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貞本エヴァ STAGE.70「虚無の群」/貞本義行
日時: 2009/05/31 00:00
名前: tamb

【タイトル】貞本エヴァ STAGE.70「虚無の群」/貞本義行
【記事番号】-2147482435 (2147483647)
【 日時 】05/12/01 21:30
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 長大なエレベーターに乗って三人は降りて行く。
 降り着いた先には「財団法人 人工進化研究所」と書かれた扉がある。中は荒れ果てていた。ビーカー。散乱した薬。応急的に補修されただけのダクト。機器類……。

「まるで、綾波の部屋だ……」
「そう、レイの部屋よ。ここが彼女が育った所。
 レイの深層心理を構成する光と水はここのイメージが強く残っているのね」
「赤木博士」

 ミサトが遮るように言う。

「私はココを見に来たワケじゃないよの」
「わかってるわ。ミサト」

 三人は廊下をさらに進む。
 司令塔のような場所から下を見下ろす。そこには十字型に刻まれた巨大な溝、穿たれた巨大な穴がある。中には骨格のような物が無造作に捨てられているのが見える。

「これは……エヴァ?」
「最初のね」

 シンジの問いにリツコが答える。

「失敗作よ。10年前に破棄させたわ。今はただのゴミ捨て場だけど。
 あなたのお母さんが消えた場所でもあるわ」
「リツコ!」

 ミサトが銃口を向ける。

「大丈夫です、ミサトさん……」

 ――何があってもちゃんと見なきゃ。

 シンジの顔色が悪い。

「そして代わりに生まれたのが綾波レイ」

 シンジはリツコの言葉を受け止めきれない。

「なん……」
「あなたのお母さんが消えたのと同じ場所であのコは生まれたのよ。
 魂のないからっぽの状態でね。
 今あるあのコこ心は苦心(サルベージ)して宿らせたもの。
 いらっしゃい。真実を見せてあげる」

 リツコの案内した先には、巨大な脳状な物の下にカプセルが繋がれている設備があった。

「なによ……これ」
「ダミープラグの元となるプラントよ」

 ――ダミープラグ……。

 シンジが呟く。

「そして、これがダミーシステムのコアとなる部分」

 リツコがPDAのようなリモコンを操作した。

「これが、真実よ」

 薄く笑うリツコ。

 周囲に、水槽に漂う無数のレイが現れた。ただ驚愕するシンジとミサト。

「綾波……レイ……」
「いいえ。ここにあるのはみんなダミー。
 ダミーシステムのために生産されているだけ。
 そしてレイのためのただのスペアパーツにすぎないわ」
「そんな……」
「シンジくん!」

 足元のふらつくシンジをミサトが抱きかかえる。

「しっかりしなさい」
「わかってます。でも……」

 シンジは水槽のレイを直視できない。

「人は、神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。
 だからバチが当たった。
 それが15年前」

 シンジとミサトがリツコの方に振り向く。

「せっかく拾った神様も消えてしまったわ
 でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの
 それがアダム」


 ――背景にリリス――

「そしてアダムから神様に似せて人間を作った。
 それが、エヴァ」
「人間?」

 シンジが顔を上げる。

「人だっていうんですか?」
「そうよ。本来魂のないエヴァには人の魂が宿らせてあるもの。
 あなたも気づいているでしょ? 消えてしまったあなたのお母さんが今どこにいるのか。
 でもここにあるレイと同じものは人じゃない。
 魂のないただの容れ物よ。
 たったひとつの魂を
守り続けるための、
 ただの器」

 リツコは静かに話し続ける。

「だから壊すの
 もう二度と器が取り換えられないように。
 私の苦しみを、終わらせるために」

 再びリツコがリモコンを操作する。
 ゴボボッという音とともに水槽の中のレイたちが崩壊し始めた。

「わああああ!」

 シンジが絶叫する。

「あんた! 何やってんのかわかってんの!?」

 ミサトもそう叫んでリツコの背中に銃口を向ける。

「ええ、わかってるわ。破壊よ。
 人じゃないもの。人の形をしたただの物体。
 でも、そんなものにすら私は負けた。
 勝てなかったのよ。
 ……あの人のこと考えるだけで、どんな陵辱にだって耐えられた。
 私の体なんてどうでもいいのよ」

 リツコは悲しげな表情で言う。

「でも、あの人にはそう思って欲しくなかった。
 なのに……あの人。
 バカなのよ、私は」

 うなだれるリツコ。

「……わかっていたのに。
 母娘そろって大バカ者だわ」
「リツコ……あんた……」
「私を殺したいのなら殺して。
 いいえ、そうしてくれると嬉しい」
「それこそバカよ。あんたは」
「……く、うっ……」

 リツコはしゃがみ込んで号泣した。ミサトとシンジはそれを見つめるしかない。

 ――父さん……
 父さんはいったい何をしようとしてるんだ。
 綾波を、母さんを、エヴァを、
 そして僕を、どうしようとしているんだ。
 僕はこれから、どうしたらいい?


続く

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【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.70「虚無の群」/貞本義行
【記事番号】-2147482434 (-2147482435)
【 日時 】05/12/01 21:31
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 扉絵のレイの制服がまたもやや乱れてる。貞本さんのセンスなのかなぁ。

 で、前スレの牙丸さんの指摘の通り、レイはまず魂なしの状態で生まれた模様。魂はサルベージして宿らせたと。

 ハードルが二つ。魂をサルベージできること、それを肉体に宿らせることができること。後者はぷかレイ使い回しのあれで技術的には確立されてると思われる。問題は前者なんだが、どういう状態からでもサルベージできると仮定すれば自爆なんてへっちゃらだよな(笑)。まず魂って何ですかって話をしないといかんのだけど。

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【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.70「虚無の群」/貞本義行
【記事番号】-2147482433 (-2147482435)
【 日時 】05/12/01 21:49
【 発言者 】あやきち

ハードルが二つ。魂をサルベージできること、それを肉体に宿らせることができること。後者はぷかレイ使い回しのあれで技術的には確立されてると思われる。問題は前者なんだが、どういう状態からでもサルベージできると仮定すれば自爆なんてへっちゃらだよな(笑)。まず魂って何ですかって話をしないといかんのだけど。


それを肉体に宿らせることができること。
後者はぷかレイ使い回しのあれで技術的には確立されてると思われる。

最初のレイが生まれたときの話なんですがから、まだ確立されてないのでは?
でもって、このとき(=一番初めに綾波レイがサルベージされたとき)にたまたま(かどうかはしらないけれども、オイラは偶然の要素が強かったと思う)上手くいったので、そこから技術が確立されたんではないかと思いますが・・・

重箱の隅レスで申し訳ない(^^;

矯正の結果、歯が激烈痛いので、些細なことに反応しますが、論理的思考はできません(なんじゃそりゃw)


【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.70「虚無の群」/貞本義行
【記事番号】-2147482432 (-2147482435)
【 日時 】05/12/01 22:35
【 発言者 】牙丸

>まず魂って何ですかって話をしないといかんのだけど。

これはエヴァを理解する上で、一番根本的な辺りになると思います。
まずそもそも肉体と魂の関係から、考えなくてはならないですから。

ぷかレイを見る限り、肉体があっても魂がなければ、人間(生物は言い過ぎ?)として生きていけない状態だと思います。
しかし、魂が無くても存在する事自体は可能なわけです。
となると、やはり肉体はレイで言われているとおり器でしかないと。

魂については、生きる上で重要な考える事、思う事、感じる事を司っているような・・・
魂はその人が、その人である所以であり、人の根本的な識別の部分にあたるのかと。
でもそうすると人の魂を、別の人に入れたらそれは誰なのかっていう問題があります。
例えば、初号機の中にはユイの魂が入っていると推測されますが、初号機=ユイであるかというと完全にイコールにはならないのかと。

魂と記憶についても微妙な位置間。
レイの移り変わりを見る限りでは、魂が同じでも記憶は受け継ぎの際、何かが欠ける様子。
ゲンドウとかが意図的に消している可能性もありますが。
魂が記憶と無関係だとすれば、じゃあ初号機のシンジに対しての反応とかは何なんだってなります。

そしてレイの魂に戻りますが、一体何の魂をサルベージしたのか。
リリスが濃厚っぽいですが、それだとレイの魂はレイではなく、リリスなのかとなる。

う〜ん、よく分からなくなってきたので、今回はここら辺で終了いたします。


【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.70「虚無の群」/貞本義行
【記事番号】-2147482428 (-2147482435)
【 日時 】05/12/02 20:39
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 名無しさん、見てる?(笑)

■あやきちさん
>最初のレイが生まれたときの話なんですがから、まだ確立されてないのでは?

 自分でも何を書いたのか不明なわけなのだが(^^;)、書いてる時に何を考えていたのかというと、シンジのサルベージと二人目から三人目への移行です。
 すなわち、上記二つのハードルがクリアできるのだとすれば、シンジサルベージの時にぷかレイにシンジをインストールすることも可能であったのであろうと(^^;)。
 それから魂のサルベージという話ですが、バックアップから器に入れたんじゃなくて黒こげの状態から魂をサルベージして器に入れたんだとすれば、こりゃもうほとんど何でもアリですから、加持さんの魂をその辺からサルベージしてぷかレイに入れることも可能であろうと(爆)。


■牙丸さん
>でもそうすると人の魂を、別の人に入れたらそれは誰なのかっていう問題があります。

 これは普遍的な哲学的命題だと思うんですが、仮に魂を

>考える事、思う事、感じる事を司っている

 すなわち「意志」であるとするなら、器は魂の物でしょう。魂を別の人(器)に入れれば、その人は新たに入れた魂の物になるのではないかと。乱暴な話をすれば臓器移植の拡張です。魂はひとつの器にひとつしか宿らないという前提ですが。

>初号機の中にはユイの魂が入っていると推測されますが、初号機=ユイであるかというと

 これはユイでいいと思います。というか、ユイと定義するべきなんじゃないかと。つまり定義の問題なんじゃないかと思います。

>魂が同じでも記憶は受け継ぎの際、何かが欠ける様子。

 感じとしては、記憶は器に入れるみたいな感じですね。魂そのものは記憶を持っていないと。だから記憶はバックアップしておいて、リストアする必要があるのではないかと。

>じゃあ初号機のシンジに対しての反応とかは

 妄想ですが、魂そのものが持っている本能のような物かもしれません。これは苦しいな(^^;)。実はユイの記憶もバックアップしてあったとか。

>一体何の魂をサルベージしたのか。

 問題はここだよな。ユイの魂をサルベージ出来なかった理由がわからん。ユイにサルベージされる意志がなかったということは考えられるけど、そうするとリリスはサルベージされたかったのかな。何も考えてなければサルベージできるとか? うーむ。

>リリスが濃厚っぽいですが、それだとレイの魂はレイではなく、リリスなのかとなる。

 論理的帰結としてはそうなります。レイなど最初からどこにもいなかった。いたのはリリスであると。

 ……なんとかならんかな(爆)。

 待てよ。初号機(あるいはそのコア。あるいは素体)との接触実験の時、中にはリリスがいたのか? 何のための接触実験だ?

mailto:tamb○cube-web.net

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