Re: 許してあげる ( No.1 ) |
- 日時: 2009/12/28 00:25
- 名前: tamb
- 綾波が怒ってる。それも、かなり。
「そう? いつもと同じだと思うけど?」
アスカには分からない。ミサトさんにもリツコさんにも分からないだろう。 でも、僕には分かる。僕にしか分からない。 綾波が怒ってる。 原因は僕だろうか。僕が何かしたのだろうか。分からない。
「綾波、待ってよ。一緒に帰ろう」
僕は何も気づかない振りで、そう声をかける。彼女は僕を無視してすたすたと歩き出す。
「ねえ綾波、ご機嫌ななめ?」
玄関で追いつき、少しおどけた感じで言ってみる。彼女が振り向き、僕を睨みつけた。
「ええ、とても」
彼女がはじめて見せてくれた反応。それはあまりに冷たく、僕をたじろがせた。
「ど、どうして?」 「知らない」
彼女は再びそっぽを向き、靴を履き替え始めた。取り付く島もないとはこのことだ。
「僕に悪いところがあったなら直すよ。だから教えて」
綾波が再び僕を睨む。
「わからないの?」 「ごめん。わからないんだ」 「本当に?」 「ごめん」 「碇くん、洞木さんと仲が良すぎるの」 「……へ?」
僕が委員長と仲がいい? 寝耳に水とはこのことだ。
「洞木さんとお付き合いするといいわ。さよなら」 「ち、ちょっと待ってよ」僕は慌てて言った。「身に覚えがないんだ」 「昼休み、私のことはほったらかしで、洞木さんと仲良く話をしてたわ」 「あ……」
彼女はまた僕を睨んだ。僕は思わず笑いそうになってしまった。
「あれはさ、くせのないお肉料理を教えてもらってたんだ。ほら、綾波ってお肉食べない だろ? でも、挑戦だけはして欲しいなって思って」 「……」 「鳥のささみがいいんじゃないかって。カレー粉とにんにくで焼き揚げたらいいんじゃな いかってアイディアを出してくれたんだ。作り方を教えてもらってたら話が長くなって」 「……本当?」
少し上目遣いに、疑い深そうに言う。
「ほんとだよ。委員長に聞いてみてもいいよ」 「本当なら、許してあげてもいいわ」 「ほんとだってば」 「じゃあ――」
綾波は眼を閉じ、軽く上を向いた。彼女がキスをねだる時のポーズ。
「こ、ここで?」 「……」 「みんな見てるよ?」 「……」
綾波は答えない。私には関係ない、心の中でそう言っているのだろう。 僕は覚悟を決めた。 両手で綾波の頬を軽くはさむようにして、口づけた。唇を触れ合わせるだけで、でも少 し長めに、十秒。綾波が僕の肩に手を回してきた。もう十秒。そこで離れて、見詰め合う。
「おおおおお〜」
クラスのみんなのどよめきが聞こえる。でも、もう僕には関係ない。 綾波は逆に頬を赤くしてる。それがやたらと可愛かった。
「行きましょう」
彼女が僕の腕を取り、半ば引っ張るようにして言う。今になって恥ずかしくなったのだ ろうか。
「どこに行くの?」 「スーパー。鳥のささみ、買うんでしょう?」
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Re: 許してあげる ( No.2 ) |
- 日時: 2010/01/19 19:48
- 名前: タン塩
- このネタ、書こうと思ったけど書けなかった。拗ねる綾波はいいですね。
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