「綾波レイの幸せ」掲示板 四人目/小説を語る掲示板・ネタバレあり注意
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公園まで
投稿日
: 2005/03/27 00:00
投稿者
:
のの
参照先
:
公園まで - のの 04/08/08-02:07 No.193
投稿者削除 - 04/08/08-02:12 No.194
「公園まで」について - のの 04/08/08-02:16 No.195
Re: 「公園まで」について - tama 04/08/08-02:54 No.196
Re: 公園まで - tamb 04/08/09-22:20 No.206
レスと補足 - のの 04/08/10-00:39 No.213
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タイトル : 公園まで
記事No : 193
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 02:07
投稿者 : のの <nono0203○po1.dti2.ne.jp>
「さすがに日に焼けた?」
ぼくはきみにたずねる。
「すこしは健康的でしょ?」
「いや、なんかもう、見慣れないから。「おい、ほんとか?ほんとにお前か?」みたいな」
「なにそれ」
「だってねえ、白くない綾波って、綾波か?って話だよ」
「いいの、夏なんだから」
「まあね。で、楽しかった?」
「すっごく」
八月がはじまったころ、僕らは学校のプールの帰り道を一緒に歩いている。一学期に出なかったぶんの補講を三学年まとめてやる日があって、それが今日だった。
「海か、小学生のとき以来行ってないなあ、そういえば」
「じゃあもう、六年くらい?」
「そうなるね。六年生の時に行って以来。ま、あんまり楽しめなかったけどね」
「例によって?」
「そう、例によって、さ。わが人生で一番つまらん時だったからね」
肩をすくめ、静かに笑いあった。ほとんどセミの声ばかりが耳に飛び込んでくる。目には「落ち着け!」って言いたくなるほどの強い陽射しだ。まったくばかみたいに暑い。
「サードインパクトからこっち、四季が戻ったのはいいけど、だからって夏が涼しくなるってワケじゃあないのがね」
「もちろん」
「そこらへん、なんとかならなかった?」
「無茶言わないでよ」
こんな会話も、今は平気でできるようになった。時がたつって言うのは、時には悲しいけれど時には絶大な効果を及ぼすこともある。それは素晴らしいことだとこういうときには痛感する。
ぼくらは再会してまだ三ヶ月しかたっていないけど、ぼくはすこし大人になったし、彼女はある意味では精神年齢は低くなったかもしれない。上がったのかもしれない。ともかく、まっとうな17歳になったことだけは確かだ。
「受験、どうするの?」
「本決まりじゃないけど、国立をメインに、私立いくつかかな。綾波は?」
「わたしもそんなところかな。でももしかしたら、いまのバイト先でそのまま就職しちゃうかも。それでもいいかもって思ってるの」
「ああ、それもいいんじゃない?よさそうなとこみたいだしね」
まさか綾波が絵本専門の出版社でバイトしてるなんて、昔の彼女しか知らない人たちには想像もつかないだろう。
「うん。ああ――暑いわね」
確かに。
「夏だからねえ……」
路地に入ったときに言ったものだから、思わず口惜しそうな言い方になってしまった。
「なに悦に入ってるのよ」
「いやいや、べつにそんなんじゃないよ」
路地を抜けて左に曲がると公園がある。彼女はそこを通って家に帰り、ぼくはそこを右に曲がらなきゃいけない。ただそれだけだ。
「そう?」
「そう」
ぼくらは恋人同士ってワケじゃない。だからこのままどっちかの家に二人で行くことはできない。それだけのことだ。
学校からお互いの住んでるアパートまで、実は近い道がある。それでも僕らがこの道を使うのはおたがいが新鮮だからだろう。四年近いブランクのおかげで、する会話ひとつひとつが新しかった。
数分だけ余計に話ができるこの道。とはいえ学校から公園まで数分の、数分だけ余計なブルースってやつだ。
「そういえば日向さんからパイナップルをもらったんだよ、それも三つも。もらってくれない?」
「碇くんのところにも来たの?」
「ああー……駄目ですか、お互いさまってヤツか」
「みたい」
「なんか親戚の趣味で大量に野菜が送られてくるらしいね」
「羨ましいわ」
「お、さすが菜食主義」
「もう肉食べられるけど。でもそれより、実はわたし送られてくる前の日にカットパインていう、もう切ってあるのを買っちゃって、もう別に……っていう感じなのよね」
「はっはっは」
「笑いごとじゃないんだから。誰かもらってくれないかなと思ってるんだけど。ただ切って食べるだけじゃ飽きてきちゃうし」
「モノがいいだけに、惜しい」
「ほんと」
路地を抜け、公園の前で足を止めた。すこしの間、お互い黙ってる時間があった。この数秒の間の意味を考えてみたくなったけど、やめた。邪推はしない、というのがサードインパクト後のわが人生の課題だ。
「じゃあさ、明日ウチに来なよ。一緒にゼリーでも作ろう」
「あ、賛成」
「じゃあ一時すぎに電話くれる?」
「OK」
「よし、きまり。じゃあまた、明日」
「うん、バイバイ」
そう言って、ぼくは公園に入ってく彼女を見送り、自分も歩きだした。
もう一度、振り返る。
彼女もこっちを見ていた。手を振りあって、今度こそ別れた。
ったく、ぼくらはどんな関係だ?
夏休みにゼリーを作る仲。それ以上でも、以下でもない。
公園までは一緒に帰る仲。
「そうだ、いい機会だ」
明日、好きだって言おう。目の前で、たやすく言えたらいいなって思うんだ。
「公園までなんて言わないでいい仲だ」
そのためにも、完璧なゼリーを作りたい。シチュエーションは大切だ。
「よしっ」
明日は決戦だ。
足取りは軽い。
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タイトル : 「公園まで」について
記事No : 195
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 02:16
投稿者 : のの <nono0203○po1.dti2.ne.jp>
お手軽FF第二弾。
昨日とはまったく別のシチュエーション。
時間はは前の倍かかった。ちょっと言葉が多いかなあ。
こういうので肩の力抜いてかないと本チャンがもたないんで(^^;
昨日は大言壮語吐いたけど、このテのポップなFFはこれ以上の質は書けないと思うのであった(汗)
まあこんなのも書けるんだぞ、ってことで。
どうしよう、サルベージしたほうがいいのかな?
どうでしょうtambさん。
ちなみにタイトルは邦楽バンドGRAPEVINEから拝借。
3rdALBUM「Here」の1曲目「想うということ」
6thALBUM「イデアの水槽」12曲目「公園まで」よりそのまま。
というか「公園まで」は話のスジもこんな感じです。親と子の話だけど。まあ息抜きFFだから許されるだろう(汗)
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タイトル : Re: 「公園まで」について
記事No : 196
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 02:54
投稿者 : tama
> どうしよう、サルベージしたほうがいいのかな?
> どうでしょうtambさん
サルベージをしたほうがいいと思いますに一票です、tambさん。
遅寝も3文の得はあったなぁ。
この友達以上恋人未満の状況って、一番心臓に悪い時期ですよね。
どきどきしすぎて(--;
でも微笑ましい・・・
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タイトル : Re: 公園まで
記事No : 206
投稿日 : 2004/08/09(Mon) 22:20
投稿者 : tamb
日に焼けるレイってのは全然発想になかった。これはいいかもしれない。
>「そこらへん、なんとかならなかった?」
>「無茶言わないでよ」
こういうフレーズって、泣けるんだよ。おれは。
>数分だけ余計なブルースってやつだ。
いかにもののさん風の気障なシンジ君(笑)。でも高校三年くらいの彼って、こうな
るのは凄くナチュラルな感じもする。ののさんが書くからだろうか。
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タイトル : レスと補足
記事No : 213
投稿日 : 2004/08/10(Tue) 00:39
投稿者 : のの <nono0203○po1.dti2.ne.jp>
読み返してみての補足とかレス。
>tamaさん
感想アリガットさんです。
少なくとも「想うということ」「公園まで」はサルベージしたいと思ってます。本チャンが終ってからの予定ですが。
かなり脳内麻薬でてるうちに書いたので即興のわりにいいものが書けたと思ってます。
この、すごい中途半端な仲って書いてる最中すらムズムズきます(笑)
>tambさん
>>「そこらへん、なんとかならなかった?」
>>「無茶言わないでよ」
>こういうフレーズって、泣けるんだよ。おれは。
これはあとからつけたした会話です。
なんでつけたしかのか?それはもう、一瞬のひらめきです(^^;
オマーン戦の俊輔のアウトサイドシュートみたいなもんですわ(無茶な比較)
余計なブルースうんぬんは、すげえわざとらしいですね(笑)
ここは消すか消さないか迷ったけど。実はまだ迷ってるのでサルベージの際に消しちゃうかもしれません(爆)
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WEB PATIO
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公園まで - のの 04/08/08-02:07 No.193
投稿者削除 - 04/08/08-02:12 No.194
「公園まで」について - のの 04/08/08-02:16 No.195
Re: 「公園まで」について - tama 04/08/08-02:54 No.196
Re: 公園まで - tamb 04/08/09-22:20 No.206
レスと補足 - のの 04/08/10-00:39 No.213
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タイトル : 公園まで
記事No : 193
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 02:07
投稿者 : のの <nono0203○po1.dti2.ne.jp>
「さすがに日に焼けた?」
ぼくはきみにたずねる。
「すこしは健康的でしょ?」
「いや、なんかもう、見慣れないから。「おい、ほんとか?ほんとにお前か?」みたいな」
「なにそれ」
「だってねえ、白くない綾波って、綾波か?って話だよ」
「いいの、夏なんだから」
「まあね。で、楽しかった?」
「すっごく」
八月がはじまったころ、僕らは学校のプールの帰り道を一緒に歩いている。一学期に出なかったぶんの補講を三学年まとめてやる日があって、それが今日だった。
「海か、小学生のとき以来行ってないなあ、そういえば」
「じゃあもう、六年くらい?」
「そうなるね。六年生の時に行って以来。ま、あんまり楽しめなかったけどね」
「例によって?」
「そう、例によって、さ。わが人生で一番つまらん時だったからね」
肩をすくめ、静かに笑いあった。ほとんどセミの声ばかりが耳に飛び込んでくる。目には「落ち着け!」って言いたくなるほどの強い陽射しだ。まったくばかみたいに暑い。
「サードインパクトからこっち、四季が戻ったのはいいけど、だからって夏が涼しくなるってワケじゃあないのがね」
「もちろん」
「そこらへん、なんとかならなかった?」
「無茶言わないでよ」
こんな会話も、今は平気でできるようになった。時がたつって言うのは、時には悲しいけれど時には絶大な効果を及ぼすこともある。それは素晴らしいことだとこういうときには痛感する。
ぼくらは再会してまだ三ヶ月しかたっていないけど、ぼくはすこし大人になったし、彼女はある意味では精神年齢は低くなったかもしれない。上がったのかもしれない。ともかく、まっとうな17歳になったことだけは確かだ。
「受験、どうするの?」
「本決まりじゃないけど、国立をメインに、私立いくつかかな。綾波は?」
「わたしもそんなところかな。でももしかしたら、いまのバイト先でそのまま就職しちゃうかも。それでもいいかもって思ってるの」
「ああ、それもいいんじゃない?よさそうなとこみたいだしね」
まさか綾波が絵本専門の出版社でバイトしてるなんて、昔の彼女しか知らない人たちには想像もつかないだろう。
「うん。ああ――暑いわね」
確かに。
「夏だからねえ……」
路地に入ったときに言ったものだから、思わず口惜しそうな言い方になってしまった。
「なに悦に入ってるのよ」
「いやいや、べつにそんなんじゃないよ」
路地を抜けて左に曲がると公園がある。彼女はそこを通って家に帰り、ぼくはそこを右に曲がらなきゃいけない。ただそれだけだ。
「そう?」
「そう」
ぼくらは恋人同士ってワケじゃない。だからこのままどっちかの家に二人で行くことはできない。それだけのことだ。
学校からお互いの住んでるアパートまで、実は近い道がある。それでも僕らがこの道を使うのはおたがいが新鮮だからだろう。四年近いブランクのおかげで、する会話ひとつひとつが新しかった。
数分だけ余計に話ができるこの道。とはいえ学校から公園まで数分の、数分だけ余計なブルースってやつだ。
「そういえば日向さんからパイナップルをもらったんだよ、それも三つも。もらってくれない?」
「碇くんのところにも来たの?」
「ああー……駄目ですか、お互いさまってヤツか」
「みたい」
「なんか親戚の趣味で大量に野菜が送られてくるらしいね」
「羨ましいわ」
「お、さすが菜食主義」
「もう肉食べられるけど。でもそれより、実はわたし送られてくる前の日にカットパインていう、もう切ってあるのを買っちゃって、もう別に……っていう感じなのよね」
「はっはっは」
「笑いごとじゃないんだから。誰かもらってくれないかなと思ってるんだけど。ただ切って食べるだけじゃ飽きてきちゃうし」
「モノがいいだけに、惜しい」
「ほんと」
路地を抜け、公園の前で足を止めた。すこしの間、お互い黙ってる時間があった。この数秒の間の意味を考えてみたくなったけど、やめた。邪推はしない、というのがサードインパクト後のわが人生の課題だ。
「じゃあさ、明日ウチに来なよ。一緒にゼリーでも作ろう」
「あ、賛成」
「じゃあ一時すぎに電話くれる?」
「OK」
「よし、きまり。じゃあまた、明日」
「うん、バイバイ」
そう言って、ぼくは公園に入ってく彼女を見送り、自分も歩きだした。
もう一度、振り返る。
彼女もこっちを見ていた。手を振りあって、今度こそ別れた。
ったく、ぼくらはどんな関係だ?
夏休みにゼリーを作る仲。それ以上でも、以下でもない。
公園までは一緒に帰る仲。
「そうだ、いい機会だ」
明日、好きだって言おう。目の前で、たやすく言えたらいいなって思うんだ。
「公園までなんて言わないでいい仲だ」
そのためにも、完璧なゼリーを作りたい。シチュエーションは大切だ。
「よしっ」
明日は決戦だ。
足取りは軽い。
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タイトル : 「公園まで」について
記事No : 195
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 02:16
投稿者 : のの <nono0203○po1.dti2.ne.jp>
お手軽FF第二弾。
昨日とはまったく別のシチュエーション。
時間はは前の倍かかった。ちょっと言葉が多いかなあ。
こういうので肩の力抜いてかないと本チャンがもたないんで(^^;
昨日は大言壮語吐いたけど、このテのポップなFFはこれ以上の質は書けないと思うのであった(汗)
まあこんなのも書けるんだぞ、ってことで。
どうしよう、サルベージしたほうがいいのかな?
どうでしょうtambさん。
ちなみにタイトルは邦楽バンドGRAPEVINEから拝借。
3rdALBUM「Here」の1曲目「想うということ」
6thALBUM「イデアの水槽」12曲目「公園まで」よりそのまま。
というか「公園まで」は話のスジもこんな感じです。親と子の話だけど。まあ息抜きFFだから許されるだろう(汗)
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タイトル : Re: 「公園まで」について
記事No : 196
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 02:54
投稿者 : tama
> どうしよう、サルベージしたほうがいいのかな?
> どうでしょうtambさん
サルベージをしたほうがいいと思いますに一票です、tambさん。
遅寝も3文の得はあったなぁ。
この友達以上恋人未満の状況って、一番心臓に悪い時期ですよね。
どきどきしすぎて(--;
でも微笑ましい・・・
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タイトル : Re: 公園まで
記事No : 206
投稿日 : 2004/08/09(Mon) 22:20
投稿者 : tamb
日に焼けるレイってのは全然発想になかった。これはいいかもしれない。
>「そこらへん、なんとかならなかった?」
>「無茶言わないでよ」
こういうフレーズって、泣けるんだよ。おれは。
>数分だけ余計なブルースってやつだ。
いかにもののさん風の気障なシンジ君(笑)。でも高校三年くらいの彼って、こうな
るのは凄くナチュラルな感じもする。ののさんが書くからだろうか。
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タイトル : レスと補足
記事No : 213
投稿日 : 2004/08/10(Tue) 00:39
投稿者 : のの <nono0203○po1.dti2.ne.jp>
読み返してみての補足とかレス。
>tamaさん
感想アリガットさんです。
少なくとも「想うということ」「公園まで」はサルベージしたいと思ってます。本チャンが終ってからの予定ですが。
かなり脳内麻薬でてるうちに書いたので即興のわりにいいものが書けたと思ってます。
この、すごい中途半端な仲って書いてる最中すらムズムズきます(笑)
>tambさん
>>「そこらへん、なんとかならなかった?」
>>「無茶言わないでよ」
>こういうフレーズって、泣けるんだよ。おれは。
これはあとからつけたした会話です。
なんでつけたしかのか?それはもう、一瞬のひらめきです(^^;
オマーン戦の俊輔のアウトサイドシュートみたいなもんですわ(無茶な比較)
余計なブルースうんぬんは、すげえわざとらしいですね(笑)
ここは消すか消さないか迷ったけど。実はまだ迷ってるのでサルベージの際に消しちゃうかもしれません(爆)