「綾波レイの幸せ」掲示板 四人目/小説を語る掲示板・ネタバレあり注意
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fld_nor.gif 非常感謝
投稿日 : 2009/05/31 00:00
投稿者 DRA
参照先
【タイトル】太谢谢你了
【記事番号】-2147482824 (2147483647)
【 日時 】05/09/10 23:05
【 発言者 】DRA

『シンちゃん、ビールとって。』
『シンちゃん、これあんま美味しくないわね。』
なんだよミサトさん。
いつもいつも僕をこき使って。
なーにが【美味しくないわね】だよ。
思っちゃ悪いけどミサトさんのカレーより数千倍マシだよ、僕の料理は。
まぁミサトさんに料理を任せることはできないから、僕が担当するのはいいとして。
なんで雑用までやらせるのさ。
確かにネルフではミサトさんは上司で僕は部下だよ。
でも、今は家にいるんだからさ。
それって【越権行為】って言うんじゃないの。
いい大人なんだから自分でやってよ。


『シンジ、シャンプー無くなったから買ってきて。』
『バカシンジは私の言う通りにすればいいのよ。』
なんだよアスカ。
いつもいつも僕を下僕のように扱って。
僕は普通の人間なんだよ。
感情のないロボットじゃないんだから。
アスカのワガママにはいつもいつも付き合ってられないんだよ。
でも、しかたなく付き合ってるけどさ。
少しくらい恩を感じてもいいんじゃないの?
恩を感じるどころか僕をいつも叩いてさ。
いい加減にしてよ。


『シンジ、お前には失望した。』
『帰れ。』
なんだよ父さん。
いつもいつも僕をバカにしたような言い方してさ。
ちょっとは褒めてもいいんじゃないの?
イヤイヤながらエヴァに乗って戦ってるのにさ。
なにが【帰れ】だよ。
どうせ僕が先生のところに帰ったら無理やりにでも連れ戻すくせにさ。
本当に血が繋がってるのか疑わしいよ。


もう・・・・・限界だ。


『探さないでください。』

一枚の書置きを遺して僕は家を出た。
月が照らす街路を歩く。
当てもなく街をさまよう僕に声を掛けてくれたのは綾波だった。

「・・・碇くん。」
「あっ綾波。どうしたの?こんな遅くに。」
「・・・・・・。」
俯いて蒼髪で隠れた顔からは何も見えないが、わずかな隙間から赤くなった肌が見える。
「こんな暗い時間に一人で女の子が歩いてちゃ危ないよ。」
「・・・碇くんはいいの?」
「ぼっぼくは別にいいんだよ、うん男だから。」
核心部分をつかれ、ちょっと慌ててしまう。
本当は好きで出歩いているわけじゃないんだけどね。
そう思っても口に出せない自分が悲しい。

いつものように会話が途切れてしまったが、意外にも綾波のほうから話しかけてきた。
「・・・お腹すいてるの。」
「えっ?あっそうなんだ、今からどこか食べに行くの?」
「・・・ええ。」
「そう、じゃあ気をつけてね。」

これで会話が終わったので僕は綾波に背を向けて歩き出す。
歩き出すって言っても、どこにも行くあてがないんだけどね。
なんとなくブルーになってしまう。
一歩を踏み出そうとしたが何かに引っ張られた。
見ると綾波が僕の服をつかんでいる。
「あっあの、どうしたの?」
「・・・お腹すいてる?」
ちょっと上目遣いの綾波。
普段見ることがないその表情に、僕は少しツバを飲み込んだ。
「いっいや、別にすいてないけど。」
「・・・そう。」
ひどくがっかりした様なのかため息を吐いている。
「あっ・・なんだかお腹すいちゃったかな。」

家出前に夕食をきちんと取っており、お腹いっぱいの状態。
でも、綾波のこんな悲しそうな顔を見るのはイヤだったからついウソをついてしまった。
花が咲いたかのように嬉しそうな顔をする綾波。
でも、表情の変化を見分けられるのは僕くらいだろう。
初対面の人なら今の顔も無表情に見えてしまうに違いない。


「・・・一緒に・・・一緒に食べに行かない?」
「い、いいけど・・・どこにいくの?」
普段とは違う積極的な綾波に少し驚く。


「・・・中華飯店。」
ズッシリと胃に重いものが落ちる。
自分でも顔から血の気が引くのが分かる。
中華飯店って・・・こんな時間に中華料理食べるの。
餃子、ラーメン、麻婆豆腐、チャーハン。
それら脂っこい料理が頭の中を駆け巡る。
一筋の湿った汗が頬を伝う。

「・・・やっぱり一人で食べる。」
「どっどうして?」
「・・・イヤそうな顔してるから。」
「ぜっ全然イヤじゃないよ、うん。」
「・・・そう。」
綾波の悲しそうな顔は見たくないと思い慌てて笑顔を作る。
そんなにイヤな顔してたかなぁ。
あまり人の顔色など気にしない綾波が言うんだから間違ってるはずないか。


僕達は店に着くまで会話らしい会話はしなかった。
僕が学校の事ネルフの事などを話しかけ、綾波はそれに頷くだけ。
前まではこの静か過ぎる空気に不安でいっぱいになっていたが、今はなんだか心地よかった。

中華飯店に着き、座敷へ座る。
メニュー表をテーブルに広げた。
「綾波はなに食べるの?」
「・・・麻婆豆腐。」
「えっ・・そうなの?」
『私、ニンニクラーメンチャーシュー抜き』
そう言うと思ったので、これには驚いた。
でも。
綾波はラーメンしか食べない変な子。
そう思っていた自分がいたことに気付く。
ぼっ僕はなんて最低なんだ、綾波は普通の子じゃないか。
僕と同じでちょっと感情表現が下手なだけなんだ。
「綾波、ごめん。」
そう思うと自然に口が開いた。

「・・・どうして謝るの?」
「なんか綾波のこと誤解してたから。」
「・・・そう。」

運ばれてくる料理。
麻婆豆腐と冷やし中華。
本当はお腹いっぱいでスープだけでも限界だった。
でも、スープだけだと綾波に不審がられてしまう。
そう考えた僕は多少無理をした。


蓮華で麻婆豆腐をすくって食べ始めた。
食べていくうちに少しずつ口元が汚れる。
それなのに全くその事を気にしていない様子の綾波。
なんだか子供みたいだな。
「ほらっ綾波、口元汚れてるよ。」
なんだか可愛らしい綾波の口元をティッシュで拭いてあげる。
その僕の腕を綾波がつかむ。
「・・・私、子供じゃない。」
「あっ・・ごっごめん。そんなつもりでやったわけじゃないよ。」
怒らせてしまったと思い慌てて謝る。
「・・・でも、イヤじゃないから。」
「そっそう。」
でも、返ってきた言葉はそうじゃなかった。
耳まで赤くなってる綾波。
そんな綾波の表情を見て僕は内心ドキドキしてしまった。

料理を大方食べ終えたところで、ふとある事を思った。
いつもの綾波なら僕なんかに構わず一人で食事をするはず。
なのに今日に限って・・・なんでだろう?

「綾波はなんで僕を誘ったの?」
「・・・碇くんとこうして話をしてみたいと思ったから。」
「えっ?僕と。」
こう思っちゃ悪いけど綾波は会話をあまり好まないタイプのはず。
それが僕とお喋りしたいなんて・・・ちょっと驚いたな。

「・・・誰かと話しながら食事をするという事をしてみたかったから。」
「そうなんだ。」
綾波も出会った頃よりずいぶん変わったから。
きっと人との繋がりを無意識に求めてるんだろうな。
そんな事を思い、同時に自分を恥じた。
ミサトさんやアスカの繋がりを自分から断ち切ってしまった事を。
帰って二人に謝らないといけないな。

「・・・また付き合ってくれる?」
「僕でよかったらいつでもいいよ。」
「・・・・・・。」
「あっ綾波、どうしたの?」
何も言ってこないのでまた自分が何かしてしまったのかと慌てる。
「・・・謝謝。」
「えっ?なっなんで中国語なの?」
そんな事言うとは思っていなかった。
今日の綾波には驚かされっぱなしだ。

「・・・中華飯店にいるから。」
この日、僕は久しぶりに思いっきり笑った。
綾波は僕を見て不思議がっていたけど。


清算をすませ店を出る。
時計を見ると10時前だった。

「・・・明天見。」
綾波に送っていこうかと言おうとした時、綾波のほうから声を掛けてきた。
「あのさ、なんて言ったの?」
聞きなれない中国語だったので聞き返す。
「・・・碇くんがあの時サヨナラなんて言うなよって言ったから。」
「?・・・・あっ!また明日。」
僕の返事を聞くと満足したのか、少し表情を崩し足早に帰っていった。


【タイトル】Re: 太谢谢你了
【記事番号】-2147482823 (-2147482824)
【 日時 】05/09/10 23:15
【 発言者 】DRA

タイトルが文字化け&打ち間違えしてしまったような気が多分にする。
【非常感謝】が本当です。
昼に中華食べてたら何となく書きたくなりました。
中華料理大好き人間ですから。


【タイトル】Re: 太谢谢你
【記事番号】-2147482822 (-2147482824)
【 日時 】05/09/11 00:26
【 発言者 】なお。

 中華、いいですね。私も好きです。
 ただ、あまり凝ったものではなく安心感がある定番のやつ限定。
 何年か前、中華街のあるお店にコースを食べに行きました。結構高いのを選んだのですが、
前菜に出てきた豚は凄く美味しく感動したところ、後から出てきたものはこれといって際立っ
たものはなく、むしろ近所の中華料理屋で酢豚でも食べてた方がよっぽどましってなくらいで
した。
 いつかリベンジしちゃるw


> 当てもなく街をさまよう

 宛、ですかね?


> いつものように会話が途切れてしまったが、意外にも綾波のほうから話しかけてきた。
> 「・・・お腹すいてるの。」

 これって女性がよく使う表現だそうで、直接目的を伝えるのではなく、今の自分の気持ちだ
けを伝えて相手(男性)に汲み取ってもらえるようアピールするのだそうです。
 一緒に行かない?と聞くのはレイらしくないし、そう考えると彼女は案外女の子らしいのか
もしれないですね。


> 花が咲いたかのように嬉しそうな顔をする綾波。
> でも、表情の変化を見分けられるのは僕くらいだろう。
> 初対面の人なら今の顔も無表情に見えてしまうに違いない。

 わかるけど、これほど表情が出ないのを花が咲いたかのようにというのはどうかと。
 これを他にどう表現するかとなると難しいですけどね。


> 「ぼっぼくは別にいいんだよ、うん男だから。」

 ここが好き。言い訳がシンジらしくて。
 是非、胸を張って言って欲しいw


> こんな時間に中華料理食べるの。

 21:00頃でしょうか。この時間に中華を食べるのって変かな?


> 綾波はラーメンしか食べない変な子。
> そう思っていた自分がいたことに気付く。
> ぼっ僕はなんて最低なんだ、綾波は普通の子じゃないか。

 ラーメンしか食べないから変な子だと思っていたのが他の食事をして普通だとわかったとこ
ろで、最低だ、とまでなるかな?
 他にも要素がないと偏見の目で見ていたのを後悔させるには少し強引な気がしました。


> 食べていくうちに少しずつ口元が汚れる。
> それなのに全くその事を気にしていない様子の綾波。
> なんだか子供みたいだな。

 オッケー!
 自分が書くレイってこんなイメージなんで、かなりツボですw


> 「・・・誰かと話しながら食事をするという事をしてみたかったから。」

 ゲンドウとはしていないのだろうか?
 これは言い訳かな?


> 綾波も出会った頃よりずいぶん変わったから。
> きっと人との繋がりを無意識に求めてるんだろうな。
> そんな事を思い、同時に自分を恥じた。
> ミサトさんやアスカの繋がりを自分から断ち切ってしまった事を。
> 帰って二人に謝らないといけないな。

 謝らないと、までの流れがすごく自然でうまいです。


> 「・・・謝謝。」
> 「・・・中華飯店にいるから。」
> 綾波は僕を見て不思議がっていたけど。

 ここも大好き。やっぱレイにはボケ役が似合いますw


> 僕の返事を聞くと満足したのか、少し表情を崩し足早に帰っていった。

 いい感じですね。
 ただ、今までの中国語はボケじゃなくて計算して話していたように思えてしまいますw

 書き出しが不満からの家出なんで、このあと帰ってどうしたのかってのも知りたいです。
 終わらせ方が、なんだか続きそうな感じなんで。


【タイトル】Re: 太谢谢你了
【記事番号】-2147482821 (-2147482824)
【 日時 】05/09/11 21:23
【 発言者 】北並

中華・・・ですか。
あまり食べないですけど、嫌いではないです。
近くにお店がないもんで・・・。
たまに食べるとおいしいんですけどね。

内容は結構面白かったです。
起承転結がしっかりしてると言うか。

>ひどくがっかりした様なのかため息を吐いている。
>「あっ・・なんだかお腹すいちゃったかな。」

自分だったらこの二つの間に
「なんか、とてつもなく悪いことしたような気分」
とかを入れるかもと思いました。
その様子を見て行動した感を出すなら、間(ま)をとったほうがいいと思うんです。
いえ、偉そうに人に言える立場じゃないんですけど。

>蓮華で麻婆豆腐をすくって食べ始めた。

最初はシンジ君がしたのかと思いました。
でも、

>食べていくうちに少しずつ口元が汚れる。
>それなのに全くその事を気にしていない様子の綾波。

これにつなげるなら頭に「綾波は」が必要だと思います。
でもかなりかわいいです、このレイは。
シンジ君が苦笑してるようなのもいいです。

>「・・・私、子供じゃない。」

>「・・・でも、イヤじゃないから。」

ここら辺はすごいです。
恥ずかしいんだけどして欲しい、と言うような感じがよく出てると思います。

>「・・・また付き合ってくれる?」

勇気を振り絞って言った感じですね。
シンジ君があまりそう思ってない風なのもいいですw

>「・・・碇くんがあの時サヨナラなんて言うなよって言ったから。」

ここが一番萌えです(笑)
素直にシンジ君の言ったこと守ってるのがめんこいですw

しかしシンジ君、10時前までかかったなら送っていかなきゃいかんよw


【タイトル】Re: 太谢谢你了
【記事番号】-2147482819 (-2147482824)
【 日時 】05/09/13 01:52
【 発言者 】楓

麻婆豆腐食べたくなりました(笑)
…ではなくて。

恥ずかしがりながらも、シンジ君を食事に誘うレイちゃんが可愛いです。
関係ないのですが、明天見ってなんと読むのでしょうか?

…皆さん色々つっこんでて私にはもう言うことがないです…。


【タイトル】Re: 太谢谢你了
【記事番号】-2147482814 (-2147482824)
【 日時 】05/09/13 19:37
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

■DRAさん
>【非常感謝】が本当です。

 すごい化け方だ(笑)。親記事って修正できたかな。直しときます?

>家出前に夕食をきちんと取っており

 この辺が実にシンちゃんらしい(笑)。

 そして深読みに入ります(爆)。

 これはきっとレイちゃんの罠です。ミサトにはこき使うように、アスカには下僕のよう
に扱うように、ゲンドウにはバカにするように、それぞれ要請していたのです。
 で、シンジがそろそろ限界を迎えるタイミングを見計らって、待ち伏せしていたのです。

>「綾波はなんで僕を誘ったの?」
>「・・・碇くんとこうして話をしてみたいと思ったから。」

 そういうことです。別にネルフとかで「お腹へった」とか言ってもいいような気もしま
すが、アスカがいますからね。


■北並さん
>しかしシンジ君、10時前までかかったなら送っていかなきゃいかんよw

 全力で同意(笑)。

mailto:tamb○cube-web.net


【タイトル】Re: 太&#35874;&#35874;&#20320;了
【記事番号】-2147482806 (-2147482824)
【 日時 】05/09/14 21:57
【 発言者 】牙丸

わーい中華料理だ~w
私も中華料理好きです。
小さい頃、中華街に何度か連れて行ってもらってました。

>見ると綾波が僕の服をつかんでいる。
可愛いです。こういう表現。
レイって無口な分、行動に出ますからね。
でもそれが幼いって感じもするんですよね。

>綾波はラーメンしか食べない変な子。
これには笑いました。
ラーメンしか食べないって・・・
シンジの中では、レイは3食カップ麺でも食べてるのだろうか?

>本当はお腹いっぱいでスープだけでも限界だった。
>でも、スープだけだと綾波に不審がられてしまう。
>そう考えた僕は多少無理をした。
こう書いているんでしたら、もう少しこの状態を引っ張ってもいいかと思います。
無理した後が、通常とあまり変わってないので。

>「・・・また付き合ってくれる?」
>「僕でよかったらいつでもいいよ。」
ここがとてもいい。また2人で仲良く食べにいってほしいものです。

■なお。さん
>この時間に中華を食べるのって変かな?
21:00ぐらいですよね?
変ではないとは思いますが、その時間だと中華はちょっと重いかと思います。

■北並さん
>しかしシンジ君、10時前までかかったなら送っていかなきゃいかんよw
私も同意します。
>「こんな暗い時間に一人で女の子が歩いてちゃ危ないよ。」
と、冒頭で言ってますし。


【タイトル】Re: 太&#35874;&#35874;&#20320;了
【記事番号】-2147482805 (-2147482824)
【 日時 】05/09/15 16:55
【 発言者 】CNG

CNGの中国語講座のはじまりはじまりー(拍手が巻き起こる)
【非常感謝】は「フェイチャンガンシェ」
【謝謝】は「シェシェ」
【明天見】は「ミンテンチェン」
です。
でも明天見ってあんまり言わなかった記憶がある。大体は再見で済んでたし。
いらんつっこみすみません。

この後シンジがどうしたのかが気になる。
怒られるとか思ってたらめちゃくちゃ心配されてたりとか。
続き書いてほしいです。


【タイトル】Re: 太&#35874;&#35874;&#20320;了
【記事番号】-2147482789 (-2147482824)
【 日時 】05/09/16 22:50
【 発言者 】DRA

「た・・ただいま。」
恐る恐るドアを開いて中に入る。
ああ、ミサトさんとアスカ怒ってるだろうな。

帰ってくるなりいきなりリビングに正座をさせられる僕。
それを上から見おろす2人。
『シンジ君、言いたいことがあるならはっきりしなさい。』
『バカシンジ、覚悟はできてんでしょうね。』
僕は俯きながら必死に言い訳する。


あり得そうな現実に、ため息が出る。
ゆっくりと足音を立てないように真っ暗なリビングへ。
暗くて何も分からないので、明かりをつける。
見るとミサトさんとアスカがテーブルに突っ伏して寝ていた。
それを見てすぐに理解した。
僕が帰ってくるの待ってたんだ。
「ごめん、2人とも。心配かけて。」
寝ている2人に毛布を掛けてあげた。

翌日。
日曜日の今日は午前中に洗濯、掃除を済ませた僕は散歩に出かけた。
朝、2人とも昨夜のことを何も言ってこなかったけど黙ったまま洗濯と掃除を手伝ってくれた。
なんだかすごく嬉しくなって、その後に昨日の事をきっちりと謝って許してもらった。
それで今に至る。
まぶしいくらいの太陽を肌で感じながら空を見る。
そういえば綾波って今日の午前中はシンクロテストがあったんだっけ。
こんないい天気だから綾波も散歩とかしてるのかなぁ。

「・・・碇くん。」
公園を通り過ぎようとした時、買い物袋を持った綾波と出会った。
「あっ綾波、こんにちは。なんか偶然だね、今日は買い物?」
「・・・ええ。」
「そうなんだ、なに買ったの?」
「・・・お肉と野菜。」
お肉って・・・綾波、肉食べれたっけ?
そんな疑問が浮かぶ。
ボケッとしていた僕に綾波が少し遠慮がちに喋ってくる。
「・・・また付き合ってほしい。」
一瞬、質問の意味を分かりかねたが昨日の事が頭の中でよみがえる。
「しょ食事ってこと?いいけど、どこで?」
「・・・私の家。」
「綾波の?いいけど、綾波って料理できたっけ?」
「・・・どうしてそういうこと言うの?」
無機質な声にわずかながら含まれる怒気。
それに少し驚く。
「だっだって綾波が料理したところ見たことないから、ちょっと不安かなって。」
一度、綾波の家に行ったとき全くと言っていいほど調理道具がなかった。
それに食事などはほとんど外で済ませている。
そんな綾波に料理なんて出来ないだろうと思うのが普通だし料理をする綾波を想像することができない。

僕の言い方が悪かったのか、少し眉間にシワを寄せてそっぽ向く綾波。
誰がどう見ても怒っているとしかいえない顔。
「ごっごめん、そんなつもりじゃ・・・。」
怒らせてしまったので慌てて謝る。

「・・・もう宿題うつさせてあげない。」
許してくれるどころか、さらに怒ってしまった。

「ホントにごめん、わっわかったよ綾波の家でご飯たべよう。」
手を合わせて平謝りをする。
ものすごく情けない格好なのは自分でもよく分かった。
手を合わせたのがよかったのか、それを見た綾波は少し頷いてくれた。
許してくれたんだと思い、先を歩く綾波を追いかけた。


ドアを開いた瞬間、僕は凍った。
満面の笑みを浮かべた父さんがベッドに座っていたから。
それはもう不気味なくらいすごい笑顔で、こっちに向かって(正確には綾波に向かって)手まで振っていた。
あ然となりながらも僕は静かにドアを閉めた。
「・・・綾波、なんで父さんがいるの?」
「・・・私が料理を作ると言ったら着いて来た。」
「そう・・・・なんだ・・あのさ、綾波はお喋りしながら食事がしたいって言ってたでしょ、それなら僕帰ってもいいかな?ほらっ父さんがいるんだし。」
宿題は捨てがたいが、なにが悲しくて父親と共に食事を取らなければならないのか。
綾波となら静かながらも落ち着くことが出来る。
しかし、そこに父親が混じってしまえば落ち着くどころか気が滅入ってしまう。

「・・・それがなに?」
そんなことはどうでもいい、そう受け取れる言葉。
でもここで引き下がるわけにはいかない。

ここで引き下がったら、父さんと食事をともにすることになるから。
「だから、父さんがいるんだよ?僕は父さんのこと苦手なのに。」
「・・・碇くん。」
じっと僕を見る。
その瞳の強さに気おされる。
「なっなに?」
「・・・約束やぶるの?」
「えっ?そっそんな・・・。」
反射的に後ろへ少し下がってしまったが、綾波はそれに合わせて前に出る。
至近距離から僕をまっすぐ見つめ、絶対に僕を逃がさない構えを見せた綾波。
その口が小さく動く。
「・・・昨日の約束、やぶるの?」
「うっ・・・・・えっと・・・・。」
約束はやぶりたくない・・・けど父さんと食事は・・・・。

僕を見下しながら無言で箸を動かす父さん。
辺りは静まり返り、噛む音しかしない。
そんな光景が目に浮かぶ。

でも、約束をやぶってしまったら・・・・。
話しかけても無視されるかもしれない。
話しかけてもらえないかもしれない。

一時の苦痛と永遠の苦痛。
どちらを取るのが最良なのかは僕にも分かる。
父さんと食事・・・しかたない昨日約束したんだ。
分かったよ、そう言おうとした時ドア越しから不気味な声が耳に入る。

『レイィィィ、食事にしようぅぅぅぅぅぅ。』

それは地の底から何かが這い上がってくるような不気味なものだった。


それを聞いて僕の心は一つに決まる。
無言で綾波の手を無理やり握って足早にその場から逃げる。
握られた綾波は目を少し広げ、驚いたような顔をしたけどイヤそうではなかった。
マンションから遠ざかり、肩で息をする。

「あっ綾波、外で食事をしよう。」
「・・・どうして?」
「やっぱり家の中で食べるより外のほうがいいと思うし。」
「・・・約束。」
我ながらマズイ言い訳だなと思ったけど、その通りマズかった。
綾波が『約束』を持ち出してきたから。

約束か・・・綾波は誰かとお喋りしながら食事がしたい。
僕は父さんとだけは食事をしたくない。
それなら約束をやぶらない方法はただ一つ。

「違うんだよ、そうじゃなくて綾波の手料理は僕だけに食べさせて欲しいんだ。」
これなら父さんと食事をすることもなく、また綾波との約束も守れる。
我ながら名案だと思った。

「・・・。」
コクンと頷く綾波。
頷いたので分かってくれたんだと思ったけど、なんだか様子がおかしい。
白い肌がこれ以上ないほど赤く染まってるから。
やっぱりさっき走らせちゃったのがマズかったのかな。
「あっあの・・・どうしたの?」

「・・・我愛・・・。」
「ウォアィニィ・・・?それってなに?」
聞いたことのない中国語だったので聞き返した。
「・・・教えない。」
「なっなんで?」
「・・・これ以上胸が痛くなるのはイヤだから。」
「はぁ?・・・・そう。」
いまいち納得できなかったけど、綾波が教えてくれないっていうのであれば仕方ない。
僕はそれ以上聞くことなく、綾波と一緒に食事をとることにした。


続編ぽくしてみました。

■tambさん
タイトルの件、なおせそうなら、是非なおして下さい。
お願いします。
■CNGさん
中国語講座、非常感謝です。
私も再見でいいかなって思ってたんですけど、ここはあえて見栄を張って一般にはあまり知られてなさそうな言葉をつかいました。
私自身、これを書くまで意味すら知りませんでしたけど。
■なお。さん
>この時間に中華を食べるのって変かな?
私の場合、中華は昼に食べるのが多いので・・・やっぱり夜食べると重たくなっちゃいますし。


【タイトル】Re: 【非常感謝】
【記事番号】-2147482788 (-2147482824)
【 日時 】05/09/17 00:17
【 発言者 】なお。

 レイが作ろうとした料理は、やっぱり中華なんでしょうね。
 前回食べに行ったのは、シンジに作ってあげたくて、そのための勉強に行ったのかもしれませんね。
 そして、たまたまシンジに合ってしまったからついでに誘ってしまったとか。
 レイさん、なかなかやりますな。積極的です。


> あり得そうな現実に、ため息が出る。

 ありそうありそう。
 シンジの気持ちがよくわかります。
 その前の、実際そうなったかのような書き方にはやられました。


>「ごめん、2人とも。心配かけて。」

 ちゃんと心配されていたシンジは嬉しかったでしょうね。


> まぶしいくらいの太陽を肌で感じながら空を見る。

 気分も晴れて快晴!


> 「・・・どうしてそういうこと言うの?」
> 無機質な声にわずかながら含まれる怒気。

 なんかカワイイ。


> 「・・・もう宿題うつさせてあげない。」

 もっとカワイイw
 すねた表情が浮かびます。


> なにが悲しくて父親と共に食事を取らなければならないのか。

 オリジナルのシンジとはちょっと違いますよね。父親は苦手でも求めてますから。
 ただ気になっただけで、もちろんダメってわけじゃないです。これもアリでしょう。


> 「違うんだよ、そうじゃなくて綾波の手料理は僕だけに食べさせて欲しいんだ。」

 「・・・。」は、これはプロポーズの言葉、とでも思っているんでしょうねw


 私は中華を食べるのに、流石に朝は避けたいけど夜の遅めに食べるのは気になりません。
 遅くなったならそれだけお腹が空いている訳で、その分ガッツリいきたくなります。
 щ(゜Д゜щ)カモォォォン!!!
 こんな状態ですねw


【タイトル】Re: 非常感謝
【記事番号】-2147482785 (-2147482824)
【 日時 】05/09/17 20:48
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>

 タイトル修正したっす。

>CNGの中国語講座のはじまりはじまりー(拍手が巻き起こる)
>【非常感謝】は「フェイチャンガンシェ」
>【謝謝】は「シェシェ」
>【明天見】は「ミンテンチェン」
>です。

 おお~。マジ感動。なんて国際色豊かなサイトなんだろう。


 そして続編。あまりにもゲンドウが可愛そうだ(^^;)。

mailto:tamb○cube-web.net

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