お花見(ボツ) |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: tamb
- 【タイトル】お花見(ボツ)
【記事番号】-2147481881 (2147483647) 【 日時 】06/06/03 17:09 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
現実逃避の一環として、ハードディスクの中を整理していたら、こんなのが見つかって しまったので投下します(笑)。 設定としては拙作「おにくたべたい」 http://tamb.cube-web.net/kikaku/33333/niku_tamb.htm と同じです。というか、たぶん続きです。と、軽く宣伝(笑)。要するにゲンドウ、リツコ、 ミサト、レイ、アスカ、シンジが全員同居しているのですな。で、レイは肉が好きと。
ではどうぞ。
-------------------------------------------------------------------------------- 「来い」
シンジが受け取った手紙には、ただそれだけが書いてあった。
なんだよ、いまさら――
彼はその手紙をくしゃくしゃに丸め、引き裂く。しかし、捨てることは出来なかった。
「父さん……このために……僕を呼んだの?」 「他の人間には無理だからな」 「無理だよそんなの……。出来っこないよ!!」 「早くしろ。でなければ帰れ!」 「じゃ、帰ります」 「あ……ち、ちょっと待って……」
ゲンドウの声が一気に情けないものに変わった。
「そうだ。今日はお鍋だから、早く帰ってきてよ。じゃないと、綾波もアスカもむくれる から」
シンジがゲンドウを振り返って言った。
「あ、ああ。分かっている……」
ゲンドウを一瞥し、彼は再び歩きだす。
背後の巨大なスクリーンには、満開の桜が映し出されていた。
一緒に住んでるのに、いまさら手紙で呼び出す事ないじゃないか。来てみればこんな訳 の分からない用事で……。父さん、何を考えているんだろう……
ぶつぶつと独り言を呟きながら歩く。
「あらシンちゃん、どうしたの?」 「あ、お姉ちゃん」 「本部でお姉ちゃんは止めてって言ってるでしょ」 「す、すいません。ミサトさん」 「で、どうしたの?」 「父さんに呼び出されたんです」 「呼び出し?」 「はい。みんなで花見をするから食べるものを作れって。300人分も」 「花見? 300人?」 「いくらなんでも無理だから断ったんです」 「300人とは正気の沙汰とは思えないわね」 「ですよね」 「何考えてるんだろ。お父さ……司令は」 「全然わかりません」
まだ少し仕事があるというミサトを残し、シンジは帰途についた。
「ただいま」
返事はない。
アスカと綾波、またどっか遊びに行ってるのか……。
玄関に脱ぎ捨ててある二人の革靴を見て、シンジは少し寂しくなった。
ほんとに仲いいな。あの二人……。
彼は部屋着に着替えてベッドに入り、目を閉じた。別にいけないことをするわけではな い。青春とは眠いものなのである。
美味しそうな、いい匂いで目が醒めた。
部屋を出ると、とたんにシンジの腹が鳴った。キムチ鍋だ。
「うわ。美味しそうだね」 「実際に美味しいわよ」
リツコが答える。
「早く食べましょ……」
レイの目は鍋に釘付けである。厳密に言えば、肉団子から目が離せないのである。お肉 大好きである。
「お父さんは? 帰ってくるんでしょ。待ってなくていいの?」
アスカがたしなめるように言う。
「遅くなるから先に食べてろって、言ってたわよ。おか〜さ〜ん、ビール取って〜」 「ミサト……」 「わ、わかったわよ。相変わらずジョークの通じない奴ね」 「お鍋はみんなでつつくからいいんじゃんねぇ。さっさと帰ってくればいいのに。一人で 食べてもつまんないじゃん」 「しょうがないわよ。忙しいんでしょ」
僕に会いたくないのかな……。
シンジは皿を並べながらそう思った。
翌日の放課後、レイの携帯が鳴った。
「お父さんから……」
携帯の表示を見て、レイが不思議そうな顔で言う。
「何かしら」
アスカも少し不審げな顔になる。まさかな、とシンジは思う。
「はい。レイです。……了解しました」 「レイがお父さんに「了解」なんて言ってんのを聞くのも久しぶりね。なんだか司令みた い。あ、司令か……」
アスカが訳の分からぬことを言う。
「父さん、何だって?」 「緊急招集。すぐに本部に来いって。一人で」 「一人で?」
やっぱりそうか。シンジは呆れ果てる。誰に頼んでも無理なものは無理なのに。
「どうしたの、シンジ」 「僕も昨日、父さんに呼び出されてさ」
シンジは事情を説明する。
「300人?」 「そうなんだ。バカげてるだろ?」 「常軌を逸してるわね」 「とにかく、行ってくる」 「ちゃんと断るのよ、レイ」 「分かってる」
「レイ。この日のためにお前はいたのだ」 「そんなことはありません。無理なものは無理です」 「……レイ?」 「失礼します」 「ま、待ってくれ、レイ!」 「今日の食事当番は私です。帰って支度をしないといけませんから」 「レイ!」 「あ、お父さん。今日はあたしの手作りハンバーグだから。ちゃんと夕飯の時間には帰っ て来てね」 「う、うむ……」
突如リナ化したレイに、思わず固まってしまうゲンドウである。恐るべし、レイのキャ ラ使い分けの術。
その日、ゲンドウは帰らなかった。
翌日。
「今日はアタシが呼ばれるかしら」 「たぶんね」
携帯が鳴った。
「グッドタイミング! お父さんだわ!」
アスカは軽く咳払いをして声を整えた。
「はーい、パパ。アスカです!」
声が一オクターブ高い。しかし顔に浮かべているのは邪悪な笑みである。シンジもレイ も呆然とするしかない。
「えー、どうして。もしもし、パパ? もしもし? ……切れちゃった」 「どうしたの?」 「やっぱりいい、だって。がっかり」 「……」
ゲンドウが受話器の向こうで鳥肌を立てていたことを、三人は知る由もなかった。そし てその日もゲンドウは帰らなかった。
さらに翌日。
「じゃあ次はきっとあたしの番ね。あたしは引き受けるわよ。お父さんの頼みだもん」 「お姉ちゃんには頼まないんじゃないかな……」 「なんですって!? ちょっと、どういう意味よ!」
子供たちは白けた目を向けるだけである。 そして、予想通りミサトの携帯は鳴らなかった。
当然のことながら、その日もゲンドウは帰らなかった。
「ねぇ、おかあさ……リツコ」 「なに?」 「お花見の話って、聞いてる?」 「聞いてるわよ。300人分の料理って話でしょ?」 「作れって言われたの?」 「最初はね、マギに料理インターフェイスを付けられないかって話だったの。花見のため に」 「へ?」 「バカげてるでしょ。耳を疑ったわよ」 「……」 「無理ですって言ったの。それで子供たちに話が回ったのよね」 「にしてもさ、どこから300人も涌いてくんの?」 「さぁ?」
「碇……」 「なんだ」
碁盤を間に挟み、差し向かいの二人である。
「どうするつもりだ」 「花見か」 「当然だろう。口から出まかせで300人などと言いおって。くだらんプライドは捨てて、 内輪でやったらどうだ」 「うむ……」
話の発端は冬月だった。常夏と言っていい気候にもかからず、ほんの僅かな季節の変動 を感知して花を咲かせる桜の開発に成功したのである。形而上生物学の粋を集めた成果で ある。
現在ネルフは事実上解体状態に近い。ゲンドウと冬月はそれぞれ元の地位にあるが、そ の他理事と称する人物が外務省などからやってきて、半年もすると去って行く。莫大な退 職金とともに。要するに単なる天下り先、外郭団体である。 仕事のない冬月翁、こんなことで時間をつぶしていたのである。
「そもそも、300人分もの料理と酒を用意する予算はあるまい?」 「うむ……」 「家に帰って土下座して謝れば済むことだろう。いつまでもこの部屋にいられては迷惑な んだがな」 「う、うむ……」
ゲンドウ、哀れである。しかし男たるもの、命を懸けてまでプライドを守らねばならぬ 時があるのである。今がその時かどうかはともかく。
結局、300人による花見は中止になった。そんなに呼ぶ人間がいなかったのである。内 輪の人間をかき集め、30人で決行することに決めた。男ゲンドウ、苦汁の決断である。
彼はチルドレンに対し、30人分の料理ならどうかというオファーを出したが、余裕で断 られた。レイに対しては切り札とも言える「命令だ」の言葉を発したが、軽く「嫌です」 と返され、思わず涙ぐんでしまった。 ものは試しで妻リツコに指令を下してみたが、これも却下された。 完全に進退窮まったゲンドウだが、てぐすね引いて待っているミサトに依頼しなかった のは賢明と言うべきであろう。死人が出る。
やむを得ず業者に依頼することにした。残る問題は予算である。規模が小さいだけに会 費制にすれば良いと考えたが、軽くそれらしいことを匂わせただけで、あからさまに嫌そ うな顔をして、それなら欠席するという者が相次いだ。
やむなくゲンドウは自腹を切ることにした。妻リツコにも秘密でひそかに貯めていたへ そくりである。あまりにも哀れだぞゲンドウ。なぜそんなに花見がしたいのだゲンドウ。
当日は花見日和であった。 乾杯の音頭の後、子供のようにはしゃぐミサト以下ネルフスタッフを見て、ゲンドウは 無理して花見をやって本当に良かったと思った。屈託のない笑顔を見るのが好きなのであ る。人間にとって最も大事なのは、笑えるということであると信じているのである。ゲン ドウ、意外といい奴である。
「シンジぃ、飲んでるぅ?」
喧噪の中、ゆっくりと静かに花を見ながらジュースを飲んでいたシンジに、アスカが絡 む。
「あ、アスカ、お酒飲んでるの?」 「あったりまえじゃん。花見よ花見。ビールくらい飲まなきゃ。やっぱビールはドイツビ ールに限るわね。さすがお父さん、分かってるわ」
冬月とサシで飲んでいたゲンドウ、それを耳にしてニヤリと笑う。ちなみにソーセージ 荒挽きウインナージャーマンポテトジャーマンスープレックス(違)等も大量に用意して ある。
「アスカ、僕たち未成年だよ」 「関係ないわよ。大学の合コンで鍛えたんだから、このくらい水みたいなもんよ」 「大学の合コン?」 「そ。アタシが大学出てるって、忘れたの? ドイツの学生どもはローティーンのアタシ の幼くも魅惑的な肉体の虜。良くわかんないロリコンアニヲタが集まってくるのには閉口 したけど、ま、要するに大きなお友達。なんて事ないわ」
アスカ、すっかり出来上がっているのか暴走気味である。
「ど、ドイツにもアニヲタって、いるの?」 「いるわよ。アニメは日本の花形輸出産業でしょ。アニヲタなんて万国共通。いざとなっ たらアタシに指一本触れられないとこまでそっくり」 「そ、そんな挑発的な……。失礼だよ。アニヲタだって立派な人間だよ。それにこんなの を読んでる人はみんなアニヲタって説が……」 「でもね、シンジ……」
アスカはシンジの耳に口唇を寄せ、小声でささやいた。
「だから、いままでアタシの身体には触れた男は、いないのよ……」 「な……」
シンジが絶句したその瞬間、二人の間を青い稲妻が駆け抜けた。片手には半分以上空に なったバーボンのボトルを、小脇にはチェイサーとして飲んでいたのか数本の缶ビールを 抱えたレイである。彼女はアスカをシンジから引きはがし、アスカを押し倒して言った。
「アスカ……。あたしとのことは遊びだったのね……」 「ち、違うわ。冗談よ。シンジをからかっただけ。アタシが好きなのはレイだけよ。分か ってるでしょ」 「アスカ……」 「レイ……」
レイは泣き笑いの表情になり、アスカにすがりつく。アスカもレイを抱き締め、その細 い髪をもてあそびながら、頬を擦り合わせる。
「えーと……」
18禁になりかねない展開に、シンジは目を逸らした。
「シンジ君、じゃあ君はフリーなんだね?」
目を潤ませて声をかけたのはカヲルである。
「カヲル君……」
シンジは落ち着いた気持ちになった。やはり男同士がいい。 カヲルが手を伸ばし、頬をそっとなでてくるのを受け入れた。
そしてその周辺では。
「先輩」 「マヤ」
「マコト」 「シゲル」
「冬月」 「碇」
「初号機」 「弐号機」
「零号機」 「マギ」
どこもかしこも阿鼻叫喚の惨状である。まともなのは加持にべったりのミサトだけとは、 全く世も末である。
そこに一人の人物が現れた。柳井ミレアその人である(爆)。彼は余りにも悲惨な光景に 思わず目をそむける。そこに、一人のうずくまっている人間を見つけた。作者tambである (激爆)。
「おいっ、この惨状、どう収拾をつけるつもりだっ! 書きたい放題書きやがってっ!」 「……」 「黙ってないで何とか言えっ!」 「こうして黙ってじっとしていると……」
柳井ミレア氏は、tambの異常ともいえるほどの静かな口調に息をのんだ。
「もしかすると小説が終わるかなと思って……」
作者がそう言うからには、この話はおしまいなのである。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481880 (-2147481881) 【 日時 】06/06/03 17:10 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
今とは漢字の使い方が全然違ってて興味深いんだが、この話は謎である。ちゃんとhtml 化までしてあって「お花見(ボツ)」というタイトルが付いている。ということは、2003 年にあったお花見企画用に書いたものだと思うのだが、なぜ急にミレちゃんが出てくるの であろうか(^^;)。 これを柳井氏に送りつけた記憶もうっすらとある。迷惑な話だ(笑)。だが、確かに私は 柳井氏にボツを喰らった記憶があるのだが、それはこの話ではないような気がする。 ではなぜ送ったのか。なぜお花見ボツものに柳井氏が出てくるのか。そもそも本当にお 花見企画用に書いたものなのか? 全てが謎である。メールを調べればわかるような気が するけど、めんどくさいから調べない(笑)。
ちなみにオチは吾妻ひでお氏の漫画からのパクリです(爆)。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481877 (-2147481881) 【 日時 】06/06/03 17:34 【 発言者 】タッチ
土曜日だというのに暇になったので来てみればこんなのが(爆 お花見企画ですか・・・・・ 懐かしいですね・・・・・( ==) あの頃は書きたくなったらいつでも書けたのに・・・・・ 今は連載用アイディアが全部で5つもあるのに一つも書けない(笑 いつか日の目を見ることがあるのだろうか?
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481870 (-2147481881) 【 日時 】06/06/07 23:12 【 発言者 】なお。
これ最初タッチさんが書いたやつかと思ってました。 タッチさんがレスしてて、それを投稿者名と勘違いしたんですな(A^-^;
で、読み進めてておかしいなって思って。←こういうの付いてるしw
>「先輩」 >「マヤ」 > >「マコト」 >「シゲル」 > >「冬月」 >「碇」 > >「初号機」 >「弐号機」 > >「零号機」 >「マギ」
ここでtambさんだと気づいたんだわにわに。 こんなの読んでる時点でアニヲタなのは否定しないw
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481867 (-2147481881) 【 日時 】06/06/08 20:10 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
>お花見企画ですか・・・・・ >懐かしいですね・・・・・( ==)
懐かしいですね〜。お花見ってのはタッチさんが出したんですよね。
>今は連載用アイディアが全部で5つもあるのに一つも書けない(笑 >いつか日の目を見ることがあるのだろうか?
生きていればチャンスはあるでしょう。そう思ってないとやってらんないです(笑)。
>ここでtambさんだと気づいたんだわにわに。
わにわにがツボですな(笑)。しかしなんでここで気付くかな〜(^^;)。 でも実際、本人の気付かないところで影響受けてるのかもしれないですな。タッチさんの作品、結構読んでるしね。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481853 (-2147481881) 【 日時 】06/06/25 03:28 【 発言者 】クロミツ
>お花見企画ですか・・・・・ >懐かしいですね・・・・・( ==)
ほんと懐かしい〜。考えてみれば、あれがなきゃFF小説書いて投稿しようなんて大それた真似はしなかったかもしれない。
>設定としては拙作「おにくたべたい」 >と同じです。 > 前にこのタイトルを最初に見たとき、ブラックなオチを予想してしまったw いや、以前そういうネタのFFを考えたことがあったので・・・(^^;)
>「零号機」 >「マギ」 > このカップリングは納得いかん(爆)。 僕的には零号機のお相手は、無理心中を図ろうとしたゼルエルさんです。
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481851 (-2147481881) 【 日時 】06/06/26 20:10 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
>このカップリングは納得いかん(爆)。
気付かなかったけど、確かにカップリングだ(爆)。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481837 (-2147481881) 【 日時 】06/06/29 23:10 【 発言者 】みれあ
久しぶりに覗いたところ、なにやら懐かしい名前を見かけてしまいました(意味不明
この話、見たことがあるような気もするので受け取ったのかもしれませんしボツ出したのかもしれませんが(笑)、実は古いメールが行方不明っぽいので何とも言えません(涙 というわけでtamb師匠、代わりに調べてください(笑
というわけで眠気には勝てません。疲れました。お休みなさい(意味不明
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481826 (-2147481881) 【 日時 】06/07/01 20:53 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
支障、もとい、師匠という呼ばれ方が非常に懐かしい。でもやっぱりめんどくさいので 調べない(笑)。 ということで、真相は謎に包まれたまま、この作品は恐らくみれちゃんにボツられたの であろうということで終了(笑)。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: お花見(ボツ) 【記事番号】-2147481820 (-2147481881) 【 日時 】06/07/01 21:52 【 発言者 】みれあ
旧iBookにまだかつてのメールデータが残っているとしたら探してみます。なさそうですが…
まぁ、謎に包みますかね(笑
|
|