてまずいないと思いますが、ここのログにある「石像と猫」「石像と猫2」が原文になりますのでそちらを参照にして下さい。
【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481891 (-2147482424) 【 日時 】06/05/28 00:10 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
>なんで上がってるんだ?
スパムを削除した時に順番が変わったみたい。最終書き込み日付でソートされるのかも。
とりあえず頑張って書き上げて投稿して下さいまし。これだけ長いとさすがに掲示板では読みにくいです(笑)。
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【タイトル】Re: 習作? 【記事番号】-2147481889 (-2147482424) 【 日時 】06/05/28 03:36 【 発言者 】なお。
> 書き上げて投稿して下さいまし
これを手直ししての投稿ってのは、かなり厳しい。だいいちこれ面白くないでしょ。続きを読みたいなって気持ちなんてぜんぜん湧いてこない。
こんだけぐちゃぐちゃと書いたのも、それなりの意図があってのことだったんだけど、それだってまったく生きていない。
でも、それがわかっただけでも儲けもので、習作としての意味はあったと思ってる。だからって頭で考えてどうなる問題でもなくて、この問題を解決していくにはよほどの天才でもないかぎり、数を書いて反省してくしかない。どんなに時間がかかっても、それが一番の近道だと思う。私の足は、きっとすこぶる遅いだろうが。
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