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私が一番欲しいのは
日時: 2015/03/30 02:01
名前: 史燕

「綾波は、誕生日プレゼント何が欲しい?」

そう訊ねてきた彼の鈍感さに、少し腹が立ったのは仕方がないことだと思うの。
「何がほしい?」って……。
でも、彼を責めるのはお門違いだってことはわかってる。
どうしようもない朴念仁だけど、私が何も行動していないのも事実だから。
私が一番欲しいのは

――いかりくん――

そう正直に言ったら、あなたはどんな顔をするのか見てみたい気がする。
きっと驚いた表情をして、顔を真っ赤にして、それからしどろもどろになって、それでも最後に……。
そう、最後になんて言うのかしら?

「ぼっ、僕も綾波のことが好きだっ」

そう言ってくれたら、うれしいのに。

「えっと、急にそんなこと言われても、その……」

こんな感じではっきりしないのが、一番ありそうね。
だけど――。

「ごめん、綾波の気持ちには答えられないよ」

この答えを貰うのが一番怖い。

こんな時、A.T.フィールドなんてなければ彼の気持ちだってすぐにわかるのに……。
ううん、やっぱり嫌ね。
だって、もしそうなら今の私の気持ちも彼に伝わってしまうから。

「どうしたの、綾波?」

私がずっと黙っているのに堪えられなくなったのか、彼がこちらの様子を伺っている。
そんなに不安そうな顔をしなくてもいいのに。

「……ごめんなさい、何が欲しいか考えているの」

正確には「何が欲しいか」じゃなくて、「欲しいもの」について考えているのだけれど……。

「そうなんだ」
「……ええ、もう少し考えさせてくれる」

喫茶店で向かい側の席に座る彼は明らかにほっとしたような表情をしていた。
まさか、彼と一緒にいて不機嫌になるわけないのに。
この無表情は何とかしないといけないと思っているのだけれど、今みたいなときには重宝しているの。
だって、彼と目が合うたびに心臓がびっくりして大きく跳ねるのよ? 
この無表情のおかげで彼にはばれていないけれど、アスカや洞木さんには一目瞭然らしいの。

「あんなニブチンのどこがいいんだか」
「綾波さんって、結構わかりやすいのね」

と、二人は言うけれど、気づいてほしい相手は一向に気付く気配がない。
かといって、この場で気づかれても困るの。
だから、今だけは私の表現下手な表情筋に感謝をしたい。

あらあら、そろそろ彼も待ちきれなくなってきたみたいね。
空になったコップを見つめながら、なんだかそわそわしているもの。
少し待たせすぎちゃったかしら。
でも、このくらい待たせるのは勘弁してほしいかな。
こっちなんて、なかなか気づいてくれないから、ずーっと待ちぼうけさせられているんだから。

この間なんか「綾波は彼氏作らないの?」って聞いてきたのよ。
信じられる?
「……今はまだ」って答えたら、「そっか。綾波はモテるから、すぐに作れるよね」って、一番好きになってほしい相手にモテないなら意味がないと思うの。

でも、やっぱりそれでも好きなの。
好きで好きでしょうがないの。
これが惚れた弱みっていうのかしらね?

「……決まったわ」
「えっ、何?」

言った途端に食いついてきちゃって、ほんとに焦らしすぎたかもしれないわね。
でも、これくらいじゃ意趣返しにもならないのよ?
まあ、それはいいわ。
そんなことより、今の希望を伝えましょう。

「私が一番欲しいのは……」

“あなたです”なんてとてもじゃないけど言えないから。

「……碇君の手料理ね」
「えっ、そんなのでいいの?」

そんなのって言うけど、碇君の料理は私にとってどんな高級料理よりもご馳走なのよ?
絶対に言ってあげないけど。
……嘘、たぶん食べたら言っちゃうわね。

「……そのかわり、フルコースでお願い。期待しているから」
「はいはい、お任せくださいお嬢様」

ねえ碇君。
きっとあなたは今こう思っているはずよね。
「綾波は欲がないなあ」って。
でも、私にとって一番欲しいプレゼントなのよ?
だって、私のために料理を作っている間は、あなたはずっと私のものだから。

〜Fin〜
メンテ

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Re: 私が一番欲しいのは ( No.1 )
日時: 2015/03/30 02:06
名前: 史燕

直前まで浮かばなかったのに、日付変わったら浮かんできたので即興で書き上げました。
綾波レイ誕生日記念作品です。

急ぎで書いたので作りが粗いこと粗いこと。
どうか平にご容赦くださいませ。

それでは、お目汚し失礼しました。
メンテ
Re: 私が一番欲しいのは ( No.2 )
日時: 2015/03/30 21:02
名前:

恋する女の子も独占欲の強い女の子も好きですので、こういう綾波は好きです。

いつか、ぜひ「碇君がほしい」って言ってシンジを照れさせてもらいたいです……。(笑)
メンテ
Re: 私が一番欲しいのは ( No.3 )
日時: 2015/03/31 19:43
名前: タン塩

ゲロ甘ですね!この痒さがたまりません
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Re: 私が一番欲しいのは ( No.4 )
日時: 2015/04/03 21:42
名前: 史燕

〇楓さん
恋する女の子と独占欲の強い女の子、私も大好きです。
女の子の気持ちなんてものすごく難しい(加持さん風に言うところ「遥か彼方の存在なので」)ですが、少しでもそれに近づけることができたのなら幸いです。

〇タン塩さん
お褒めにあずかり光栄です。
やっぱりアヤナミストとしてはゲロ甘を書きたいなと思います。
少しでもこの甘ったるい空気を醸し出せるようになれたら幸いです。
メンテ
Re: 私が一番欲しいのは ( No.5 )
日時: 2015/04/12 01:44
名前: tamb

灰原哀の声が聞こえる(笑)。相当思い込みなんだけど、名探偵コナンの灰原哀には綾波さんを感じさせる部分があって、それはもちろん声優が同じ人って部分もあるんだけど、それだけではない何かがあるような気がするんですよね。外見に比べて妙に大人っぽかったりとか(灰原哀はそういう設定だけど)。

この話は、誤解を恐れずに言えば語尾に違和感が結構あって、例えば〜なの、とか、〜かしら、とかなんだけど、それは懐かしの「綾波さんの今日思ったこと」に通じる違和感で、もし意識して書いてるなら驚異だし、無意識ならその感覚は大事にして欲しい。私には絶対書けない。

まあしかし、何というか、綾波さんも大変ですね(笑)。
メンテ
Re: 私が一番欲しいのは ( No.6 )
日時: 2015/04/18 02:38
名前: 史燕

〇tambさん
灰原さんっぽいといわれるとそんな気もしてきますね。
違うキャラクターなんですけど、似ている部分があって、無意識にそちら寄りになってしまったのかもしれません。

というわけで、書き方は無意識です。
しいて言えば心理描写多めの作品にしようと思っていたくらいで、「そっけないのはやだな」と思ったのか気が付いたら「〜なの」等の語尾が付いてました。

「綾波さんの今日思ったこと」はうゆきゅうさんのFFですよね。
あれに通じると言っていただけたのはうれしいです。

無意識なので次は書けないと思いますけど(笑)。

綾波さんはいつもいつも大変そうですが、得てして恋する女の子は大変なんだと思います(勝手な想像ですが)。
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Re: 私が一番欲しいのは ( No.7 )
日時: 2015/09/05 04:44
名前: HIROKI

可愛い綾波だね。好意に値するよ。この綾波が好きってことさ。

綾波らしさを失わせずに、いわゆる「普通の女の子」に変化させていくのって難しいものだわ。

しかも、綾波一人称でなんて、僕には書けないよ。そんなの、書けるわけないじゃないか。

---

「あ、綾波は、誕生日プレゼント何が欲しい?」

僕がそう訊くと、綾波は黙ったまま、しばらく僕の顔をじぃ〜っと見つめ返す。

「ご、ごめん。そうだよね、こんな、急に言われても、分かんないよね。は、はは」
「・・・イカリクン」

僕があわてて、取り繕うようにぎこちない笑いを作ろうとした時、綾波の口から小さな声が漏れた。僕は思わず、驚いて聞き返す。

「え?」
「碇君、そう言ったの」

---

「あ、綾波は、誕生日プレゼント何が欲しい?」

僕がそう訊くと、綾波は黙ったまま、しばらく僕の顔をじぃ〜っと見てから、口を開いた。

「あなたには分からないの?」
「え?その・・・そ、そんなの分かるわけないじゃないか」

「そう・・・なら、これで、いいわ」

綾波は、そういって僕に近寄り、そっと背伸びをして、僕の唇に口をつけた。

---

「レイは、誕生日プレゼント何が欲しい?」

僕がそう訊くと、レイは黙ったまま、しばらく僕の顔をじぃ〜っと見てから、悪戯な瞳を輝かせて笑いながら応える。

「うふふっ、あててみて」
「そ、そんなぁ、ずるいよ。わかんないから、訊いてるのに」

「わたしが欲しいもの、ホントーに、わからない?」
「え、だ、だって・・・その・・・レイの欲しいもの・・・」

僕には、なんとなく、レイが何を言おうとしてるのか・・・その・・・分からなくもないんだけど・・・

「その・・・僕たちは未だ中学生だから・・・そういうのは、まだ、ちょっと・・・」
「うふふっ、シンジ、何のこと言ってるの?」

「も、もう! ずるいよ、レイ」

「シンジがいれば、なーんにも要らない!」

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Re: 私が一番欲しいのは ( No.8 )
日時: 2015/09/06 20:56
名前: 史燕

〇HIROKIさん
>可愛い綾波だね。好意に値するよ。この綾波が好きってことさ。
ありがとうございます。

>綾波らしさを失わせずに、いわゆる「普通の女の子」に変化させていくのって難しいものだわ。
それができたらいいな、と思いながらなかなかできないでいます。
(本編の)綾波レイという人はかなり特殊で、自分のことを面に出すのはあまりしてくれなくて……。
それでもやっぱり彼女も女の子なわけですから、当然思っているであろういろいろなことがあるはずですので、そのあたりをがんばって描き出してみました。

シンジ視点での3パターン、これはやられました。
何がすごいって、全部ちゃんと「綾波レイ」なことがすごい。
ただ、シンジ君も大変な側なんだなとも。
朴念仁なのは擁護しないけど。


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Re: 私が一番欲しいのは ( No.9 )
日時: 2015/09/09 22:51
名前: HIR…

『ボク、ニンジン? ・・・あれ? 綾波がうさぎなの?』

人参になった僕と、うさぎの着ぐるみをかぶった綾波の姿を、ふと、僕は思い浮かべる。

『僕が人参・・・僕は綾波にかじられて・・・』

 ポリッ、カリカリ

・・・うさ耳をはやした綾波・・・ん?網タイツ? ・・・あれ?

----

ゴメンナサイ by 謎の酔っ払い。
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Re: 私が一番欲しいのは ( No.10 )
日時: 2015/09/12 23:25
名前: 史燕

バニーのレイに食べられるシンジ……。
愛ゆえに?
うーん、愛が深すぎて私にはわからない領域に。
メンテ

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