Re: ゲロ甘ベタベタLRS企画 ( No.3 )
日時: 2011/03/26 21:54
名前: JUN

 春の暖かな陽だまりの中目を開くと、そこには天使が眠っていた。



 綾幸ゲロ甘企画vol.1/Written By JUN





買い物が終わった後、束の間の怠惰を楽しもうと、シンジは窓際に移動した暖かいベッドに横になる
と、いつの間にか眠ってしまっていた。枕元にはキズのない、ぴかぴかと光るIDカードが見える。
これを届けに来たのだろう。

 控えめな寝息を立てながら眠るレイは本当に綺麗で、無邪気な表情が柔らかな日差しに照らされる
と、放つ雰囲気はどこか高尚なものすら感じさせた。

 制服のリボンを解いた状態で、胸元は軽く開いている。身じろぎする度にその隙間から薄いレース
が見えて、シンジは釘付けになるのをこらえた。


 無防備すぎるんだよな、綾波は。


 そのくせ悪戯すると機嫌を損ねたりする。誘惑したのはそっちじゃないかと言いたくなるが、彼女
を怒らせると後が恐ろしいので、シンジとしては平謝りに徹するほかない。それでも、今のレイの表
情は、キスをねだる時のそれと酷似していて、シンジの理性を大きく揺さぶった。ぷっくりとした桜
色の唇から、目が離せなくなる。


(この位なら、いいよね……?)


 眠る彼女の唇を、気付かれないようにそっと奪う。僅かな背徳感はシンジの胸の高鳴りとあいまっ
て、かえって満足感をかきたてた。
 彼女の柔らかい唇を味わうように、シンジは目を閉じた。細い肩に、優しく手を添えて。

 幸せだ、と思う。彼女と一緒に、この平和な時を過ごせることは、辛いことばかりだったあの頃を
考えると、身に余る幸福だった。


「ん……」


 夢中でレイの唇を味わっている内に、不意に彼女の口から小さな声がこぼれ、シンジはぎくりと身
を固くした。
 長い長いまつげに縁取られた真紅の美しい眸が、ぱちりと開かれる。
「あ……」
「ご、ごめん」


 慌ててレイの身体を離したシンジを見つめながら、しばしレイの紅い眸は虚空をただよっていたが、
状況を理解するやいなや、悪戯っぽい光をそこに宿した。

「……えっち」
「あ、綾波がそんな所で寝てるからじゃないか」
「碇くんは、寝てる女の子にキスするのね。アスカに告げ口しようかしら」
「そそそそれはまずいかなあ」
「……したの?」
「あ、いや、その……」
「し・た・の?」
「や、やめたよ。途中で……」
「最低」
「い、今キスしたいって思うのは綾波だけだよ……」
「どうだか」
「う……」

 先程までの高揚感はどこへやら、レイの激しい追及にたじろぐシンジ。シンジに安心を与えてくれ
る筈の眸は、今シンジを咎める炎に燃えていた。

「か、勘弁してよ綾波。悪かったって」
「……じゃあ、素敵なキスしてくれたら許してあげる」
「素敵なキスってどんなのさ」
「それは碇くんが考えること」
「……分かった。目、閉じて」

 レイを抱き寄せ、そのまま柔らかなキス。やっぱり起きてる綾波の方がかわいい、と思った。目を
閉じていても、彼女の表情は分かる。こつんと額をレイのそれに当てると、彼女の腕がシンジの背へ
と回された。
 どうやら許しを得たらしいとほっとする反面、彼女をもっと感じたいと思う心もまた、シンジの中
に湧き上がってきていた。
 蕩けたレイの唇を、自分の舌で優しく開く。初めてのこと。シンジがずっとしたいと思ってきたこ
と。
「んぅ……」
 レイの舌は、シンジが思っていたよりずっと柔らかく、甘かった。永遠に続いていくような、身体
が浮き上がってしまいそうな、そんな感覚。
 そんないつまでも続くような甘い時間も、シンジのほうから終止符を打つ。ゆっくりとレイの唇か
ら離れると、二人の唇を一本の唾液の糸が繋いだ。
「……どう、だった?」
「ごうかく……」
「……すごくかわいいよ、綾波」
 学校でも彼女を見る人間は多い。その度にシンジは不安になる。だがこうして眸を潤ませている彼
女を見ると、やはりそれは杞憂に過ぎないのだと思う。
「僕のこと、好き?」
「好き……」
 抱き締めて、キスをして。いつでも自分を護ってくれた彼女を、今度は自分が護りたい。あの紅い
海から還ってこられたのは、彼女がいたから。
「ずっと一緒だよ、綾波」

 彼女と交わすその約束は何よりも固く、そして重い。応えるように腕に力を込めるレイを抱き締め
て、シンジはもう一度、深い口付けを交わした。



 ――君は今、幸せ……?
 ――私は今、幸せ……

 

 ――君のことが、好きだから……
 ――あなたのことが、好きだから……



 蕩けるようなキスは、アスカが帰宅するまで、何度となく続いた。







                    おしまい