キスにしてください。 |
- 日時: 2010/09/17 15:14
- 名前: のの
- 十周年企画・ボツネタ大作戦!!
お題:『キスしてください』 ボツ理由:綾波さんが下品だった
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暑い夏だからこそ暑い思いをすべし、とアスカが言った。片手に女性誌、片手にぽっきんアイス(一本 丸ごと)でクーラーはもちろん全開なのにも関わらず。 「その方が健康に良いけど、言うは易しよね」 じゅわっという油の音がキッチンから聞こえた上に、わたしはお皿の準備をしながらだったので、彼女 の戯言シリーズ第2645弾に、とりあえず嫌味になりそうな返事を探して言ってみる。 「案ずるより生むが易しとも言うわ」 「聞こえませーん、夏のアスカさんに労働を強いることは閻魔大王の髭を剃るより難しいのでぇす」 「そう……どうしたら働いてくれるの?」 「シンジのキス」 ふんぞり返ってソファから首を阪様にこっちを向けておきながらそんなことを言う。 「だめ、わたしの」 「なんでよ、あんたでっかくなってから態度まででかいわよ」 「アスカは枯れ木みたいになってから脂っこい発言が多すぎ」 自主規制ギリギリの発言に、碇くんが首をのぞかせた。 「へんな言い合いしてないで、アスカも手伝ってよ」 「今日のメニュー次第ね」 アスカは素直じゃないとつくづく思う。 「チーズ入りコロッケに、大盛りでキャベツの千切りと、ワカメの酢の物」 「おおー、大好物。しょうがないわねえ」 でももう料理は終盤戦なので、ほとんど手伝うことはないような。 そもそも自分の家じゃないのにここまで振舞えるのが凄い。すこし前に相田君が「居心地を場所ではな く人で決めるのは犬も同じ」と言った日の放課後にパピコを奢られていたのを思い出した。わたしみたい に慎ましくお手伝いをしていけば好感度アップにつながっていくのに。 「ああでもだめ、力はいんない」 碇くんははいはい、と聞き流している。揚げ物の音が止んでいるのは、コロッケを揚げ終えた証拠。 「じゃあ綾波、二人で先に食べちゃおうか」 ええ!?ついに、注しつ注されつのひと時が!!挿しつ挿されつの日も遠くはないのかしら!? 「食べる、あたしも食べるってば」 「じゃあ起きて、ご飯をよそって」 わたしは仁王立ちでアスカの前に立ちふさがった。碇くんからは見えないように。でもアスカはそれを 逆手に取って、意地悪そうに笑ってみせた。 「シンジがキスしてくれれば……起きる」 だらしない格好で声だけセクシー。犯罪だ、犯罪だわこんなの。 「な、なに言ってんだよ」 振り返ると碇くんは律儀に慌てている。そ、そんな、わたしのポイント稼ぎはどうなるの? 「碇くん、慌てないで。アスカは「(コロッケじゃなくて)キスにしてください」だって。天ぷらがいいら しいわ」 「んなわけあるかい」 「なんだか、アスカは紛らわしいなあ」 碇くんはたまに法外な出任せでも受け入れる。
都合がいい反面、空恐ろしい気もするけど、ま、いいの。
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