TOP
> 記事閲覧
1111111ヒット記念企画
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/30 18:14 |
投稿者 | : tomato |
参照先 | : |
ななしさん、始めまして???
昨夜読んだ時に、ふと、文字運びと描写に友の気配を…人違いの時はご容赦を。
ま、それは置いといて、雨という情景の中に互いに見知った者が出会う事の偶然と必然性が巧く溶け合っていて、これから始まるであろう、二人の仲が気配として残る感じは好感が持てましたよ。
等身大の淡い恋物語のなり染めになると思うと、大人の僕は昔を懐かしんで、リアルの14歳は切なさと期待にこの物語に共感を覚えたのではないでしょうか?
リアルの14歳になりたいです、が、困難です。
昨夜読んだ時に、ふと、文字運びと描写に友の気配を…人違いの時はご容赦を。
ま、それは置いといて、雨という情景の中に互いに見知った者が出会う事の偶然と必然性が巧く溶け合っていて、これから始まるであろう、二人の仲が気配として残る感じは好感が持てましたよ。
等身大の淡い恋物語のなり染めになると思うと、大人の僕は昔を懐かしんで、リアルの14歳は切なさと期待にこの物語に共感を覚えたのではないでしょうか?
リアルの14歳になりたいです、が、困難です。
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/29 20:42 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
■ななしさん
シリアス書けるのがとても羨ましいですw
こういう話が書きたいなと常々思っております。素敵な物語、ありがとうございました。
シリアス書けるのがとても羨ましいですw
こういう話が書きたいなと常々思っております。素敵な物語、ありがとうございました。
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/29 11:19 |
投稿者 | : ななし |
参照先 | : |
>諸注意:みなさん甘い話ですが甘くないです。ですです。
《 雨の日の臆病者 》 ななし
ぽつん
水滴が頬に当たった。僕は空を見上げる。西の空から黒い雲がたれ込んでいた。
学校からの帰り道、ミサトさんのマンションまで歩いて40分。頑張って走れば25分くらいだろうか?それまでに大降りにならなきゃいいなとショルダーバックのベルトをかけなおし歩く速度を速めた。
ぽつん
ぽつん
ぽつん
ぽつんぽつんぽつんぽつんぽつぽつぽつぽつ……
早歩きが小走りになり、いつの間にか全速力。
水滴は徐々に数を増やし途切れない連打、雨となり地上へ降り注いだ。半そでの白いTシャツと黒いズボンはびっしょり濡れ肌にぴったりくっつく。髪もすっかり濡れて前髪が額に張り付いた。髪から顔に流れた雨水を何度か拭ったが流れは止まらない。「まったく、ついてないや」と独り言をつぶやいた時、雨水が口に入った。少ししょっぱかった。
濡れた制服の重みと雨による体力の消耗、そしていきなり全速力で走ったことによる呼吸困難。
マンションまでは一気に走ろうと思ったけど体力の関係上やっぱり無理。
どこかで一旦雨宿りしたい。
僕は少し速度を落としながらこの近くに軒下などの雨が凌げそうな場所を考えた。頭に浮かんだのはここから300、いや500mくらい先にある、とある店の軒下。
そこの軒下には数時間に一本しかこないバスの停留所と古ぼけたベンチがある。その場所が今みたいに雨宿りを望んでる僕にとっては砂漠のオアシス的な場所になるのではないだろうか?状況は全く逆だけど。
そんな事を考えていたらバシャっと水溜りに足を踏み入れてしまった。もとより濡れた靴、どってことない。雨水ごとアスファルトを蹴り前へと駆ける。僕はショルダーバックを小脇に抱えなおし雨宿りと定めた古ぼけた休憩地点まで先を急ぐことにした。
⇔
だんだんと激しくなる雨、ようやく「雑貨屋」と書かれた大きい看板が見えてきた。その場所目掛けて僕は最後の力を振り絞って走る速度を上げる。
目的地まであと少し、なところで僕は店の軒下に先客がいる事に気づいた。誰だかを確認するよりも前に僕は雨からの避難を優先させ軒下へゴールする。ようやくの雨から開放に息を吐き出す。ショルダーバックをアスファルトの地面に下ろし、両手で足の膝を掴んで――体を逆「く」の字の状態で大きく息を吸って、吐いて、吸って、吐いてを繰り返した。
落ち着いたところで膝から両手を離し髪をかきあげる。体を起こして先に居た雨宿り仲間を確認する。
透明な水色のショートヘア、真っ白で綺麗な肌……ベンチに座る彼女は宝石のような赤い瞳でじっと僕を見ていた。
彼女と僕は数ヶ月前に知り合ったばかりのクラスメートであり、共に戦う仲間……なんだけどタイミングがずれて、というか話すきっかけがないというかで今の今までまともに話したことはない。一度あったけど、あの時ビンタされたし。いや、あれは僕の言葉運びが悪かったんだけど。
声をかけるか迷い、悩み、そして決意して僕は彼女の名前を呼んだ。
「綾波」
「碇君」
綾波は僕の名を呼んでくれた。僕の名を呼んでくれた事に嬉しさを感じ口元が緩んだ。
⇔
タンタンタンタタッタン
タタタタッタンタンタッタン
朽ちかけたトタン屋根に降り注ぐ雨。音が不規則に鳴り響く。音楽にならない音、だけどそれは一種のリズムとなり僕の耳に届く。
僕の後ろのガラス張りの引き戸を見た。頑丈に閉まった扉、僕がこの街に来た時から常にカーテンが引いてあり開いている場面を見た事がない。使徒の影響か分からないけど閉店してるようだった。
僕の名前を呼んだ綾波はすぐに視線をそらし雨が降る景色を見ていた。
僕は再び声をかけようかと思ったけど何回かのくしゃみと共に全身を襲った寒気で自分が風邪を引く手前だと気づき、大慌てで制服のYシャツを脱いで絞った。本当はTシャツも脱いで絞れればいいんだろうけど綾波がいる前でそんな事恥ずかしくてできないし……脱いだYシャツで体を拭いたりバックの中身が濡れてないか確認したり思いつく最善の事はした。でも、早く帰ってシャワーでも浴びないとヤバイんだろうなぁ……。
綾波が座ってるベンチを見た。誰かと誰かの相合傘、アニメのキャラクターやバカヤローの文字、いろんな落書き。僕は少しずつ、少しずつ自分の視野に綾波を映していく。あと少しで僕のフィルダーに綾波を捉える事ができる……
ゴロゴロゴロッ
いきなり大きな音が辺り一帯に鳴り響いた。その音に体を震わせ肩を強張らせた。僕は惜しみながら綾波から視界を外し雨が降る外の景色を見定めた。
辺りは水煙と雨粒しか見えない、違和感を生じるものは確認できない。音に不安を感じながら周囲に気を配り地面に放置したままの濡れたバックに手をかけた。
連絡手段である携帯を捜してる時、西の空がピカッと光った。そして山に雷が堕ちる。
使徒を連想させた大きな音の正体は雷だった。携帯にはネルフからの着信履歴は入ってない、使徒でない事を確認できた僕は緊張を解いた。
再び雷音が鳴り響いた。何度聞いても耳に慣れない音に内心ビビリながら綾波を見た。
綾波は毅然とした態度でベンチから微動だにせず西の空を見ていた。
彼女の左隣に大きな雫が落ちた。ベンチに落ちた雫が跳ねて彼女のスカートにかかる。その小さな水しぶきに気付く事無く、ただじっと雨の情景を見つめている。
ゴロゴロゴロッ
先程とは比べられない大きい音。耳を塞ぎ目をしかめた。両手で音をさえぎっていても雷音は聞こえる。長く続いた音がようやく聞こえなくなり静かに目を開いた。綾波は音に怯える事無く、雷の全てを受け入れるかのようにじっと西の空を見つめていた。
その姿を見て思った。
綾波の中に僕は存在しない。
雨に濡れた体が冷え全身に寒気がした。いや、体じゃない。心が冷えたから寒気がしたんだ。
寂しさに目に涙が溢れそうになる。
僕を見て欲しい、どうすれば綾波は僕を見てくれる?
「…………綾波は雨が好きなの?」
「どうしてそう聞くの?」
「あ、いや……」
僕が取った手段は抱きしめる事でもなく手を繋ぐ事でもなく、綾波に小さな質問をすることだった。
僕の言葉に反応して、と願いを込めた質問は綾波に届いた。
質問に対して質問返しをしてきた綾波。僕は言葉を詰まらせた。どうしよう、振り向いて欲しかったが故の質問だから実際のところ意味はまったくない。でも、ここで曖昧な事を言ったらせっかくの繋がりが消えてしまう。僕は体の冷たさを振り切るように下唇を強く噛み『意味』を考えた。
「あー、うん……そう、雨を受け入れているようだから」
必死で考えた綾波の質問への答え。さっきの綾波を見ての綾波のイメージをなんとか言葉にしてみた。僕の気持ちは伝わっただろうか?
「分からない」
だ、だよね……ごめん、と謝ろうとした、でもそれよりも先に綾波の言葉が続いた。
「でも、綺麗だと思う」
綾波は聞き返した。
「碇君は?」
「え?」
「碇君は雨、好き?」
綾波は雨を『綺麗』と表現した。
僕は雨をどう思っているのだろうか。
好きなのだろうか?嫌いなのだろうか?
綾波から目を逸らし、外を見た。先程から降り続ける雨。
目だけではなく五感を研ぎ澄ませる。
冷たい風が頬に触れた。
屋根から落ちた雫が肩に落ちた。
地面から立ち上がる雨独特の匂いを嗅いだ。
そして雨音、
そう、雨音。
「雨の日は音がしないんだ……雨の音は周りの音を吸収してくれる。雑音がない世界に落ち着いてる僕がいる」
雨の冷たさ、濡れた感触は好きになれない。今も早く帰ってさっぱりしたいと願っている自分がいる。でも、嫌いではない。雨が作り出す世界に惹かれている事に僕は初めて気づいた。
僕はその事に気づかせてくれた綾波を見た。綾波は僕を見つめていた。その視線に少し照れながら目を合わせ笑いながら答えた。
「僕は雨が好きだと思う」
その答えに綾波は笑ってくれた。その笑顔はヤシマ作戦の時に見た笑顔とはちょっと違って、僕の言葉に肯定を表す優しい笑顔だった。
今なら聞けるかもしれない。綾波に聞きたい事、聞けるかもしれない。
「ねぇ、綾波。綾波は――」
ビビーッ、ビッ
僕の言葉は車のクラクションに遮られ声がかき消された。雨が降る方を見るといつの間にか黒い車が止まっていた。運転席から黒服の男の人が降りてくる。
「ごめんなさい」
綾波は静かに立ち上がると僕に謝る。
黒服の人は傘を差しこっちへ歩いてきた。傘を差したまま軒下へ入るとその傘の中に綾波は当たり前のように入った。黒服の人そのまま振り向き、綾波と共にゆっくりと黒い車に向かっていく。僕は綾波が去るその姿をじっと見つめることしかできなかった。
後座席の車のドアが開き、綾波は車に乗り込む。
「……父さん」
綾波が乗り込む時に見えた。父さんが車に乗っている。綾波だけをじっと見て僕を見てくれない。父さんは僕に気づいていないのだろうか、それとも……いや、気づいていないだけだ。きっとそうだ、そうだと思い込む僕。
綾波が車に乗り込むと車は静かに立ち去っていった。
僕は雨から目を逸らし、綾波が座っていた場所を見つめた。
『綺麗』の言葉、優しい微笑み、聞きたかった事、車に乗っていた父さん――
父さんは僕を見てくれなかった
僕は頭を振った。さっきも思ったじゃないか、父さんは気づいてくれないだけだって。
ショルダーバックのベルトを手に握るとそのまま肩にかけた。そして迷いなく激しく降り注ぐ雨の中に飛び込む。
僕は、ただ走る。
綾波の笑顔を胸に秘め、それ以外何も考えず、ただひたすらにひたすらに――
きっと、雨は嫌な事を洗い流してくれる。
⇔
少女は車の窓から流れ行く景色を眺めていた。空は黒い雲、いつ止むか分からない雨が降り続く。
少女はぼそっと何かを呟きは。呟きは隣に座る黒ひげのサングラスの男に音として聞こえた。言葉が聞き取れなかった男は少女に声をかける。
「どうした、レイ」
「……何でもありません」
少女がそう答えると男は「そうか」と呟き、少女から視線を外し運転席に座る男になにやら指示を出していた。
少女は、彼の言葉が気になっていた。
碇君は私に何を言おうとしたのだろう。
私の名前を呼んで、何を聞こうとしたの?
少年の言葉を思い出す。
雨、音、落ちつく、私の名前
そして『好き』
雨に対しての言葉に少女の心が反応する。
少女には駆け抜けてく景色を映っていない。彼女の目には一人の少年が焼きついた。彼の事を思う事で胸に秘めた違和感が芽生える。それは寒々とした空気を感じさせない暖かな気持ち。
この気持ちは何?
少女の持ちゆる知識を持っても違和感に対する答えは出ない。彼女は口を動かす、声にせず名を呟く。それはさっきまで目を合わせていた優しき笑みを表現できる少年の名前。彼の事を何度も思う。その度に胸に暖かさを宿らせた。
彼女が違和感の名前と意味を知るのは、もう少し先の話である。
こっちの掲示板では始めまして、1111111ヒットおめでとうございます。めでたい企画に便乗してレイとシンジのお話を書いて見ました。一見さんの暴走。
最初に言っときますがチョコレートより柿の種が好きな私は甘い話なんて書けません。溶けることなんてない話ですが企画狙って「1」=「最初」なお話です。綾波レイ、初めて物語。多分。そして私もこの二人なお話書くの初めて物語。
もうほんと色々勉強不足な部分がありますが10周年企画前に書きあがってよかったと自己満足ですたい。たいたい。
因みに雨を英語にするとレインで綾波の名前が入ってると気づきました。それだけ。ふはっ。
それではお読みいただきありがとうございましたー!
《 雨の日の臆病者 》 ななし
ぽつん
水滴が頬に当たった。僕は空を見上げる。西の空から黒い雲がたれ込んでいた。
学校からの帰り道、ミサトさんのマンションまで歩いて40分。頑張って走れば25分くらいだろうか?それまでに大降りにならなきゃいいなとショルダーバックのベルトをかけなおし歩く速度を速めた。
ぽつん
ぽつん
ぽつん
ぽつんぽつんぽつんぽつんぽつぽつぽつぽつ……
早歩きが小走りになり、いつの間にか全速力。
水滴は徐々に数を増やし途切れない連打、雨となり地上へ降り注いだ。半そでの白いTシャツと黒いズボンはびっしょり濡れ肌にぴったりくっつく。髪もすっかり濡れて前髪が額に張り付いた。髪から顔に流れた雨水を何度か拭ったが流れは止まらない。「まったく、ついてないや」と独り言をつぶやいた時、雨水が口に入った。少ししょっぱかった。
濡れた制服の重みと雨による体力の消耗、そしていきなり全速力で走ったことによる呼吸困難。
マンションまでは一気に走ろうと思ったけど体力の関係上やっぱり無理。
どこかで一旦雨宿りしたい。
僕は少し速度を落としながらこの近くに軒下などの雨が凌げそうな場所を考えた。頭に浮かんだのはここから300、いや500mくらい先にある、とある店の軒下。
そこの軒下には数時間に一本しかこないバスの停留所と古ぼけたベンチがある。その場所が今みたいに雨宿りを望んでる僕にとっては砂漠のオアシス的な場所になるのではないだろうか?状況は全く逆だけど。
そんな事を考えていたらバシャっと水溜りに足を踏み入れてしまった。もとより濡れた靴、どってことない。雨水ごとアスファルトを蹴り前へと駆ける。僕はショルダーバックを小脇に抱えなおし雨宿りと定めた古ぼけた休憩地点まで先を急ぐことにした。
⇔
だんだんと激しくなる雨、ようやく「雑貨屋」と書かれた大きい看板が見えてきた。その場所目掛けて僕は最後の力を振り絞って走る速度を上げる。
目的地まであと少し、なところで僕は店の軒下に先客がいる事に気づいた。誰だかを確認するよりも前に僕は雨からの避難を優先させ軒下へゴールする。ようやくの雨から開放に息を吐き出す。ショルダーバックをアスファルトの地面に下ろし、両手で足の膝を掴んで――体を逆「く」の字の状態で大きく息を吸って、吐いて、吸って、吐いてを繰り返した。
落ち着いたところで膝から両手を離し髪をかきあげる。体を起こして先に居た雨宿り仲間を確認する。
透明な水色のショートヘア、真っ白で綺麗な肌……ベンチに座る彼女は宝石のような赤い瞳でじっと僕を見ていた。
彼女と僕は数ヶ月前に知り合ったばかりのクラスメートであり、共に戦う仲間……なんだけどタイミングがずれて、というか話すきっかけがないというかで今の今までまともに話したことはない。一度あったけど、あの時ビンタされたし。いや、あれは僕の言葉運びが悪かったんだけど。
声をかけるか迷い、悩み、そして決意して僕は彼女の名前を呼んだ。
「綾波」
「碇君」
綾波は僕の名を呼んでくれた。僕の名を呼んでくれた事に嬉しさを感じ口元が緩んだ。
⇔
タンタンタンタタッタン
タタタタッタンタンタッタン
朽ちかけたトタン屋根に降り注ぐ雨。音が不規則に鳴り響く。音楽にならない音、だけどそれは一種のリズムとなり僕の耳に届く。
僕の後ろのガラス張りの引き戸を見た。頑丈に閉まった扉、僕がこの街に来た時から常にカーテンが引いてあり開いている場面を見た事がない。使徒の影響か分からないけど閉店してるようだった。
僕の名前を呼んだ綾波はすぐに視線をそらし雨が降る景色を見ていた。
僕は再び声をかけようかと思ったけど何回かのくしゃみと共に全身を襲った寒気で自分が風邪を引く手前だと気づき、大慌てで制服のYシャツを脱いで絞った。本当はTシャツも脱いで絞れればいいんだろうけど綾波がいる前でそんな事恥ずかしくてできないし……脱いだYシャツで体を拭いたりバックの中身が濡れてないか確認したり思いつく最善の事はした。でも、早く帰ってシャワーでも浴びないとヤバイんだろうなぁ……。
綾波が座ってるベンチを見た。誰かと誰かの相合傘、アニメのキャラクターやバカヤローの文字、いろんな落書き。僕は少しずつ、少しずつ自分の視野に綾波を映していく。あと少しで僕のフィルダーに綾波を捉える事ができる……
ゴロゴロゴロッ
いきなり大きな音が辺り一帯に鳴り響いた。その音に体を震わせ肩を強張らせた。僕は惜しみながら綾波から視界を外し雨が降る外の景色を見定めた。
辺りは水煙と雨粒しか見えない、違和感を生じるものは確認できない。音に不安を感じながら周囲に気を配り地面に放置したままの濡れたバックに手をかけた。
連絡手段である携帯を捜してる時、西の空がピカッと光った。そして山に雷が堕ちる。
使徒を連想させた大きな音の正体は雷だった。携帯にはネルフからの着信履歴は入ってない、使徒でない事を確認できた僕は緊張を解いた。
再び雷音が鳴り響いた。何度聞いても耳に慣れない音に内心ビビリながら綾波を見た。
綾波は毅然とした態度でベンチから微動だにせず西の空を見ていた。
彼女の左隣に大きな雫が落ちた。ベンチに落ちた雫が跳ねて彼女のスカートにかかる。その小さな水しぶきに気付く事無く、ただじっと雨の情景を見つめている。
ゴロゴロゴロッ
先程とは比べられない大きい音。耳を塞ぎ目をしかめた。両手で音をさえぎっていても雷音は聞こえる。長く続いた音がようやく聞こえなくなり静かに目を開いた。綾波は音に怯える事無く、雷の全てを受け入れるかのようにじっと西の空を見つめていた。
その姿を見て思った。
綾波の中に僕は存在しない。
雨に濡れた体が冷え全身に寒気がした。いや、体じゃない。心が冷えたから寒気がしたんだ。
寂しさに目に涙が溢れそうになる。
僕を見て欲しい、どうすれば綾波は僕を見てくれる?
「…………綾波は雨が好きなの?」
「どうしてそう聞くの?」
「あ、いや……」
僕が取った手段は抱きしめる事でもなく手を繋ぐ事でもなく、綾波に小さな質問をすることだった。
僕の言葉に反応して、と願いを込めた質問は綾波に届いた。
質問に対して質問返しをしてきた綾波。僕は言葉を詰まらせた。どうしよう、振り向いて欲しかったが故の質問だから実際のところ意味はまったくない。でも、ここで曖昧な事を言ったらせっかくの繋がりが消えてしまう。僕は体の冷たさを振り切るように下唇を強く噛み『意味』を考えた。
「あー、うん……そう、雨を受け入れているようだから」
必死で考えた綾波の質問への答え。さっきの綾波を見ての綾波のイメージをなんとか言葉にしてみた。僕の気持ちは伝わっただろうか?
「分からない」
だ、だよね……ごめん、と謝ろうとした、でもそれよりも先に綾波の言葉が続いた。
「でも、綺麗だと思う」
綾波は聞き返した。
「碇君は?」
「え?」
「碇君は雨、好き?」
綾波は雨を『綺麗』と表現した。
僕は雨をどう思っているのだろうか。
好きなのだろうか?嫌いなのだろうか?
綾波から目を逸らし、外を見た。先程から降り続ける雨。
目だけではなく五感を研ぎ澄ませる。
冷たい風が頬に触れた。
屋根から落ちた雫が肩に落ちた。
地面から立ち上がる雨独特の匂いを嗅いだ。
そして雨音、
そう、雨音。
「雨の日は音がしないんだ……雨の音は周りの音を吸収してくれる。雑音がない世界に落ち着いてる僕がいる」
雨の冷たさ、濡れた感触は好きになれない。今も早く帰ってさっぱりしたいと願っている自分がいる。でも、嫌いではない。雨が作り出す世界に惹かれている事に僕は初めて気づいた。
僕はその事に気づかせてくれた綾波を見た。綾波は僕を見つめていた。その視線に少し照れながら目を合わせ笑いながら答えた。
「僕は雨が好きだと思う」
その答えに綾波は笑ってくれた。その笑顔はヤシマ作戦の時に見た笑顔とはちょっと違って、僕の言葉に肯定を表す優しい笑顔だった。
今なら聞けるかもしれない。綾波に聞きたい事、聞けるかもしれない。
「ねぇ、綾波。綾波は――」
ビビーッ、ビッ
僕の言葉は車のクラクションに遮られ声がかき消された。雨が降る方を見るといつの間にか黒い車が止まっていた。運転席から黒服の男の人が降りてくる。
「ごめんなさい」
綾波は静かに立ち上がると僕に謝る。
黒服の人は傘を差しこっちへ歩いてきた。傘を差したまま軒下へ入るとその傘の中に綾波は当たり前のように入った。黒服の人そのまま振り向き、綾波と共にゆっくりと黒い車に向かっていく。僕は綾波が去るその姿をじっと見つめることしかできなかった。
後座席の車のドアが開き、綾波は車に乗り込む。
「……父さん」
綾波が乗り込む時に見えた。父さんが車に乗っている。綾波だけをじっと見て僕を見てくれない。父さんは僕に気づいていないのだろうか、それとも……いや、気づいていないだけだ。きっとそうだ、そうだと思い込む僕。
綾波が車に乗り込むと車は静かに立ち去っていった。
僕は雨から目を逸らし、綾波が座っていた場所を見つめた。
『綺麗』の言葉、優しい微笑み、聞きたかった事、車に乗っていた父さん――
父さんは僕を見てくれなかった
僕は頭を振った。さっきも思ったじゃないか、父さんは気づいてくれないだけだって。
ショルダーバックのベルトを手に握るとそのまま肩にかけた。そして迷いなく激しく降り注ぐ雨の中に飛び込む。
僕は、ただ走る。
綾波の笑顔を胸に秘め、それ以外何も考えず、ただひたすらにひたすらに――
きっと、雨は嫌な事を洗い流してくれる。
⇔
少女は車の窓から流れ行く景色を眺めていた。空は黒い雲、いつ止むか分からない雨が降り続く。
少女はぼそっと何かを呟きは。呟きは隣に座る黒ひげのサングラスの男に音として聞こえた。言葉が聞き取れなかった男は少女に声をかける。
「どうした、レイ」
「……何でもありません」
少女がそう答えると男は「そうか」と呟き、少女から視線を外し運転席に座る男になにやら指示を出していた。
少女は、彼の言葉が気になっていた。
碇君は私に何を言おうとしたのだろう。
私の名前を呼んで、何を聞こうとしたの?
少年の言葉を思い出す。
雨、音、落ちつく、私の名前
そして『好き』
雨に対しての言葉に少女の心が反応する。
少女には駆け抜けてく景色を映っていない。彼女の目には一人の少年が焼きついた。彼の事を思う事で胸に秘めた違和感が芽生える。それは寒々とした空気を感じさせない暖かな気持ち。
この気持ちは何?
少女の持ちゆる知識を持っても違和感に対する答えは出ない。彼女は口を動かす、声にせず名を呟く。それはさっきまで目を合わせていた優しき笑みを表現できる少年の名前。彼の事を何度も思う。その度に胸に暖かさを宿らせた。
彼女が違和感の名前と意味を知るのは、もう少し先の話である。
こっちの掲示板では始めまして、1111111ヒットおめでとうございます。めでたい企画に便乗してレイとシンジのお話を書いて見ました。一見さんの暴走。
最初に言っときますがチョコレートより柿の種が好きな私は甘い話なんて書けません。溶けることなんてない話ですが企画狙って「1」=「最初」なお話です。綾波レイ、初めて物語。多分。そして私もこの二人なお話書くの初めて物語。
もうほんと色々勉強不足な部分がありますが10周年企画前に書きあがってよかったと自己満足ですたい。たいたい。
因みに雨を英語にするとレインで綾波の名前が入ってると気づきました。それだけ。ふはっ。
それではお読みいただきありがとうございましたー!
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/27 22:32 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
【1st-kiss(裏)】
地味にツボだったw
「血圧が上がる」に萌える。シンジ君、私を見てと言われる前から我を失っているw
アイスバインというのは実はcaluさんの作品で知ったのだが(^^;)、それが出てくるのもい
い。つか、豚足なの?(笑)
シゲルはフォークもわかるのかー。
【七つ目の絆創膏】
レイが「なら、碇くんも……自業自得……」と言ってしまうかすかな小悪魔さがまさにJUN
さんだったりする(笑)。だが冷静に考えると風邪につけこんでどさくさまぎれにキスしてしま
うシンジは悪魔かもしれん(爆)。
七つ目の絆創膏はシンジの口唇だったってのが良かったかも。
前にも書いたかな、2ちゃんで見たんだけど、絆創膏って「絆」って字が入ってるんだよな。
【アヤナミセブン】
元ネタが把握しきれん(^^;)。何処さんもかなりなおっさんかと思われる(笑)。おばさんか
もしれんが。しかしセブンの発想はなかった。ずいぶん前に綾波仮面って話があったな、そう
いえば。
しかしこの話、ノリがパッケラさんに近いものがあるな(笑)。
地味にツボだったw
「血圧が上がる」に萌える。シンジ君、私を見てと言われる前から我を失っているw
アイスバインというのは実はcaluさんの作品で知ったのだが(^^;)、それが出てくるのもい
い。つか、豚足なの?(笑)
シゲルはフォークもわかるのかー。
【七つ目の絆創膏】
レイが「なら、碇くんも……自業自得……」と言ってしまうかすかな小悪魔さがまさにJUN
さんだったりする(笑)。だが冷静に考えると風邪につけこんでどさくさまぎれにキスしてしま
うシンジは悪魔かもしれん(爆)。
七つ目の絆創膏はシンジの口唇だったってのが良かったかも。
前にも書いたかな、2ちゃんで見たんだけど、絆創膏って「絆」って字が入ってるんだよな。
【アヤナミセブン】
元ネタが把握しきれん(^^;)。何処さんもかなりなおっさんかと思われる(笑)。おばさんか
もしれんが。しかしセブンの発想はなかった。ずいぶん前に綾波仮面って話があったな、そう
いえば。
しかしこの話、ノリがパッケラさんに近いものがあるな(笑)。
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/21 18:03 |
投稿者 | : タピオカ |
参照先 | : |
少々捻り過ぎな気がしないでもない……(笑)
効果音で意味不明なものが多いですがそれも面白さの一部って事で(*^□^*)
効果音で意味不明なものが多いですがそれも面白さの一部って事で(*^□^*)
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/19 04:27 |
投稿者 | : 何処 |
参照先 | : |
ううむ…どうも俺には捻りが足りない…
他の皆の作品は真面目に甘いし…
何か意外な物は無いか…
なな…七…7…セブン…
そうだ!
7と言ったらこれでした。
『空想科学適当SF娯楽作品(嘘)』
「ぢゅわ!」
♪テーンテーンテテーテッテーテッテテーテッテテーーー♪
【アヤナミセブン】
「碇君…私、人間じゃないの。私はリリスの星からやって来た、アヤナミセブンなの。」
「は?何を言ってるの?だってアヤナミは綾波じゃないか。」
「時間だわ…行かなくちゃ。」
「行く…って何処へ?」
「赤木博士がピンチなのよ…」
「え!?ま、待って綾波!?」
「この夜空に明けの明星が輝く頃、藍色の空を流星が走る…それが私…」
「綾波!?そっちは窓…あ、落ちた。」
ピーポーピーポーピーポー…
「♪フンフンフンフン♪アヤナミセブン…今日こそ地球ごとシンジ君を渡してもらうよ…さ、赤木博士。貴女の発明したC-A-Tフィールド発生装置の埋設ポイントを明かして貰おう。」
「無駄ね…ネズミーシーからネルフ秘密ドッグへの海底トンネルは既に遮断済みよKヲル原人。貴方達のネルフ11攻略計画は破綻している。降伏するなら今の内よ」
「くっくっくっ…僕をロウスン星人やファミマー人と一緒にしてはいけないよ、赤木博士。」
「何ですって?」
「これを見たまえ赤木博士…」
「これは…まさか!あ、有り得ないわ!」
「人類の最大の敵…人の敵とはヒトさ赤木博士。」
「隊長!ネルフ11への侵入口確保しました。ですが装甲シャッターで…」
「ヤオイ兵を出せ!あの巨人なら一撃で崩せる!」
ギュヲ~…グルル…ベチャッ
「腐ってやがる…性調が早すぎたんだ…」
「どうした!?それでも鎧武者や蹴球戦士を翻弄し吸血鬼すら使役した魔性の末の存在か!!」
カッ!
キュボッ!
「何て奴等だ!味方ごと撃ちやがった!」
「第一、第二装甲シャッター融解!」
「戦腐、第3ゲート突破!」
「増援が来るまで後二時間…アスカ、マリ、戦腐の進行をなんとか食い止めて!」
「病み上がりに何て無理言うのよあんたは…やってやろうじゃない!」
「増援って…レイは未だ動けないしワンコ君なら無理よ?バイク車検で足が…まさか?」
「あたしが迎えに行くわ。」
「「駄目!ミサトそれで何回(シンジ)(ワンコ)を再起不能寸前まで追い遣ったのよ!?ミサト!ミサト?ミサト!?」」
「あの牛女…」「切りやがった…」
「大変!?エヴァ発進口が塞がれたわ!?」
「「ちょ、どうやって出ろってのよ!?」」
「碇…何処へ行く…」
「…明日を探しに…後はお願いします冬月先生…」
「そうか…ユイ君に宜しくな…」
「二人共聞こえるか?構わん、ゲートを破壊して出撃せよ。後は私が食い止める」
「「碇司令!?」」
ギュキャキャ!コウン!クヮワーーン…
キキキキキキキキーッッッ!
「こ…この音はまさか…」
「はぁ~い♪シンちゃん、レイ、ちょっち非常招集よん♪あら?レイはどうしたの?」
「レイなら今そこの窓から…」
「…ここ5Fよね…」
「…まあ、レイの事だから全て終わった頃に包帯巻いてひょっこり現れると思いますけど…ミサトさん、今日俺公休日…」
「マリっぺとアスカだけで今戦腐の対応してる…もう動けるのは貴方だけなのよ。」
「いや、それ無理。第一バイク車検中でってミサトさん、何故に僕の手に手錠…嫌だーーーっ!ミサトさんの運転は嫌だーーーっっ!!」
「シンジ君…二択よ、このまま車に乗せられてネルフへ行くか、それともシンジ君が運転してネルフへ行くか…」
「に…逃げていいよね逃がしてくれるかな逃がしてくれないよね逃げてえでも無理っぽいよね逃げて捕まった後が大変だよね逃がしてくれないかな…」
「…有給二日+休日出勤手当…」
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ…」
「…成功報酬にレイ、アスカ、マリのプラグスーツ生着替え撮影映像…」
「!やりまっ!?い、いやミサトさんそれって死亡フラグ!そんなの貰ってあの三人が見逃す訳ないでしょ!?僕に死ねって言うんですかミサトさん!?」
「相変わらず追い詰められると『僕』なのねシンジ君…今からあたしの手料理食べる?」
「乗ります。僕がネルフまで運転します。」
「くっくっくっ…エヴァンゲリオン発進口は塞いだ。さあ、残るはアヤナミセブン、君だけだ!さあ出て来るがいい!」
「くっ…アヤナミセブンはあなたなんかに負けはしないわ!」
「ふっ…赤木博士、現実を見ればいい、既にネルフ11は陥落寸前、頼みのエヴァは発進すら出来ない…後は僕の望みをいつも妨害するアヤナミセブンを葬るのみ…そして見よ!エヴァンゲリオンすら一蹴するこの怪獣再生アンノンのパチスロハンドにかかればアヤナミセブンなぞ筐体の中のフィギュアに過ぎないのさ。あははははっ!」
「くっ…」
「さあ、出て来いアヤナミセブン!そしてこの怪獣再生アンノンの餌食となるがいい!ふふっ、どうやってこの僕の完璧な計画を破るアヤナミセブン!」
「…こうする。」
ぼぐっ
「…不様ね…」
「…赤木博士、無事でしたか。」
「あ…有難うアヤナミセブン、助かったわ…」
「ぐっ…い、いつの間に…」
「ちっ、まだ生きてたのね…」
「な、何故だアヤナミセブン、君は窓から落ち救急車で…」
「は?」
「救急車?私が何故落ちなければいけないの?」
「ううっ…考えて見れば空飛べる存在が落ちる訳が…冒頭のサイレンはフェイクだったか…」
「?」「?訳解らない…」
クォン!ギュキャキャ!ガウン!クォォォ…
「ちっ!発進口が塞がれてる!」
「pi…シンジ君、今から発進口をクリヤしてエヴァが自力発進するわ、距離を開けて。」
「え?」
ドキャ!ズズン!
「無茶苦茶だよ…」
「何て事だ!ゲートを自ら破壊して発進するなんて!?リリン…恐るべし…」
「カヲル原人、貴方の負けよ、大人しく降伏しなさい…」
「今なら解剖は勘弁してあげるわ。」
「「をい」」
「シンジ!初号機の準備は出来ている!早く乗れ!」
「司令!?」「父さん…」
「どうした?乗らんのなら帰れ!」
「乗ります!」
「くっ!僕の願いを又もや阻止するか呪われしエヴァンゲリオン、忌まわしきアヤナミセブン…ええい行け再生アンノン!」
「!?」「死ぬ気!?」
「僕の死と共にこの基地は自爆する!この基地ごと死ぬがいいアヤナミセブン!」
「赤木博士、私に捕まって!」
「怪獣出現!」
「ちっ!こんな時に…」
「まずい、こっちに直進して来る!」
「ぬう…」
ギュゴォン!
ヘアッ!
「「「アヤナミセブン!?」」」「…来たか…」
「ワンコ君、アヤナミセブンの援護へ!」
「あたし達でここは大丈夫!行ってシンジ!」
「二人共…」「…」
「判った!アスカ、マリ、後は頼む!父さん、ミサトさんを宜しく!」
ヘアッ!
べきばきドキャ!
ギュゴォン!
げしっ!
ヂュワッ!?
「ぬうっ!?」
「何て奴だ、アヤナミセブンをパワーで圧倒してやがる…」
「まずいぜこいつは…」
「大丈夫ですよ、アヤナミセブンは必ず勝ちます!」
「シンジ君聞こえる?」
「赤木博士!?無事でしたか!」
「あの怪獣…どうやら前回のアヤナミセブンとの戦闘の後強化されたらしいわ。このままでは私達に勝ち目は無い。」
「ちっ!一体どうすれば…」
「推測だけれど、あの怪獣は視力が低いかも知れないわ…それにいくら強化したと言ってもこの短期間ならそれは一部分だけの筈よ!」
「ん?そうか!聞こえるかアヤナミセブン!奴の動きを十秒止めてくれ!」
!?ダーッ!
ガシッ!
ギュゴォン!
「これでどうだ!」
ひょいっ
ガガガガ!?
「上手い!」「奴の眼鏡を狙うとは!」「あ、探してる探してる眼鏡探してる」
ギュゴォン!
ドカーン!
「同士討ち!?」「眼鏡を外され敵味方が判らないのだ…」
「戦腐、撤退していきます!」「よっしゃあ!」「マリ!アスカ!」
「判ってるわ!」「追撃よ追撃!」
「…勝ったな…」
げしっ!
ギュガガガガン!?
「!シンジ君!今の見たわね!?」
「!?アヤナミセブン!奴の弱点はサンダルからはみ出た小指だ!」
!?ヘアッ!
ドキャ!
「うわ…」「箪笥ラッガーの直撃…」「痛そう…」
ドッカーン!
「「「やったー!」」」「うむ、やったな!」
…ジュワ!
キーーーン…
「戦腐の掃討完了しました」「今から帰還します」
「終わったわね…」「ああ…」
「お疲れ様シンジ君…あら?」
「碇君!」
「あ、綾波ー!そっちはゲートの破口部…あ、落ちた。」
「…て夢を見たの…」
「綾波…疲れてない?」
「そう…かしら…そうかも知れない…」
「あらシンジ君、レイちゃん、朝から一緒なのね?今日のテストは先輩の代理に私が担当するわ、宜しくね…ってどうしたの?」
「マヤさん…制服が違う番組…」
「セブン違い…トレッキー大喜びしそう…」
「は?」
他の皆の作品は真面目に甘いし…
何か意外な物は無いか…
なな…七…7…セブン…
そうだ!
7と言ったらこれでした。
『空想科学適当SF娯楽作品(嘘)』
「ぢゅわ!」
♪テーンテーンテテーテッテーテッテテーテッテテーーー♪
【アヤナミセブン】
「碇君…私、人間じゃないの。私はリリスの星からやって来た、アヤナミセブンなの。」
「は?何を言ってるの?だってアヤナミは綾波じゃないか。」
「時間だわ…行かなくちゃ。」
「行く…って何処へ?」
「赤木博士がピンチなのよ…」
「え!?ま、待って綾波!?」
「この夜空に明けの明星が輝く頃、藍色の空を流星が走る…それが私…」
「綾波!?そっちは窓…あ、落ちた。」
ピーポーピーポーピーポー…
「♪フンフンフンフン♪アヤナミセブン…今日こそ地球ごとシンジ君を渡してもらうよ…さ、赤木博士。貴女の発明したC-A-Tフィールド発生装置の埋設ポイントを明かして貰おう。」
「無駄ね…ネズミーシーからネルフ秘密ドッグへの海底トンネルは既に遮断済みよKヲル原人。貴方達のネルフ11攻略計画は破綻している。降伏するなら今の内よ」
「くっくっくっ…僕をロウスン星人やファミマー人と一緒にしてはいけないよ、赤木博士。」
「何ですって?」
「これを見たまえ赤木博士…」
「これは…まさか!あ、有り得ないわ!」
「人類の最大の敵…人の敵とはヒトさ赤木博士。」
「隊長!ネルフ11への侵入口確保しました。ですが装甲シャッターで…」
「ヤオイ兵を出せ!あの巨人なら一撃で崩せる!」
ギュヲ~…グルル…ベチャッ
「腐ってやがる…性調が早すぎたんだ…」
「どうした!?それでも鎧武者や蹴球戦士を翻弄し吸血鬼すら使役した魔性の末の存在か!!」
カッ!
キュボッ!
「何て奴等だ!味方ごと撃ちやがった!」
「第一、第二装甲シャッター融解!」
「戦腐、第3ゲート突破!」
「増援が来るまで後二時間…アスカ、マリ、戦腐の進行をなんとか食い止めて!」
「病み上がりに何て無理言うのよあんたは…やってやろうじゃない!」
「増援って…レイは未だ動けないしワンコ君なら無理よ?バイク車検で足が…まさか?」
「あたしが迎えに行くわ。」
「「駄目!ミサトそれで何回(シンジ)(ワンコ)を再起不能寸前まで追い遣ったのよ!?ミサト!ミサト?ミサト!?」」
「あの牛女…」「切りやがった…」
「大変!?エヴァ発進口が塞がれたわ!?」
「「ちょ、どうやって出ろってのよ!?」」
「碇…何処へ行く…」
「…明日を探しに…後はお願いします冬月先生…」
「そうか…ユイ君に宜しくな…」
「二人共聞こえるか?構わん、ゲートを破壊して出撃せよ。後は私が食い止める」
「「碇司令!?」」
ギュキャキャ!コウン!クヮワーーン…
キキキキキキキキーッッッ!
「こ…この音はまさか…」
「はぁ~い♪シンちゃん、レイ、ちょっち非常招集よん♪あら?レイはどうしたの?」
「レイなら今そこの窓から…」
「…ここ5Fよね…」
「…まあ、レイの事だから全て終わった頃に包帯巻いてひょっこり現れると思いますけど…ミサトさん、今日俺公休日…」
「マリっぺとアスカだけで今戦腐の対応してる…もう動けるのは貴方だけなのよ。」
「いや、それ無理。第一バイク車検中でってミサトさん、何故に僕の手に手錠…嫌だーーーっ!ミサトさんの運転は嫌だーーーっっ!!」
「シンジ君…二択よ、このまま車に乗せられてネルフへ行くか、それともシンジ君が運転してネルフへ行くか…」
「に…逃げていいよね逃がしてくれるかな逃がしてくれないよね逃げてえでも無理っぽいよね逃げて捕まった後が大変だよね逃がしてくれないかな…」
「…有給二日+休日出勤手当…」
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ…」
「…成功報酬にレイ、アスカ、マリのプラグスーツ生着替え撮影映像…」
「!やりまっ!?い、いやミサトさんそれって死亡フラグ!そんなの貰ってあの三人が見逃す訳ないでしょ!?僕に死ねって言うんですかミサトさん!?」
「相変わらず追い詰められると『僕』なのねシンジ君…今からあたしの手料理食べる?」
「乗ります。僕がネルフまで運転します。」
「くっくっくっ…エヴァンゲリオン発進口は塞いだ。さあ、残るはアヤナミセブン、君だけだ!さあ出て来るがいい!」
「くっ…アヤナミセブンはあなたなんかに負けはしないわ!」
「ふっ…赤木博士、現実を見ればいい、既にネルフ11は陥落寸前、頼みのエヴァは発進すら出来ない…後は僕の望みをいつも妨害するアヤナミセブンを葬るのみ…そして見よ!エヴァンゲリオンすら一蹴するこの怪獣再生アンノンのパチスロハンドにかかればアヤナミセブンなぞ筐体の中のフィギュアに過ぎないのさ。あははははっ!」
「くっ…」
「さあ、出て来いアヤナミセブン!そしてこの怪獣再生アンノンの餌食となるがいい!ふふっ、どうやってこの僕の完璧な計画を破るアヤナミセブン!」
「…こうする。」
ぼぐっ
「…不様ね…」
「…赤木博士、無事でしたか。」
「あ…有難うアヤナミセブン、助かったわ…」
「ぐっ…い、いつの間に…」
「ちっ、まだ生きてたのね…」
「な、何故だアヤナミセブン、君は窓から落ち救急車で…」
「は?」
「救急車?私が何故落ちなければいけないの?」
「ううっ…考えて見れば空飛べる存在が落ちる訳が…冒頭のサイレンはフェイクだったか…」
「?」「?訳解らない…」
クォン!ギュキャキャ!ガウン!クォォォ…
「ちっ!発進口が塞がれてる!」
「pi…シンジ君、今から発進口をクリヤしてエヴァが自力発進するわ、距離を開けて。」
「え?」
ドキャ!ズズン!
「無茶苦茶だよ…」
「何て事だ!ゲートを自ら破壊して発進するなんて!?リリン…恐るべし…」
「カヲル原人、貴方の負けよ、大人しく降伏しなさい…」
「今なら解剖は勘弁してあげるわ。」
「「をい」」
「シンジ!初号機の準備は出来ている!早く乗れ!」
「司令!?」「父さん…」
「どうした?乗らんのなら帰れ!」
「乗ります!」
「くっ!僕の願いを又もや阻止するか呪われしエヴァンゲリオン、忌まわしきアヤナミセブン…ええい行け再生アンノン!」
「!?」「死ぬ気!?」
「僕の死と共にこの基地は自爆する!この基地ごと死ぬがいいアヤナミセブン!」
「赤木博士、私に捕まって!」
「怪獣出現!」
「ちっ!こんな時に…」
「まずい、こっちに直進して来る!」
「ぬう…」
ギュゴォン!
ヘアッ!
「「「アヤナミセブン!?」」」「…来たか…」
「ワンコ君、アヤナミセブンの援護へ!」
「あたし達でここは大丈夫!行ってシンジ!」
「二人共…」「…」
「判った!アスカ、マリ、後は頼む!父さん、ミサトさんを宜しく!」
ヘアッ!
べきばきドキャ!
ギュゴォン!
げしっ!
ヂュワッ!?
「ぬうっ!?」
「何て奴だ、アヤナミセブンをパワーで圧倒してやがる…」
「まずいぜこいつは…」
「大丈夫ですよ、アヤナミセブンは必ず勝ちます!」
「シンジ君聞こえる?」
「赤木博士!?無事でしたか!」
「あの怪獣…どうやら前回のアヤナミセブンとの戦闘の後強化されたらしいわ。このままでは私達に勝ち目は無い。」
「ちっ!一体どうすれば…」
「推測だけれど、あの怪獣は視力が低いかも知れないわ…それにいくら強化したと言ってもこの短期間ならそれは一部分だけの筈よ!」
「ん?そうか!聞こえるかアヤナミセブン!奴の動きを十秒止めてくれ!」
!?ダーッ!
ガシッ!
ギュゴォン!
「これでどうだ!」
ひょいっ
ガガガガ!?
「上手い!」「奴の眼鏡を狙うとは!」「あ、探してる探してる眼鏡探してる」
ギュゴォン!
ドカーン!
「同士討ち!?」「眼鏡を外され敵味方が判らないのだ…」
「戦腐、撤退していきます!」「よっしゃあ!」「マリ!アスカ!」
「判ってるわ!」「追撃よ追撃!」
「…勝ったな…」
げしっ!
ギュガガガガン!?
「!シンジ君!今の見たわね!?」
「!?アヤナミセブン!奴の弱点はサンダルからはみ出た小指だ!」
!?ヘアッ!
ドキャ!
「うわ…」「箪笥ラッガーの直撃…」「痛そう…」
ドッカーン!
「「「やったー!」」」「うむ、やったな!」
…ジュワ!
キーーーン…
「戦腐の掃討完了しました」「今から帰還します」
「終わったわね…」「ああ…」
「お疲れ様シンジ君…あら?」
「碇君!」
「あ、綾波ー!そっちはゲートの破口部…あ、落ちた。」
「…て夢を見たの…」
「綾波…疲れてない?」
「そう…かしら…そうかも知れない…」
「あらシンジ君、レイちゃん、朝から一緒なのね?今日のテストは先輩の代理に私が担当するわ、宜しくね…ってどうしたの?」
「マヤさん…制服が違う番組…」
「セブン違い…トレッキー大喜びしそう…」
「は?」
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/14 20:43 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
【七つ目の絆創膏】
「っ、痛……」
つう、と人差し指の第一関節から真っ赤な鮮血が一筋流れる。またやってしまった。そろそろ絆創膏を巻いてもらうのも申し訳ない気がする。この傷で七つ目。絆創膏は既にそれぞれの指に一枚ずつ。手首にも一枚。鍋の縁に当てて火傷。情けない気分でいっぱいになる。この程度で彼に美味しい味噌汁を食べてもらおうなどと、お笑い種も甚だしい。
けれど、やめるわけにはいかなかった。彼と、そして彼の父親。親子としては最悪の関係性たる彼らに和解してもらうには、きっと料理が一番。
残った具材をなんとか、食べられる大きさまで刻み鍋に入れて一煮立ち。見た目は少なくとも味噌汁である。匙にすくって一口飲んでみる。
しょっぱい。それに、出汁の味が全くしない。焦げた味がする。
これではだめ。彼に飲ませられない。鍋一杯の味噌汁を見つめ、レイは重いため息を吐いた。また失敗。
けれどいくら美味しくないからといって捨てるのも躊躇われる。アスカの言葉が頭をよぎった。しょっぱくても飲めないレベルではない。アパートの周りには野良猫も沢山いる。
塩辛い味噌汁に顔をしかめながら、レイはどうしたら上達できるか、ただただそれだけを考えていた。彼は、どうだったのだろう。彼もこんな風に失敗したのだろうか。
何故だか、それはあり得ないように思えた。彼は最初から料理が出来て、美味しい味噌汁を作れたように思えた。そちらの方がよほどあり得ない筈だが、レイにはそう思えた。
いつの間にか、血は固まっていた。表面のざらついた、小さな醜いかさぶたになっていた。このまま放っておいても問題ないように思えたが、やはり消毒はしておいた。絆創膏は明日にでもリツコに貼ってもらおう。
灰色の陰鬱な部屋の中で、レイは惨めな気分を噛み締めていた。部屋に漂う焦げ臭いにおい。シンクに大量に溜まった、洗われていない食器。鋭い痛みを放ち続ける左手。
その全てが一体となって、自分にどうしようもない無力感を覚えさせた。彼は自分にたくさんの事をしてくれたのに、自分は彼に何もしてあげられていない。包丁一つ使えない自分に唖然とした。今まで自分は本当に何もしていなかったのだなと、改めて思った。
けれど今は、もう人形じゃないから。
ベッドの中で、レイは決意した。明日は、明日こそは……
目が覚める。頭が重い。一瞬身体に異常をきたしたのかと緊張したが、すぐに思い当たった。どうも風邪らしい。
自分の格好を思い出していると、裸の上にワイシャツを羽織っただけだ。いくら常夏の世界とはいえ、身体にはよくないだろう。
今日の学校は休もう、レイは思った。彼に会えないのが残念だけど、伝染すのはもっと不本意。
そう結論付けるとレイはさっさと布団をかぶり、眠りについた。
――なみ……あ……なみ…………あやなみ…………綾波……
どこか遠くから、声が聞こえた。夢と現実の境がつかないが、自分は夢を見たことが無いから、多分現実なのだろう。重い頭を我慢して目を開くと、彼が自分を見下ろしていた。
「いかり……くん……」
「大丈夫?綾波」
レイは布団の中でこく、と首肯した。
「すごい熱だ……」
そう言いながら彼がレイの額の上にそっと自分の手のひらを乗せた。その動きに余計顔が熱くなるのを感じた。顔が赤いのを気づかれないか不安になったが、自分は風邪だということに気づいて安心した。
「何か食べた?」
「……食べてない」
「だろうね」
その口調は呆れたようなものでもあり、面白がっているようでもあった。
「綾波は、もっと自分の身体を大事にしなきゃ駄目だ。昨日だって、あれ、何時まで作ってたの?」
そう言って昨日の残骸を指差した彼に、レイは狼狽した。だめ、見てはだめ。
「だめ、見ちゃ……だめ…………」
弱々しくレイがベッドの中から左手を伸ばす。シンジは両手でその手をそっと握った。
「……ごめんね、もう見ちゃったんだ。その……僕の自惚れじゃなかったら、あれ、僕に、だよね?」
レイはまたも小さく頷く。
「碇くんと碇司令に、なかよく……なって、ほし、くて…………」
「喋らないで、綾波」
シンジが濡れたタオルをレイの額に乗せる。レイはほうっと息を吐いた。
「こんなになるまで、がんばってくれたんだね……」
何のことか分からず、レイがそちらに目を向けると、シンジが愛しげに、レイの左手を撫でていた。
「それは……」
「せっかくの綺麗な指が、台無しだね……」
恥ずかしい。料理も出来ない女の子だと思われる。
「だって、私、お料理、したことない……」
「分かってるよ。でもね、綾波」
ぴりっと、昨日怪我した人差し指に痛みが走った。レイが身体を硬くすると、直後指が温かい粘膜に包まれている感触がした――シンジが、レイの人差し指をくわえていた。かさぶたの上を舌がそっとなぞる。
「だめ、碇くん、汚い……」
「汚くなんて無いよ、それに、僕はね」
どこから取り出したのか、彼はレイの手に丁寧に絆創膏を巻きつけていた。
「僕は、そんな綾波の指が大好きだよ。僕のために頑張ってくれた、この指がね……」
無意識のうちに、涙が溢れてくる。どうしようもなかった。止められなかった。そんなレイを見てシンジはまた微笑んで、軽く人差し指を曲げてそっとレイの涙を拭った。
「教えてあげるよ。もう怪我しないように。一緒に、世界一美味しい味噌汁を作ろう。父さんもきっと、喜んでくれるよ」
「うん、うん…………」
彼の優しさが、嬉しかった。風邪の熱も手伝って、頭がぼうっとした。自分がずっと見たかった笑顔は、この笑顔だ。
「風邪、辛い?」
一変して、シンジが心配そうな顔をする。レイはかぶりをふった。
「大丈夫。碇くんがいて……こほっ…………くれるから」
「大丈夫じゃないね、咳まで出てる。早く治さなきゃ」
「うん……」
「……綾波。知ってる?」
「なに、を……?」
「風邪ってさ、誰かに伝染すと、早く治るんだよ」
「――え?」
言うが早いが、彼の顔が、自分のそれと重なった。一瞬何をされているのか分からなくなる。やっとその行為の意味を知ったとき、レイの眸からもう一度、涙が溢れた。彼が、自分に……
レイはそれに応えた。弱々しく彼の首に手を回し、そっと抱き寄せる。熱に浮かされてるというのも原因の一つではあったが、それでもこれは、自分の願って止まなかったことだ。彼の唇のほのかな温かさが、不思議な眠気を誘った。
「分かった、伝染して、あげる……」
首に回した腕に力を入れると、彼は勢いよくレイの上に倒れこんだ。シンジの体重が少し息苦しかったが、嫌ではなかった。
「綾波、こんなに薄着してちゃ、だめじゃないか……風邪ひいても、自業自得だよ」
「なら、碇くんも……自業自得……」
シンジはふっと笑みをこぼした。
「そうだね、僕も、ばかだね……」
いつの間にか、彼の呼吸は眠っている人のそれへと変化していた。たまらなく愛しい気持ちになり、レイは彼の背中をそっとさすった。明日も休もう。彼のために、お粥を作ってあげよう。そしてもう一回、伝染してもらおう。
自分の左手を見てみる。彼の貼った絆創膏が、輝いて見えた。
「っ、痛……」
つう、と人差し指の第一関節から真っ赤な鮮血が一筋流れる。またやってしまった。そろそろ絆創膏を巻いてもらうのも申し訳ない気がする。この傷で七つ目。絆創膏は既にそれぞれの指に一枚ずつ。手首にも一枚。鍋の縁に当てて火傷。情けない気分でいっぱいになる。この程度で彼に美味しい味噌汁を食べてもらおうなどと、お笑い種も甚だしい。
けれど、やめるわけにはいかなかった。彼と、そして彼の父親。親子としては最悪の関係性たる彼らに和解してもらうには、きっと料理が一番。
残った具材をなんとか、食べられる大きさまで刻み鍋に入れて一煮立ち。見た目は少なくとも味噌汁である。匙にすくって一口飲んでみる。
しょっぱい。それに、出汁の味が全くしない。焦げた味がする。
これではだめ。彼に飲ませられない。鍋一杯の味噌汁を見つめ、レイは重いため息を吐いた。また失敗。
けれどいくら美味しくないからといって捨てるのも躊躇われる。アスカの言葉が頭をよぎった。しょっぱくても飲めないレベルではない。アパートの周りには野良猫も沢山いる。
塩辛い味噌汁に顔をしかめながら、レイはどうしたら上達できるか、ただただそれだけを考えていた。彼は、どうだったのだろう。彼もこんな風に失敗したのだろうか。
何故だか、それはあり得ないように思えた。彼は最初から料理が出来て、美味しい味噌汁を作れたように思えた。そちらの方がよほどあり得ない筈だが、レイにはそう思えた。
いつの間にか、血は固まっていた。表面のざらついた、小さな醜いかさぶたになっていた。このまま放っておいても問題ないように思えたが、やはり消毒はしておいた。絆創膏は明日にでもリツコに貼ってもらおう。
灰色の陰鬱な部屋の中で、レイは惨めな気分を噛み締めていた。部屋に漂う焦げ臭いにおい。シンクに大量に溜まった、洗われていない食器。鋭い痛みを放ち続ける左手。
その全てが一体となって、自分にどうしようもない無力感を覚えさせた。彼は自分にたくさんの事をしてくれたのに、自分は彼に何もしてあげられていない。包丁一つ使えない自分に唖然とした。今まで自分は本当に何もしていなかったのだなと、改めて思った。
けれど今は、もう人形じゃないから。
ベッドの中で、レイは決意した。明日は、明日こそは……
目が覚める。頭が重い。一瞬身体に異常をきたしたのかと緊張したが、すぐに思い当たった。どうも風邪らしい。
自分の格好を思い出していると、裸の上にワイシャツを羽織っただけだ。いくら常夏の世界とはいえ、身体にはよくないだろう。
今日の学校は休もう、レイは思った。彼に会えないのが残念だけど、伝染すのはもっと不本意。
そう結論付けるとレイはさっさと布団をかぶり、眠りについた。
――なみ……あ……なみ…………あやなみ…………綾波……
どこか遠くから、声が聞こえた。夢と現実の境がつかないが、自分は夢を見たことが無いから、多分現実なのだろう。重い頭を我慢して目を開くと、彼が自分を見下ろしていた。
「いかり……くん……」
「大丈夫?綾波」
レイは布団の中でこく、と首肯した。
「すごい熱だ……」
そう言いながら彼がレイの額の上にそっと自分の手のひらを乗せた。その動きに余計顔が熱くなるのを感じた。顔が赤いのを気づかれないか不安になったが、自分は風邪だということに気づいて安心した。
「何か食べた?」
「……食べてない」
「だろうね」
その口調は呆れたようなものでもあり、面白がっているようでもあった。
「綾波は、もっと自分の身体を大事にしなきゃ駄目だ。昨日だって、あれ、何時まで作ってたの?」
そう言って昨日の残骸を指差した彼に、レイは狼狽した。だめ、見てはだめ。
「だめ、見ちゃ……だめ…………」
弱々しくレイがベッドの中から左手を伸ばす。シンジは両手でその手をそっと握った。
「……ごめんね、もう見ちゃったんだ。その……僕の自惚れじゃなかったら、あれ、僕に、だよね?」
レイはまたも小さく頷く。
「碇くんと碇司令に、なかよく……なって、ほし、くて…………」
「喋らないで、綾波」
シンジが濡れたタオルをレイの額に乗せる。レイはほうっと息を吐いた。
「こんなになるまで、がんばってくれたんだね……」
何のことか分からず、レイがそちらに目を向けると、シンジが愛しげに、レイの左手を撫でていた。
「それは……」
「せっかくの綺麗な指が、台無しだね……」
恥ずかしい。料理も出来ない女の子だと思われる。
「だって、私、お料理、したことない……」
「分かってるよ。でもね、綾波」
ぴりっと、昨日怪我した人差し指に痛みが走った。レイが身体を硬くすると、直後指が温かい粘膜に包まれている感触がした――シンジが、レイの人差し指をくわえていた。かさぶたの上を舌がそっとなぞる。
「だめ、碇くん、汚い……」
「汚くなんて無いよ、それに、僕はね」
どこから取り出したのか、彼はレイの手に丁寧に絆創膏を巻きつけていた。
「僕は、そんな綾波の指が大好きだよ。僕のために頑張ってくれた、この指がね……」
無意識のうちに、涙が溢れてくる。どうしようもなかった。止められなかった。そんなレイを見てシンジはまた微笑んで、軽く人差し指を曲げてそっとレイの涙を拭った。
「教えてあげるよ。もう怪我しないように。一緒に、世界一美味しい味噌汁を作ろう。父さんもきっと、喜んでくれるよ」
「うん、うん…………」
彼の優しさが、嬉しかった。風邪の熱も手伝って、頭がぼうっとした。自分がずっと見たかった笑顔は、この笑顔だ。
「風邪、辛い?」
一変して、シンジが心配そうな顔をする。レイはかぶりをふった。
「大丈夫。碇くんがいて……こほっ…………くれるから」
「大丈夫じゃないね、咳まで出てる。早く治さなきゃ」
「うん……」
「……綾波。知ってる?」
「なに、を……?」
「風邪ってさ、誰かに伝染すと、早く治るんだよ」
「――え?」
言うが早いが、彼の顔が、自分のそれと重なった。一瞬何をされているのか分からなくなる。やっとその行為の意味を知ったとき、レイの眸からもう一度、涙が溢れた。彼が、自分に……
レイはそれに応えた。弱々しく彼の首に手を回し、そっと抱き寄せる。熱に浮かされてるというのも原因の一つではあったが、それでもこれは、自分の願って止まなかったことだ。彼の唇のほのかな温かさが、不思議な眠気を誘った。
「分かった、伝染して、あげる……」
首に回した腕に力を入れると、彼は勢いよくレイの上に倒れこんだ。シンジの体重が少し息苦しかったが、嫌ではなかった。
「綾波、こんなに薄着してちゃ、だめじゃないか……風邪ひいても、自業自得だよ」
「なら、碇くんも……自業自得……」
シンジはふっと笑みをこぼした。
「そうだね、僕も、ばかだね……」
いつの間にか、彼の呼吸は眠っている人のそれへと変化していた。たまらなく愛しい気持ちになり、レイは彼の背中をそっとさすった。明日も休もう。彼のために、お粥を作ってあげよう。そしてもう一回、伝染してもらおう。
自分の左手を見てみる。彼の貼った絆創膏が、輝いて見えた。
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/14 20:42 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
【何処さん】
さあ、どこから突っ込みましょうか(爆)
かなり甘いはずなのに、すっとぼけたノリが中和してますw
さあ、どこから突っ込みましょうか(爆)
かなり甘いはずなのに、すっとぼけたノリが中和してますw
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/13 17:00 |
投稿者 | : 何処 |
参照先 | : |
碇君。
私、前髪少し切ってみたの。
気付いてくれるかしら?
「…無理よね…」
溜め息が出る。
私が人として生き始めて一年…感情を、人の心を自覚してから、私の苦悩は始まったの。
洞木さんとセカン…いけない、又怒られる処だ。アスカと言う二人の教育係は私に女としての自覚を促した。それはもう我ながら驚く程に。
気付けば碇君の事を見詰め、その癖碇君の視線を受け止められもせず目を逸らす。
胸が苦しい、喉が渇く、血圧が上がる。
「間違いないわ、それは恋よ。」
「…恋?」
「恋ね。ヒカリ、やっと、やっとこの娘がここまで来たわ…」
「長かったわね…」
「?」
【1st-kiss(裏)】
今日、6月6日は碇君の誕生日…私はある決意を持ってこのイベントに参加したの。
「…それじゃ…私…これで失礼します…」
「ぢ、ぢゃあぁあああ、ぼボボ僕あああ綾あや綾波をおおお送ってきます。」
「じゃ、頼んだわよシンジ君。本当なら大人が送らなきゃいけなかったんだけど…なにせあの様だから…」
「うひゃひゃひゃひゃ!加持おまらへー!ミサト特製四種混合カクテルにょ!にゃはは~」
「葛城こいつはカクテルなんて上等な代物か!?こりゃ只の闇鍋チャンポンて言うんだ!」
「ミーサートー!あんた飲み過ぎなのよ!あっ!?あたしのアイスバイン!?」
「豚足はいいねえ…コラーゲンの極みだよ…」
「貴様殺す!は、離してミサト!」
「刃物は止めなさい刃物はぁ…ヒック」
「あは~おさけ美味し~いあは~先輩が二人~」
「続いて懐かしの70年代フォークを…」
「ぅ~マヤちゃんを誰か止めてくれ~、青葉ぁギターはもう止めろ~」
「魔窟…」「綾波何気に酷。」
「…あたしも逃げようかしら…」
「…行ったわね。」
「…シンちゃんのあの上がりっぷり…プククッ!」
「意外なのはレイよ、ミサトも見たでしょ?」
「見た見た!シンジ君と二人揃って右手右足同時に…クククククッ!」
「よーっし!さ、行くわよ皆!あの二人を生暖かく見守るのよ!」
「おいおいミサトはともかくリッちゃんが何でそんな張り切っ…ってアスカ?何を…釘バットは止めろ釘バットは!」
「この変態ホモ使徒があたしのアイスバイン喰いやがったのよ!おまけにレイから譲って貰ったあたしの大好物の骨付きチョリソまで…」
「ん~♪このソーセージの固さといいサイズといい…ヘブッ!?」
「…不潔…ヒック。」
「マヤ、ナイス突っ込み!」
「うわ酷ぇ…」
「…ボトルでどついたよ…」
「自業自得とは言え…御愁傷様だなこりゃ。」
「マヤちゃんちょっちそりはお酒に失礼ぢゃなぁい?そり30年物よぉん?」
「ミサト何言って…流石バカラのクリスタル製…傷一つ無い…」
「「「…そっちか?」」」
「さて…この不審変質者をどうしてくれよう…」
「…シ、シンジ君~…あ、君のペーゼなら僕は、僕は…」
「…滅殺。」
渚カヲル、沈黙
「ふう、これでよし。」
「それより!あの娘達追い掛けるわよ!」
「…この人数で?」「しかも全員酔っ払いで?」
「だ~い丈夫よぉん、ぬわぁ~んっとわっってあの二人、今はラブラブフィールドのせいでお互いしか目に入ってないものぉ!」
「さて、じゃあ今日はあの二人…何処まで行くかな?」
「決まってるぢゃないれふかぁ…シ~ンジ君がぁ…お泊まり!嫌んシンジ君不潔ぅ!」
「あの馬鹿シンジにそんな勇気無いわよ。」
「ん~手繋げれば上等かなぁ…」
「確かに…」
「でもぉ、シンちゃんだって何のかんの言いながら男の子ょぉ?ましてや…」
「レイのあの気合いの入り様…勢いに流されても不思議は無いわね…」
「…賭けるかい?」
「「「「「「乗った!!!!!」」」」」」
「綺麗な…月だね…」
「ええ…」
「…綾波…」
「何?」
「ん…」
「あ…」
碇君と、初めてキスをした。
気付けば碇君が私に唇を重ねていた。
喜びより、疑問。
「何故?」
「…君が、好きだから…」
顔を伏せ、碇君は…
嬉しい…けど、違うの碇君。
お願い、今は私を見て欲しいの。
「…何故、私を見ないの?」
「え?」
「私を、見て。そして、話して。」
碇君、私、今日の為にリツコさんから香水、ミサトさんからピンクのリップ、アスカと洞木さんに髪と眉を手入れして貰ったの。
この服もマヤさんに選んで貰った服なのよ?どう?可愛く無いの?
「う…うん…あ、綾波、ぼ、僕は君が…その…」
え?碇君?あの、私の今言いたかったのは…
「いや、は、はっきり言う、うん。」
あ、碇君、待って、私…
こ、心のじゅ、準備が、あの…
「ス~~ッッ、」
え!?嘘!?今ここで?本当なの!?
「あ、綾波!僕は…僕は君が好きだ!だからキスをしたんだ!」
…あ、涙が出そう…
「…私も。」
「え!?」
「私も、碇君が、好き。」
もう止まらない。
「あ、綾波…」
…勇気を…下さい…
「だから、これは私からの返事のキス。」
「え?ンムッ!?」
「「………」」
「…碇君、私、今、自分の意思で碇君とキスをした…四人目の私が、初めて、自分の意思で動いたの。」
「え?あ、綾波?」
「命令では無い最初の行動…私から碇君へのバースデープレゼント。」
「あ…あぁ…」
「碇君へのキス、感謝の気持ち…受け取ってくれて…有り難う…」
「い、いや綾波!ぼぼ僕こそああ有り難う!」
!?
「有り難う…私、碇君から…あ、有り難うなんて…なん…て…うぅ…涙?何故?嬉しいのに…えくっ、う、嬉しいのに…何故?」
あ、碇君の手が…
「綾波…嬉しいなら、笑えばいいんだ。だから笑って綾波、泣かないで綾波、泣かないで…」
…涙を流す私…哀しい程嬉しい…思わず抱き寄せられた私はそのまま碇君に抱き付いたの…
このまま…
このまま…
…時間が止まってくれたらいいのに…
…気付けば日付が代わっていて、碇君は私を部屋まで送ってくれたの…
嫌、別れたく無い…
私はそっと窓から碇君の後ろ姿を…
え?
そこに何故皆居るの?
…全員で覗いてたのね…
ん?でも何故私気付かな…
あ。
私、碇君しか見てなかった…
…無いわ。
あり得ない以上にそれは無いわ…
女性陣に追い掛けられる長髪を後ろに結った男性を傍らに眺め碇君は何やら二人の男性オペレーターと話をしている。
…止めよう。放置する事にして私は浴室へ。
それにしても…はあ。
全部…見られてたのよね…
服を畳み脱衣籠へ、浴室に入りシャワーを浴びる。
…はあ。
明日皆にどんな顔すればいいか解らない…けど…多分大丈夫よね。
だって碇君が傍に居るから。
私はシャワーの水圧を上げ、洗髪をする。シャンプーはフローラルのいい薫りがした。
【終わり】
「うう…ぼ、僕の出番…シンジ君…僕は諦めない…」
「クェ?」
月光照す室内。簀巻きにされた銀髪の少年を、只一羽のペンギンだけが眺めていた。
「シンジ君~」
「クヮ~…」
私、前髪少し切ってみたの。
気付いてくれるかしら?
「…無理よね…」
溜め息が出る。
私が人として生き始めて一年…感情を、人の心を自覚してから、私の苦悩は始まったの。
洞木さんとセカン…いけない、又怒られる処だ。アスカと言う二人の教育係は私に女としての自覚を促した。それはもう我ながら驚く程に。
気付けば碇君の事を見詰め、その癖碇君の視線を受け止められもせず目を逸らす。
胸が苦しい、喉が渇く、血圧が上がる。
「間違いないわ、それは恋よ。」
「…恋?」
「恋ね。ヒカリ、やっと、やっとこの娘がここまで来たわ…」
「長かったわね…」
「?」
【1st-kiss(裏)】
今日、6月6日は碇君の誕生日…私はある決意を持ってこのイベントに参加したの。
「…それじゃ…私…これで失礼します…」
「ぢ、ぢゃあぁあああ、ぼボボ僕あああ綾あや綾波をおおお送ってきます。」
「じゃ、頼んだわよシンジ君。本当なら大人が送らなきゃいけなかったんだけど…なにせあの様だから…」
「うひゃひゃひゃひゃ!加持おまらへー!ミサト特製四種混合カクテルにょ!にゃはは~」
「葛城こいつはカクテルなんて上等な代物か!?こりゃ只の闇鍋チャンポンて言うんだ!」
「ミーサートー!あんた飲み過ぎなのよ!あっ!?あたしのアイスバイン!?」
「豚足はいいねえ…コラーゲンの極みだよ…」
「貴様殺す!は、離してミサト!」
「刃物は止めなさい刃物はぁ…ヒック」
「あは~おさけ美味し~いあは~先輩が二人~」
「続いて懐かしの70年代フォークを…」
「ぅ~マヤちゃんを誰か止めてくれ~、青葉ぁギターはもう止めろ~」
「魔窟…」「綾波何気に酷。」
「…あたしも逃げようかしら…」
「…行ったわね。」
「…シンちゃんのあの上がりっぷり…プククッ!」
「意外なのはレイよ、ミサトも見たでしょ?」
「見た見た!シンジ君と二人揃って右手右足同時に…クククククッ!」
「よーっし!さ、行くわよ皆!あの二人を生暖かく見守るのよ!」
「おいおいミサトはともかくリッちゃんが何でそんな張り切っ…ってアスカ?何を…釘バットは止めろ釘バットは!」
「この変態ホモ使徒があたしのアイスバイン喰いやがったのよ!おまけにレイから譲って貰ったあたしの大好物の骨付きチョリソまで…」
「ん~♪このソーセージの固さといいサイズといい…ヘブッ!?」
「…不潔…ヒック。」
「マヤ、ナイス突っ込み!」
「うわ酷ぇ…」
「…ボトルでどついたよ…」
「自業自得とは言え…御愁傷様だなこりゃ。」
「マヤちゃんちょっちそりはお酒に失礼ぢゃなぁい?そり30年物よぉん?」
「ミサト何言って…流石バカラのクリスタル製…傷一つ無い…」
「「「…そっちか?」」」
「さて…この不審変質者をどうしてくれよう…」
「…シ、シンジ君~…あ、君のペーゼなら僕は、僕は…」
「…滅殺。」
渚カヲル、沈黙
「ふう、これでよし。」
「それより!あの娘達追い掛けるわよ!」
「…この人数で?」「しかも全員酔っ払いで?」
「だ~い丈夫よぉん、ぬわぁ~んっとわっってあの二人、今はラブラブフィールドのせいでお互いしか目に入ってないものぉ!」
「さて、じゃあ今日はあの二人…何処まで行くかな?」
「決まってるぢゃないれふかぁ…シ~ンジ君がぁ…お泊まり!嫌んシンジ君不潔ぅ!」
「あの馬鹿シンジにそんな勇気無いわよ。」
「ん~手繋げれば上等かなぁ…」
「確かに…」
「でもぉ、シンちゃんだって何のかんの言いながら男の子ょぉ?ましてや…」
「レイのあの気合いの入り様…勢いに流されても不思議は無いわね…」
「…賭けるかい?」
「「「「「「乗った!!!!!」」」」」」
「綺麗な…月だね…」
「ええ…」
「…綾波…」
「何?」
「ん…」
「あ…」
碇君と、初めてキスをした。
気付けば碇君が私に唇を重ねていた。
喜びより、疑問。
「何故?」
「…君が、好きだから…」
顔を伏せ、碇君は…
嬉しい…けど、違うの碇君。
お願い、今は私を見て欲しいの。
「…何故、私を見ないの?」
「え?」
「私を、見て。そして、話して。」
碇君、私、今日の為にリツコさんから香水、ミサトさんからピンクのリップ、アスカと洞木さんに髪と眉を手入れして貰ったの。
この服もマヤさんに選んで貰った服なのよ?どう?可愛く無いの?
「う…うん…あ、綾波、ぼ、僕は君が…その…」
え?碇君?あの、私の今言いたかったのは…
「いや、は、はっきり言う、うん。」
あ、碇君、待って、私…
こ、心のじゅ、準備が、あの…
「ス~~ッッ、」
え!?嘘!?今ここで?本当なの!?
「あ、綾波!僕は…僕は君が好きだ!だからキスをしたんだ!」
…あ、涙が出そう…
「…私も。」
「え!?」
「私も、碇君が、好き。」
もう止まらない。
「あ、綾波…」
…勇気を…下さい…
「だから、これは私からの返事のキス。」
「え?ンムッ!?」
「「………」」
「…碇君、私、今、自分の意思で碇君とキスをした…四人目の私が、初めて、自分の意思で動いたの。」
「え?あ、綾波?」
「命令では無い最初の行動…私から碇君へのバースデープレゼント。」
「あ…あぁ…」
「碇君へのキス、感謝の気持ち…受け取ってくれて…有り難う…」
「い、いや綾波!ぼぼ僕こそああ有り難う!」
!?
「有り難う…私、碇君から…あ、有り難うなんて…なん…て…うぅ…涙?何故?嬉しいのに…えくっ、う、嬉しいのに…何故?」
あ、碇君の手が…
「綾波…嬉しいなら、笑えばいいんだ。だから笑って綾波、泣かないで綾波、泣かないで…」
…涙を流す私…哀しい程嬉しい…思わず抱き寄せられた私はそのまま碇君に抱き付いたの…
このまま…
このまま…
…時間が止まってくれたらいいのに…
…気付けば日付が代わっていて、碇君は私を部屋まで送ってくれたの…
嫌、別れたく無い…
私はそっと窓から碇君の後ろ姿を…
え?
そこに何故皆居るの?
…全員で覗いてたのね…
ん?でも何故私気付かな…
あ。
私、碇君しか見てなかった…
…無いわ。
あり得ない以上にそれは無いわ…
女性陣に追い掛けられる長髪を後ろに結った男性を傍らに眺め碇君は何やら二人の男性オペレーターと話をしている。
…止めよう。放置する事にして私は浴室へ。
それにしても…はあ。
全部…見られてたのよね…
服を畳み脱衣籠へ、浴室に入りシャワーを浴びる。
…はあ。
明日皆にどんな顔すればいいか解らない…けど…多分大丈夫よね。
だって碇君が傍に居るから。
私はシャワーの水圧を上げ、洗髪をする。シャンプーはフローラルのいい薫りがした。
【終わり】
「うう…ぼ、僕の出番…シンジ君…僕は諦めない…」
「クェ?」
月光照す室内。簀巻きにされた銀髪の少年を、只一羽のペンギンだけが眺めていた。
「シンジ君~」
「クヮ~…」
件名 | : Re: 1111111ヒット記念企画 |
投稿日 | : 2010/06/11 02:37 |
投稿者 | : calu |
参照先 | : |
■JUNさん
拙作も読んで頂き有難うございました。また感想までいただき感謝デス。
>コミカルさがたまりません。
今後四人目への投下路線はこれで行こうかな、と(笑)。
>長門姉妹がどんどん馴染んでいます。もはやレギュラー(笑)
お有難うございます(笑)。マキさんの産みの親のtambさんに感謝ですね。ミキは非番の時はマキさん
と一緒にいることが多いらしいですので、これからも一緒に出てくる機会は多いと思いますよ(笑)。
実は、個人的にレイが13歳の時に中学に転校することになった理由が非常に気になっているのです。
anniversaryは、その時間軸周辺に触れるFFの第一弾のようなものになっております。よりまして、そのうちに
思い出したように第二弾を投下させて頂くかもしれません。その時にまた読んで頂ければ嬉しいです。
■tambさん
拙作を読んで頂き有難うございました。
頂きました感想にただ只管感激しております。
>ただ、「anniversary」には演技感は感じられない。それは前文との落差にも繋がる。
落差を感じて頂けたとすれば、嬉しいです。「彷徨う虹」の作中でもそうなのですが、私はこの落差を
産み出す事を、かなり意識しています。落差は、シリアスさをより増し、その描写においてのリアリティ
を増幅させる一因になると信じているのですが、それは綾波レイという少女の存在を少しでも色濃いもの
にしたいという想いから来てるんだと思います。
>レイが部屋に鍵を掛けないのはその少年がいつでも帰ってこれるように、という理由だった。
それは、読んでみたいですね。探してみます(笑)。
>逆に言えば、恐怖や怯えを感じていない転校生は恐怖の対象になり得るわけだ。
tambさんのその作品も読みたい(爆)。
果たして、その転校生は如何なる力をアシュアランスとして、恐怖そして怯えを級友たちに転嫁している
のか、なんて紹介文をまた長門姉妹に書かせますので(^^;)
■何処さん
初めまして、caluと申します。今後ともよろしくお願いいたします。
【1st-kiss】、楽しく読ませていただきました。
>そのまま……何も出来なかった…
良かったですね……路上だもの(^^;)
これからもこちらの企画で貴作にお目にかかれそうですね。楽しみにしております。
■最後になりましたが、このスレの投稿作品を書こう! と思い立った途端、見計らったように仕事が忙しくなり
(同時多発監査ですー)「anniversary」も宙ぶらりんになるところでしたが、二人目で名も無きROMさんから頂い
た激励の言葉を励みに、何とか投稿を果たす事が出来ました。改めまして、名も無きROMさんに感謝いたします。
あと一作くらい投下出来れば、と考えております。
こつけて何か適当に書いてみませんかというスレでございます。
お題は「1111111」から連想されるものなら何でもOK。単に1でも問題なし。綾波レイが7人
行進して来るでもOK(笑)。とにかく何でもOK。
サイズ等の制限は基本的になし。それこそ100文字でもOK。ただし読むのに五時間とかかか
るような大長編はご遠慮ください(笑)。あと連載もダメ。書き上げて一気に投下してください。
ゲンレイもダメ(笑)。18禁もアウトです。
感想とかの反応もこのスレで。結果的に割り込みになっても気にしなくてOK。
一見さん歓迎です。お気楽にどうぞー。もちろん常連さんも歓迎。
これはという名作が出てきたらサルベージも考えます。異常な盛り上がりを見せたら通常企
画に変更もありえるかも!
締め切りは、そうだな、2000000ヒットまでかな。一日平均350くらいだから……ま、そのく
らい先です(笑)。
こんなもんかな? 何か質問とかあればこのスレでお願いします。
というわけでよろしくお願いします。盛り上げましょう。私もこれから考えます。
最後に、提案してくださった名も無きROM氏に感謝を。
-------------------------
締め切り修正します。2000000ヒットまでだと長すぎるんで、10周年記念企画発動までに変更です。
ま、だいぶ先ですよね(笑)。