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貞本エヴァ STAGE.72「最後のシ者」/貞本義行
日時: 2009/05/31 00:00
名前: tamb

【タイトル】貞本エヴァ STAGE.72「最後のシ者」/貞本義行
【記事番号】-2147481666 (2147483647)
【 日時 】06/07/28 21:04
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 湖の水面に壊れた天使の象がある。その上に渚カヲルが立っている。


「ダメだわ」

 それを車の中から双眼鏡で見たミサトが言う。

「なんかつぶやいてるみたいだけど、ここからじゃ唇の動きが読めない」

 双眼鏡を外し、前を向く。

「それにしてもひとり言を言うためにこんな朝っぱらから散歩なんて、危ないヤツね。
 ……で、彼のデータ、入手できた?」
「ええ、伊吹二尉から無断で借用してきたものです」

 助手席の日向が答え、PDAのようなものを差し出す。

「すまないわね。ドロボウみたいなことばかりやらせて」

 ディスプレイを見るミサトの表情が変わる。

「なにこれ」
「マヤちゃんが公表できないワケですよ。理論上ありえないことですから」
「エヴァとのシンクロ率を自由に設定できるとはね。しかも自分の意志で……。
 そろそろはっきりさせないといけないわね。彼の正体を」
「そう思ってちょいと諜報部のデータに割り込みました」

 やや得意げに日向が言う。

「あっぶない事するわね」
「そのカイはありましたよ。
 リツコさんの居場所です」


 独房。リツコの背後にミサトが立っている。

「よく来られたわね」
「聞きたいことがあるの」

 リツコは椅子に座ったまま顔を上げようともしない。

「ここでの会話、録音されるわよ」
「構わないわ」

 ミサトが無表情のまま尋ねる。

「あの少年、フィフスの正体はなに?」
「渚カヲル」

 リツコの表情も変わらない。

「彼の誕生年月日がセカンドインパクトと同じなのは、たぶん、あの日、あそこで
 最後に生まれた使徒だからよ」
「まさか」

 ミサトの顔色が変わる。

「すべての使徒は、アダムから生まれたというの?
 あの日、人はアダムに何をしたの?」
「人は、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元(もど)そうとした。
 その結果があのセカンドインパクト。
 事前に引き上げられたあなたのお父さんの調査隊のデータの中に、何らかの形で人の遺
伝子を使おうとした痕跡があったと聞くわ。
 もしそれが秘密裏に実際に行われていて、その時生まれた使徒が人の形をしていて、そ
れを委員会が手に入れたとしたら。
 すべてのつじつまが合うとマギは言っているわ」


 ケージ。弐号機の前にカヲルが立っている。

「時間だ。じゃあ行こうか。アダムの分身。
 そしてリリンの下僕(しもべ)」

 カヲルが一歩足を踏みだし、そのまま宙に浮いた。


「エヴァ弐号機起動!!」

 司令塔で日向が叫ぶ。ミサトは一瞬呆然とするが、すぐに立ち直る。

「どういうこと!? アスカは!?」

 ディスプレイにアスカが映し出される。

「303病室です。確認済みです」
「じゃあフィフス?」
「いえっ」

 マヤが答える。

「無人です。弐号機にエントリープラグは挿入されていません!!」
「そんなバカな……」
「セントラルドグマにA.T.フィールドの発生を確認!」

 日向が叫ぶ。

「弐号機!?」
「いえ、パターン青!
 間違いありません! 使徒です」

 ――やはり、フィフスか


 モノリス。

 ――人は、愚かさを忘れ、同じ過ちを繰り返す。
   自ら贖罪を行わなければ人は変わらぬ。
   我々の手で未来へと変わるしか道はない。
   碇。
   初号機による遂行を願うぞ。


 弐号機はカヲルの両手で包むようにして降下を続ける。

 『目標は第4層を通過、なおも降下中!!』

 アナウンスが響き、青葉が振り向く。

「だめです。リニアの電源は切れません」
「目標は第5層を通過」

 ミサトは考え込む。
 日向の報告に、冬月が呼応する。

「セントラルドグマへ続く全隔壁を緊急閉鎖!
 少しでもいい、時間を稼げ!」

 指令に従い、隔壁が次々と閉鎖される。

「まさか、ゼーレが直接送り込んでくるとはな」

 ゲンドウの後ろで冬月が言う。

「老人たちは予定をひとつ繰り上げるつもりだ。我々の手を使ってな
 だが、思い通りにはさせん。
 エヴァ初号機に追撃させる」
「はい」

 ミサトが振り向き、静かに答えた。


 弐号機は降下を続ける。

「装甲隔壁はエヴァ弐号機により突破されています。
 目標は第17隔壁を通過!!」

 青葉が報告した。

「シンジ君」

 ミサトが言う。

「目標の最下層の侵入は絶対に阻止して。どんな方法を使ってもよ」
「目標って……弐号機が使徒なんですか?」

 プラグの中でシンジが問う。

「いいえ。本当に阻止しなければならないのは、弐号機を操っている方よ
 渚カヲルという、人の形をした使徒を殲滅するの
 いい? 聞こえたわね?」
「ちくしょう……なんでなんだ」

 うつむくシンジ。

「余計な事を考えているヒマはないわ。このままだとサードインパクトが起こるわよ」
「なんでなんだ
 なんでなんだ
 なんでなんだ」

 シンジが叫ぶ。

「こんなことはもういやなのに
 なんでなんだよッ!」

 シンジはコントロールレバーに拳を叩きつける。


 『エヴァ初号機ルート2を降下
 目標を追撃中』

「第9層に到達。目標と接触します」

 ――いた!!

「待てっ
 渚カヲルッ」

 カヲルが振り向く。

「遅いよ。来ないのかと思った」
「なんでなんだ!
 使徒のくせに! 敵のくせに!
 どうして僕になれなれしく近づいたりしたんだ!」

 手四つの体勢でもみ合う初号機と弐号機。それを見つめるカヲル。

「どうせ戦うことになるのに
 なんでそんな余計な事したんだよ!」

 弐号機がプログナイフを出し、初号機も応戦する。

「誰も乗っていないはずなのに
 君がやっているのか!」
「エヴァは僕と同じ体でできている。僕もエヴァも同じアダムから生まれたものだからね
 魂さえなければ同化できるんだよ
 この弐号機の魂は、今、自ら閉じこもっているから」
「じゃあやめろよ! 僕は君と戦いたくなんかないんだ!」

  カヲルが薄く笑いながら言う。

「なんで? 僕のこと好きでもないし、友達とも思ってないんだろ?」

 弐号機のナイフが切断され、初号機のナイフが勢い余ってカヲルに向かう。

「あ!」

 だがその刃先は阻まれた。

「A.T.フィールド!!」
「なんでそんなにおどろいてんの?」

 続く

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【タイトル】Re: 貞本エヴァ STAGE.72「最後のシ者」/貞本義行
【記事番号】-2147481665 (-2147481666)
【 日時 】06/07/28 21:04
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

叫んでばっかり(笑)。

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