渚家のひとコマ |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: aba-m.a-kkv
- 【タイトル】渚家のひとコマ
【記事番号】-2147481481 (2147483647) 【 日時 】06/10/15 03:03 【 発言者 】aba-m.a-kkv
「恋愛結婚だったか、ですって?」
亜麻色の長い髪の女性が、その青い眸に微かに驚きの色を映して聞き返しました。
隣の銀色の髪の男性が、苦笑いが微かに混じったアルカイックスマイルを浮かべます。
それは日曜日の夜の出来事でした。
夕食を終えて家族団欒に入っている渚家。
家族四人そろってソファーの上でテレビを見ていました。
最近人気のあるホームドラマです。
銀色の髪の渚カヲルと亜麻色の髪の渚アスカがならんで、それぞれに膝の上にそれぞれの血を受け継いだ子供たちが座っていました。
そんなひとコマ、カヲルの膝の上に座る銀色の長い髪に青い眸の長女が隣の母親アスカに尋ねました。
「ねえ、ママ。
ママとパパは恋愛結婚だったの?」
「あ、それ聞きたい、聞きたい」
アスカの膝の上に座る、亜麻色の髪と紅い瞳の長男が続きます。
ちょうどドラマの中では登場人物の結婚式のシーンが描かれているところでした。
そして、上のアスカの声が続きます。
長男と長女の好奇心の視線を受けながら、アスカは指をおとがいに当てて考えました。
「……さあ、どうかしらねー、違うんじゃないかしら?
ねえ、カヲル」
二組四つの眸がくるりと移り変わります。
そんな直線に見つめられてカヲルはまた苦笑いを含んだアルカイックスマイルを浮かべました。
それからテレビの中の穏やかなシーンを見つめて、それから子供たちの方を向きました。
「まあ、そうだね。
確かに恋愛結婚、っていう感じではなかったかな。
かといってお見合いというわけでもあり得ないしね」
そして、ちらっとアスカのほうを見つめました。
アスカが言葉を代わります。
それと共に動く視線。
「そうそう、お互い、ちょうどいいときに、お互い、傍にいたから、かしらね。
でもね、それって大切なことなのよ。
お互いの命の存在が尽きようとしたときに、お互いにレゾンデートルを分かち合ったんだから」
「だからね、僕の存在はアスカと同義で、アスカの存在は僕と同義なんだ。
僕とアスカは、それぞれを自分自身のように愛し合っているんだよ」
「まあ、アンタたちにはまだ難しい話ね。
でも、わからなくていいのよ。
これはアタシたちのものだから。
アンタたちはアンタたちでいい恋愛をしなさい、いいわね」
「「はーい」」
いまいちよくわからない説明に首をかしげながら、でも言いくるめられてしまった子供たちはまた再びテレビへと視線を向けました。
そんな無邪気な子供たちを見て、カヲルとアスカは互いに見つめあい、微笑を浮かべあいました。
和気藹々とした雰囲気が、今日も渚家の上を過ぎていきます。
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481480 (-2147481481) 【 日時 】06/10/15 02:52 【 発言者 】aba-m.a-kkv
結局、恋愛結婚だった二人(笑)
こんな話もいいなーと思って、時間の合間に書いてみました。 うーん、ちゃんとワードに向き合ってSSが書きたいと思う今日この頃でした。
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481472 (-2147481481) 【 日時 】06/10/17 20:54 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
〜ました。 〜ます。 〜でした。
という語尾がとてつもなくいい!! みたいなことって、前にも何かで書いたかな? こういう風にするとどうしてもメルヘン調になるんだけど、そういう雰囲気にあってる。子供たちがもっと幼児な感じだともっといいかも。双子かな?
いかんせん短い……。
> うーん、ちゃんとワードに向き合ってSSが書きたいと思う今日この頃でした。
同じく。そしてネットする時間がほしい。というか、超高速なパソコンが10台くらい欲しい(笑)。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481469 (-2147481481) 【 日時 】06/10/20 04:42 【 発言者 】クロミツ
「恋愛結婚?私が?」
夕食の後片付けをしていた女性は振り返ると、自分を凝視する紅い瞳を静かに見下ろしました。 背中まで伸ばした淡い青色の髪が邪魔にならないよう、お気に入りの桜色のリボンでまとめています。
やはり日曜日の夜の出来事でした。 キッチンに向かっていたレイは洗い物の手を止め、エプロンの裾を引っ張る大事なひとり息子に向き直りました。 髪の色は受け継がなかったものの、母と瓜二つのルビーのような瞳は、好奇心でキラキラ輝いています。
「うん。お父さんとお母さんって恋愛けっこんだった?、それともお見合いしたの?」 「それがどうかした、ユウ?」 「あ、あの・・・そのう、ちょっと、気になったから・・・。」
ユウと呼ばれた少年は言葉尻を濁しながら、ごまかすように目を逸らしました。 そんなわが子を、レイはどこか複雑なまなざしで見つめています。 仮にユウが目を逸らさなかったとしても、まだ子供の彼に、母親の微妙な心境など気付くはずもありません。
「・・・・・・そうね。私の場合はお見合いだったわ。」
普段から抑揚のない、平坦な喋り方のレイですが、このときの言葉にはユウですら、嬉しくなさそうに聴こえました。
「結局、愛しているひとからは一度も、プロポーズの言葉を貰えなかった・・・。」 「・・・アイしてる、ひと・・・?」
静かな表情のまま沈黙するレイに、ユウはおそるおそる尋ねました。 掴んだままの母親のエプロンを、無意識のうちにギュッと握りしめながら。
「早いものね、あの頃はまだ、あなたは生まれてもなかったのに・・・。」 「ぼくが生まれるまえ?」 「ええ。だから随分時間が経っているはずなのに、でもまるで、昨日のことのように思い出せるわ。」
「レイッ!」
居間から様子を伺ってたのでしょうか。うわずった声とともに父親がキッチンへ入ってきました。
「シンジ、居たのね。」 「ずっと台所に居るから手伝おうと思ったら、ユウにへんなつくり話を吹き込むなよっ!」 「つくり話ではないわ。私は事実を言ってるだけ。」
シンジは妻のこの言葉に、しばし、あっけにとられた表情をしていました。
「ちゃんとプロポーズしたじゃないか!おまけにずっと付き合ってたのに、見合いだなんて―――。」 「確かに求婚してくれたわ。でも貴方はずっと黙ってるだけで、一言も『結婚して下さい』って云ってくれなかった。」
冴え冴えとした言葉を向けられ、シンジの声が急に小さくなりました。
「あ・・・・・・あのときは緊張のし過ぎで声が出なくて、めまいまでしてきて・・・・・・。」 「ずっと見つめ合ったあげく、やっと貴方は指輪を差し出したけど、何の言葉も添えてくれなかったわね。」
そのシーンを回想して怒っているのか、レイの声音がどんどん冷ややかになります。
「ぼ、僕だけじゃないぞ!君だって指輪を見せても黙りこんだまま、石みたいに動かなくて・・・。」
指輪を見たレイがコクリと頷くまでの10分間、シンジの心は絶望と後悔の間を行ったり来たりしていたのでした。 思いがけない反撃を受け、白皙のレイの頬がたちまち朱く染まりました。
「・・・だって、嬉し過ぎて、気が遠くなって・・・一言でも喋ったら泣いてしまいそうで・・・。」
もしあの場面で、レイが『こういうとき、なんて顔をすればいいか分からないの』と言ったら、シンジはきっと 『笑えばいいと思うよ』と答えたでしょう。でもそのときの二人はそんな余裕もなく、あっぷあっぷでした。
「だからってなにも、誤解するような言い方を・・・。」 「何も喋らず、ずっと見つめ合ってただけの求婚なんて、『お見合い』していたようなものだわ。」 「ちゃんと気持ちが伝わっているなら、それでもいいじゃないか。」 「・・・でもやっぱり、言葉も欲しかった。一生に一度の瞬間なのに・・・。」
なだめようとしたシンジですが、意外にレイは強情でした。
「う・・・。本当は指輪を差し出した勢いで云うつもりだったけど、あまりに君が無反応だから、呆れてるのかと・・・。」 「いまの言葉、まるで私のせいみたい。」 「そんなつもりじゃないよ。・・・けどなぁ、あの事を君がそんなに根にもってたとは・・・。」 「根になんか、もってない。」 「じゃ、拗ねてる?」 「拗ねてない。」
もはや子供そっちのけの二人に、ユウは退屈してきました。
「ねえねえ、お父さんたちの『お見合い』ってどんなだったの?」
ユウが何気なく尋ねた言葉で、コドモのようなケンカがピタッと止まりました。
「・・・ええと、レイが肯いてくれたのがすぐには信じられなくて、なんだか夢の中にいたみたいで・・・。」 「たしか、私がOKした直後に抱きついてきたのは、貴方のほう。」 「そっ、それを言うなら、キスしてきたのは君じゃないか。」 「・・・なにをいうのよ・・・。」
シンジは頭を掻き掻き、レイはエプロンをずっといじってます。そんな両親を代わる代わる見てたユウが、
「いま、やって見せてよ。ねぇ。」
とおねだりした途端、申し合わせたように二人の顔がよけいまっ赤になりました。
「子供はまだ知らなくていいの。」 「そうだぞユウ、明日は学校だろ、早く寝なさい。」 「だって、まだ7じだよ。」 「え、え〜と、僕らはこれから、ちょっと話し合わなきゃいけないことがあるんだよ。」 「ぼくもお話ししたい!いいでしょ。」 「あ、いや、そうじゃなくて・・・。」
困り果てたシンジは、レイの方をちらりと見ました。
「ユウ・・・悪いけど、大切なことだから、あなたの相手をしてあげられないの。ごめんなさい。」
レイはユウの両肩に手を乗せ、諭すように言いました。 よく見ると、どこかソワソワしているようでしたが。
「わかったよ。じゃあ、おやすみ。」
ユウはとっても素直な子でした。 それに、一見ケンカしてるようでも、翌日には二人がとっても仲良しになることを知っていたのです。
碇家は今日も平和でした。
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481468 (-2147481481) 【 日時 】06/10/20 04:47 【 発言者 】クロミツ
「・・・じゃあ、ユウくんちも恋愛結婚じゃなかったんだね?」 「うん、お母さんがそう言ってた。」
あくる日の学校。なかよし三人組はいつものように昼休みの校庭に集まって、昨夜のことを報告し合ってました。
「ふ〜ん。僕らのとこも違うんだって。パパもママも言ってた。」 「あたしぜったい、ユウちゃんちは恋愛結婚だと思ってたのにぃ。おじさんもおばさんも仲良しだから。」
そう呟いたのは渚さんちの長女です。予想が外れたせいか、ちょっと不満そうに唇を尖らせました。
「仲良しだと、恋愛けっこんになるの?お見合いけっこんじゃダメ?」 「そんなことないと思うよ。僕らの家も恋愛結婚じゃないけど、パパとママ仲良しだし。」 「でもお兄ちゃん、うちのパパとママってしょっちゅう口げんかするでしょ?あれやっぱり、恋愛結婚じゃないからよ。」 「あれ、ケンカっていうのかな?ママばっかり大声出してて、パパはいっつもニコニコしてるけど。」
決め付けるような妹の言葉に、お兄ちゃんは腕組みして首をひねりました。
「ケンカなら昨日、ぼくのとこもしてたよ。」 「へえ、意外。ユウくんとこのおじさんて、怒るとか絶対しないって思ってた。」 「ユウちゃんのママだってそうよ。あんなにきれいなのに。」 「うーん。でも朝ごはんのとき、お母さんすっごく機嫌よかったから、もう仲直りしてるよ、きっと。」
お父さんは普段、日曜日と月曜日は家にいます。今朝は寝坊しているようで、朝食のときも起きてきませんでした。 起こしにいこうとしたら、お母さんが『ゆっくり寝かせてあげなさい』と、やさしい声で言ったのでした。
「やっぱり、仲がいいのとなにけっこんとかって、関係ないんじゃないかなあ。」 「そうかしら?でもあたし、ぜったい恋愛結婚するわ。ママだって『すてきな恋愛しなさい』って言ったもん。」 「え?恋愛すると、恋愛けっこんになるの?」 「そうよ。そうにきまってるじゃない。」
言われてみるとそんな気がします。ユウくんは分かったような分からないような顔をしました。
「まあ、僕はどっちでもいいや。そんな先のことなんて、いま考えても仕方ないし。」 「そんなこと言ってちゃ、『お兄ちゃん』があっというまに『おじいちゃん』になっちゃうわよ。」 「いいよ僕、サッカーさえ出来れば。」
お兄ちゃんはサッカーが大好きで、このあいだ、少年サッカーチームのレギュラーになったばかりでした。
「ぼくはお見合いけっこんがいいなあ。」
ユウくんはお父さんもお母さんも大好きです。だから自分も同じようになりたいなと、ぼんやり考えたのです。 すると突然、猛反対にあいました。
「ダメッ!ユウちゃんはお見合いなんてしちゃだめっ!」 「なんで?」 「なんでって・・・・・・なんでもよ。」
無邪気なユウの質問に、少女はぷっと頬をふくらまして顔をそむけました。 プイッと勢いよく横を向いたおかげで、さらさらの銀髪が、まっ赤になった頬っぺたを隠してくれました。
「とにかく、ユウちゃんは恋愛結婚することになってるのっ!今すぐじゃないけど、でも、そう決まってるのっ!」 「・・・へえ、誰とかなあ?」 「お兄ちゃんは黙ってて!」
どちらかというと父親似の、おっとりした顔だちの少女ですが、ジロッとにらんだ青い目は母親そっくりです。 活発そうに見えて実はのんびりやの兄は、妹に怒鳴られても肩をすくめて、ユウくんにニコッと笑いかけました。 パパがよくするその仕種を、彼は気に入ってたのです。 そんなお兄ちゃんに気付かない妹は、詰め寄るようにユウくんの方を向きました。
「いいユウちゃん?もし見合い結婚なんてしたらゼッコウよ!一生くち利いてあげないんだからっ!!」 「・・・うん、わかった。じゃあ僕も、恋愛けっこんする。」
活発にまくし立てる幼なじみに圧されぎみのユウくんでしたが、それでもこころよく肯きました。 どこまでも素直な子どもです。
「・・・ぜったいよ、約束だからね。」 「うん、約束だよ。」
ユウくんがそういうと、彼女の顔がぱっと輝きました。なぜだかはユウくんには分かりません。 同いどしの二人ですが、こういうことは女の子の方が成長が早いようです。 というより、ユウくんの鈍感さは父親ゆずりかもしれません。
ちょうどそのとき、学校のチャイムが鳴り響きました。もうすぐ、昼休みが終わります。
「ほらぁ、ユウちゃんもお兄ちゃんも、早くいこいこっ。」
嬉しそうに小走りに駆け出した妹を、お兄ちゃんは微笑ましく、ユウくんは不思議そうに見ていました。 抜けるような青空の下、チルドレンの子供たちはきょうも、元気いっぱいです。
***********
とつぜん電波を受信しました。きっと渚家の幸せオーラを受け取った影響でしょう。 ・・・なんて、いきなりSS投下したうえ勝手に設定変えちゃったりして、ごめんなさい、aba-m.a-kkvさん。m(_ _)m
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481461 (-2147481481) 【 日時 】06/10/26 19:50 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
この二人はあれか。シンジは黙って指輪を差し出し、レイはそれだけで全てを察して、10分後にこくりと肯いたわけか。 ……バケツで水でもぶっかけるか(爆)。
> 「え、え〜と、僕らはこれから、ちょっと話し合わなきゃいけないことがあるんだよ。」 ――中略―― > お母さんが『ゆっくり寝かせてあげなさい』と、やさしい声で言ったのでした。
このあたり、あれな妄想が炸裂しましたが、間違ってないものと確信する次第であります。
> 「ダメッ!ユウちゃんはお見合いなんてしちゃだめっ!」
萌え(爆)。やはりレイアスカシンジカヲルは親戚同士になる運命なのか。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481445 (-2147481481) 【 日時 】06/11/06 23:08 【 発言者 】tokia
子供に対してレゾンデートルなどという単語を使うのは難解すぎると思います、お父様、お母様。 それともこれが、家庭内における至って普通の会話なのですか? ……そうなんだろうなぁ(笑)。
【タイトル】Re: 渚家のひとコマ 【記事番号】-2147481411 (-2147481481) 【 日時 】06/12/04 00:58 【 発言者 】aba-m.a-kkv
今頃になってですが、現れました。苦笑。 って、あわあわ!! クロミツさん、ありがとうございます!! こんな短い文章に、こんなに素晴らしいSSを繋げてくださって。 もう転がりっぱなしです。 さすがです!ありがとうございます。
>やはりレイアスカシンジカヲルは親戚同士になる運命なのか。 tambさん、おそらくこれはシナリオなんですよ。 歯車はもう止められないのです(爆)
>庭内における至って普通の会話なのですか? tokiaさん、たぶんこれはアスカとカヲルの照れ隠しだと思いますよ。 クロミツさんのLRSみたく、子供たちの質問をごまかすのために。
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