「綾波レイの幸せ」掲示板 四人目/小説を語る掲示板・ネタバレあり注意
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無音の旋律
投稿日
: 2005/03/27 00:00
投稿者
:
あいだ
参照先
:
無音の旋律 - あいだ 04/08/08-12:58 No.198
Re: 無音の旋律 - tamb 04/08/09-22:22 No.207
Re: 無音の旋律 - CNG 04/08/10-17:17 No.221
Re^2: 無音の旋律 - tamb 04/08/11-20:28 No.229
Re^3: 無音の旋律 - tama 04/08/11-22:02 No.232
Re^2: 無音の旋律 - Kaz.Ueda 04/08/13-16:15 No.241
Re: 無音の旋律 - あいだ 04/08/12-18:53 No.237
Re^2: 無音の旋律 - tamb 04/08/12-20:31 No.239
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タイトル : 無音の旋律
記事No : 198
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 12:58
投稿者 : あいだ
柔らかい草を踏みしめて、僕は一つの場所を目指した。
それは広い広い、とても広大な場所の一角だった。
もっとも、探す必要もなく覚えている。
幾たびも足を運んだ。
一晩中泣き明かした事もあった。
こっそり掘り返そうとした事さえ有った。
この下に、彼女が埋まっている事が信じられなくて。
僕の記憶は、躊躇いすら許さずに、その場所へと足を運ばせる。
記憶と違わぬ光景の中に、それはあった。
暫しその前で佇んで、流れる風と時間に身を任せる。
感慨は、無い。ただあるのは、虚無。
僕は手を伸ばし、そっと表面にかぶった砂や埃を、手のひらで時間を掛けて払っていく。
座り込んで、刻み込まれた文字を読む。
それは僅か一行だけの、彼女を表すもの。
忘れ得ぬ名前。
どんな言葉をもってしても他人に説明する事など出来ない、名状しがたい感情がこみあげる。
抱えていた花束を、そっと横たえ。
傍らに立つ女性に合図をすると、彼女も膝を付いた。
僕らは手を合わせた。
かの少女の、魂に安らぎあれと。
少女がここに葬られたのは、僕が望んだからだ。
少女はその事について、何も望まなかった。
だからこれは、ただ僕のエゴイズムだ。
この事については、いくつかの案が提示されていた。
だけど僕はその全てを拒んだ。
何よりも、彼女が生きていたときに何を望んでいたかを考えれば。
――――――ヒトとして生きたい――――――
だから僕は共同墓地を望んだ。
ここには、名も判らぬまま埋葬された人もいる。
遺骨すら無い人もいる。
だけど、NERVと言う組織で生きた人達の、人間の最後の安息場所。
だから僕は彼女が人の中で弔われる事を望んだ。
さほど長いとは言えない人生の中で、彼女が何を得て何に満足して逝ったのかは判らない。
ただ残された者達は、逝った者が幸せであった事を祈るのみ。
あれからもう10年が経ったよ。
君は僕の夢にも現れてはくれないね。
早く忘れろ、って言うのかい?
あいにくと忘れられそうにはないよ。
だって君は僕の―――
「ねえ。僕、この間ようやく独り立ちしたんだよ。
小さな喫茶店を構えたんだ。ホントに小さな喫茶店だけどね。
――――――君と、一緒に厨房に立ちたかったな・・・」
僕は立ち上がり、彼女を促した。
彼女は立ち上がり、静かな声で不意にこう言った。
「ねぇ。契らずの誓い。・・・覚えてる?」
・・・もちろんだ。
忘れるはずもない。
これはあの子が25で命を失った時、僕の中から溢れ出た想いなんだから。
「僕が忘れるわけ無いよ。これは僕の・・・
いや、僕のことより、なんで―――こそ何時までも一人で居るのさ。
あの時一緒に誓ってくれたことは、それはとても嬉しかったけれど、でもそれに何時までも縛られているのは良くないよ」
すい、と顔を背けて、私は歯軋りをしたくなるのを堪えた。
誰の所為よ!
アンタが契らずの誓いなんて立てるから・・・
私はもうアンタ以外と契るつもりはないんだから、私も死ぬまでこのままなのよ!
私は契りに囚われてるんじゃない! アンタに囚われてるのよ!
心の中で叫んでも、コイツは気づきもしない、って判ってるけど。
その代わり、アンタより先になんか死んであげない。
アンタが死ぬのを見届けて、その後私も後を追って死ぬの。
それがわたしに残された、たった一つ出来る事だから。
これが私の、私一人だけの『桜の誓い』よ!
「別に。いい男なんてそうそう居ないし、私ももうおばちゃんだしね。
このままでいいわよ、チルドレンなんかと一緒になるなんて幸せにはなれないんだから」
そう、ずっとこの関係を続けていくのだ。
私もコイツも誰とも結婚なんてしない。
心は繋がっていても、身体を寄せ合うことはしない。
絆と一言で呼ぶにはあまりにも深くて修復出来ない傷もある。
人は永遠に分かり合う事なんて出来ない。
だけど、それでも残るものはある。
「ホントに言い出したら聞かない所は昔のままだね・・・」
苦笑混じりの声。
年を経て、深みの増した彼の声は、とても心が落ち着く。
「・・・悪いけどそれはお互い様よ」
私も苦笑で返す。
本当に、コイツは普段優柔不断なクセに、いざとなったらどんな言葉も聞きやしないんだから。
ふと私はある女性を思い出した。
タイミングを見て言ってやろうと思っていたことだ。
確か彼女は・・・あの子が死んだ年と同じ・・・25歳だったか。
「アンタのトコで雇った子、居るでしょ。あの子、あんたに惚れてるわよ。
・・・流石に店ではしないけど、街中で出会った時なんか、親の敵でも見るような目で私を睨むんだから。
店で私がアンタと話してるのを見て、気が気じゃないんでしょうね。
この私にあんな顔出来るなんて、優しい顔して結構芯の通ったしっかりした子よ?」
彼の驚いた顔を見て、私は少し溜飲を下げた。
このニブチンが。
「・・・まさか。彼女はすごくいい子だけど、そんな風に見たことはないよ」
「アンタがどう見るかじゃなくて、彼女がどう見てるか、よ」
彼は少し俯いて。
「・・・仮にそうだとしても、僕には『契らずの誓い』があるからね」
風が、ひょおっ、っと音を立てて、私達の間を通り過ぎた。
あの頃と変わらない赤毛が、すぐ傍らに立つ彼の顔を叩いた。
私には、あの子が抗議をしているように思えた。
いつまで私に縛られるつもり、とでも言うように。
「もう、僕には誰かを愛する事なんて出来ないよ。そんな感情は、あの時涙と一緒に、全部どこかへ行ってしまったからね」
また来年も来るから。
僕は桜の花びらに囲まれながら、そう誓った。
・・・またね、――――・・・・
僕が小さく呟いた名前は風に乗って吹き散らされていく。
それでいい。
風に乗って、君の元まで届くといい。
僕は振り返らずにその場を後にした。
背後には、美しく舞い乱れる桜の、荘厳で鮮烈で清冽な、無音の旋律。
「桜の誓い」end of episode. ~無音の旋律~
忘れ去られないように私もショボイ投稿などしてみる。
と言っても書き起こしたわけでもなんでもなくて、本来は中編ぐらいになる予定の、ホントのさわり部分だけ書いていたものである。
しかもここから投稿したらオチがどうなっているのか丸見えなので、もう続きは書く事はないかもしれない。
なんでだろう? 私は甘酸っぱいSSを書く事を目指していたはずなのに、「You are my~」といい、コレといい、全くかけ離れた存在だ。
愚痴っていても仕方がないので、また書けるようになる時が来るのを待つとしよう。
これはこれで気に入っているのだし。
さて、批判批評よろしく。といっても、これだけではストーリーも何もないただの情景描写、自己満足なナルシズムっぽいし、なにか書ける程の長さでもない事も承知しているけれど(苦笑
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タイトル : Re: 無音の旋律
記事No : 207
投稿日 : 2004/08/09(Mon) 22:22
投稿者 : tamb
>しかもここから投稿したらオチがどうなっているのか丸見えなので
見えてないよ。書くべし。つか、ここで止めんな(爆)。精神衛生上よろしくない。
リクエスト的には「少女がここに葬られたのは、僕が望んだからだ。」にもかかわ
らず、「こっそり掘り返そうとした事さえ有った。」というあたりのシンジの狂気につ
いては掘り下げて欲しい所です。
一般論として皆さんに質問。クリスチャンの人がクリスチャンの人の墓参りをする
特、いわゆる「拝む」という形で手は合わせないと思うんだけど(手を組むんだと
思う)、あれは故人の宗教観に合わせるものなのか、それとも墓参りをする人の
宗教観なのか、どっちであるべきなんだろう。そもそも「拝む」という行為に宗教
色はどの程度あるものなのだろうか。
つまり、「僕らは手を合わせた。」ってのにちょっと違和感があったんですけど。
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タイトル : Re: 無音の旋律
記事No : 221
投稿日 : 2004/08/10(Tue) 17:17
投稿者 : CNG
いつもこのページに入り浸っているCNGと申すものです。
よろしくお願いします。
> 一般論として皆さんに質問。クリスチャンの人がクリスチャンの人の墓参りをする
> 特、いわゆる「拝む」という形で手は合わせないと思うんだけど(手を組むんだと
> 思う)、あれは故人の宗教観に合わせるものなのか、それとも墓参りをする人の
> 宗教観なのか、どっちであるべきなんだろう。
クリスチャンは拝む対象は神のみなので亡くなった人や先祖の礼を拝むという事はしません。
ただ、亡くなった彼、彼女に敬愛の念をこめてお花を手向けたり、お墓の掃除をしたりはします。
お葬式は故人の宗教に合わせて行われるものでしょうが、そこでの行為は個人個人の行為なので、自分の宗教信念に合せて行うものでしょう。
ちょっと大仰にいえば自分の行き方を表すものだからです。
>そもそも「拝む」という行為に宗教
> 色はどの程度あるものなのだろうか。
一般的に日本人は神社仏閣で手を合わせるという行為をそんなに重大なものとして考えないかもしれません。
しかし、あるものに頭を下げるという事は(勿論単に挨拶するといった意味じゃなくてですよ)
自分は何を信じて従うかという事ですから、宗教的なものなのではないでしょうか?特にクリスチャンにとっては重大なことと思います。
…っとまあここまでずら~っと書いたんですけど、
堅い話ですいません。
初書き込みでこれって正直どうなんだろうとか思ったり。う~ん。
> つまり、「僕らは手を合わせた。」ってのにちょっと違和感があったんですけど。
う~ん…僕としてはあまり問題無いような気がします。
上でさんざん言っといてなんですが(笑)
>見えてないよ。書くべし。つか、ここで止めんな(爆)。精神衛生上よろしくない。
まったく同意見でございます(笑)
頑張って下さい。
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タイトル : Re^2: 無音の旋律
記事No : 229
投稿日 : 2004/08/11(Wed) 20:28
投稿者 : tamb
CNGさん、初めまして。編集人のtambと申します。諸々よろしくお願いします。
親戚にクリスチャンの人がいまして、一緒に墓参りに行く機会があったりするの
ですが、若い頃は先鋭的だったのか決して手を合わせたりせず、「先祖に頭を
下げるという気持ちは」、などと親と揉めてたりしたんですが、葬式の時は手を合
わせてたような気がしたんで、どうかなと思ったんです。
私自身はクリスチャンになり損ねたりしたんで、こういう細かい部分が妙に気に
なったりするんですよね。
ご意見ありがとうございます。
>ちょっと大仰にいえば自分の行き方を表すものだからです。
納得です。そして、
>初書き込みでこれって正直どうなんだろうとか思ったり。う~ん。
全然OKですよ。お気になさらずどうぞ。
>>見えてないよ。書くべし。つか、ここで止めんな(爆)。精神衛生上よろしくない。
>まったく同意見でございます(笑)
てなことであいださん、続きをよろしく(笑)。
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タイトル : Re^3: 無音の旋律
記事No : 232
投稿日 : 2004/08/11(Wed) 22:02
投稿者 : tama
CNGさんはじめまして。
編集人のtamb氏の義理の姉です。(嘘)
>あいださん
アスカってこういう位置になると切ないキャラですよね、本当。
でもいい雰囲気だと思います。
正直でもここまでアスカがこうだと、シンジ、幸せにしてあげてよ!と
柄にもなく思いました。わたし極度のLRSなんでこういうこと思うの
珍しいんですが(^^;
で、続きは?(爽)
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タイトル : Re^2: 無音の旋律
記事No : 241
投稿日 : 2004/08/13(Fri) 16:15
投稿者 : Kaz.Ueda
はじめまして
この世界の中で最も面白くない小説もどきにもならないような小説を大胆にもここに投稿しているKaz.Uedaです。
以後、お見知りおきを・・・
さて、宗教に関してですが・・・・・・・・・
中学生にはわからないです。
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タイトル : Re: 無音の旋律
記事No : 237
投稿日 : 2004/08/12(Thu) 18:53
投稿者 : あいだ
>tambさん
> リクエスト的には「少女がここに葬られたのは、僕が望んだからだ。」にもかかわ
> らず、「こっそり掘り返そうとした事さえ有った。」というあたりのシンジの狂気につ
> いては掘り下げて欲しい所です。
掘り下げるべきですかね?
ここは受け手次第かな、と思っていたところなんですが。
> つまり、「僕らは手を合わせた。」ってのにちょっと違和感があったんですけど。
そか、クリスチャンの流れを汲む人間だと、この辺は違和感があるかも知れませんね。(途中のレスより)
私は無信心な人間ですが、家系としては仏門なんで、つい、そう書いてしまったんですが。
そう考えると、文章書く時には宗教観も念頭に置いて書かないといけなくなりますね(^^;
>CNGさん
初めまして、へぼSS書き&絵描きのあいだと申します、以後お見知りおきを。
色々書いて下さって有り難うございます。私は資料をかき集めて書くようなマメなタイプではないので、こういう部分も多々あるかと思います。
気になる所がありましたら、今後とも色々ご指導下さいませ。
>tamaさん
> アスカってこういう位置になると切ないキャラですよね、本当。
> でもいい雰囲気だと思います。
> 正直でもここまでアスカがこうだと、シンジ、幸せにしてあげてよ!と
> 柄にもなく思いました。わたし極度のLRSなんでこういうこと思うの
> 珍しいんですが(^^;
有り難うございます(^^;
私がアスカを書くと、こういう位置づけが多いですね。LASの気はないんで、この先は書かないですけど(^^;
アスカにも幸せになって欲しいとは思うんですが、LASの気はないし、カヲル出しちゃうとコミックテイストっぽくみえるか、嘘くさく感じて、どうも出せないんですよね。。。
>レス下さった皆様。
> 続き書けよ(笑)
えーと、書くとしても当分先の予定でございますし、なんといいますか、善処致します(^^;
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タイトル : Re^2: 無音の旋律
記事No : 239
投稿日 : 2004/08/12(Thu) 20:31
投稿者 : tamb
>掘り下げるべきですかね?
掘り下げると作品の質が高まるかどうかはあれですが(^^;)、とりあえずリクエスト
でございますな(笑)。
>クリスチャンの流れを汲む人間だと、この辺は違和感があるかも知れませんね。
アスカがクリスチャンとは思えないですし、仮にそうだったとしても熱心ではなかっ
ただろうなとは思いますが、なんとなくアスカがお墓に向かって手を合わせてる
図は想像しにくいんですよね。このケースだと、むしろ睨んでる方が似合うかなと。
まぁでも宗教観まで念頭に置かなくてもいいかなとは思います。アスカがお墓に
手を合わせるって図に違和感を感じるということが一般化できるとは思えないん
で(^^;)。あいださん的に「そう言われてみると違和感あるな」と思わなければその
ままでいいのではないかと。
>善処致します
とりあえず言質は取った(爆)。
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WEB PATIO
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無音の旋律 - あいだ 04/08/08-12:58 No.198
Re: 無音の旋律 - tamb 04/08/09-22:22 No.207
Re: 無音の旋律 - CNG 04/08/10-17:17 No.221
Re^2: 無音の旋律 - tamb 04/08/11-20:28 No.229
Re^3: 無音の旋律 - tama 04/08/11-22:02 No.232
Re^2: 無音の旋律 - Kaz.Ueda 04/08/13-16:15 No.241
Re: 無音の旋律 - あいだ 04/08/12-18:53 No.237
Re^2: 無音の旋律 - tamb 04/08/12-20:31 No.239
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タイトル : 無音の旋律
記事No : 198
投稿日 : 2004/08/08(Sun) 12:58
投稿者 : あいだ
柔らかい草を踏みしめて、僕は一つの場所を目指した。
それは広い広い、とても広大な場所の一角だった。
もっとも、探す必要もなく覚えている。
幾たびも足を運んだ。
一晩中泣き明かした事もあった。
こっそり掘り返そうとした事さえ有った。
この下に、彼女が埋まっている事が信じられなくて。
僕の記憶は、躊躇いすら許さずに、その場所へと足を運ばせる。
記憶と違わぬ光景の中に、それはあった。
暫しその前で佇んで、流れる風と時間に身を任せる。
感慨は、無い。ただあるのは、虚無。
僕は手を伸ばし、そっと表面にかぶった砂や埃を、手のひらで時間を掛けて払っていく。
座り込んで、刻み込まれた文字を読む。
それは僅か一行だけの、彼女を表すもの。
忘れ得ぬ名前。
どんな言葉をもってしても他人に説明する事など出来ない、名状しがたい感情がこみあげる。
抱えていた花束を、そっと横たえ。
傍らに立つ女性に合図をすると、彼女も膝を付いた。
僕らは手を合わせた。
かの少女の、魂に安らぎあれと。
少女がここに葬られたのは、僕が望んだからだ。
少女はその事について、何も望まなかった。
だからこれは、ただ僕のエゴイズムだ。
この事については、いくつかの案が提示されていた。
だけど僕はその全てを拒んだ。
何よりも、彼女が生きていたときに何を望んでいたかを考えれば。
――――――ヒトとして生きたい――――――
だから僕は共同墓地を望んだ。
ここには、名も判らぬまま埋葬された人もいる。
遺骨すら無い人もいる。
だけど、NERVと言う組織で生きた人達の、人間の最後の安息場所。
だから僕は彼女が人の中で弔われる事を望んだ。
さほど長いとは言えない人生の中で、彼女が何を得て何に満足して逝ったのかは判らない。
ただ残された者達は、逝った者が幸せであった事を祈るのみ。
あれからもう10年が経ったよ。
君は僕の夢にも現れてはくれないね。
早く忘れろ、って言うのかい?
あいにくと忘れられそうにはないよ。
だって君は僕の―――
「ねえ。僕、この間ようやく独り立ちしたんだよ。
小さな喫茶店を構えたんだ。ホントに小さな喫茶店だけどね。
――――――君と、一緒に厨房に立ちたかったな・・・」
僕は立ち上がり、彼女を促した。
彼女は立ち上がり、静かな声で不意にこう言った。
「ねぇ。契らずの誓い。・・・覚えてる?」
・・・もちろんだ。
忘れるはずもない。
これはあの子が25で命を失った時、僕の中から溢れ出た想いなんだから。
「僕が忘れるわけ無いよ。これは僕の・・・
いや、僕のことより、なんで―――こそ何時までも一人で居るのさ。
あの時一緒に誓ってくれたことは、それはとても嬉しかったけれど、でもそれに何時までも縛られているのは良くないよ」
すい、と顔を背けて、私は歯軋りをしたくなるのを堪えた。
誰の所為よ!
アンタが契らずの誓いなんて立てるから・・・
私はもうアンタ以外と契るつもりはないんだから、私も死ぬまでこのままなのよ!
私は契りに囚われてるんじゃない! アンタに囚われてるのよ!
心の中で叫んでも、コイツは気づきもしない、って判ってるけど。
その代わり、アンタより先になんか死んであげない。
アンタが死ぬのを見届けて、その後私も後を追って死ぬの。
それがわたしに残された、たった一つ出来る事だから。
これが私の、私一人だけの『桜の誓い』よ!
「別に。いい男なんてそうそう居ないし、私ももうおばちゃんだしね。
このままでいいわよ、チルドレンなんかと一緒になるなんて幸せにはなれないんだから」
そう、ずっとこの関係を続けていくのだ。
私もコイツも誰とも結婚なんてしない。
心は繋がっていても、身体を寄せ合うことはしない。
絆と一言で呼ぶにはあまりにも深くて修復出来ない傷もある。
人は永遠に分かり合う事なんて出来ない。
だけど、それでも残るものはある。
「ホントに言い出したら聞かない所は昔のままだね・・・」
苦笑混じりの声。
年を経て、深みの増した彼の声は、とても心が落ち着く。
「・・・悪いけどそれはお互い様よ」
私も苦笑で返す。
本当に、コイツは普段優柔不断なクセに、いざとなったらどんな言葉も聞きやしないんだから。
ふと私はある女性を思い出した。
タイミングを見て言ってやろうと思っていたことだ。
確か彼女は・・・あの子が死んだ年と同じ・・・25歳だったか。
「アンタのトコで雇った子、居るでしょ。あの子、あんたに惚れてるわよ。
・・・流石に店ではしないけど、街中で出会った時なんか、親の敵でも見るような目で私を睨むんだから。
店で私がアンタと話してるのを見て、気が気じゃないんでしょうね。
この私にあんな顔出来るなんて、優しい顔して結構芯の通ったしっかりした子よ?」
彼の驚いた顔を見て、私は少し溜飲を下げた。
このニブチンが。
「・・・まさか。彼女はすごくいい子だけど、そんな風に見たことはないよ」
「アンタがどう見るかじゃなくて、彼女がどう見てるか、よ」
彼は少し俯いて。
「・・・仮にそうだとしても、僕には『契らずの誓い』があるからね」
風が、ひょおっ、っと音を立てて、私達の間を通り過ぎた。
あの頃と変わらない赤毛が、すぐ傍らに立つ彼の顔を叩いた。
私には、あの子が抗議をしているように思えた。
いつまで私に縛られるつもり、とでも言うように。
「もう、僕には誰かを愛する事なんて出来ないよ。そんな感情は、あの時涙と一緒に、全部どこかへ行ってしまったからね」
また来年も来るから。
僕は桜の花びらに囲まれながら、そう誓った。
・・・またね、――――・・・・
僕が小さく呟いた名前は風に乗って吹き散らされていく。
それでいい。
風に乗って、君の元まで届くといい。
僕は振り返らずにその場を後にした。
背後には、美しく舞い乱れる桜の、荘厳で鮮烈で清冽な、無音の旋律。
「桜の誓い」end of episode. ~無音の旋律~
忘れ去られないように私もショボイ投稿などしてみる。
と言っても書き起こしたわけでもなんでもなくて、本来は中編ぐらいになる予定の、ホントのさわり部分だけ書いていたものである。
しかもここから投稿したらオチがどうなっているのか丸見えなので、もう続きは書く事はないかもしれない。
なんでだろう? 私は甘酸っぱいSSを書く事を目指していたはずなのに、「You are my~」といい、コレといい、全くかけ離れた存在だ。
愚痴っていても仕方がないので、また書けるようになる時が来るのを待つとしよう。
これはこれで気に入っているのだし。
さて、批判批評よろしく。といっても、これだけではストーリーも何もないただの情景描写、自己満足なナルシズムっぽいし、なにか書ける程の長さでもない事も承知しているけれど(苦笑
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タイトル : Re: 無音の旋律
記事No : 207
投稿日 : 2004/08/09(Mon) 22:22
投稿者 : tamb
>しかもここから投稿したらオチがどうなっているのか丸見えなので
見えてないよ。書くべし。つか、ここで止めんな(爆)。精神衛生上よろしくない。
リクエスト的には「少女がここに葬られたのは、僕が望んだからだ。」にもかかわ
らず、「こっそり掘り返そうとした事さえ有った。」というあたりのシンジの狂気につ
いては掘り下げて欲しい所です。
一般論として皆さんに質問。クリスチャンの人がクリスチャンの人の墓参りをする
特、いわゆる「拝む」という形で手は合わせないと思うんだけど(手を組むんだと
思う)、あれは故人の宗教観に合わせるものなのか、それとも墓参りをする人の
宗教観なのか、どっちであるべきなんだろう。そもそも「拝む」という行為に宗教
色はどの程度あるものなのだろうか。
つまり、「僕らは手を合わせた。」ってのにちょっと違和感があったんですけど。
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タイトル : Re: 無音の旋律
記事No : 221
投稿日 : 2004/08/10(Tue) 17:17
投稿者 : CNG
いつもこのページに入り浸っているCNGと申すものです。
よろしくお願いします。
> 一般論として皆さんに質問。クリスチャンの人がクリスチャンの人の墓参りをする
> 特、いわゆる「拝む」という形で手は合わせないと思うんだけど(手を組むんだと
> 思う)、あれは故人の宗教観に合わせるものなのか、それとも墓参りをする人の
> 宗教観なのか、どっちであるべきなんだろう。
クリスチャンは拝む対象は神のみなので亡くなった人や先祖の礼を拝むという事はしません。
ただ、亡くなった彼、彼女に敬愛の念をこめてお花を手向けたり、お墓の掃除をしたりはします。
お葬式は故人の宗教に合わせて行われるものでしょうが、そこでの行為は個人個人の行為なので、自分の宗教信念に合せて行うものでしょう。
ちょっと大仰にいえば自分の行き方を表すものだからです。
>そもそも「拝む」という行為に宗教
> 色はどの程度あるものなのだろうか。
一般的に日本人は神社仏閣で手を合わせるという行為をそんなに重大なものとして考えないかもしれません。
しかし、あるものに頭を下げるという事は(勿論単に挨拶するといった意味じゃなくてですよ)
自分は何を信じて従うかという事ですから、宗教的なものなのではないでしょうか?特にクリスチャンにとっては重大なことと思います。
…っとまあここまでずら~っと書いたんですけど、
堅い話ですいません。
初書き込みでこれって正直どうなんだろうとか思ったり。う~ん。
> つまり、「僕らは手を合わせた。」ってのにちょっと違和感があったんですけど。
う~ん…僕としてはあまり問題無いような気がします。
上でさんざん言っといてなんですが(笑)
>見えてないよ。書くべし。つか、ここで止めんな(爆)。精神衛生上よろしくない。
まったく同意見でございます(笑)
頑張って下さい。
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タイトル : Re^2: 無音の旋律
記事No : 229
投稿日 : 2004/08/11(Wed) 20:28
投稿者 : tamb
CNGさん、初めまして。編集人のtambと申します。諸々よろしくお願いします。
親戚にクリスチャンの人がいまして、一緒に墓参りに行く機会があったりするの
ですが、若い頃は先鋭的だったのか決して手を合わせたりせず、「先祖に頭を
下げるという気持ちは」、などと親と揉めてたりしたんですが、葬式の時は手を合
わせてたような気がしたんで、どうかなと思ったんです。
私自身はクリスチャンになり損ねたりしたんで、こういう細かい部分が妙に気に
なったりするんですよね。
ご意見ありがとうございます。
>ちょっと大仰にいえば自分の行き方を表すものだからです。
納得です。そして、
>初書き込みでこれって正直どうなんだろうとか思ったり。う~ん。
全然OKですよ。お気になさらずどうぞ。
>>見えてないよ。書くべし。つか、ここで止めんな(爆)。精神衛生上よろしくない。
>まったく同意見でございます(笑)
てなことであいださん、続きをよろしく(笑)。
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タイトル : Re^3: 無音の旋律
記事No : 232
投稿日 : 2004/08/11(Wed) 22:02
投稿者 : tama
CNGさんはじめまして。
編集人のtamb氏の義理の姉です。(嘘)
>あいださん
アスカってこういう位置になると切ないキャラですよね、本当。
でもいい雰囲気だと思います。
正直でもここまでアスカがこうだと、シンジ、幸せにしてあげてよ!と
柄にもなく思いました。わたし極度のLRSなんでこういうこと思うの
珍しいんですが(^^;
で、続きは?(爽)
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タイトル : Re^2: 無音の旋律
記事No : 241
投稿日 : 2004/08/13(Fri) 16:15
投稿者 : Kaz.Ueda
はじめまして
この世界の中で最も面白くない小説もどきにもならないような小説を大胆にもここに投稿しているKaz.Uedaです。
以後、お見知りおきを・・・
さて、宗教に関してですが・・・・・・・・・
中学生にはわからないです。
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タイトル : Re: 無音の旋律
記事No : 237
投稿日 : 2004/08/12(Thu) 18:53
投稿者 : あいだ
>tambさん
> リクエスト的には「少女がここに葬られたのは、僕が望んだからだ。」にもかかわ
> らず、「こっそり掘り返そうとした事さえ有った。」というあたりのシンジの狂気につ
> いては掘り下げて欲しい所です。
掘り下げるべきですかね?
ここは受け手次第かな、と思っていたところなんですが。
> つまり、「僕らは手を合わせた。」ってのにちょっと違和感があったんですけど。
そか、クリスチャンの流れを汲む人間だと、この辺は違和感があるかも知れませんね。(途中のレスより)
私は無信心な人間ですが、家系としては仏門なんで、つい、そう書いてしまったんですが。
そう考えると、文章書く時には宗教観も念頭に置いて書かないといけなくなりますね(^^;
>CNGさん
初めまして、へぼSS書き&絵描きのあいだと申します、以後お見知りおきを。
色々書いて下さって有り難うございます。私は資料をかき集めて書くようなマメなタイプではないので、こういう部分も多々あるかと思います。
気になる所がありましたら、今後とも色々ご指導下さいませ。
>tamaさん
> アスカってこういう位置になると切ないキャラですよね、本当。
> でもいい雰囲気だと思います。
> 正直でもここまでアスカがこうだと、シンジ、幸せにしてあげてよ!と
> 柄にもなく思いました。わたし極度のLRSなんでこういうこと思うの
> 珍しいんですが(^^;
有り難うございます(^^;
私がアスカを書くと、こういう位置づけが多いですね。LASの気はないんで、この先は書かないですけど(^^;
アスカにも幸せになって欲しいとは思うんですが、LASの気はないし、カヲル出しちゃうとコミックテイストっぽくみえるか、嘘くさく感じて、どうも出せないんですよね。。。
>レス下さった皆様。
> 続き書けよ(笑)
えーと、書くとしても当分先の予定でございますし、なんといいますか、善処致します(^^;
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タイトル : Re^2: 無音の旋律
記事No : 239
投稿日 : 2004/08/12(Thu) 20:31
投稿者 : tamb
>掘り下げるべきですかね?
掘り下げると作品の質が高まるかどうかはあれですが(^^;)、とりあえずリクエスト
でございますな(笑)。
>クリスチャンの流れを汲む人間だと、この辺は違和感があるかも知れませんね。
アスカがクリスチャンとは思えないですし、仮にそうだったとしても熱心ではなかっ
ただろうなとは思いますが、なんとなくアスカがお墓に向かって手を合わせてる
図は想像しにくいんですよね。このケースだと、むしろ睨んでる方が似合うかなと。
まぁでも宗教観まで念頭に置かなくてもいいかなとは思います。アスカがお墓に
手を合わせるって図に違和感を感じるということが一般化できるとは思えないん
で(^^;)。あいださん的に「そう言われてみると違和感あるな」と思わなければその
ままでいいのではないかと。
>善処致します
とりあえず言質は取った(爆)。