Re: 未来を求めて・・・ ( No.1 ) |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: メフィスト
- 【タイトル】未来を求めて・・・
【記事番号】-2147482069 (2147483647) 【 日時 】06/04/17 00:28 【 発言者 】メフィスト
未来を求めて・・・
すべてが終わりを迎えた世界・・・。 少年はそこにいた。 そこにはただ赤い海が静かに広がっていた。 それはすべての生命を飲み込んだ一つの液体、LCLの海として一人の少年の目前に広がっていた。 その少年の名前は碇シンジ。 エヴァンゲリオン初号機のパイロットである。 彼は血のように赤いLCLの海の海岸で目覚めた。 「・・・」 目の前には動かなくなった巨大な綾波レイの、まるで刀で真っ二つにしたような顔の片方が横たわっているのを見た。 呆然と、その綾波だったものを見つめていると横から服の擦れる音が聞こえた。 視線を前から、音のした方に移すと横たわっている存在に気がついた。 アスカだ。 アスカは右目や右腕に包帯を巻き痛々しい格好でその身を白い砂浜に横たえていた。 シンジはその身を静かに起こし二号機パイロットであるアスカの上に馬乗りになると苦悶の表情を浮かべそっと両手をアスカの白い首に這わせた。 そして一気に両手に力を込めた。 「う・・・・ぁぁ・・・・・・・」 アスカは僅かに声を漏らすと、そっと右腕をシンジの頬に伸ばす。 そして優しくその頬を撫でた。 「・・・ぁあ・・・・うぐぅ・・・・・うぅ・・・・」 シンジは泣いていた。 そして我に返ったのか、そっと首から手を離した。 それから泣き崩れるように体を丸めて泣いていた。 「気持ち悪い・・・」 アスカはそう一言つぶやくと静かに息を引き取ってしまった。 それからしばらくしてシンジはアスカの息がすでに無いことを知ると、泣きながら穴を掘り静かにアスカを葬った。
そしてシンジは赤いLCLの海が広がる世界で一人きりになってしまった。 シンジはその真実を否定するかのように自分の殻に閉じこもった。 心を暗闇の奥底に沈めるように・・・。 その傍らには木で作られた十字架があった。 アスカの亡骸がその下に埋まった十字架である。 シンジはすべての気力を失い生きているのか死んでいるのかもわからない抜け殻の状態になっていた。 だがサードインパクトの依り代として神の子となったシンジは死ぬことすら許されない。 すべての絶望の果てに永遠の命を得たのだ。 本人が望んでいなくても・・・。 「僕はなぜ・・生きている・・みんな・・・いなくなってしまった・・・・一人はもういやだ・・・・・もう疲れた・・・・・」 (・・・もういいの?・・・) 「?・・だれ・・・」 (・・もう・・いいの?・・) シンジの頭に響く優しい心地よい声。 それは絶望の淵にいたシンジに僅かな気力を与えた。 「母さん?・・・」 (・・シンジ・・もう・・いいの?・・・) 「母さんなんだね・・・」 シンジは静かにその瞳を閉じてそう呟いた。 その閉じられた瞳からは一筋の涙が流れた。 (・・・・もう・・いいの?・・・・) 彼が母と呼ぶその声はもう一度そう呼びかけた。 しかしその言葉をシンジは遮り、彼は自分の中身をすべて出し切るかのように言葉を吐き出した。 「何を・・言ってるの・・もう全部終わっちゃったじゃないか・・・・・アスカも・・ミサトさんも綾波もトウジもケンスケもみんないなくなっちゃったじゃないか!!!今更何をいってるんだ!!」 シンジは徐々に声を張り上げていた。 自分でも驚くほどの声を出していた。 (・・もういいの?・・) しかしなおも静かに諭すようにその声はシンジの頭の中に響いてくる。 シンジは崩れるように、泣き叫ぶように叫んだ。 「いいわけない!!・・・・いいわけないだろ!!・・返してよ・・みんなに会いたいよ・・みんなを返してよ・・・・」 (・・・そう・・・それがあなたの願いなのね・・・シンジ・・・・) 絶望の淵にいたシンジはその優しい声に導かれるように上を向いた。 その瞬間シンジの目の前が真っ白になった。 そしてシンジは暖かな白い光に包まれて終末を迎えた世界から姿を消した。
シンジは光のなかで目を覚ました。 「ここは・・・」 シンジは静かにそしてゆっくと周りを見渡した。 周りは真っ白で光に包まれていた。 上も下もわからない。 自分が立っているのかすらわからない。 そんな不思議な感覚に捕われていた。 (ここは・・光の部屋・・) 「光の・・部屋?・・・」 (そう・・ここにあって・・ここにない所・・・) 「ここにあってここにない?どうゆうことさ!・・意味がわからないよ母さん!!」 (ここはあなたの心の中・・だからここにあって、ないところ・・・) 「ここが僕の心?じゃあ何で母さんはここにいるの?」 (私は碇ユイ・・そう・・あなたの母親・・今まで初号機の中にいたのよ・・シンジを守るために・・・ でももうその必要はなくなったのよ・・初号機はその使命を終え・・・私は初号機から解放された・・・) そしてシンジの目の前に輝く人影が現れた。 そして徐々にその輝きがなくなると、そこにはユイの姿があった。 「かあさん!!!!」 シンジは驚きのあまりそれきり固まってしまった。 ユイは静かに微笑んで言葉を紡いだ。 (シンジ・・・私は魂だけの存在・・・今あなたの目の前に見えているのはただの幻よ・・・そう・・夢・・とでも言うのかしらね・・・) 静かに、そして優しく微笑みながらユイはそういって、さらに言葉を続けた。 (あなたに幸せになってほしい・・そう望んできたのだけれど・・・結局はあなたを苦しめていたのね・・) 「母さん・・・」 (本当にごめんなさい・・シンジ・・あなたには言葉でいくら謝っても謝りきれないわ・・・) 「・・・」 (でも償いはさせて・・・) ユイの瞳から一筋の光・・涙が零れ落ちた・・・。 (あなたは望んでいなかった・・・けれど神の力があなたには宿っているわ・・・その力を使えばあなたの思うとおりのことができるはずよ・・・そう・・・時を戻すことも・・・) そういってユイは顔を伏せた。 「時を戻す・・?それに神の力・・・?」 シンジは自分の両の手の平に目を落とした。 (そう・・・シンジ、あなたは強大な力を手に入れているの・・・使い方がまだわからないだけ・・・でも気づいているはずよ・・・自分の体の、心の変化に・・・) 「そんなこと言われてもわからないよ。神の力なんて言われてもアスカを助けることすらできなかった・・・それに・・・僕は・・アスカを・・・殺そうとした・・・そして死んでしまった・・・」 「そんな僕に力なんてあるわけない!!僕はただ逃げることしかできなかった・・・ただの臆病者なんだ!!」 シンジは俯いたままそう叫んだ。 (いいえ・・・でも確かに今まではそうだったかもしれないわね・・・でもシンジ・・・あなたは本当にただ力の使い方がわからないだけ・・・私はその力の使い方を教えるためにここに来たのよ・・・だからシンジ自分を責めないで・・・) そう言うとユイはシンジにゆっくりとすべるように近寄ると優しくシンジを抱きしめた。 「・・か・・あ・さん・・」 (シンジ・・・これがこの世界で私がしてあげられる最初で最後の償いよ・・・) そう言った瞬間ユイはシンジの身体に溶けるように消えていった。 そしてシンジはすべてを理解した。 ユイがすべてを教えてくれた。 神の力の強大さとその使い方を・・・。 「母さん・・・ありがとう・・そしてさようなら・・・僕はもう一度最初からやり直してみるよ。みんなの幸せのために・・・」 シンジは上を向いてそうつぶやくと両手を広げて身体を十字架のようにすると背中からオレンジ色の十二枚の翼が現れた。まるで天使のような翼が・・・。 「いってきます・・・」 静かにそう呟くと十二枚の翼がシンジを覆うように被さっていく。 そしてすべての翼がシンジを覆いつくすとシンジはその場から消えていた。 そう、サードインパクトを止めるために。 そしてみんなと平和に暮らすために。
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Re: 未来を求めて・・・ ( No.2 ) |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: メフィスト
- 【タイトル】未来を求めて・・・
【記事番号】-2147482069 (2147483647) 【 日時 】06/04/28 00:22 【 発言者 】メフィスト
未来を求めて・・・
すべてが終わりを迎えた世界・・・。 少年はそこにいた。 そこにはただ赤い海が静かに広がっていた。 それはすべての生命を飲み込んだ一つの液体、LCLの海・・・。 その少年の名前は碇シンジ。 エヴァンゲリオン初号機のパイロットである。 彼は血のように赤いLCLの海の海岸で目覚めた。 「・・・」 目の前には動かなくなった巨大な綾波レイの、まるで刀で真っ二つにしたような顔の片方が横たわっているのを見た。 呆然と、その綾波だったものを見つめていると横から服の擦れる音が聞こえた。 視線を前から、音のした方に移すと横たわっている存在に気がついた。 アスカだ。 アスカは右目や右腕に包帯を巻き痛々しい格好でその身を白い砂浜に横たえていた。 シンジはその身を静かに起こし二号機パイロットであるアスカの上に馬乗りになると苦悶の表情を浮かべそっと両手をアスカの白い首に這わせた。 そして一気に両手に力を込めた。 「う・・・・ぁぁ・・・・・・・」 アスカは僅かに声を漏らすと、そっと右腕をシンジの頬に伸ばす。 そして優しくその頬を撫でた。 「・・・ぁあ・・・・うぐぅ・・・・・うぅ・・・・」 シンジは泣いていた。 そして我に返ったのか、そっと首から手を離した。 それから泣き崩れるように体を丸めて泣いていた。 「気持ち悪い・・・」 アスカはそう一言つぶやくと静かに息を引き取ってしまった。 それからしばらくしてシンジはアスカの息がすでに無いことを知ると、泣きながら穴を掘り静かにアスカを葬った。
そしてシンジは赤いLCLの海が広がる世界で一人きりになってしまった。 シンジはその真実を否定するかのように自分の殻に閉じこもった。 心を暗闇の奥底に沈めるように・・・。 その傍らには木で作られた十字架があった。 アスカの亡骸がその下に埋まった十字架である。 シンジはすべての気力を失い生きているのか死んでいるのかもわからない抜け殻の状態になっていた。 だがサードインパクトの依り代として神の子となったシンジは死ぬことすら許されない。 すべての絶望の果てに永遠の命を得たのだ。 本人が望んでいなくても・・・。 「僕はなぜ・・生きている・・みんな・・・いなくなってしまった・・・・一人はもういやだ・・・・・もう疲れた・・・・・」 (・・・もういいの?・・・) 「?・・だれ・・・」 (・・もう・・いいの?・・) シンジの頭に響く優しい心地よい声。 それは絶望の淵にいたシンジに僅かな気力を与えた。 「母さん?・・・」 (・・シンジ・・もう・・いいの?・・・) 「母さんなんだね・・・」 シンジは静かにその瞳を閉じてそう呟いた。 その閉じられた瞳からは一筋の涙が流れた。 (・・・・もう・・いいの?・・・・) 彼が母と呼ぶその声はもう一度そう呼びかけた。 しかしその言葉をシンジは遮り、彼は自分の中身をすべて出し切るかのように言葉を吐き出した。 「何を・・言ってるの・・もう全部終わっちゃったじゃないか・・・・・アスカも・・ミサトさんも綾波もトウジもケンスケもみんないなくなっちゃったじゃないか!!!今更何をいってるんだ!!」 シンジは徐々に声を張り上げていた。 自分でも驚くほどの声を出していた。 (・・もういいの?・・) しかしなおも静かに諭すようにその声はシンジの頭の中に響いてくる。 シンジは崩れるように、泣き叫ぶように叫んだ。 「いいわけない!!・・・・いいわけないだろ!!・・返してよ・・みんなに会いたいよ・・みんなを返してよ・・・・」 (・・・そう・・・それがあなたの願いなのね・・・シンジ・・・・) 絶望の淵にいたシンジはその優しい声に導かれるように上を向いた。 その瞬間シンジの目の前が真っ白になった。 そしてシンジは暖かな白い光に包まれて終末を迎えた世界から姿を消した。
シンジは光のなかで目を覚ました。 「ここは・・・」 シンジは静かにそしてゆっくと周りを見渡した。 周りは真っ白で光に包まれていた。 上も下もわからない。 自分が立っているのかすらわからない。 そんな不思議な感覚に捕われていた。 (ここは・・光の部屋・・) 「光の・・部屋?・・・」 (そう・・ここにあって・・ここにない所・・・) 「ここにあってここにない?どうゆうことさ!・・意味がわからないよ母さん!!」 (ここはあなたの心の中・・だからここにあって、ないところ・・・) 「ここが僕の心?じゃあ何で母さんはここにいるの?」 (私は碇ユイ・・そう・・あなたの母親・・今まで初号機の中にいたのよ・・シンジを守るために・・・ でももうその必要はなくなったのよ・・初号機はその使命を終え・・・私は初号機から解放された・・・) そしてシンジの目の前に輝く人影が現れた。 そして徐々にその輝きがなくなると、そこにはユイの姿があった。 「かあさん!!!!」 シンジは驚きのあまりそれきり固まってしまった。 ユイは静かに微笑んで言葉を紡いだ。 (シンジ・・・私は魂だけの存在・・・今あなたの目の前に見えているのはただの幻よ・・・そう・・夢・・とでも言うのかしらね・・・) 静かに、そして優しく微笑みながらユイはそういって、さらに言葉を続けた。 (あなたに幸せになってほしい・・そう望んできたのだけれど・・・結局はあなたを苦しめていたのね・・) 「母さん・・・」 (本当にごめんなさい・・シンジ・・あなたには言葉でいくら謝っても謝りきれないわ・・・) 「・・・」 (でも償いはさせて・・・) ユイの瞳から一筋の光・・涙が零れ落ちた・・・。 (あなたは望んでいなかった・・・けれど神の力があなたには宿っているわ・・・その力を使えばあなたの思うとおりのことができるはずよ・・・そう・・・時を戻すことも・・・) そういってユイは顔を伏せた。 「時を戻す・・?それに神の力・・・?」 シンジは自分の両の手の平に目を落とした。 (そう・・・シンジ、あなたは強大な力を手に入れているの・・・使い方がまだわからないだけ・・・でも気づいているはずよ・・・自分の体の、心の変化に・・・) 「そんなこと言われてもわからないよ。神の力なんて言われてもアスカを助けることすらできなかった・・・それに・・・僕は・・アスカを・・・殺そうとした・・・そして死んでしまった・・・」 「そんな僕に力なんてあるわけない!!僕はただ逃げることしかできなかった・・・ただの臆病者なんだ!!」 シンジは俯いたままそう叫んだ。 (いいえ・・・でも確かに今まではそうだったかもしれないわね・・・でもシンジ・・・あなたは本当にただ力の使い方がわからないだけ・・・私はその力の使い方を教えるためにここに来たのよ・・・だからシンジ自分を責めないで・・・) そう言うとユイはシンジにゆっくりとすべるように近寄ると優しくシンジを抱きしめた。 「・・か・・あ・さん・・」 (シンジ・・・これがこの世界で私がしてあげられる最初で最後の償いよ・・・) そう言った瞬間ユイはシンジの身体に溶けるように消えていった。 そしてシンジはすべてを理解した。 ユイがすべてを教えてくれた。 神の力の強大さとその使い方を・・・。 「母さん・・・ありがとう・・そしてさようなら・・・僕はもう一度最初からやり直してみるよ。みんなの幸せのために・・・」 シンジは上を向いてそうつぶやくと両手を広げて身体を十字架のようにすると背中からオレンジ色の十二枚の翼が現れた。まるで天使のような翼が・・・。 「いってきます・・・」 静かにそう呟くと十二枚の翼がシンジを覆うように被さっていく。 そしてすべての翼がシンジを覆いつくすとシンジはその場から消えていた。 そう、サードインパクトを止めるために。 そしてみんなと平和に暮らすために。
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Re: 未来を求めて・・・ ( No.3 ) |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: メフィスト
- 【タイトル】未来を求めて・・・
【記事番号】-2147482069 (2147483647) 【 日時 】06/05/10 03:41 【 発言者 】メフィスト
未来を求めて・・・
すべてが終わりを迎えた世界…。 少年はそこにいた。 そこにはただ赤い海が静かに広がっていた。 すべての生命を飲み込んだLCLの海として一人の少年の目前にその身を湛えている。 少年の名前は碇シンジ。 エヴァンゲリオン初号機のパイロットである。 彼は血のように赤いLCLの海岸で目覚めた。 「…」 目の前には動かなくなった巨大な綾波レイの、まるで刀で真っ二つにしたような顔の片方が横たわっているのを見た。 呆然と、その綾波だったものを見つめていると横から服の擦れる音が聞こえた。 視線を前から、音のした方に移す。 アスカだ。 アスカは右目や右腕に包帯を巻き痛々しい格好でその身を白い砂浜に横たえていた。 瞬間、シンジの脳裏に自分を拒絶し罵るアスカが浮かんできた。 シンジはその身を静かに起こし二号機パイロットであるアスカの上に馬乗りになると苦悶の表情を浮かべそっと両手をアスカの白い首に這わせた。 そして一気に両手に力を込めた。 「う…ぁぁ……」 アスカは僅かに声を漏らすと、そっと右腕をシンジの頬に伸ばす。 そして優しくその頬を撫でた。 「…ぁあ…うぐぅ……うぅ…」 シンジは泣いていた。 シンジは我に返ったのか、そっと首から手を離した。 それから泣き崩れるように体を丸めた。 「気持ち悪い・・・」 アスカはそう一言つぶやくと静かに息を引き取ってしまった。 しばらくしてシンジはアスカの体温が徐々に失われていくのを感じた。
そしてシンジは赤いLCLの海が広がる世界で一人きりになってしまった。 シンジはその真実を否定するかのように自分の殻に閉じこもった。 心を暗闇の奥底に沈めるように・・・。 その傍らには木で作られた十字架があった。 アスカの亡骸がその下に埋まった十字架である。 シンジはすべての気力を失い、生きているのか死んでいるのかもわからない抜け殻の状態になっていた。 だがサードインパクトの依り代として神の子となったシンジは死ぬことすら許されない。 それは終局を迎える際、量産型エヴァンゲリオンと初号機のS2機関から神の力とも呼べる膨大なエネルギーがシンジに流れ込んだ。 生身の人間がその莫大なエネルギーに適応するためにはエヴァや使徒と同じS2機関をシンジの細胞に組み込む必要があった。 そのため彼女はシンジを守るため身体をLCLから人の形をした使徒に近いものに作り変えた。 本人が望んでいなくても…。 「僕はなぜ…生きている…みんな…いなくなってしまった…一人はもういやだ…もう疲れた……」 (…もういいの?…) 「?…だれ…」 (…もう…いいの?…) シンジの頭に響く優しい心地よい声。 それは絶望の淵にいたシンジに僅かな気力を与えた。 「母さん…?」 (…シンジ…もう…いいの…?) 「母さんなんだね…」 シンジは静かにその瞳を閉じてそう呟いた。 その閉じられた瞳からは一筋の涙が流れた。 (…もう…いいの?…) 彼が母と呼ぶその声はもう一度そう呼びかけた。 その言葉をシンジは遮り、彼は自分の中身をすべて出し切るかのように言葉を吐き出した。 「何を言ってるの…もう全部終わっちゃったじゃないか……アスカも…ミサトさんも綾波もトウジもケンスケもみんないなくなっちゃったじゃないか!!!今更何をいってるんだ!!」 消え入りそうな声は徐々に悲痛な叫びに変わっていた。 (…もういいの?…) なおも静かに諭すようにその声はシンジの頭の中に響いてくる。 シンジは崩れるように、泣き叫ぶように言葉を紡いだ。 「いいわけない!!……いいわけないよ!!…返してよ…みんなに会いたいよ…みんなを返してよ……」 (…そう…それがあなたの願いなのね…シンジ…) 絶望の淵にいたシンジはその優しい声に導かれるように上を向いた。 その瞬間シンジの目の前が真っ白になった。 シンジは暖かな白い光に包まれて終末を迎えた世界から姿を消した。
シンジは光のなかで目を覚ました。 「ここは…」 シンジは静かにそしてゆっくと周りを見渡した。 周りは真っ白で光に包まれていた。 上も下もわからない。 自分が立っているのかすらわからない。 そんな不思議な感覚に捕われていた。 (ここは…ここにあって…ない所…) 「ここにあってここにない?どうゆうことさ!…意味がわからないよ母さん!!」 (ここはあなたの心の中…だからここにあって、ないところ…) 「ここが僕の心?じゃあ何で母さんはここにいるの?」 (私は碇ユイ…そう…あなたの母親…今まで初号機の中にいたのよ…シンジを守るために…) (でももうその必要はなくなったのよ…初号機はその使命を終え…私は初号機から解放された…) シンジの目の前に輝く人影が現れた。 徐々にその輝きがなくなると、そこにはユイの姿があった。 「かあさん!!!!」 シンジは驚きのあまりそれきり固まってしまった。 ユイは静かに微笑んで言葉を紡いだ。 (シンジ…私は魂だけの存在…今あなたの目の前に見えているのはただの幻よ…そう…夢…とでも言うのかしらね…) 静かに、そして優しく微笑みながらユイはそういって、さらに言葉を続けた。 (あなたに幸せになってほしい…そう望んできたのだけれど…結局はあなたを苦しめていたのね…) 「母さん…」 (本当にごめんなさい…シンジ…あなたには言葉でいくら謝っても謝りきれないわ…) 「…」 (でも償いはさせて…) ユイの瞳から一筋の光・・涙が零れ落ちた・・・。 (あなたは望んでいなかった…けれど神の力があなたには宿っているわ…その力を使えばあなたの思うとおりのことができるはずよ…そう…時を戻すことも…) そういってユイは顔を伏せた。 「時を戻す…?それに神の力…?」 シンジは自分の両の手の平に目を落とした。 (そう…シンジ、あなたは強大な力を手に入れているの…使い方がまだわからないだけ…でも気づいているはずよ…自分の体の、心の変化に…) 「そんなこと言われてもわからないよ。神の力なんて言われてもアスカを助けることすらできなかった…それに…僕は…アスカを…殺そうとした…そして死んでしまった…」 「そんな僕に力なんてあるわけない!!僕はただ逃げることしかできなかった…ただの臆病者なんだ!!」 シンジは俯いたままそう叫んだ。 (いいえ…でも確かに今まではそうだったかもしれないわね…でもシンジ…あなたは本当にただ力の使い方がわからないだけ…私はその力の使い方を教えるためにここに来たのよ…だからシンジ自分を責めないで…) そう言うとユイはシンジにゆっくりとすべるように近寄ると優しくシンジを抱きしめた。 「か…あ…さん…」 (シンジ…これがこの世界で私がしてあげられる最初で最後の償いよ…) そう言った瞬間ユイはシンジの身体に溶けるように消えていった。 シンジはすべてを理解した。 ユイが自分のために与えてくれた力を…。 神の力の強大さとその使い方を…。 「母さん…ありがとう…僕にできるかもしれない事が見つかったよ…」 シンジは上を向いてそうつぶやくと両手を広げて身体を十字架のようにすると背中からオレンジ色の十二枚の翼が現れた。まるで天使のような翼が・・・。 六対十二枚の翼がシンジを覆うように被さっていく。 そしてすべての翼がシンジを覆いつくすとシンジはその場から消えていた。
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Re: 未来を求めて・・・ ( No.4 ) |
- 日時: 2019/01/04 10:15
- 名前: 未来の者 <vtubfc@yhvgdfjk.com>
- ここで止まってんのか…つまんな
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