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惣流アスカの退屈(前編)
日時: 2009/05/31 00:00
名前: みれあ

【タイトル】惣流アスカの退屈(前編)
【記事番号】-2147481590 (2147483647)
【 日時 】06/08/18 14:00
【 発言者 】みれあ

 アンニュイな昼下がり。
 扇風機が全力回転する傍ら、チェス盤を舞台に僕と渚君の頭も全力回転…というのは言いすぎ。なにしろ渚君はあまりに弱い。もしかしたら彼は本気を出すのを面倒くさがっているんじゃないだろうか?彼なら有り得る。
 僕はナイトを進ませると淡々とチェックをかける。勝ったな。
「チェック」
「いやぁ、また負けてしまったね。完敗、完敗だよシンジ君。やはり君はチェスが様になるね」
「渚君が弱いだけでしょ」
「その謙遜する笑顔も美しい。君はなんと罪な男なんだろう」
 渚君が男のくせにえらく白く細く美しい指で僕の顎を撫でる。僕だってその仕草が特段嫌なわけじゃないけれども、やっぱり男同士というのは良くないですよね。世の中モラルがあるんだから。やんわりと渚君の手を払うと、彼は少し潤んだ瞳で「駄目かい?」悪いけど駄目。
「あ゛ー、またそうやって神聖なSAS団の部室で汚らわしいホモごっこはやーめなさーい!」
 アスカが怒鳴る。まったく、何が「神聖なSAS団」なんだか。アスカの暇つぶしのために存在するSAS団のどこが「神聖」なんだよ、と言いたいところだけど言っても聞かないことは既に何度となく確かめられているので沈黙。綾波がページをめくる微かな音と、ポットが働く音だけが少し響く。
「まぁいいわ。今日のところは面白いイベントを見つけてきたからこのアタシの寛大さに免じて許してあげるわ。感謝なさい!」
 そう言いながらアスカがポスターをどんっと広げる。どうやらその辺の電柱あたりから勝手に剥がしとってきたような気がするけれど、今更そんなことにツッコミを入れるほどSAS団も馬鹿ではなく、その代わり山岸さんが素っ頓狂な声を上げた。
「や、野球大会ですか?」
「そう、そうよ!まさに野球大会だわ!」
 またこの流れか、と溜息を吐く僕。毎度お馴染みのSAS団示威行為という奴だ。簡単に要約すれば、地域のイベントにSAS団として参加、驚異的な成績を残しSAS団の存在を強くアピール。そして皆世界中の謎を捜し求めるSAS団の存在を知り、謎がどんどん集まってきてアスカがウハウハ――尤も、この示威行為が成功した例はない。
「大会は今週の日曜日!ちょうどこの時期は本職の野球部は夏の大会だかで出払っているわ。まさに絶好のチャーンス到来!」
 ちなみに、今日は金曜日。せめてもう少し早いタイミングで思いついてくれればいいものを。
「いやー、流石は惣流さん。まさに素晴らしい。SAS団をアピールするまたとないチャンスですね」
 渚君がいつものにこやかな笑顔でパチパチと拍手を送る。ますますアスカがふんぞり返る。
「ところで」
「何かしら?」
「野球というのは確か九人でするスポーツではありませんでしたっけ」
 渚君のもっともなツッコミが入る。僕と山岸さんは端っこの方で「そうそう」と頷く。僕ら二人とも、アスカに振り回され続ける日々の中の数少ない休息となるべき週末を侵されたくはないのだ。しかしアスカは無情。
「当たり前じゃないの、助っ人を集めてくるに決まってるじゃない!」
 要するに、その助っ人集めは僕の仕事というわけだ。僕は溜息をアスカに分かるように大きく吐いた。
「そう、バカシンジが三人、マユミちゃんが一人集めてくれば全部で九人になるわ!集めてきなさいよこのバカシンジ!」
 三人。これはちょっと予想外。二人ならいつもどおりトウジとケンスケでいいんだけれどもな、と考える僕はもはやツッコミを入れる気も失せていた。
「じゃあ、明日の朝九時にメンバー揃えて河川敷に集合。以上!SAS団の素晴らしさを見せてやるのよ!解散!」
 胸を張るアスカを尻目に、綾波は黙々と「人は見た目が9割」を読み続けている。どういう中身なのかは知らないが、その筆者とアスカで対談でもすればSAS団のちょうどいいアピールになるんじゃないだろうか。

****

 当然のように助っ人集めは難航を極めた。ミス壱高候補トップ3(内面除く)揃い踏みのスポーツ姿をちらつかせればトウジとケンスケが食いついてくるのは完全に予想通りだったわけでその点は安心したのだけれども、授業中以外はSAS団に拘束されきっている僕にそれ以上の友人関係を構築する余裕というのはさっぱりなく、それ故貴重な週末を費やしてくれるような友人は当然のように見つからなかった。
 このまま集まらないと僕はまたアスカに罵詈雑言の限りを尽くされるのだろう。彼女の暴言のレパートリーにはつくづく感心するけれど、国語的に見ると決して高度な表現ではないあの雑音の中に身を置くのは精神的にも肉体的にも耐え難い。どうしたものか。
 僕は意見を求めるようにペンペンを抱き上げたけれど、ペンペンはいつもの通りクワックワッと鳴くだけでマスコット以上の役割はやはり望めず諦めた。
「母さん、晩ご飯まだ?」
「できてるわよ。早くいらっしゃい」
 仕方なしに母さんを呼んではみたけれどもどうというわけでもないし。母さんがアスカのつきあいをやるほど碇家は家族ぐるみでSAS団熱心ではないし。渚君にでも頼めば最悪数あわせは出来るだろう。そう諦めかけて食卓についたところでいつも通りの黒服の父さんが珍しく「シンジ」と話を振ってきた。
「何、父さん?」
「野球の参加メンバーは決まったのか」
 唐突に聞かれた僕は「え?」と答えるよりも箸でつまんだコロッケを取り落とさないように注意しなければならなかった。なんでそんなこと知ってるんだよ。
「問題ない。それより質問に答えろ」
 普段夕食の空気が重いのは父さんと会話できないからだと思っていたけれど、撤回したい。どうやらこの人は喋るだけで食事を不味くする特殊能力でも持っているらしい。今度父さんもSAS団に入ればいいと思うよ。変人なら歓迎されるだろうからさ。そう言い返そうとしたけれども、父さんとアスカが結託することを考えた瞬間悪寒が背筋に走り今度はコロッケをみそ汁へとマグマダイブさせそうになってしまった。
「……そうか。ならば止むを得ん。私が出よう」


 コロッケがみそ汁の器へと落ちる音が静かに響く。母さんは笑ってこちらを見ている。父さんは突然立ち上がると下手なシャドウピッチングをしてみせる。


「明日は練習で明後日が本番だそうだな。服装も考えておかねば」
 唖然とする僕を尻目に、父さんは苦手なホウレン草だけをきっちり皿の上に残して書斎へと消えていった。
 神よ。なぜこのように残酷な仕打ちをなさるのですか。そうつぶやきかけて渚君がいつか言っていた台詞が頭をよぎる。
「僕たちの中には、彼女を『神』と呼ぶ人もいるんだ。少し惣流さんには大仰だけど、意味するところはそんな感じさ」
 これも全部あのSAL神様の思うままなのだろうか。だとしたら世も末だ、と僕は何度目かわからない溜息を零した。

*****

 河川敷。それは練習場所不足に悩む壱高運動部にとって貴重な練習場所の一つだ。平日週末を問わず練習場所を割り当てられなかったクラブがそれはそれは真剣に練習をしている。
 しかし本日はその大半のエリアに工事現場用の赤いコーンで陣取りがなされており、一つ一つに丁寧にも「SAS団活動敷地」と書いてある。要するに土地の略奪。相も変わらぬ傍若無人っぷりである。
「お、おはようございまぁす」
 相も変わらずアスカの思いつきのコスプレに付き合わさせられている山岸さんがおっかなびっくりというか単に羞恥心というかそういう絶妙な声色で挨拶する。その少し恥じらいながらも微笑ましく挨拶してくれる山岸さんに男達はみんなメロメロですよ。たとえ山岸さんが超ミニナース服を着せられていたのだとしても。すでにケンスケのカメラはフル回転しているし、このテの格好を見慣れていない(見慣れている方が変な話だ!)トウジに至っては、鼻の下伸びきってもう馬だか鹿だかわからない顔になっている。あとでケンスケのカメラは没収しよう。いや決して邪な考えじゃなくて単に山岸さんのコスプレ写真を流出させたくないだけでして。
「鼻の下、碇君も伸びてる」
「え?」
 綾波がいつも通りの制服姿のまま本から顔を上げずに冷静に一言。この人はもしかして制服で野球をするつもりなんだろうか。そう疑問に思ったけれども、だからといって綾波が運動に適したパンツルックの私服をもっているのだろうかと思うとそれも疑問。制服姿でいることにツッコミなんていれようものなら次は体操服で来かねない。それはそれで目の保養になるのかもしれないけれどやはりよくないような気がする。
「鼻血まで出てるわ」
「ご、ごめん」
「嗚呼、シンジ君。鼻血が出るまで僕のことを想っていてくれるなんて…僕はなんと罪なんだろうか」突然渚君が僕と綾波の会話の中に割り込んでずいっと顔を近づけてきた。5cmと間隔は空いていない。僕は手を取ろうとする渚君を強引に押しのけながら「別に渚君のことを考えてた訳じゃないよ」
「じゃあ誰なの」僕が何とかして引き剥がした渚君には目もくれず僕を見ていた綾波がいつもより少し低く怖い音色で聞く。
「綾波も落ち着いて」そう答えるので精一杯だ。この人は普段話さないだけに、いざこういう間合いで話されるとどう対処したものやら。
「お、SAS団の集まりってのはここでいいのかな? ヤッホ〜!」
 突然脳天気に明るい声が響く。僕は殺気立ちかけていた空気が少し和んだことに一安心して、他の皆も何事かと声の主の方を見る。ショートカットで茶髪の高校生の女の子がこっちに手を振っている。多分状況と人数的に察すると山岸さんが頼んだ助っ人だろう。
「マユミちゃん、そのコスプレかっわいい〜!」
 やってきた茶髪少女(仮)は山岸さんのコスプレ姿に興奮して飛びついている。飛びつかれてようやく山岸さんは状況の整理に成功したらしく、頬ずりする茶髪少女(仮)を押しのけスカートの裾を直して口を開いた。それにしてもやたらと他人に接触する人が多すぎるような気がする。
「や、野球の助っ人ということで来てもらった私のクラスメイトの霧島さんで…す」
「どうも、ご紹介にあずかりました二年四組霧島マナで〜っす。SAS団のことはいつもマユミちゃんからいっぱい聞かせてもらってます。よっろしくおねがいしま〜す!」
 元気だ。とてつもなく元気だ。それこそアスカと並んでも負けないんじゃないかという元気全開っぷりを見せて早速飛び回っている。けれども僕は一つふと疑問が浮かんで他の人に聞かれないようにこっそり山岸さんに耳打ちした。
「霧島さんって、ただのクラスメイト?」
「あ、ええ。この時代のお友達です」
 それを聞いて少し安心。これ以上未来人やら超能力者やらが増えようものなら、間違いなく一般人の僕には耐えられないだろう。それにしても、僕の身の回りで起こるトラブルの一番の震源はまだ来ていない。集合時間から優に三十分は遅れているじゃないか、首謀者が遅れるなよ、とは多分誰もが思っているだろうけど口にしない。
「Gutenmorgen, jeder!」
 来た。我らが団長様が野球道具を一式乗せた一輪車を押しながらドイツ語(推定)で爽やかにご挨拶する。
「野球部との交渉がちょぉっと長引いちゃったわ〜。結局快く貸してくれたからまぁいいけど、SAS団が世界を制圧したら野球部にはお灸を据えてやらないと」
 さも自分が正当だったかのような口ぶりでアスカが呟く。僕は思わず渚君と目を合わせる。果たして野球部は無事に存続できるのだろうか。興味と諦観が半々の渚君が声に出さず『何とかするよ』
「で、メンバーは全員揃ったの? バカシンジに友達が三人もいるか、アタシも頼んでから心配だったんだけど」
 それなら僕に三人も助っ人を頼まないでよ。しかし見よ。ひい、ふう、みいと指さし数えるアスカに、僕は0.11%の得意気に、99.89%のゲンナリ感。ノルマ通りの三人はきっちり呼んできたけれど、その三人目がどうして父さんになったのかは僕が聞きたいくらいの不可思議だ。アスカがどう反応するかと気になって見ていると、先手をとったのは意外にも父さんの方だった。
「グーテンモルゲン。惣流アスカ君と言ったな。宜しく頼む」
 一瞬二瞬気まずい沈黙が流れる。アスカが僕を睨み付けている。そりゃあ僕の責任かもしれませんけれどね。いきなり黒服――結局父さんはいつもの黒服だ――で髭面の中年オヤジ連れてくるなんて常識はずれなのかもしれませんが。それでもSAS団の全体の奇抜性からすれば取るに足らないはずだ、と心の中で強弁しつつ、いつも僕の強弁は内心のみに終わる。
「僕の父さん。見た目はちょっと怖いけど、意外とスポーツ好きなんだ。ちょうど運動する機会が欲しかったらしいよ。ああ見えても中学校の時は野球チームに入ってたらしいからさ、ほら、意外と期待できるんじゃないかな…と思って…」
 嘘、欺瞞。事実は「見た目はちょっと怖い」までだ。全ては父さんのでっちあげたでたらめ。息子にそんな嘘言わせて息子の友達の前でイイカッコしてどうするつもりなんだろう。
 食事中に父さんが発言したときのそれと同じ陰鬱とした空気がどんどんと広がっていく。さっきまでさんさんと照っていた太陽も雲間に逃げ出さんばかりの勢いだ。どうしたものか。
「そ、そーなの。そ、そ、それなら心強いわ。じゃあ早速練習ね!準備運動は5分!それが終わったらまずは地獄の千本ノックからよ!」
 アスカは意外にも早く立ち直り、顔は引きつっていたけれど元気よく飛び出した。僕とトウジはアスカが強奪…もとい拝借してきた硬式球を手にしたまましばし沈黙。
「なぁセンセ、確か野球大会って軟式野球やったんとちゃうんか?」
「アスカのことだから、軟式野球と硬式野球の違いを知らないだけだと思うよ」
「ええんかいな、そんなんで。大会出よう言い出したのは惣流やろうに」
 僕は無言のままストレッチを始めた。

****

 地獄の千本ノック、打撃練習二時間、その他諸々。アスカ監督の提唱した練習メニューが終わった頃にはSAS団の面々は完全に疲れ果てて倒れていた。
 SAS団にとっての収穫は僅かだった。自称スポーツマンのトウジは一応それなりにこなしてくれるので助かるけれど、完全に文化系の僕やケンスケは役立たずもいいとこ。霧島さんも運動が苦手なわけではないけれどいかんせんいきなり一日の練習で野球をこなすにはセンスと能力不足。山岸さんにはチームのマスコット以上の役割を望むのはあまりにも酷だった。
 そうなると必然的に期待はスーパー宇宙人の綾波と何でもできそうな渚君にかけられたのだけれども、二人ともどうしてなかなかといった案配だった。綾波はホントに無関心で、守備練習なら直撃コースのボールだけをグラブではたき落とし、打撃練習でもど真ん中打ち頃のボールすら手を出さずアスカの罵声もどこ吹く風。渚君はいかにも何でもできそうな涼しい顔をして……意外とできない。不得手というわけでもないけれど、凡なのだ。彼が万能人間じゃなかったところで僕はいっこうに困らないのだけれど、彼は涼しい顔してできないのだから少し癪に障る。まぁ余談。

 しかしそんな中、予想外の活躍を見せた男がいた。
 その男は守備練習ではまったくもって役立たずであることを露呈し周りの溜息を誘ったくせに、打撃練習になると突然頭角を見せだしたのだ。
「いっくわよ!」
 監督兼コーチ兼エース兼打撃投手のアスカの速球が投げ込まれる。女子高校生が投げるにはもったいない球威だ。そもそもこんなピッチャーが全力で投げる打撃練習というもの自体が疑問だけれども。
 しかし黒服長身髭面の男は借りてきたボコボコの金属バットをクラウチング気味に構え、大きなテイクバックから速いスイングで速球をしっかり捉えて振り切る。打球は美しい放物線を描き、遙か彼方へと飛んでいく。…ボールを拾いに行くのは僕だけど。
 そう。誰であろう碇ゲンドウその人、僕の父さんは意外にもバッティングに関してはアスカ以上のパワーヒッターぶりを見せつけ皆に衝撃を与えた。父さんがこんなに打撃がうまいとは僕ですら思わなかった。
「いったいセンセの親父はん、何者なんや」
 僕が聞きたいよ、トウジ。
 僕ら二人が溜息を零しているところに、また大きな金属音と放物線が飛ぶ。
「ほぉらバカシンジ、ボール拾ってきなさ〜い! ボールはあんまりないんだから、なくしたら承知しないわよ!」

「う〜ん、あんまり芳しくないわね」
 倒れ果てたSAS団の面々を前に、不機嫌そうなアスカが呟く。誰も聞いちゃいないよ。
「ホントならこれからもう三時間ぐらい特訓したいところなんだけれど、明日の試合に疲れを残しちゃいけないから今日はこの辺で解散にするわ。後はアタシが家で作戦をみっちり考えてくることにしたから」
 作戦で補えないほどの実力の穴がそこらじゅうにあるんですけど。誰も聞いちゃくれないか。
「打順は? データ的に言うならやっぱり一番に出塁率の高い…「アタシが決めるわ」
 やっぱりケンスケの意見は顧みてもらえない。哀れ。
「打順もポジションも今日の練習の様子からこのアタシが判断するわ。期待してなさいよ!」
 どう期待すればいいのやら。
「それじゃあ、明日の試合ではSAS団員諸君がSAS団のプライドを持って戦ってくれることを期待して、解散!」
 無茶を押しつける我らがアスカ様の解散宣言をもって、今日のところ僕らは解放された。
 アスカが去っていったところで、渚君が携帯電話を手に取った。メールを読んでいたのかしばらく画面を見つめていたが、らしくない「くそっ」という吐き捨てる呟きとともに携帯を畳み、僕と綾波を手招きする。ケンスケやトウジ達に気を遣って、みんな小声。
「これはよろしくない事態だね。やはり惣流さんのフラストレーションは相当溜まっているらしい」
 そりゃそうだろう、で?と無言のまま問いかける僕ら。
「ATフィールドの発生があちこちで確認されているんだ。しかも結構な規模でね」
 つまり、明日の試合では僕達がアスカ様のご機嫌取りのために活躍しないといけないわけだ。何から何まで人騒がせな。退屈や憂鬱だけで周りの人を巻き込まないで欲しいよまったく。
「愚痴をこねてても始まらない。明日の試合では、僕と君達の三人で何とか盛り立てておかないといけない様子だね」
「了解」
 綾波が無機質に答える。でも僕は返事しない。できないよ。
「勿論、僕やシンジ君がぱっと一晩で実力を進化させることは不可能だけれども、重要なのはここさ」
 渚君はそう言いながらキザっぽい仕草で自分の胸を指しウインクしてみせる。はいはい、と僕は溜息。
「それじゃ、明日が世界最期の日にならないことを祈ってるよ」
 さらっと洒落にならないことを言いながら渚君は去っていった。
 僕は綾波に同意を求めて「困ったもんだね」と言いかけたところで、彼女は天を仰ぎ星を見ていた。言葉を出せずにいると少ししてから彼女は視線を星から外して僕に向けた。
「野球に関する競技プログラムのダウンロード」
 普段何となく過ごしていると綾波が宇宙人であることをそうそう意識はしないだけに、唐突にこういう事を言われると少し虚を衝かれる。ふと僕は気になって聞いてみた。
「その競技プログラムだと、どのくらいのレベルのプレイができるの?」
 少し綾波は考える仕草を見せてから口を開いた。
「基本的には日本国内の平均的な職業野球選手と同等程度。ある程度の制限は可能」
 プロ並みのプレイということか、ということの理解に数秒を要した僕は、去っていった綾波に明日の服装について訊ね損ねてしまった。僕は一瞬制服のスカートをはためかせボールに飛びつく綾波のイメージをしてしまい、誰もいない暗い河川敷で一人真っ赤な数分を過ごした。


【タイトル】Re: 惣流アスカの退屈(前編)
【記事番号】-2147481589 (-2147481590)
【 日時 】06/08/18 14:02
【 発言者 】みれあ

えーと、前スレに小出しにしてましたが見づらいのですぱっと新スレ建てました。とりあえず前編ですが前後編になるのか前中後編になるのかは不明です。

とりあえずカヲルを動かすのは楽しいです。楽しすぎてやりすぎちゃうこともしばしばなのですが…
まぁ、文章技巧的な面でのリハビリもはかっているのでそう言う観点からの鋭いツッコミもばしばし募集中。


ps:一応後編は8月中に書ききれたらいいなと思っています(爆


【タイトル】Re: 惣流アスカの退屈(前編)
【記事番号】-2147481584 (-2147481590)
【 日時 】06/08/22 02:45
【 発言者 】クロミツ

原作でのキョン妹(本名不明:笑)の代わりにトウジ妹(こちらも本名不明)が出演か、と思いきゃゲンドウでしたか。(笑)
 予想に反し(笑)意外と使えそうなゲンドウの参加が、どの程度お話に影響するか期待。

 しかしケンスケ、どこまでもこんな役割か・・・


【タイトル】Re: 惣流アスカの退屈(前編)
【記事番号】-2147481583 (-2147481590)
【 日時 】06/08/22 11:22
【 発言者 】みれあ

あ、そうか。トウジ妹というのがいましたか。忘れてました(爆
ゲンドウはネタです。ごめんなさいネタです。それ以外ないくらいネタです。ネt(以下略
ゲンちゃんもギャグだと動かしやすいんですね。ある意味何やってもいいので(笑

ケンスケは………………
スルーでお願いします。


【タイトル】Re: 惣流アスカの退屈(前編)
【記事番号】-2147481528 (-2147481590)
【 日時 】06/09/25 01:19
【 発言者 】なお。

私、ハルヒはよく知らなくて、とりあえずコミックの一巻だけは読んでみました。するとみなさんよく書いてるのがわかりました。こりゃたしかにハルヒだ。だがしかしハルヒのイメージが強すぎたのか、アスカに見えなくなっちゃいましたね。思わぬ弊害。カヲルとかおもしろくてけっこう好きなんだけどやっぱハルヒなんで、もうちょっとエヴァ的な要素が入ってるといいなと思います。もし続きがあるなら次回ではそのあたりをリクエストしたいですね、絶対とはいいませんが。


【タイトル】Re: 惣流アスカの退屈(前編)
【記事番号】-2147481500 (-2147481590)
【 日時 】06/10/02 18:46
【 発言者 】みれあ

他の繁盛スレとは異なり、一つひとつのコメントに丁寧に返信ができる規模であります(爆

スピードは超低下しておりますが一応進んでいます。噂の4回表に突入したところであります。

■なお。さん
確かにそういう感はあります(汗
何しろエヴァの映像を見たのは遠い昔のお話なわけで、その後から猛烈な勢いでハルヒ関連の映像やら音声やら文章やらを叩き込んでしまったのもありエヴァキャラとのやりくりはちょっと難しい感もあります。
ほうっておくと出番が増える渚カヲルでありますから、彼とはちょっと相談してみます(ぇ

メンテ

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