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kimiの名は−裏エピローグ−
日時: 2009/05/31 00:00
名前: Seven Sisters

【タイトル】kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482610 (2147483647)
【 日時 】05/10/15 01:47
【 発言者 】Seven Sisters

kimiの名は−裏エピローグ(その1)−


 ネルフ総司令執務室。
今その部屋一杯にピンと張り詰めた緊張感を、葛城ミサトは痛いほどに感じていた。
 デスクに肘を突き、両手で口元を覆い隠す碇ゲンドウ。
そのデスクの前に立つミサトは、直立不動である。
ルーティンーワークをこなし、そろそろ昼休みにでようかというミサトだったが、ゲンドウからの突然の呼び出しに、休憩は後回しにせざるを得なかった。
単独で呼び出されたからには、何か伝達事項があるはずだが、ミサトには特に心当たりがない。正直に言えば、もしかするとこないだの減給処分の取り消しかな〜、などと期待するむきはある。だが当然のことながらそんな様子はおくびにも出さず、ミサトは神妙な表情を装っていた。

「……葛城三佐」
「はい、司令」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……最近、どうかね?」
「は?」
「……最近どうか、と聞いているのだ」

 思いもかけない言葉に、ミサトは自分の耳を疑った。目の前の男が世間話をしたがっているとは思えないし、相手が相手だけにセクハラ的質問でもないだろう。となると、ゲンドウは自分の日常生活の心配でもしているのだろうか。
とそこまで考えて、ミサトの背筋にゾゾッと悪寒が走った。よりにもよって何故ゲンドウが、自分の日常生活に関心を持たねばならないのだろう。

(その2へ続く)


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482609 (-2147482610)
【 日時 】05/10/15 02:08
【 発言者 】Seven Sisters

ということで、裏エピローグです。
当初の構想では、こっちを本エピローグにしようと
思っていたのですが、本編を書き進めるにつれ、最
終話との整合が取れなくなり、あえなくボツ(^^;
このまま闇に葬るのもあれなので、公開となりました。


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482608 (-2147482610)
【 日時 】05/10/16 03:12
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

ゲンドウもキミちゃんが気になる模様(笑)。

忘れてたけど、キミちゃんがゲンドウのことをジ〜ジと呼んでるんだから、あっちではゲンドウとシンジはちゃんと和解してるんだよな。いや、いいことだ。この件と封筒は関連あるかな?

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482607 (-2147482610)
【 日時 】05/10/17 03:36
【 発言者 】Seven Sisters

kimiの名は−裏エピローグ(その2)−


「あ、あの、どうかといいますと、一体どういったことがどうなのでしょうか?」

 ハッキリ言って滅茶苦茶な日本語が、ミサトの動揺
を物語っている。
 えい話の分からん奴め、とゲンドウは内心舌打ちを
したが、感情の起伏を抑え淡々と話を続けた。

「君の私生活のことだが……」
「は、はい……」
「君のところは、最近構成員が増えたのだったな」
「構成員? ああ、レイとキミちゃんのことを仰っているのですか?」
「……うむ。いろいろと物も入用だろうが、昨今の減俸処分もあり君も大変だろう。私はそうしたことを聞いている」

 そう思うならさっさと減俸処分を撤回してくれ。そ
う訴えたいところだが、ミサトも社会人の端くれ、そ
んなことは口が裂けても言えるわけがない。努めて平
静を装うと、ミサトは完璧な営業ボイスで答えた。

「お気遣いありがとうございます」
「うむ。ところでだ……」
「まだ何か?」
「聞くところによると、近い将来、君の家で私的な会合が開かれるそうだな」

 はて、何かそんなものあったかしらん、とミサトは
考えこんだ。
 リツコや加持が家に飲みに来るのはよくあることだ
し、シンジやアスカの友達が家に遊びに来るのも珍し
くない。だがゲンドウが、そうした集まりのことをわ
ざわざ尋ねるとも思えない。
 となると、思いつくのはただ一つであった。


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482606 (-2147482610)
【 日時 】05/10/17 03:43
【 発言者 】Seven Sisters

kimiの名は−裏エピローグ(その3)−

「あの、それはキミちゃんのお誕生会のことでしょう
か?」

 ゲンドウの頬がひくりと動く。どうやら正解だった
ようである。ミサトは軽く胸を撫で下ろしたが、まだ
油断は禁物、慎重に会話を進める必要がある。

「キミちゃんのお誕生会がどうかされましたか?」
「……会合の内容は、どういったものを考えているの
かね」

 ゲンドウの筋書きはこうであった。
 お誕生会ともなれば、キミちゃんにプレゼントをあ
げたり、料理の手配をしたりと、様々な準備が必要に
なる。
 だがキミちゃんやレイが加わったことで、ミサトも
いろいろ出費がかさみ、財布のほうも苦しかろう。そ
こで自分が援助物資を用意してやった。なに気にする
ことはない、持っていくがいい。ところでだ、自分は
多忙であるし決して本位ではないが、私が行かなけれ
ばあの子も納得しないだろう。それ故、その場に少し
顔を出すこともやむをえんかと思料している。
 多少オブラートに包む必要があるが、大体この線で
話を進めるつもりのゲンドウ。その完璧なシナリオ
に、組んだ手に隠れた口元が不気味に歪む。
何のことはない、このオヤヂはキミちゃんのお誕生会
に行きたいだけなのであった。
 実は先日キミちゃんが遊びに来た際、お手製のお誕
生会招待状を貰っていたゲンドウである。そこにはク
レヨンで書いたと思しき字で、

 じ〜じへ おたしのおたんじょかいにきてね キミ

 と書いてあったのだ。
 所々にある誤字脱字に、ゲンドウは不覚にも胸がと
きめくのを感じた。キミちゃんの歳の子にとって、短
いながらも文章を書くというのは大変な作業である。
おそらくあの子は、たくさん時間をかけて、自分のた
めに一生懸命これを書いたのだろう。その光景を思い
描いたとき、男の中で何かが変わったのだった。
 ミサトからは死角になっているが、ゲンドウのデス
クの下には、いろいろなものが詰まった紙袋が所狭し
と並べられていた。よく見るとその中には、おもち
ゃ、絵本、果ては有名私立小学校のお受験グッズま
で、ありとあらゆるものが詰め込まれている。
 だがその中身は特S級の秘密事項であり、その中身
を知るのはゲンドウと、不本意にもそれらを買出しに
行かされた冬月のみなのであった。

『ジ〜ジ、これぜ〜んぶあたしにくれるの?』
『そうだ』
『ありがとう、ジ〜ジ大好きだよ』

 嬉しそうに微笑んだキミちゃんが、ゲンドウの頬に
チュっとキスをする。そこで自分は渋く決めるのだ。
ふっ問題ない、と。
 完璧である。
 その光景を思い浮かべると、ゲンドウの頬はとろんとろんの緩々になって仕方がない。だがそこはネルフ
総司令、部下の前でみっともない姿は見せられない。
あくまで厳格で威厳のある上司――と、少なくとも本
人は思っている――を装わなければならないのだ。
 だが次の瞬間、ゲンドウの余裕は一瞬にして吹き飛
んだ。

「ああ、キミちゃんのお誕生会ならキャンセルです」

(その4に続く)


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482586 (-2147482610)
【 日時 】05/10/18 03:33
【 発言者 】Seven Sisters

kimiの名は−裏エピローグ(その4)−


「……何だと?」

 腹の底に響く重々しい口調と、サングラスの奥から
覗く凶悪な眼光に、ミサトは思わず怯んだ。

「な、何だと、と言いますと?」
「何故キャンセルなのか、と聞いている」
「それは、その、キミちゃんが帰ってしまいましたの
で……」
「帰った?」
「は、はい……」
「どこに帰ったというのだ」
「あ、あの、未来に……」
「……」
「ほ、本当なんです。そりゃ、すぐには信じられない
かもしれませんが、でも、あの、あの子がもうここに
いないのは事実でして」
「……」
「ですからその、そういうわけで……。あの子が司令
のお気に入りなのは、重々承知しておりますが……」
「誰もそんなことは話しておらん」

 ゲンドウの視線は最早凶悪を通り越して、殺意すら
帯びているように見えた。はっきり言って、形勢はミ
サトにかなり不利である。もう減給処分撤回どころの
話ではなく、如何にして被害を最小限に食い止めるか
が、至上命題となりつつあった。

「あ、そうだ。あの、司令」
「……何だ」
「実はあの、これをシンジ君から預かっていまして」

 起死回生の一手としてミサトが取り出したのは、未
来のシンジが運んできた封筒であった。

「何だ、これは」
「はい、私も中身が何かまでは聞いていないのです
が、とても大事なものだから必ず司令に渡してくれと
頼まれまして。あ、も、もしかしたらキミちゃんから
のお手紙じゃないでしょうか?」
「む……。分かった、今日はもう下がりたまえ」
「はい、それでは失礼いたします」

 やや気勢を削がれた上司の様子を見て、これ幸いと
司令室を去るミサト。その姿がドアの向こうに消える
のを確認すると、ゲンドウは残された封筒を取り上げ
た。一見何の変哲もない封筒である。中身を取り出す
と出てきたのは、これまた取り立てて変わったところ
のない便箋だった。
 一体これのどこが重要だというのか。忌々しい思い
を胸に、その内容に目を通すゲンドウ。だが読み進む
につれ、見る見るうちにゲンドウの目に驚愕の色が広
がっていく。

 そして数時間後。

「冬月……」
「何だ、碇」
「私は決めたぞ」
「何を決めたのだ?」

 まさかまた妙な買い物ではあるまいな、と疑いつ
つ、詰め将棋の手を止めない冬月。だが老人のささや
かな趣味の時間は、ゲンドウの次の一言で中断を余儀
なくされた。

「計画は破棄する」
「破棄? それはまた穏やかではないな。だが一体何
の計画だ?」
「ふ、決まっているだろう。人類補完計画だ」
「な、何を言っているのだ?」

 十年来の盟友の心変わりに、冬月は思わず狼狽した
声を上げたが、その声は既にゲンドウに届いていなか
った。
 その脳裏にどんな光景が映し出されているのか不明
だが、グフフ、と不気味な笑みを浮かべる怪しい髭オ
ヤヂ。その執務机には、先程までゲンドウが目を通し
ていた便箋が放置されている。冬月は立ち上がると、
それを手に取り中身にざっと目を通した。

「これは、ユイ君の字ではないか……」

 信じられない思いと共に、便箋とゲンドウを交互に
見つめる冬月。
その目に映るのは、新たな希望と生気に満ち溢れる男
の姿だった。
 何がどうなっているのか冬月には知る由もなかった
が、ここにも一人、新たな未来へと歩みだす男が生ま
れたのだった。

(終)


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482585 (-2147482610)
【 日時 】05/10/18 03:34
【 発言者 】Seven Sisters

ということで終わりです。
ユイさんからの手紙の内容は、皆様のご想像におまか
せします(^^;


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482582 (-2147482610)
【 日時 】05/10/18 21:46
【 発言者 】なお。

 ゲンドウの孫馬鹿ぶりが、すごく滑稽です。人も変われば変わるものだ。いや、むしろこれが本来
のゲンドウなのかも。ユイに言わせると「カワイイ人」ですから。

 キミちゃんは、愛情の深さ故に狂った彼を救ったのかもしれませんね。

> ここにも一人、新たな未来へと歩みだす男が生まれたのだった。

 最後に決めゼリフとして「すべてはこれからだ」
 これを言わせて欲しかったかもw


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482579 (-2147482610)
【 日時 】05/10/19 19:36
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

これで終わり? ストレスたまるなぁ(笑)。

裏エピローグ2を希望(笑)。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482578 (-2147482610)
【 日時 】05/10/20 21:55
【 発言者 】牙丸

ゲンドウが買い込んだプレゼントはどうなるのか気になってしょうがない(笑)

ゲンドウがとろけてますねぇ。
こんな様子じゃ、未来ではどうなってるやら。
それを考えると、キミちゃんのゲンドウへの懐きようも納得出来ます。


【タイトル】Re: kimiの名は−裏エピローグ−
【記事番号】-2147482570 (-2147482610)
【 日時 】05/10/22 20:12
【 発言者 】Seven Sisters

■なお。さん

>最後に決めゼリフとして「すべてはこれからだ」

あ、うまい(^^)
もしこの話を外伝か何かで公開する場合、そうしようと思います。

■tambさん

>裏エピローグ2

ネタがないもので、今のところその構想はないっす(^^;

■牙丸さん

>ゲンドウが買い込んだプレゼントはどうなるのか気になってしょうがない(笑)

十年後のお誕生日まで待って、キミちゃんにあげるの
かも。その場合、お受験グッズは買い直さないといけ
ないですね(^^;

メンテ

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