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なつのみち
日時: 2005/03/27 00:00
名前: aba-m.a-kkv


なつのみち - aba-m.a-kkv 04/08/08-20:30 No.200
 Re: なつのみち - tamb 04/08/09-22:23 No.209
  Re^2: なつのみち - aba-m.a-kkv 04/08/21-19:57 No.258
   Re^3: なつのみち - D・T 04/08/24-06:43 No.261
    Re^4: なつのみち - tamb 04/08/24-19:36 No.264

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タイトル : なつのみち
記事No : 200
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 20:30
投稿者 : aba-m.a-kkv

人は誰でも心の壁を持ってる。
それは、それぞれの人が持つ欠けた心。
誰も取り除くことの出来ない根本的な部分の孤独だ。
A・Tフィールドは心の壁、拒絶の壁。
人を傷つけることから、人から傷つけられることからの恐怖の象徴。
それは、とてつもなく大きく、深く、人々の心の底に在る。
あの二つの災いを生み出すように、人々を動かしたほどに。
そして世界は一つに溶けた。
他人の恐怖からの解放という名の下に。
心の壁の瓦解、欠けた心の融合、A・Tフィールドからの解放。
人々は自身の形を解かれ、赤い、赤い海へと姿を変えた。
それは、もはや人ではない。
それは滅びと同義だった。
人の、心の壁がもたらす恐怖。
欠けた心が生み出す孤独。
それが世界を、人類を滅ぼした。


夏の暑い日差しは変わらない。
蝉達は自らの季節を精一杯に主張している。
高い気温の中、細い通りを抜ける微風が心地よかった。
陽炎の中に揺れる二つの影。
片方は淡い水色のワンピースに、深々と帽子を被っている。
もう一人は半袖にジーパンのラフな格好で、片手にビニール袋を提げていた。
袋には細道を抜けたところにある商店街のスーパーのロゴマークが印刷されていた。
太陽の日差しの中、蝉達が高らかに鳴く中、微風が通り抜ける中、二人は微妙な距離を取りながら、並んで歩いていた。
人が一人分入れるだけの余裕はない。
でも、腕が触れ合うような距離では決してない。
ただ、ゆっくり静かに並んで歩く二人。
もともと、二人とも寡黙な人間だ。
そして、多くの人々の中でも一際、他人の恐怖を知っている二人でもある。
唯一あの赤い海を、生きた目で見た者たちだった。


しゃべらない。
昔は沈黙がものすごく嫌いだったのに。
無理にでも話題を見つけてしゃべらないとって思って焦っていた自分がいたはずなのに。
ほんとに、沈黙が、他人から嫌われるんじゃないか、変に思われるんじゃないかって、すごく恐怖していたはずだったのに。
しゃべらない。


隣を歩く少女に目を向ける。
深々と被った帽子の間から、少し伸びた蒼銀の髪がのぞく。
身長差からだろう、彼女の表情は帽子のつばに隠れてよくわからない。
彼女も口を開くことなく、ただ黙々と歩を進める。
ただ、自分の歩調を隣の少年に合わせて歩いているのはよくわかった。
目を前へ向ける。
少し傾斜の掛かった細道。
その先には木の緑と青い空が見える。


やっぱり言葉はない。
でも、嫌でも、怖くもない。
むしろ心地いい。
変わったのかな?
変われたのかな?
人に恐怖していた自分から。
怖いけど、それだけじゃないって気づけた自分は、成長できたのかな?


いいの?
他人の恐怖がまた始まるのよ。

いいんだ。
怖いけど、でも、それだけじゃないってわかったから。

そう…。


どこかで交わした会話が微風の中に混じる。
少年は少し微笑んだ。


少しは、僕もわかったのかな。
人と人を隔てる心の壁。
人の心の奥底にある欠けた心。
A・Tフィールド、恐怖の象徴。
でも、それだけじゃない。
心の壁があるから、人は触れ合える。
欠けた心があるから、人はそれぞれ人としての個性をもってる。
A・Tフィールド、それがあるから、隣の存在を感じあえる。
これって、恐怖じゃない。
僕の知らなかった、いや、知ろうとしなかった、ぬくもりってやつだ。
でも、成長したどうかは、やっぱりわからない。
こうして、二人で歩いてるけど。
この、緑があって青空が広がって、人が住む町の中で。

心の壁、それがあるから、相手がいるわけで。
欠けた心があるから、愛し合うことが出来るわけで。
A・Tフィールドがあるから、抱きしめあうことが出来る。
僕にはまだ、そんなことは出来ないけど。
まだ、自分の心を伝えられるほど成長していないけど。
僕はここにいる。
彼女も隣にいる。
だから…。


踏み込んだ足を、少しだけ傾けた、彼女の方向へ。
少しだけ縮まる彼女との距離。
そして、少しだけ腕を伸ばす。
少し触れる小指。


まだ不安があるのかもしれない。
まだ少し恐怖があるのかもしれない。
まだ、よくわかっていないのかもしれない。
でも、少しは勇気をだして。
少しはわかったのだから。
少しは成長できたと思うから。
だから…


触れて、引いた手を再び伸ばす。
その、白い華奢で愛しい掌へ。
夏の細道を通る微風。
その中で、二つの手が一つになる。
強く握りしめられるほどまではできない、まだまだ心はおさないまま。
でも、しっかりと握った。
隣の彼女のぬくもりを感じ、隣の彼女にぬくもりをあげられるくらいにはしっかりと。
彼女は驚いたように、隣の少年の顔を見上げた。
綺麗な紅い双眸が驚きと嬉しさとをたたえて見つめる。
少年は前を向いたまま。
照れ隠しだろう、その頬は日に照らされてとは違う赤みが差す。
少女はそんな少年を見て同じように頬を染め、微かな微笑を浮かべると、また前を向いて歩を共にした。
握り返される掌の力は微かなもの。
でも、そのぬくもりはおおきなもの。
あの時に踏み出した一歩、そしてこの細道で踏み出した一歩。
欠けた心というものを少しだけ感じあいながら、微風の通り抜ける道を静かに進む。
夏のある午後のひと時、二人手を繋いで。

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タイトル : Re: なつのみち
記事No : 209
投稿日 : 2004/08/09(Mon) 22:23
投稿者 : tamb

とりあえず「。」がある(笑)。でも、一文で全部改行入れるならあんまり意味はない
かも(全くないとは言わない)。まぁしかし掲示板投下だから、気持ち的に若干の
制約はあるわな。

たまさんのにも通じる優しい沈黙、かな。
前にもどこかで書いたと思うけど、あの二人は黙ってよりそっているだけで、それ
だけでいいんじゃないかと思わせる作品だと思います。
みんなに共通して言えるんだけど、やっぱりaba-m.a-kkvさんテイスト。読み方に
バイアスがかかってるからかもしれないけど、これはやっぱり凄いんじゃないかと
思う。
でも実は、これはいい悪いとは関係ないんだけど、aba-m.a-kkvさんの作品は、
個人的にはD・Tさんとやや似てる部分があるかなと思う。テイストとして。本人的
にはどう思います?

>怖いけど、でも、それだけじゃないってわかったから。

これは沁みるね。

>A・Tフィールド、それがあるから、隣の存在を感じあえる。
>これって、恐怖じゃない。
>僕の知らなかった、いや、知ろうとしなかった、ぬくもりってやつだ。

人の温もりが怖いって感覚もあるんだけど、それが理解できれば触れ合えるん
でしょうね。

>そして、少しだけ腕を伸ばす。
>少し触れる小指。

彼女が転びそうになって、あるいはよろけて彼にぶつかる。あるいは彼が支えて、
そのまま手を繋いだりすると、これは萌えだ(笑)。あぶないよ、とか、気をつけて、
とかのセリフ付きだと萌えパワーは倍増(笑)。しかし違う話になる(爆)。

>心の壁、それがあるから、相手がいるわけで。
>欠けた心があるから、愛し合うことが出来るわけで。

これも私の勝手なあれで、前に誰かにメールしたこともあるんだけど、「〜わけで」
が多いと、どうしても「北の国から」というか「北の国から」のとんねるずのパロデ
ィを思い出して、木梨の声でセリフが聞こえてしまい、笑ってしまいます(^^;)。
いや、申し訳ない。

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タイトル : Re^2: なつのみち
記事No : 258
投稿日 : 2004/08/21(Sat) 19:57
投稿者 : aba-m.a-kkv

tambさん、レスありがとうございます。
「三人目のあれ」ってこれのことですよね。
考えてみれば、投下して以来、何の説明もつけないでいました。
すいません。
ということでレスレス。


>とりあえず「。」がある(笑)。でも、一文で全部改行入れるならあんまり意味はない
>かも(全くないとは言わない)。まぁしかし掲示板投下だから、気持ち的に若干の
>制約はあるわな。

とりあえず、「。」を付けてみました(笑)
一文改行なんですが、私にとっては大きな大きな試みでした(爆)
普通に書いていると、「。」つけないで一文改行が癖になってるみたいです。


>たまさんのにも通じる優しい沈黙、かな。
>前にもどこかで書いたと思うけど、あの二人は黙ってよりそっているだけで、それ
>だけでいいんじゃないかと思わせる作品だと思います。
>みんなに共通して言えるんだけど、やっぱりaba-m.a-kkvさんテイスト。読み方に
>バイアスがかかってるからかもしれないけど、これはやっぱり凄いんじゃないかと
>思う。

ありがとうございます。
さて、いまさらなんですが、少し「なつのみちに」に関して・・・。
書くきっかけになったのは、もちろんののさんの短編投下の影響を受けています。
それとともに、これ実はtambさんの「ひとりごと」の「あの頃の幸せを」を読んで思いつきました。
こういうのいいなぁ、とこういうの書いたことないかも、とこういうの書いてみたいって思いまして。
所要時間は一時間ほど。
久々に1000文字前後で書いてみて新鮮だったんですが、書き終えてみれば2000ぐらいになってました。
ただ傍にいるだけで、そこには幸せと、恐怖とがある。
特にあの二人にとってはなおさら。
その二つが混在するところから、一歩踏み出したところ。
手を繋いで、互いの存在をぬくもりで感じあえるように。
そんな場面を、と書いてみました。


>でも実は、これはいい悪いとは関係ないんだけど、aba-m.a-kkvさんの作品は、
>個人的にはD・Tさんとやや似てる部分があるかなと思う。テイストとして。本人的
>にはどう思います?

これは、どうなんでしょう?
気にしてみたことなかったから。
う〜ん、D・Tさん、いかがでしょう?(振ってみる(笑))


>彼女が転びそうになって、あるいはよろけて彼にぶつかる。あるいは彼が支えて、
>そのまま手を繋いだりすると、これは萌えだ(笑)。あぶないよ、とか、気をつけて、
>とかのセリフ付きだと萌えパワーは倍増(笑)。しかし違う話になる(爆)。

tambさん、書きませんか?(笑)


>>心の壁、それがあるから、相手がいるわけで。
>>欠けた心があるから、愛し合うことが出来るわけで。

>これも私の勝手なあれで、前に誰かにメールしたこともあるんだけど、「〜わけで」
>が多いと、どうしても「北の国から」というか「北の国から」のとんねるずのパロデ
>ィを思い出して、木梨の声でセリフが聞こえてしまい、笑ってしまいます(^^;)。
>いや、申し訳ない。

おろ、そうなんですか?
知らなかった。
そうしたら、サルベージの時には直したほうがいいのかなぁ?

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タイトル : Re^3: なつのみち
記事No : 261
投稿日 : 2004/08/24(Tue) 06:43
投稿者 : D・T

>う〜ん、D・Tさん、いかがでしょう?(振ってみる(笑))

振られました(笑)。散々もてあそんで、結局私の体が目的だったのね!?(違)


分析とかはせずにSSを読んでいるので、似ていると言われてもピンと来ないのです。
で、ちょっとaba-m.a-kkvさんのSSと、私のSSを読み返してみたんですが、なるほど、言われてみれば似ているかもしれませんと思いました。

『貴方が差し出した手を握り締めて…』と『闇に目を凝らす』なんかは、書いてる内容似てます。
いや、申し訳ない(汗)。パクッたわけではなくて、似ているのはたまたまなんです。やはりLRS書きとしては、あのシーンは大事ですから。

そして、今回の『なつのみち』なんかは、私の感覚にしっくりと馴染みます。
こんな書き方をするとちょっとアレかなと思いますが、あえて書きますと、『おんなじシチュエーションで書いたら、きっと私も同じような内容になるだろうなぁ』と思いました。

二人で歩いていて、二人はそれほど喋らなくて、でも特に気まずいとかは思っていなくて、むしろそれが自然だとか思っていたりする。で、ちょっと手を繋いだりなんかしてね。それがとても大切なことなんだよなー。

実に(私の感覚に)しっくりと馴染みます。
たぶん、aba-m.a-kkvさんと私は、感性の似ている部分が有るんだろうな、なんて一方的に思ってみたり。

そんな感じです。
tambさんが似ていると感じられたのは、そういう所を察知されたのかな、なんて思ってみましたが、どうですか?(振ってみる(笑))

それではこのへんで〜。チャオ。

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タイトル : Re^4: なつのみち
記事No : 264
投稿日 : 2004/08/24(Tue) 19:36
投稿者 : tamb

>tambさんが似ていると感じられたのは、そういう所を察知されたのかな、なんて
>思ってみましたが、どうですか?(振ってみる(笑))

振られました。散々もてあそんで結局私の体が以下略(吐血)。

えーと、私も分析的にFF読んでるわけではないです。誤字を探しているわけでも
ないっす(爆)。似てると思ったのは、

>夏の暑い日差しは変わらない。

あたりで、あ、こんな話、前にもあったよな。abaさんのなんだっけ、と思ったら、
D・Tさんの「揺れる」だったんですな。

>熱を持った空気。水に混じった水銀のような重さを持つ空気。風は無い。

このあたり。どっちも暑い夏を描いているのに、妙に透明な感じがするというか、
文体が乾いているというか。まぁ空気感とか言うんですか。
似てるからどうだって話でもないんですけど。

ちなみに、内容が似てるってのを気にする必要は全くないと、個人的には思って
ます。パクリはダメですが(笑)、インスパイアとか触発はOK。たとえ似たようなス
トーリー展開でも、違う人が書けばそれは違う話です。


■aba-m.a-kkvさん
>そうしたら、サルベージの時には直したほうがいいのかなぁ?

いえ、ここでとんねるず版「北の国から」を思い起こすのは私くらいだと思うので、
気にしなくていいと思います。

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