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Every Breath You Take
日時: 2009/05/31 00:00
名前: tamb


【Date:】 24 May 2008 04:52:00
【From:】 "tamb"
【Subject:】 Every Breath You Take

「こんなところに不良がいるわ」

 授業を抜け出し、人気のない芝生で芝生で昼寝を決め込んでいた僕の耳に、良く知って
いる声が気持ちのいい風と一緒に届いた。
 ここは僕と綾波の秘密の芝生だった。キャンパスの外れの少し奥まった所にあって、誰
か人が来るのを見たことはなかった。ここに来るのは二人だけだ。僕と、綾波。

 僕は声のした方、風の吹いて来る方を見上げた。彼女は僕を見下ろしている。スカート
の中が少しだけ見えて、それがまぶしかった。

「授業はいいの? 必修でしょ?」彼女はそう言いながら僕のとなりに座る。「碇くん、
大学生になったら、とたんに不良になったのね」
「不良なんかじゃないよ」僕はそう言い返す。「大学生は、ちょっとくらい授業をさぼっ
てもいいんだ。それに僕が不良なら綾波だって不良じゃないか。おんなじ講義、取ってる
んだから」
「わたし、不良なの」彼女は笑顔でそう言った。「悪い男の人にだまされて、いけないこ
とを覚えてしまった、かわいそうな女の子なの。根は真面目で、とってもいい子なのに」
「じゃあ、今からでも出ようか?」
「出ない」

 きっぱりと言う彼女に、僕は笑ってしまった。

「なんで?」
「あの先生、嫌いなの。講義はわかりにくいし、あの声聞いてると眠くなるの」
「僕もそれには完全に同意するよ」
「意見が一致して嬉しいわ」

 僕は彼女の方に体を向けて言った。

「じゃあ不良同士、お昼寝といきますか」
「いきますか」

 彼女はそう答えて横になった。僕の腕を取って腕枕にし、後ろを向いて僕に背中を預け
た。それで、僕が彼女に寄り添うというか、後ろから抱き締めるような形になった。腕枕
をしている左手はいいとして、右手のやり場に困る。いくら誰も来ないからと言っても、
やっぱり部屋の中とは違うんだし。

「ねえ」彼女は僕の手を握りながら言った。「ぎゅって、してくれないの?」

 そのくらいなら平気だと思う。僕は右手を彼女のお腹に回した。
 細い髪に顔を近づけると、シャンプーのいい香りがした。
 彼女が腕の中で身じろぎするのを感じながら、僕はいろんなこと――それは、いけない
こと、だ――と戦っていた。でもそのうちに彼女の身体から力が抜けてゆき、そして丸く
なった。
 もう眠ってしまったようだ。
 僕は少し笑って、彼女を抱き締める手から力を抜いた。

「寝たふりだったんだけど」

 彼女が笑みを含んだ声でいきなりそう言い、僕は本当に驚いた。

「うわ」
「だまされた?」
「だまされたよ。本当に寝ちゃったと思った」

 彼女は僕の腕の中で寝返りを打ち、僕の方に身体を向けた。

「わたしが寝たのをいいことに、いけないことをしなかったご褒美」

 そう言って彼女は、僕にキスをした。
 でも、僕が彼女を抱き締め直してもっと深くその口唇を求めようとする寸前、彼女は離
れてしまった。

「おやすみなさい」

 彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言うと、枕――僕の腕だ――の位置を整え、僕の
胸に顔をうずめた。
 恐らく今度は本当に力の抜けてゆく彼女の柔らかな身体を抱き締めはしたものの、僕も
もう眠るしかなかった。
 彼女と、一緒に。
 流れる風はどこまでも心地よく、僕は眠りについた。


 だから彼は、彼女が甘い声で小さくつぶやいた「バカ」という言葉を耳にすることもな
かった。



【Date:】 24 May 2008 04:53:00
【From:】 "tamb"
【Subject:】 Re: Every Breath You Take

ちょっと前のののさんの作風に似てなくね? なくね?



【Date:】 24 May 2008 17:05:00
【From:】 "のの"
【Subject:】 Re: Every Breath You Take

似てますけれども僕よりうんとエロです(爆)

じゃあ、今からでも出ようか?」
「出ない」

 きっぱりと言う彼女に、僕は笑ってしまった。

>「なんで?」
>「あの先生、嫌いなの。講義はわかりにくいし、あの声聞いてると眠くなるの」
>「僕もそれには完全に同意するよ」
>「意見が一致して嬉しいわ」

こういうところですよね。言葉でさくさくっとリズムを作るあたりなんか似てます。
あとはラストとか。

「カレイドスコープ」でも話題にしたことだけど、
こういう風に大学生になっていて、2015年からの経過は吹っ飛ばしているんだけど、
でもこれってちゃんと繋がるなという流れを感じさせるのがポイント。
これはもう、エヴァが好きだけではできないことですが、よっぽど好きなんだなとよくわかる小話でございました(爆)



【Date:】 27 May 2008 05:15:00
【From:】 "tamb"
【Subject:】 Re: Every Breath You Take

> 似てますけれども僕よりうんとエロです(爆)

この話は全然エロくないぞ。愛し合う二人が横になって抱き合って、それのどこがエロだ
というのだ? いや、エロはないかもしれんがエロスはあるのか? エロスってなんだ?
と、思考を袋小路に追い込むとエヴァ風。にはならんか。

会話とかは普通に書いたけど、ラストは思いっきり意識した。というかパクった(笑)。



【Date:】 2 Jun 2008 12:37:00
【From:】 "のの"
【Subject:】 Re: Every Breath You Take

タイトルセンスとかはtambさんですよね。
あ、でもおれもポリスのタイトル使ったな。

よくよく読むと確かにラストはすっごい似てる。
真似したのはなんで?と聞いてもよいですかね?



【Date:】 3 Jun 2008 01:58:00
【From:】 "tama"
【Subject:】 Re: Every Breath You Take

ご無沙汰です、生きてます。(幽霊部員)

コレは私は癒されましたよ・・・。
周囲がばたばたしていてささくれだっていた気持ちが緩和。がんばります。PCも買ったし。がんばれる。だって腕枕・・・、かわいすぎる。
レイがこんな風にちょっと大人になっている会話を繰り広げるのって、ものすごく萌えなんですよぅ。

でも外でこんないちゃついている人をみたら、私は一目散に走り去ります。恥ずかしい(爆



【Date:】 5 Jun 2008 04:57:00
【From:】 "tamb"
【Subject:】 Re: Every Breath You Take

■ののさん
レイに「不良がいる」と言わせたかったのがきっかけで、そういうセリフを言うというこ
とはそれなりに成長しているということで、そう書いたら似てしまった、というのが真相。
その意味では私はののさんの影響下にあるのですよ、兄さん。

で、あぁ似てるなと思ったので、最後の三人称は真似した。前に掲示板に投下されたその
手法を使ったのがあまりに鮮烈だったので。

タイトルは、ここまで真似したんだからと思って、ののさんの投稿してくださった連作の
『Synchronicity』の中から一曲もらった。なるべくみんなに分かるように、大ヒット曲
を選択。「Wrapped Around Your Finger」とか「Tea In The Sahara」でもそれらしいん
だけど。(分からない人へ。『Synchronicity』というタイトルのアルバムが、ポリスと
いうバンドにあるのです。「Every Breath You Take」というのはそのアルバム中の大ヒ
ット曲。日本語タイトルは「見つめていたい」)

■tamaさん
> でも外でこんないちゃついている人をみたら、私は一目散に走り去ります。恥ずかしい(爆

ガキの頃、当時の彼女とこんな風ににいちゃついてたら、わけのわからぬおっさんにいき
なり「昼間っから何やってんだ!」と怒鳴られて、心臓が喉から飛び出しそうになった事
があります(笑)。今思うと、夜に室内でいちゃついてる方が大問題だと思いますが(^^;)。
しかし「いちゃつく」という響きは結構鮮烈だなー。




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