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思い出
日時: 2005/03/27 00:00
名前: tomo


思い出 - tomo 04/09/29-00:42 No.338
 Re: 思い出 - tomo 04/09/29-00:58 No.340
  Re^2: 思い出 - Kazu 04/09/29-18:24 No.341
 Re: 思い出 - なお。 04/09/29-22:07 No.345
 Re: 思い出 - tamb 04/09/30-18:34 No.359
 Re:ありがとうございました - tomo 04/10/05-00:02 No.377
  Re^2:ありがとうございました - なお。 04/10/06-14:01 No.382
  Re^2:ありがとうございました - tamb 04/10/22-21:15 No.434
   Re^3:ありがとうございました - tama 04/10/23-23:18 No.437
    Re^4:ありがとうございました - パッケラ 04/10/24-22:27 No.440

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タイトル : 思い出
記事No : 338
投稿日 : 2004/09/29(Wed) 00:42
投稿者 : tomo

ふう・・・

僕は、たった今読み終えたばかりの本を脇におくと、ため息を一つついた。
しばらくは物語の余韻にひたる。
頭の中で、たっぷり200ページはある本の場面の一つ一つが、フラッシュバックで
よぎっていく。
もっとも、映像は全部、僕が頭の中で想像したものだけど。

それは本を一冊読み終えた後、僕が必ずやる儀式のようなものだった。


ぽーん・・・ぽーん・・・ぽーん・・・

突然、時計が音を立てて鳴った。
気がつけば、もう、夕方の5時を回っている。


・・・結局、本を一冊読んだだけか・・・

あまり有意義な休日の使い方とはお世辞にも思えなかった。

・・・せっかく、時間を大切にできるようにって、いまどきめずらしい音時計
にしてるのになぁ・・・

そう。僕の持っている時計は、一時間毎に鐘の音を鳴らしてくれる。
うるさくてたまらないっていう人もいるけれど、のんびりとしがちな僕にとっては
過ぎ行く時間を五感で感じさせてくれるから、かえって都合がいい。

・・・まぁ、こうやって、ときどきあまり意味の無いときもあるけれど。


僕はそのまま何もせず、ぼんやりと天井を見つめていた。
半分くらいあけられた窓から、穏やかな夕日が差し込んで僕を包み込んでいた。


ふと、耳元でチェロの音が響いた。


ああ、また、この音だ・・・


それは、どこか物悲しげで、少し頼りなくて、ひどく懐かしい響き。


そうだった。あの時もこんな風に、夕日が差し込んでいたんだった。


僕には忘れられない思い出がある。
あまりぱっとしなかった中学時代において、十数年たった今においても
劣化することの無い、たった一つの思い出。
それはふとしたきっかけで今みたいに蘇ってくる。
あのとき聞いたチェロの音と共に。


きっかけはなんだっただろう。
もう忘れてしまったが、とにかく僕はそのとき、音楽室に行く用事があって放課後そこを訪れた。

誰もいないだろうと思ってあけた音楽室の中からは、チェロの音が聞こえた。
びっくりして中を見回すと、微かに見覚えのある顔がチェロを弾いていた。
しばらくして、彼の名前が頭に思い浮かぶ。


碇シンジ。


話したことは数えるほどしかなかった。
ただ、彼が自分とはまったく違う世界に住んでいることだけは知っていた。


・・・バッハの曲・・・?


詳しくは分からないが、たしかそうだったはず。
僕はそんな風に思いながら、その演奏に耳を傾けていた。

何故だか分からなかったけれど、邪魔をしてはいけない気がしたから。


時間にして数分くらい経っただろうか。
彼は曲の最後を静かに締めくくると、ゆっくりと弓をおろした。

そして、顔を上げた彼と僕の視線が完全に一致する。

「あ・・・」
思わず、僕は小さく声を上げていた。
そのままなんて言っていいかわからずに、ただおろおろしてしまう。


彼は僕の顔をみつめたまま、何も言わなかった。
ただその表情は、泣いているようにも、怒っているようにも見えた。


そんな表情を僕はそのときまで見たことが無かった。


いい加減何か言わないと、と僕が思い立ったとき、彼は一言だけ僕につぶやいた。


「一人にしてほしいんだ。」


あれからすぐ学校が疎開になって、彼とは二度と会っていない。
その後、彼はどうなったのだろう。
興味が無いといえばうそになるが、別に、積極的に知りたいと思うわけでもない。

ただ。

大人になった今だから分かることがある。

あのとき、彼はきっとあの、青い髪の少女のことを思っていたのだろうと。

綾波レイと碇シンジ。

付き合っていたかまではわからないけれど、二人がお互いに惹かれあっていたのは分かった。

それが、あの時期の前後――たぶん、二度目の大怪我をして、病院から帰ってきた後から――急に綾波レイが以前にも増して冷たい態度をとるようになっていた。
彼だけでなく、他のみんなに対しても。


だから、彼はチェロを弾いたのだろう。
あるいは、あれはもはや無きかつての彼女へのレクイエムだったのかもしれない。


根拠は何も無いけれど、僕はそう思っている。


気づいたとき、あたりはもう真っ暗だった。
僕は静かに起き上がると、ゆっくりと首をまわした。
ぽきぽきと骨のなる音がする。

「・・・夕食でも、作るか・・・」
誰にとも無くつぶやくと、キッチンへと向かう。


時間はいつも、滞ることなく流れていく。
そのときが、どんなに楽しくても、どんなに苦しくても。
だとしたら、と思う。
あの二人には幸福な時間が流れていてほしい、と。

あのときの記憶が蘇るたびに、僕はいつもそう感じるのだった。

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タイトル : Re: 思い出
記事No : 340
投稿日 : 2004/09/29(Wed) 00:58
投稿者 : tomo

すいません。調子に乗って、連続投稿してしまいました。
お時間があれば、こちらも見ていってください。

えっと、今回は、ほんとに思いつきで書き始めて、
なんとか終わらせたっていう自分でも始めてのタイプのものです。
一応、傍観者としての自分の気持ちを乗せた(?)つもりですが
分かりにくいかもしれません。

それでは、今回も、皆様の暖かい叩きをいただけたら、幸いです。

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タイトル : Re^2: 思い出
記事No : 341
投稿日 : 2004/09/29(Wed) 18:24
投稿者 : Kazu <sasuke1412○yahoo.co.jp>

> すいません。調子に乗って、連続投稿してしまいました。

どちらもすばらしい作品なのでどんどん連続投稿してください
どっかの誰かさんは3つも連続で出してますし(笑)

> それでは、今回も、皆様の暖かい叩きをいただけたら、幸いです。

私は叩かれ略


>ぽきぽきと骨のなる音がすする。

↑は、「ぽきぽきと骨のなる音がする。」だと思うんですがどうでしょう。

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タイトル : Re: 思い出
記事No : 345
投稿日 : 2004/09/29(Wed) 22:07
投稿者 : なお。

 目を通して、あっ、いいなって思いました。
 他の方の投稿作品も見てますが、うまく評価ができなかったりで避けてました。みなさんスミマセン`r(^^;)
 この「思い出」は自分の好みにあったようで、何とか感想書けそうですW


> うるさくてたまらないっていう人もいるけれど、のんびりとしがちな僕にとっては

 エヴァFFで僕といえばだいたいシンジですから、読み進めて「やられた」って思いました。のんびりとかってのもシンジっぽいですよね、確信犯ですね。


> 大人になった今だから分かることがある。
> あのとき、彼はきっとあの、青い髪の少女のことを思っていたのだろうと。
> だから、彼はチェロを弾いたのだろう。

 この流れは良い感じですけど。

> あるいは、あれはもはや無きかつての彼女へのレクイエムだったのかもしれない。

>根拠は何も無いけれど、僕はそう思っている。

「僕」鋭すぎ!


 レイが自爆してからシンジは学校には行ってなかったような気もしますが、こういうのもアリですね。

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タイトル : Re: 思い出
記事No : 359
投稿日 : 2004/09/30(Thu) 18:34
投稿者 : tamb

こういう話は大好きです。良かったです。
くわたろさんの「チャルメラ」とか、未読ならお勧めしておきますわ。
http://www.din.or.jp/~zako/junk/index.html

>ぽーん・・・ぽーん・・・ぽーん・・・

確かにかつてはどの家にも柱時計があり、家人に時の経過を伝えていた物だが。
うちには無かったけど(笑)。

>ゆっくりと弦をおろした。

弓だわな。

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タイトル : Re:ありがとうございました
記事No : 377
投稿日 : 2004/10/05(Tue) 00:02
投稿者 : tomo

またまた、みなさん、暖かい感想ありがとうございます。
それから、Kazu さんにtamb さん、誤字脱字の指摘、ありがとう
ございました。人知れず(?)、修正させてもらいました。
誤字脱字は、なかなか気づけないのです、私。
集中力がないのかなぁ・・・(反省)

■なお。さんへ。
>エヴァFFで僕といえばだいたいシンジですから、読み進めて「や>られた」って思いました。のんびりとかってのもシンジっぽいで>すよね、確信犯ですね。

すいません、全然確信犯じゃないです。
はっきりいて、そこまで考えてませんでした。(壊)
たまたまなのでした。(笑)

>> あるいは、あれはもはや無きかつての彼女へのレクイエムだったのかもしれない。

>>根拠は何も無いけれど、僕はそう思っている。

>「僕」鋭すぎ!

えっと、ここは、私の意図としては、別に「僕」は綾波が死んだとか、そういうことを意識してるわけじゃないつもりです。
ただ単に、惹かれあっていてお互い良い感じだったのが、なんかの理由で、友好が断絶して疎遠になった、くらいにしか思ってなくて、「もはや無き」ってのは、かつて自分と親密に過ごしていた「彼女」との関係はもう戻らなくなってしまった、っていう風な感じを意図しています。
「レクイエム」って言う言葉のせいで、なお。さんのように感じられても仕方が無いですね。でも、他にいい言葉が浮かばなかったのでした。

>レイが自爆してからシンジは学校には行ってなかったような気も>しますが、こういうのもアリですね。

これは完全に忘れてました。そうでしたねぇ〜あはは(爆)
まいっか。なーんて思ってみたり。

■くわたろさんの「チャルメラ」
tamb さんのお勧めに従って読んでみました。
私よりぜんぜんうまいです(爆)
傍観者としての寂寥感、とでもいうんでしょうか。
私の伝えたかったのもが、ひしひしと伝わってくる感じでした。
勉強に(?)なりました。わざわざありがとうございました。


そんなわけで、思いのほか反響がよかったことに気をよくした
単純な私は、いそいそと次の文章にとりかかってみたりして(笑)
そんなわけで、まて、次号!(笑)

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タイトル : Re^2:ありがとうございました
記事No : 382
投稿日 : 2004/10/06(Wed) 14:01
投稿者 : なお。

> すいません、全然確信犯じゃないです。
> はっきりいて、そこまで考えてませんでした。(壊)
> たまたまなのでした。(笑)

 えっ? そうだったんですか。気が付かないうちに面白い流れになることはありますが、てっきりこれは意図していたものだと。


> えっと、ここは、私の意図としては、別に「僕」は綾波が死んだとか、そういうことを意識してるわけじゃないつもりです。
> ただ単に、惹かれあっていてお互い良い感じだったのが、なんかの理由で、友好が断絶して疎遠になった、くらいにしか思ってなくて、「もはや無き」ってのは、かつて自分と親密に過ごしていた「彼女」との関係はもう戻らなくなってしまった、っていう風な感じを意図しています。
> 「レクイエム」って言う言葉のせいで、なお。さんのように感じられても仕方が無いですね。でも、他にいい言葉が浮かばなかったのでした。

 いや、表現させたかったものは上記の解説のとおり理解してました。それで、たしかに「レクイエム」を使ったことで死を強烈にイメージしてしまったのです。
 だから、結果として「僕、鋭すぎ!」とw


> これは完全に忘れてました。そうでしたねぇ〜あはは(爆)
> まいっか。なーんて思ってみたり。

 コミック版では学校に足を向けるシーンもありますから置き忘れたた楽器を取りに行ったとか、何でも想像できます。


> そんなわけで、まて、次号!(笑)

 私も書き始めはそんな勢いだったのですが、完成に近付くにつれ上手くまとまらなくなって「誰か続きを書いて! 僕に優しくしてよ!」って思いたくなっちゃいました(笑)

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃ…

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タイトル : Re^2:ありがとうございました
記事No : 434
投稿日 : 2004/10/22(Fri) 21:15
投稿者 : tamb

急に上がりますが(笑)。

>■くわたろさんの「チャルメラ」
>tamb さんのお勧めに従って読んでみました。

 忘れてましたが、先日くわたろさんにお会いする機会があり、「とある人に
『チャルメラ』を薦めておきました」と伝えてあります。丁重にお礼を言われて
しまったので、是非感想メールを送って下さいませです。ってここに書いたら
身も蓋もないような気もしますが(^^;)。まぁくわたろさんは見てないでしょう
から問題ない(笑)。

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タイトル : Re^3:ありがとうございました
記事No : 437
投稿日 : 2004/10/23(Sat) 23:18
投稿者 : tama

> 急に上がりますが(笑)。

あげてくれてありがとうございます。
すみません、私この作品見逃してました(--;

内容GOODです☆

放課後の憂いあるチェロ引きシンジ・・・も好きですが。

第3者が祈る彼らの幸せ。
こういう世界観よいです。

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タイトル : Re^4:ありがとうございました
記事No : 440
投稿日 : 2004/10/24(Sun) 22:27
投稿者 : パッケラ

>「一人にしてほしいんだ。」

こんな時、何も言えなくなりますよね。
一人でいると沈んでいくだけなのに・・。
寂しさを感じますた。

>確かにかつてはどの家にも柱時計があり

今はもう動かない・・・お爺ちゃんと時計〜♪(マテ

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