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卒塔婆の森
日時: 2009/05/31 00:00
名前: tomo

【タイトル】卒塔婆の森
【記事番号】-2147482479 (2147483647)
【 日時 】05/11/25 03:16
【 発言者 】tomo

彼らはそこを卒塔婆の森と呼んだ。

海中の中にそびえ建つビル群は一種、異様な光景を醸し出す。
それらは全てかつてはそのうちに何千、何万という人々を抱え込んでいた代物。
あらゆる生命の中で、唯一、天にも届く無機質な構造物を作り出すことにできた人類、その『力』の証。

セカンドインパクトの混乱のあと、かろうじて生き延びた者たちがその光景を目の当たりにして、『卒塔婆の森』と名づけたのもうなづける。
そこには人類が始めて現実に視認した『バベルの塔』の残骸があった。
あるいは人によっては、イカロスの焦げ落ちた翼を見つけるかもしれない。
いづれにしても。
それらは確かに、ある種のモニュメントと化していた。
人類が何かの対価として支払った犠牲へ卒塔婆として。


「戦争って、悪いことなんでしょう?」


水平線の彼方から吹き付ける海風に滑らかな黒髪をなびかせて、白シャツを身に纏った少年がつぶやく。


「あったり前じゃない。今さら何言ってんの」


レモンイエローのスカートを翻し、自慢のブロンドを大きく上下に揺らしながら碧眼の少女が言い放つ。


「戦争。武力による国家間の闘争。でも、ここでおきたのは戦争ではなく内戦」


見つめる先の海の蒼、その蒼と同じ色の髪の毛と、自らの足が踏みしめる砂浜の大地よりも白い肌を持った少女が言葉を紡ぐ。


「どこがちがうのよ?」

「戦争は国家間で行われるもの。内戦は国内で行われるもの」

「それって、屁理屈ね」


振り向きざまに、ブロンドが弧を描く。
紅い瞳を見つめる葵い目は穏やかにゆれる。


「どちらにしてもたくさん人が死ぬことには変わりないんだよね」


海の向こうのその先に求める真実があるかのように、黒き眼は遥か遠くを見渡している。


「戦い。それは人の歴史。人類の営みは流れた血液の量だけ前へ前へと進んでいく」

「てっつがくぅ〜」


それと知りつつ、かつての台詞を繰り返す。
以前よりも幾分おどけてみせたのは演技だろうか。


「人だけじゃない。僕達は自分以外のいろんな命を奪って今ここにいる。それがなんだかわからないものであったとしても、僕達は必要ならその命を奪うんだ」


視線が落とされた先には、軽く握られた右手。
少年はそれをゆっくりと開き、また閉じる。
鼻腔の奥にかすかに漂う血のにおいは幻覚だろうか。


「降りかかる火の粉は掃わねばならない。生きてくためには必要な知恵よ」


確信的にまた自分の台詞を繰り返す。
こめる意味は初めてのときよりもより強く。


「楽しんでますか?」


ふいに背後からもたらされた声は穏やかで控えめだった。


「じょう〜だん。これが楽しんでるように見える?」


振り返ることなく浴びせられる非難の声。
コバルトグリーンの縁をした眼鏡をかけた男がゆっくりと近づいてくる。


「楽しくありませんか?」

「そうね。バカシンジはいつにも増して内罰的で陰湿だし、レイはレイでまたわけわかんないこといってるし」

「それは困りましたね」


口調とは裏腹にまるで困った様子はみられない。
あくまで男の物腰はやわらかだ。


「もう少しましなトコつれてきなさいよね。折角、あたし達がついていってあげるんだから」

「でも」


声は突然、別の方向から聞こえた。


「僕は来て良かったと思う」

「な……」

「私も」


抗議よりも先に同意が響く。
これにはさしものアスカも二の句が継げなかった。


「そう。それはよかった」


男が微笑む。
アスカは何か言おうと思ってやめた。
ただ、黙って海を見つめる。
相変わすそこには卒塔婆の森が海の底からそびえたっていた。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482478 (-2147482479)
【 日時 】05/11/25 03:20
【 発言者 】tomo

相変わらず、突発的投稿です。
突発的投稿のときはイメージ先行。
意味も意図も後から付与されるにすぎません。
付与されない場合だってあったりします(壊)
というわけで、読者の方も突発的に雰囲気だけを味わっていただければ幸いです。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482472 (-2147482479)
【 日時 】05/11/25 21:16
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

>海中の中に

 頭痛が痛い(笑)。減点1。

 ぶっちゃけ話はさっぱりわからん(^^;)。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482463 (-2147482479)
【 日時 】05/11/26 23:22
【 発言者 】牙丸

雰囲気を味わう作品ですか。
あまり深く考えない方がいいのかもしれないですね。
大人びた考えを持つシンジ達が、幻想的な風景と混じり合ってグーだと思います。
サードインパクトの後の話なのか、それともまだ使徒が来る状況での話なのかによって、彼らの心境の背景が変わるような気もします。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482464 (-2147482479)
【 日時 】05/11/28 00:18
【 発言者 】なお。

半分寝ながら書いたので、英語を自動翻訳したようなあやしい文章になってましたw
よって修正してます(^_^;)

卒塔婆の森、これが彼等に伝えるのはどんなメッセージなのでしょう。
戦争で破壊され、なおかつ海に沈んだビル群。かつて人が営み育んだ文明の象徴ともいえるそれは今や風景の一部でしかなく、見る人によっては哀愁漂う景色になりそうなものですが、私ならそのシュールでファンタジックでノスタルジックな風景をそのまま楽しみそうです。(戦争を知らないという前提で)
しかし彼等子供達はそこから戦争の悲しさや虚しさを見つけて会話をしています。私なんかよりずっとしっかりしています。しかし私としては、彼等にも幻想的な風景をそのまま楽しんでほしいと願います。連れてきた彼もそんな気持ちでここに連れてきたのではないのでしょうか。
この風景からは様々な事を想像できそうなもので、戦争を批判するのはもちろん悪い事ではありません。そしてそういう世界にしないようにと未来を見据える心を持っているのだと感心しました。
ほんとうにいい子達です。
そして最後に楽しいと言えています。思い詰めたりしないで過去の事は戒めとして受け入れ前向きな考えが出来ているのでしょう。
文句を言いいつつアスカも楽しんでいるようです。そこはとても彼女らしいです。
『I wish you a Merry Christmas.』の先にある話のようなので、その元気な様子に少しほっとしました。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482454 (-2147482479)
【 日時 】05/11/29 01:33
【 発言者 】tomo

お読みいただきありがとうございます。
みなさまのあたたかな感想で、tomoは空だって飛べてしまいます(笑)

>減点1。
びくびくと修正(壊)ということで、プラスマイナスゼロでお願いします♪

>話の内容がさっぱりさっぱり〜な点について
お気持ちお察しします(爆)
この作品はある程度そうなることを予想していました。
これは、どこまで削っても(?)通じるのかなっていうある種の実験なんです。
そのそも、オリジナルキャラを出演させているのに、その名前すらないのですから、相当に説明が省略されてます。この点は少し、反省。
あ、『コバルトグリーンの縁をした眼鏡をかけた男』が誰だかお分かりにならなかった方、私の連載作品、『I wish you a Merry Christmas.』をお読みくださいな♪(と、さりげなく宣伝してみるテスト)

その点、なお。さんには大筋で伝わっているようで、すごいです。作品一つ一つの意味を汲み取ろうとするなお。さんの読者としての姿勢を改めて見せられました。ほんとうにありがとうございます。


実験ということで、牙丸さん一つお付き合いください。
この作品はサードインパクト前、つまり、使徒戦の最中の時間設定です。
作中でもそのことをシンジのしぐさで暗示しています。どうでしょう?伝わりますか?

横暴(?)な作者でごめんなさい、です。
もしよかった、考えてくださいませ。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482453 (-2147482479)
【 日時 】05/11/29 06:47
【 発言者 】なお。

>>海中の中に
>> 頭痛が痛い(笑)。減点1。
>びくびくと修正(壊)ということで、プラスマイナスゼロでお願いします♪

ここはすぐに気付いたところでtambさんが指摘していたのでスルーしていたところ。
しかし修正後も気になりまして。
卒塔婆と例えるからには海面から突き出しているのを想像したのだけど、海中にそびえ立つ、となるとビル全体が海中に没しているような感じを受けてしまってそのようには取りづらいです。
海中、の読ませ方次第なんだろうけどもう少しなんとかしたいと思いました。
海原にそびえ立つ……なんか違う。
海中からそびえ立つ……これもちょっと違うかな。
短く書こうとするとなかなか難しいです。ちょっと思い付きませんでした。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482438 (-2147482479)
【 日時 】05/12/01 21:29
【 発言者 】tamb○牙丸さん召還(笑) <tamb○cube-web.net>

>ビル全体が海中に没しているような感じを受けてしまって

 私はこう読んでた。全部海の中にあるって。でもラスト二行でなお。さんが正しいとわかる(笑)。

 海面から出てるって方向で直すなら「海中からそびえ立つ」でいいような気がするけど。あるいは「海底からそびえ立つ」かな。どっちにしても、海面から出てることを明示したいなら、どこかに「海面から突き出した」みたいな一文を入れないとダメでしょうね。明示すべきかどうかは微妙ですが。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482437 (-2147482479)
【 日時 】05/12/01 22:06
【 発言者 】牙丸

おお!なんか召還されている様子。(笑)

>シンジのしぐさ
これですか?

>視線が落とされた先には、軽く握られた右手。
>少年はそれをゆっくりと開き、また閉じる。

シンジがよくやる、グーパーの運動。
大人びたセリフだったので、サードインパクト後かな?って少し思ったんですが、なるほどです。
これがあると、まだ成長前って感じですね。


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482436 (-2147482479)
【 日時 】05/12/01 23:30
【 発言者 】なお。

■牙丸さん
おそらく誤召還とおもわれw


■tambさん

> 「海中からそびえ立つ」でいいような気がするけど。あるいは「海底からそびえ立つ」かな。

「海中からそびえ立つ」でもいいんだけど、それだとストレートすぎて今ひとつかなって。
どうせだったら簡単にでもどのようにそびえ立っているのかを入れたいところで、だからちょっと違うかなって思ったのです。なにしろ異様な光景だし。

そういえば「そびえ建つ」と「そびえ立つ」はどっちでもいいのだろうか?
どちらかというと「そびえ立つ」だと思うのだけど?


【タイトル】Re: 卒塔婆の森
【記事番号】-2147482429 (-2147482479)
【 日時 】05/12/02 20:39
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

>そういえば「そびえ建つ」と「そびえ立つ」はどっちでもいいのだろうか?

 これは裁量の範囲でいいんじゃないかな。どういうニュアンスを生かすのかと。どっちでもいいなら「立つ」が正解だとは思うけど。「聳えたつ」という手も無くはないけど、なかなか読めない(笑)。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】一ヶ月近くたっている・・・
【記事番号】-2147482338 (-2147482479)
【 日時 】06/01/02 00:56
【 発言者 】tomo

返信が遅れてしまって本当にもうしわけありません。
こういう場合って、もうスルーすべきなのかとも
思ったのですが、作者としてやっぱり返信すべき
だろうということで、おそまきながら返信させていただきます。

>牙丸さん
その場面で正解です♪
償還させといて放置プレイ……
最悪な召喚士でしたね(爆)
ごめんなさいです。

>「海中にそびえ建つ」
実は時間がたってしまってこのときのことはあんまり覚えていなかったりしますが(爆)イメージ的にはなお。さんのやつで正解だった思います。
ビルは海面を突き出ています。
なのになぜこの表記なのか。

思い返してみると、自分の中にイメージの混乱があったのかもしれません。
つまり、最初は海面から突き出たイメージだったのですが、修正したときになぜか海の中にあるビルに
なってしまったのかも。

いずれにしても、ミスと思われます。
最近ミスが多いです。
もともとかなりお間抜けなところがあると人によく
言われる私。
もっとこう意識して気をつけないといけないです。

メンテ

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Re: 卒塔婆の森 ( No.1 )
日時: 2009/05/31 00:00
名前: tomo

【タイトル】卒塔婆の森
【記事番号】-2147482479 (2147483647)
【 日時 】05/11/29 01:17
【 発言者 】tomo

彼らはそこを卒塔婆の森と呼んだ。

海中にそびえ建つビル群は一種、異様な光景を醸し出す。
それらは全てかつてはそのうちに何千、何万という人々を抱え込んでいた代物。
あらゆる生命の中で、唯一、天にも届く無機質な構造物を作り出すことにできた人類、その『力』の証。

セカンドインパクトの混乱のあと、かろうじて生き延びた者たちがその光景を目の当たりにして、『卒塔婆の森』と名づけたのもうなづける。
そこには人類が始めて現実に視認した『バベルの塔』の残骸があった。
あるいは人によっては、イカロスの焦げ落ちた翼を見つけるかもしれない。
いずれにしても。
それらは確かに、ある種のモニュメントと化していた。
人類が何かの対価として支払った犠牲への卒塔婆として。


「戦争って、悪いことなんでしょう?」


水平線の彼方から吹き付ける海風に滑らかな黒髪をなびかせて、白シャツを身に纏った少年がつぶやく。


「あったり前じゃない。今さら何言ってんの」


レモンイエローのスカートを翻し、自慢のブロンドを大きく上下に揺らしながら碧眼の少女が言い放つ。


「戦争。武力による国家間の闘争。でも、ここでおきたのは戦争ではなく内戦」


見つめる先の海の蒼、その蒼と同じ色の髪の毛と、自らの足が踏みしめる砂浜の大地よりも白い肌を持った少女が言葉を紡ぐ。


「どこがちがうのよ?」

「戦争は国家間で行われるもの。内戦は国内で行われるもの」

「それって、屁理屈ね」


振り向きざまに、ブロンドが弧を描く。
紅い瞳を見つめる葵い目は穏やかにゆれる。


「どちらにしてもたくさん人が死ぬことには変わりないんだよね」


海の向こうのその先に求める真実があるかのように、黒き眼は遥か遠くを見渡している。


「戦い。それは人の歴史。人類の営みは流れた血液の量だけ前へ前へと進んでいく」

「てっつがくぅ〜」


それと知りつつ、かつての台詞を繰り返す。
以前よりも幾分おどけてみせたのは演技だろうか。


「人だけじゃない。僕達は自分以外のいろんな命を奪って今ここにいる。それがなんだかわからないものであったとしても、僕達は必要ならその命を奪うんだ」


視線が落とされた先には、軽く握られた右手。
少年はそれをゆっくりと開き、また閉じる。
鼻腔の奥にかすかに漂う血のにおいは幻覚だろうか。


「降りかかる火の粉は掃わねばならない。生きてくためには必要な知恵よ」


確信的にまた自分の台詞を繰り返す。
こめる意味は初めてのときよりもより強く。


「楽しんでますか?」


ふいに背後からもたらされた声は穏やかで控えめだった。


「じょう〜だん。これが楽しんでるように見える?」


振り返ることなく浴びせられる非難の声。
コバルトグリーンの縁をした眼鏡をかけた男がゆっくりと近づいてくる。


「楽しくありませんか?」

「そうね。バカシンジはいつにも増して内罰的で陰湿だし、レイはレイでまたわけわかんないこといってるし」

「それは困りましたね」


口調とは裏腹にまるで困った様子はみられない。
あくまで男の物腰はやわらかだ。


「もう少しましなトコつれてきなさいよね。折角、あたし達がついていってあげるんだから」

「でも」


声は突然、別の方向から聞こえた。


「僕は来て良かったと思う」

「な……」

「私も」


抗議よりも先に同意が響く。
これにはさしものアスカも二の句が継げなかった。


「そう。それはよかった」


男が微笑む。
アスカは何か言おうと思ってやめた。
ただ、黙って海を見つめる。
相変わすそこには卒塔婆の森が海の底からそびえたっていた。

メンテ

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