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『待ちぼうけ』へのお返事SS。
日時: 2009/05/31 00:00
名前: のの

【タイトル】『待ちぼうけ』へのお返事SS。
【記事番号】-2147481784 (2147483647)
【 日時 】06/07/05 21:44
【 発言者 】のの

離さないでもよかった。

ふれあったままでも、許されるらしい。

あとは、軽く笑えるユーモアがあれば。


夏祭り


 疲れた。
 まずいことに、疲れた。走って汗くさくなるのは御免だけど、これ以上遅刻するのはもっと御免だ。
 と言っても速く走れない。浴衣を着ているせいだ、困ったことに。
 母さんのお父さんが着ていたものらしく、先日、そのおじいさんの家の片づけをしたときに発見した。
 ちょうどいいから来週着ちゃおうなんて言って、「じゃあ浴衣のカプルだね」なんて馬鹿っぽい会話して、挙句このザマだ。大馬鹿野郎だ、俺って。

 それもこれも全部とは言わないけど、トウジにこの責任のいくらかを背負わせたい。あの好漢は男らしいゆえにウブな助平という性格をしているせいで、花火大会なんていう軟派なところは行きたくないとゴネ、行きたいとゴネる洞木さんと喧嘩して、でも実はトウジは浴衣姿は拝みたいと狗根性丸出しで、しかもそれを洞木さんに言ってしまうものだからさあ大変。ドジョウが出てきてこんにちはって感じなわけでして。

 それの仲裁をして、洞木さんから彼女に説明してもらって、それもあって「じゃあ待ってるからね」と、一応やわらかな対応をしていただいたのだけれども、付き合いはじめてひと月半という時期にこういうことになるのは個人的な理想(妄想)からは遠い。

 やっと着いた。
 入り口の大きな木の下で、彼女が待っている。明かりの灯った提灯から少し離れた暗がりにいるせいで、よっぽど暗いところにいるように思えた。


「ごめん、お待たせ」


「遅かったね」
「……ほんとごめんなさい」
「たこ焼きおごってね」
「喜んでそうさせていただきます」
「やったぁ」
 早速学校内の知りあいに会う。
 というか知り合いだらけだ。思えば大きい花火大会でもなし、そういうもんか。そういうもんか?っていうくらい先輩・後輩・同学年、職員同士と、まあ異性同性の組み合わせのちがいは様々だけども多い。小学校のときの顔見知りまでいる。
 彼女にそれを言うと、「そうね」とだけ短く言った。「人前でイチャつく人たちはわからない」が持論の彼女なので、「行こ」とだけ言って、ゆっくり歩きだした。

「そういえば、昨日ヒカリに怒られた」
「なんて?」
「秘密」
「なんで」
「なんでも」
 意地悪か。やっぱり機嫌悪い。どうしよう。経験不足がモロに出た形です、ニッポン。そんな感じ。
 こんなときに、いろいろ笑い飛ばせるだけの余裕があればいいんだけど。

「花火、何時からだっけ」
 彼女が訊く。彼女が左腕にいつも巻いている時計も、今日はない。そのかわり、和柄の布でできた黄色い腕輪というかミサンガ的なものというか、そういうものをつけていることに気がついた。
「六時半。あと、四十分くらいかな」
「そっか……」
 なにごとか考えている。なんだかなあ。
 たこ焼きやの前を通りすぎる。ちらっと彼女を見ると、なんということもなし、という表情。こういうときが一番恐い。

「ねえ、アレ、やっていっていい?」
 射的屋。珍しいチョイス。
「え、ああ、べつにいいけど」
「おごりね」
「え?」
「そりゃあ、ね、遅刻したでしょ?」
「はい……」
 三百円で、二発。なんて暴利な。いいけど。銃をかかえた彼女に訊く。
「しかし何故また射的を」
「これからなにかいいことあればなあ、って」
「はぁ」
 ぱしん、ごとり。ぱしん、ごとり。二発命中。プラモとぬいぐるみ。ザ・無用の長物。捨てづらい置きづらいのツートップだ。
 彼女は外れてわめく兄妹に話しかけ、それをあげた。子どもたちの母親が「すいません、ホラ、ちゃんとお礼言いなさい」なんて言ってる。
 彼女は笑って兄妹に手を振る。それからまた無表情に近くなって、「すっきりした」と言った。あんまりそうは見えない。

 神社でいちおうお参りして、携帯電話の時計を見る。六時二十分。
「ねえ」
 彼女が無言でこっちを見る。僕は参拝客が途切れたところで立ち止まって、
「このへん混んでるし、別のところで花火見ない?」
「別のところって?」
「向こうの川の、河川敷か、橋かどこかで。友達も見るしさ、なんか、ね……」
 どうにも知り合いと会うと恥ずかしいという理由と、静かなところで謝ったほうがいいのではと考えた結果だ。
「うん」
 彼女は素直に頷いてくれた。とりあえずホッとして、わき道からお祭りムードを離れる。
「そういえば」
 僕が言う。
「浴衣、似合ってるね」
「……ほんと?」
「うん」
「ふふっ……ありがと。」
 ようやく彼女が笑ってくれて、ホッとする。
 浴衣も提灯も見えなくなってすぐ、彼女が手を握ってきた。そっと握り返す瞬間、すごく幸せな気分になれる。

 結局河川敷の上の、遊歩道の端に座った。花火が上がる。
「すごいねー」
「うわ、時間差……」
 二人とも、驚きながら、喜んだ。僕の右手は彼女の左手に重なったまま。
 何十分かの花火を楽しんで、音と光の余韻に浸っていると、彼女が肩に頭を預けてきた。
 心の中で、手に『人』という字を百億回書いて自分を落ち着かせ、もう一千億回をそれを繰り返して、右手を離して彼女の腰にまわした。

 その右手で髪をかきあげる。彼女がこっちを向いて、目を閉じた。

 ゆっくり唇を重ねる。彼女との二度目のキスは、前よりも長かった。

「恥ずかしい」

「うん」

「シンジも?」

「そりゃ、ね……レイと同じだよ」

 また、キスをする。

 彼女は俯いて、黙ってしまった。


 しばらく、たがいに無言。言葉にするのももったいないような時間。

 どうやらこれが、そういうものらしい。


……


……


……


……


……


……


「あ、たこ焼き」


【タイトル】Re: 『待ちぼうけ』へのお返事SS。
【記事番号】-2147481783 (-2147481784)
【 日時 】06/07/05 21:47
【 発言者 】のの

なんつってな。
こんなの書いてみました。tamaさんの浴衣レイから妄想発展。
それこそラフな構成なので、適当に楽しんでいただけるとありがたい(笑)

構成上意識したのは、互いの名前は最後に出すことと、知り合いがいないとなると手をつないでくるレイという、
この二点のみ。


【タイトル】Re: 『待ちぼうけ』へのお返事SS。
【記事番号】-2147481758 (-2147481784)
【 日時 】06/07/07 20:01
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 投下してんじゃん(爆)。
 まぁ投下するかメールで送りつけるかしかないわけだけど。これの場合は。

>知り合いがいないとなると手をつないでくるレイ

 萌え(笑)。
 前にこの掲示板で、人前だと碇くん綾波で、二人っきりになるとレイシンジだと激萌え
だみたいなネタがありましたわな。この二人はもうちょっと踏み出してるかな。

>ぱしん、ごとり。ぱしん、ごとり。二発命中。

 訓練で鍛えました、みたいな(笑)。

 たこ焼きを食べてる描写がない。「たこ焼きやの前を通りすぎる。」だから、きっと食
べてない。でもこの二人なら、ラストの「あ、たこ焼き」がたこ焼き味のキスって意味で
も激萌え。というか、そういう意味なんじゃないの? だったらそういうシーンを書いて
おかないと。「彼女がたこ焼きを頬張りながらこっちを見る。」とか。
 外してるかな。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: 『待ちぼうけ』へのお返事SS。
【記事番号】-2147481757 (-2147481784)
【 日時 】06/07/07 22:44
【 発言者 】なお。

> 彼女は笑って兄妹に手を振る。それからまた無表情に近くなって、「すっきりした」と言った。あんまりそうは見えない。

もう怒ってはいないんだけど、まだ怒ってるってフリ。拗ねてるっていうのかな。
人前でイチャつくのは〜といってもやはりイチャつきはしたいようで、気を引こうとしているようにも見える。
クールなようでそうでもなさそう。そういうところがかわいい。


> 心の中で、手に『人』という字を百億回書いて自分を落ち着かせ、もう一千億回をそれを繰り返して、右手を離して彼女の腰にまわした。

やっぱここになっちゃうな。ハイライトの部分だし。
これでもかってくらいの覚悟を大袈裟に書く事で見事に表してますよね。すごくいい。

たこ焼きについてはtambさんの書いたまんま。
これは味でしょう、たぶん。


【タイトル】Re: 『待ちぼうけ』へのお返事SS。
【記事番号】-2147481617 (-2147481784)
【 日時 】06/08/09 04:45
【 発言者 】tama

いつもありがとうございます。
レスがにっちもさっちも遅くてすみません・・・!

ラフな練習用というか、いろいろ表現を悩んでいる絵がこんな日の目にあうともう、もうなんというか本当申し訳ないです。
夏祭り関連の行事は5月〜8月までご近所で絶えることなく行なわれているので、ネタがつきませんので、正式な絵をきちんと書きたいなと思います。いつの日か(ーー;

祭のどことなくただようなんともいえない懐かしいような雰囲気が好きです。
でも気がつくとあっというまにほおずき市がきそうですよ・・・そしてすぐに酉の市がきて、1年が終わるような・・・!

メンテ

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