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貞本エヴァ STAGE.71「アダムの末裔」/貞本義行
日時: 2009/05/31 00:00
名前: tamb

【タイトル】貞本エヴァ STAGE.71「アダムの末裔」/貞本義行
【記事番号】-2147481942 (2147483647)
【 日時 】06/05/05 20:05
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 ミサトは自室で考え込む。

セカンドインパクトは、間違いなく人の手で仕組まれたものだった
アダム
光の巨人
消えてしまった神様――

エヴァ
アダムより生まれ
人の手で造られた
使徒と同じ力を持つもの

使徒
ゼーレ
死海文書
ネルフ
綾波レイ
ダミーシステム――

「……加持くん」

 彼女は顔を上げて呟く。

「私にも少し見えてきたわ。これから起こるとんでもないことがね」


 本部内の廊下をレイが歩いている。反対側からカヲル。視線を合わせることなくすれ違おうとする二人。
 だがすれ違いざまに、カヲルはレイの手を取る。レイは少し驚いたような顔でカヲルを見る。

「何?」
「別に何も。ごめん」

 カヲルは静かな目で彼女を見つめ、手を離して言った。
 レイは右手で掴まれた左手に触れながら言う。

「あなた、私と同じ感じがする。何故?」

 カヲルは薄く笑う。

「確かに僕らを構成している物質は同じ。姿形もお互いこの星で生きていくために人の子へと行きついた
 でも違うのは、これまで誰と出会い、どう生きて来たかってこと
 君と僕は似てるけど、同じじゃない」

 カヲルが顔を上げ、続ける。

「以前君が僕にそう言ったんだよ
 覚えてないの?」


 零号機自爆の跡に出来た湖の畔に、携帯に耳を当てたシンジが立っている。

――留守番電話一ケン 再生シマス

『碇、僕だよ、ケンスケ
 悪いけど君には会わないで行く
 っていうか、もう一生会うことないかもしれないな
 だってそうだろう?
 僕たち
 笑って会うなんてこと
 もう絶対に無理だもんな
 じゃ、がんばれよ
 さいなら』

23日午後2時18分の伝言デス――

「ケンスケも委員長もクラスのみんなも
 家を失って他の所へ行ってしまった」

 シンジはうつむき、つぶやく。

「誰もいなくなってしまった
 友達と呼べる人は誰も……」
「僕は?」

 いつのまにか後ろに立っていたカヲルが言う。

「僕のことは“友達”って呼んでくれないんだ」

 そんなカヲルのセリフにも、シンジは振り向かない。

「君にはもう、僕しか残っていないのに……。
 セカンドはあのとおり、ずっとベッドで人形みたいに寝ているだけだし
 ファーストは、もう君の知ってるファーストじゃない
 君の知ってるファーストは、君を助けようとして死んだ。かわいそうにね」

 挑発的なセリフにもシンジは反応せず、うつむいたままだ。

「何か言えよ」

 カヲルはシンジの肩を掴んで叫ぶ。

「無視すんな。何か言えよ!」

 シンジが静かに答える。

「君とは、友達にならない
 友達はもういらない
 友達を失う苦しみはもうたくさんだ
 またあの苦しみを味わうくらいなら、
 友達なんか最初からいない方がマシだよ。
 こんなことなら、最初から誰とも出会わなければよかった
 前みたいにひとりのままでよかったんだ」
「僕が聞きたいのはそんなことじゃない!」

 カヲルが叫ぶ。

「僕が聞きたいのは、君が、僕をどう思っているかってことだよ」
「前にも言った。好きじゃないって」
「それは前のことだろう? 今は?」
「放せ!」

 シンジはうつむいたまま叫ぶ。

「放してくれよ。頼むから」

 シンジはそう言って、カヲルの手を払った。
 カヲルは後ろを向き、二人の視線が交わることはない。


 ネルフ本部内。
 椅子に座っているリツコの背後から、ゲンドウが問う。

「何故、ダミーシステムを破壊した」
「ダミーではありません。破壊したのはレイですわ
 司令にとって重要なのは、ダミーシステムではないレイ自身
 そうでしょう?」
「今一度問う。何故だ」
「あなたに抱かれても、嬉しくなくなったから……」
「……君には失望した」
「失望?
 私には最初から期待も望みも持たなかったくせに
 私には何も
 何も! 何も!!」

 嗚咽するリツコ。ゲンドウは去って行く。

「私、どうしたらいいの? 母さん」

 リツコは泣き崩れる。


 ゲンドウが初号機の前に立っている。

「我々に与えられた時間は、これでまた少なくなった
 だが、我々の願いを妨げるロンギヌスの槍はすでにココにはない
 間もなく最後の使徒が現れるだろう
 それを消せば願いは叶う
 ユイ、もうすぐだよ
 もうすぐ、おまえに会える時が来る」

 ポケットから小さなケースを取り出す。それを開くと中にはアダムが入っている。
 ゲンドウはアダムをつまみ上げ、口を開き舌を伸ばす。


 湖に立つカヲル。周囲にはモノリス。

「冴えない顔をしているな。何があった?」

 カヲルは文字通り冴えない顔で答える。

「別に。僕の顔なんかどうでもいいだろ?」
「左様。事は重大だ。急がねばらなん
 ネルフ、そもそも我らゼーレの実行機関として結成され
 我らのシナリオを実践するために用意されたもの
 それが今は一個人の占有機関と成り果てている
 神に等しき力を手に入れようとしている男がいる
 パンドラの筺を我々より先に開け、そこにある希望が現れる前に閉じこめようとしている男がいる」
「希望? あれが人類(リリン)すべての希望だっていうの? あんたたちのじゃなくて?」
「左様。偽りの継承者、黒き月より生まれし我らが人類。
 この地に無節操にはびこり、お互いを理解できぬまま憎しみ合い傷つけ合うことしかできぬ愚かな生き物
 偽りの継承者であるがため、未来に行きづまった我々に残された希望はただひとつ
 神の子として正当な継承者に生まれ変わることなのだ
 正当な継承者たる失われた白き月よりの使徒。その始祖たるアダム
 そのサルベージされた魂は君の中にしか存在しない
 だが再生された肉体は、既に碇の体内にも取り込まれていると見て間違いないだろう
 だからこそ、おまえに託す
 我らの希望を
 期は熟した。行くがよい
 タブリス」

 そしてカヲルは答えた。

「わかってるよ
 最初からそのために
 僕はいるんだから」


続く

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【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.71「アダムの末裔」/貞本義行
【記事番号】-2147481941 (-2147481942)
【 日時 】06/05/05 20:05
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

ゲンドウ、アダムをくっちまったよ(^^;)。
しかしセリフが多いな(笑)。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.71「アダムの末裔」/貞本義行
【記事番号】-2147481940 (-2147481942)
【 日時 】06/05/06 01:27
【 発言者 】なお。

 カヲルはアダムの魂を持つものだったのか。じゃあタブリスって何なんだろう?

 で、だ。ゲンドウが飲み込んだ(TV版では取り込む)のはアダムそのものじゃなく肉体のみで、それはリリスでいうとドグマで磔にされているものと同じもの。つまり抜け殻で、リリスの魂はレイが持っているとなるのかな?

 じゃあゲンドウは、リリスの魂とアダムの肉体を結び付けてサードインパクトを起こそうとしたのか?
(EOEの例のシーンから)

 シンジとカヲルの関係とか、今までのイメージが音を立てて崩れていきます。こりゃTV版の世代とコミック末期に興味を持った若い世代とで受け取り方もかなり違ってきそう。原作コミックとアニメででき上がりが違う作品って結構あるけど、これも最後には別の作品になってしまうのだろうか?


【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.71「アダムの末裔」/貞本義行
【記事番号】-2147481931 (-2147481942)
【 日時 】06/05/06 19:07
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 松田優作のテレビドラマで「探偵物語」ってのがあったんだけど、それの最終回で、仲間が死んでいくのが辛くて、別の街に来て、もう仲間なんか作るまいと思って、でもやっぱり作っちまって、やっぱり死んで……、みたいなのがあったんだけど、ちょっとそれを思い出した。希望なんか持たないほうがってあれで。

>シンジとカヲルの関係とか

 腐女子の方々はお嘆きかもしれん(笑)。カヲルがシンジに興味を持ちすぎだよな。レイ二人目の想いが流れ込んだってのもありなのかも。単にレイを見て人と人との関係に興味を持ったのかもしれんけど。

 でも今回のハイライトはアダムの踊り食いだよ(笑)。これはぜひ絵を見てほしいわな。

mailto:tamb○cube-web.net

メンテ

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