ユメのカケラ |
- 日時: 2009/05/31 00:00
- 名前: 北並
- 【タイトル】ユメのカケラ
【記事番号】-2147481282 (2147483647) 【 日時 】07/03/11 22:27 【 発言者 】北並
夢を、見た。
その中にあったのは、暖かい声と笑顔。 人と話すときには、たいていどこかあいまいな笑みを浮かべていた彼。 でもわたしが時々何か言うと彼は、それとは違う笑顔を覗かせることがある。 きっと彼自身は気づいていなかった。わたしだけが気づく、彼の些細な違い。 それが少し誇らしくて、ひそかに嬉しかった。
*
わたしは歩いている。大してきつくもない上り坂。いつも通る帰り道。空の向こうはすで に日が落ちかけて、眩しい朱色。 いつもと違うことは、斜め後ろに彼がいたこと。今日初めて、彼がわたしを誘った。 『一緒に帰っていいかな』と。 でも、黙って歩いている。ずっと黙って歩いている。 当たり前。わたしは、人と話すようなことなんて持ち合わせてない。 だいいちそれを苦にすることなんて、なかった。 なのに今は、なぜか胸の奥が奇妙な感じ。 それはきっとそばに彼がいるから。 だからこの上りがいつもより長くて、つらい。 『―――あの』 声をかけられた。 ようやっと。そしておそらくは、もう。 振り向くと、彼が言葉を続けた。 『僕の家、こっちだから』 それだけじゃ、何を言いたいのかわからない。 でもわたしは理解できた。 そして浮かぶ、小さな不満。 わたしはもっと、
――――――どうしたかったのだろう。 自分でもわからないまま頷く。 『ええと、じゃあ、さよなら』 『……また、明日』 その言葉が気に入らなくて、少し強めの語気で返すと、彼は驚いた顔でわたしを見た。 ……あなたが言ったのに わずかに胸の中がよどむ。でも、 『うん。また明日』 優しく微笑んで言われたら、それも消えてしまった。
*
歩き出す。道を別れて帰っていく。 ふと、振り返ってみた。彼が歩いていくのが見える。 その線の細い後ろ姿を見ていたら、
“もっと”どうしたかったのか、理解できてしまった。
それは、今まで考えもしなかったこと。 わたしはもっと、彼と一緒にいたかった。 坂を登るあの短い時間が、わたしはもっと欲しかった。 でも、その時間は終わってしまった。彼の姿もじきに見えなくなる。 そのうちに、胸の奥の感覚が締め付けられるような苦しさになっていた。 一度も感じたことのなかった感覚。どうしたらいいのかわからなくて、とにかく走って部屋へ帰った。
*
これはなんの意味もない、特別なことなんてない、ただこれだけの話。 それでも、だからこそ、わたしにとってはかけがえのない大切な思い出だった。
【タイトル】Re: ユメのカケラ 【記事番号】-2147481281 (-2147481282) 【 日時 】07/03/11 22:36 【 発言者 】北並
ども、またも一ヶ月以上空けた北並です。
いつぞや言っていた「ユメ」の内容でした。 でも直しに時間をかけたわりには意外と初期稿と変わっていないという事実。 落ち込むべきか安堵すべきか難しいところです(苦笑)
【タイトル】Re: ユメのカケラ 【記事番号】-2147481275 (-2147481282) 【 日時 】07/03/17 02:46 【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
もうずいぶん長いこと夢なんか見てないから(あるいは忘れてるだけなのかもしれない けど)難しいけど、自分の声を夢の中で聞いたことはないような気がする。確かに喋って はいるのだけれど、それは声にはなっていなくて、でも相手には伝わっている、みたいな 感じ。テレパシーみたいな。 でも実際に誰かと話したことを思い出したとき、自分の話したことを自分の「声」とし ては記憶してないような気もする。相手の声はどうだろう。これは声かもしれない。
何を言いたいのか分からなくなった(^^;)。
つまり、読んでみて思ったのは、これは夢ではないだろうということなんだけど、こう いう夢もあるかもしれんしな。人によっては。 だからこれが夢なのかどうかは、やっぱりシンジに聞かないとわからない。
もうひとつ、これは私の書きかけのにそっくりだということだ(爆)。まぁよくあるアイ ディアだからあれだけど、タイミングが(^^;)。ま、いっか。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: ユメのカケラ 【記事番号】-2147481270 (-2147481282) 【 日時 】07/03/22 22:08 【 発言者 】北並
ども、いつもいつも反応の遅い北並です。
>自分の声 あら、そういうこともあるんですか。自分の場合夢の中でも現実と同じように声として聞こえてるんですよ。あと三人称視点になったりしますけど。 現実と同じってのはちょい違うか、なんというか音声そのものが映像の上からかぶさるような。吹き替えの精度を落とした感じで。 つまりこの「ユメ」は自分の見る夢とほぼ同じ形式になっているわけです。
そうなるとこれは夢なのか?という考えになるわけで、まあでもそこらへんは自分が言うまでもないかなと思ってます。言うべきではない、のかも。どうぞご自由に、ってことで(笑)
まとめると「こういう夢もあるけど、これが夢じゃないかどうかはわからない」 そんなところですか。 >だからこれが夢なのかどうかは、やっぱりシンジに聞かないとわからない わけです。結論は変わらず(笑)
少々話はそれますが、これを書き始めたときのコンセプトは「幸せそうな日常風景、でも最後切なく」だったり。構想メモに残ってました。 ……日常と最後はともかく、これが幸せそうなのだろうか。もうちょっといい場面があるだろうに。というか本編中で一度もまともに会話させてないんだからもう少し幸せにしてやれよ作者(=自分)。
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