【タイトル】Re: What is what you cannot do? 【記事番号】-2147481996 (-2147482041) 【 日時 】06/04/16 22:59 【 発言者 】tomo
なお。さん、牙丸さん、tambさん。感想ありがとうございました♪
今気付いたのですけど、お話の後、一言コメントを投稿したと思ったのですが、どうやらネットの環境のせいで(?)、投稿されていなかったみたいですね。 えっと、少し説明をすると、このお話(さらに、もう一つ投稿した「Why don't you skip a class?」も)は、一番初めに投稿した「I was waiting for you~」と全く同時期に思いついたものです。 私の場合、キャラのイメージからお話を考え付くとき、だいたい2~3個のお話を思いつきます。 それぞれキャラの行動だったり、台詞だったりでお話を思いつくわけですが、その中で実際に投稿するのはたいてい一つだけです。 これは、思いついたイメージをお話として構成することができなかったり、お話になっても、いまいち自分が納得しなかったりするからです。
【記事番号】-2147482041 (2147483647)
【 日時 】06/04/12 01:51
【 発言者 】tomo
こういうのって、いまどき珍しいのではないだろうか。
僕は目の前に張り出されている大きな張り紙をみつめながら、そんなことを考えていた。
辺りには顔面蒼白で一点を見つめている者や、かと思えば、満面の笑みで友達と話し合っている者、さらには、ちょっとはなれたところで妙にテンション高くはしゃいでいる者など、さまざまな人間模様が見て取れる。
こういうとき、それぞれの人間がどういう風な感情を抱いているのかを考えるのはちょっと楽しい。
それは、以前相手の顔色ばかりうかがっていた僕だからこそ生まれた(?)ちょっとした楽しみの一つだった。
例えば、さっきまで僕の右後ろにいた彼。
この張り紙を見たとき、彼は確かに喜んでいた。
右手で小さく、本当に小さくではあるけれど、ガッツポーズをしていたし、その顔は目の前の結果に達成感を感じているようでもあった。
でも。
そんなしぐさも一瞬のことで、彼はさっさと張り紙から目を離すと、どこかへ行ってしまった。
今はもうその影すらも見えない。いくら張り紙の前にちょっとした人だかりができているとはいっても、だ。
そんな彼と対照的なのは、僕の左前方の方で友人と思われる女性と喜び合っている彼女。
なんどもなんども『やったよ、ちえちゃん』といって友人の手とって振り回している。
受験校の合格発表じゃあるまいし、いくらなんでも少しオーバーなような気もするけど、ひょっとしたら、彼女にとってはそれと同じくら、あるいは、それ以上に嬉しいことなのかもしれない。
手を握られている友人も『はいはい。よかったわね~』と半ばあきれつつも、ちゃんと賞賛してあげているようだった。
そんな風に喜び方一つ採ってみても個々に微妙な異なりをみせる。
そういうちょっとした差異の理由を推測するのは、なんだかその人のプライベートを覗くようである種の退廃的な楽しさがあったりするのだ。
前述した彼女は、ひょっとしたら生まれて始めて『良い結果』を出せたのかもしれない。それも、今一緒に喜び合っている友人と一緒になってがんばって。
対照的に、すぐにここをさってしまった彼は、もう『良い結果』に見慣れているのかもしれない。いや、むしろ、彼にとっては『良い結果』は日常であって、常に『良い結果』であり続けることを要求されてさえいるのかもしれない。
もしそうなら、彼にとって『良い結果』はこれから悪夢のように続くであろう階段の一歩に過ぎないことになってしまう。
彼の方が彼女よりはるかに『良い結果』だったのに、彼女の方が彼よりはるかに喜んでいる。
この事実の裏には、そういったちょっと悲しい背景があるのかもしれない。
「シンジ!」
名前を呼ばれて急に意識を思考の渦から現実に戻される。その格差にちょっとした違和感すら感じる。
振り返れば、僕の左後ろで亜麻色の髪をした女性が腰に手をかけた、あのいつものポーズで立っていた。
「アスカ……」
なんというわけでもなく、とりあえず、名前を呼んでみる。
「どうだった~? 学年末の成績は?」
それまで醸し出していた華やかな雰囲気を一瞬にして小悪魔的なそれに変えながら、アスカはたずねる。
「前期のより少しは上がっているのかしらねぇ~?」
自らの作り出した雰囲気にこれ以上ないくらいぴったりな嘲笑をうかべながら、アスカは顔を近づけてくる。
「さてね」
そんなアスカに苦笑しながら、僕はあいまいな返事を返す。
「さてね、ってどういう意味よ? 隠したって、すぐばれるんだからね」
僕の返事にアスカはご不満そうだ。
たしかに全員の名前と生徒番号が張り出されているのだから、ここで隠しても意味はない。
「別に隠してなんかないよ」
「じゃ、ど~いう了見なのかしら?」
といって、アスカはさらに距離をつめてくる。
「まだ見てないからわからないだけさ」
あまりにも予想外の答えだったのだろうか、そう言った僕の言葉に一瞬だけ、目を丸くするアスカ。
そうなのだ。
僕は今の今まで、周りの様子ばかり見ていて、肝心の自分の順位を見ていなかったのだ。
「アンタね~……」
アスカが何事かを続けようとしたとき、周りの空気が少し変化した気がした。
あいかわらずざわざわと騒々しくはあるのだが、なんていうのだろう、そのざわめきの質が変ったような気がするのだ。
アスカもそれを感じ取ったらしく、そして、その理由も理解したらしく、視線をめぐらせる。
やがて、アスカの視線が僕の右側から歩いてくる人物の姿を認めたのがわかった。
僕もアスカと同じように視線をその人物へと向ける。
コツン……コツン……コツン……
彼女の規則正しいその足音がそんな風にしっかりときこえてくるのは、たぶん気のせい。
でも、周りのざわめきが少し小さくなったのは事実。
その意味に、僕が思いをめぐらすよりも早く、
「おはよ、レイ。」
アスカがそう声をかけた。
「おはよう、アスカ、碇君」
僕とアスカにかわるがわる視線を向けながら、彼女はそう挨拶を返す。
「おはよう、綾波」
どことなく照れくささを感じながら、僕もそう言って返事をする。
今朝の彼女は、自身の髪よりも少しだけ鮮やかなライトグレーの色をしたメガネをかけていた。
たぶん、この張り紙を読むためだろう。
彼女がメガネをかけだしたのはついこの前のこと。
リツコさんにメガネをかけるように勧められてからだ。
以来、勉強をするときや、遠くのものを見るときにメガネをかけるようになったのだった。
「わざわざメガネを使って確認しなくても、レイの名前が書かれている場所はいつも殆どおんなじでしょ?」
たしかに。
アスカの言ったことは、たぶん、ここにいる全員が考えたことだろう。
それをあえて口にするのが、なんというか、とてもアスカらしいと思った。
「そうだとしても、これがないと見えないから」
彼女はそう言って、僕の背後にある張り紙を見上げる。
『’18年度学年末試験総合成績
1位 綾波 レイ 総合580点』
そこにはそう記されていた。
彼女はそれを見ると、瞳を和らげ、ほんの少しだけ笑った。それは僕だけが知っている、彼女が喜んだときのしぐさだった。
「んとに、相変わらずのトップよね」
またもアスカの言うとおりだった。
高校に入学してから、彼女がトップを取れなかったのはただの1度きり。それ以外、こうやって張り出される試験で彼女の名前が『1位』になかったことはない。
でも、そのことは必ずしも良いことだとは限らない。
勝つ者がいれば、負ける者もいる。
そして、負けた者が須らくアスカのように素直に『勝利』を祝福してくれる保証はないのだ。
「アタシも古文さえなければ、まだ勝負になるんだけどね」
いつのまにか、周りのざわざわは、ひそひそに変っていた。アスカを除いて。
「さて、成績も確認したことだし、そろそろ行こっか」
そんな雰囲気を敏感に感じ取ったのだろうか。アスカが不自然なくらいに明るくつぶやく。
「そうだね……綾波」
僕の呼びかけに、視線でこたえる彼女。
そうやって、僕たち三人はその場を後にした。
あとには、決して正面から語られることのない言葉たちだけが残されていた。
教室に帰る途中、アスカは洞木さんに呼ばれてどこかに行ってしまった。
だから、今僕は彼女と二人で廊下を歩いてる。
僕の左側、少し先を歩く彼女の顔を、歩きながら僕は何度か盗み見ていた。
いいわけや、くだならないおしゃべりができるようになっても、こういうときに交わすべき会話を僕はまだ知らない。
そんな僕にはとりとめもなく、今思っていることを口にすることしかできなかった。
「すごいよね、これで何回連続1位なんだっけ?」
「たぶん、5回だと思うけど」
「そっか……最近じゃ、料理の腕もめきめき上達しているし、綾波って、なんだかんだいって結構器用だよね」
「そうかしら」
淡々と返す彼女。謙遜してるってわけでもないようだ。
「きっと、そうだよ。なんだか今の綾波を見てると、なんでもできちゃいそうな気がしてくるよ」
「それは違うわ」
彼女が初めて僕の顔を振り返った。紅い瞳がなんだか笑っているような気がする。
「今の私にも絶対にできないことがあるもの」
「絶対にって、それって、一体何?」
思わずそう聞きかえす僕。
「あなたを、嫌いになることよ」
それまでと全く異ならない口調で、しかし、彼女はきっぱりと言い切った。
「……え……あ……」
僕が何かを言い返すよりも早く、彼女は教室の中へと消えていく。
後に残された僕は、戸惑いやらうれしいやらはずかしいやらとった感情でぐちゃぐちゃになりながら、彼女の背中をただ見つめているのだった。
【タイトル】Re: What is what you cannot do?
【記事番号】-2147482031 (-2147482041)
【 日時 】06/04/13 03:30
【 発言者 】なお。
インテリだ! 眼鏡はライトグレーか。赤いセルロイドなんかを想像したんだけど、それも似合う。
> それまでと全く異ならない口調で、しかし、彼女はきっぱりと言い切った。
表情も変わらない。さらっと言った感じ。
> 僕が何かを言い返すよりも早く、彼女は教室の中へと消えていく。
でもしっかりと照れている様子。
最近tomoさんのテイストがわかってきた気がする。かなりツボです。
【タイトル】Re: What is what you cannot do?
【記事番号】-2147482020 (-2147482041)
【 日時 】06/04/14 22:52
【 発言者 】牙丸
リクエストに応えていただけたようで、ありがとうございます。
>受験校の合格発表じゃあるまいし
ここでちょっと驚きました。合格発表だと思ってたので。
大学の成績の張り出しでしたか(^^;)
>「まだ見てないからわからないだけさ」
ここがいかにもシンジらしい。周りばかり見ていて、自分自身をまったく見ていない。
でも、そういう人って結構珍しい部類だと思う(笑)
普通なら真っ先に自分のを探すでしょうから。
あるいは知人、友人のを探すとか。
>『’18年度学年末試験総合成績
> 1位 綾波 レイ 総合580点』
うお~!やっぱりエリートだ!
すでに大学を出ているはずのアスカが負けているのは少々笑える。
流石に古文とかはダメですか?アスカ様。
ちなみに、アスカの順位はどれくらいだか気になります。
>「あなたを、嫌いになることよ」
絶対できないと言い切ってしまうほど、シンジに惚れてしまったレイさんに萌えw
にしても、平々凡々っぽいこのシンジも、レイさんをここまで惚れさせているあたり、凄いのかもしれない。
なんだか、このレイにはさん付けじゃないとダメな気分になるのは私だけですか?
【タイトル】Re: What is what you cannot do?
【記事番号】-2147482014 (-2147482041)
【 日時 】06/04/15 16:55
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
高校受験の時の話をしよう。私は第一志望に合格したのだが(というか、行きたい高校が二校あって、どっちに行こうかずっと迷っていた。両方受かったんだけど)、傲慢な言い方をすれば当然だと思った。学校の学力レベルで選んだわけではなかったから。だが、やはり舞い上がっていたらしく、発表を見たら合否にかかわらず学校に連絡することになっていたんだが、電話するなり「受かりました」と言ってしまい、「誰だ?」と返されたのであった(^^;)。
翌年、校庭で喜ぶ受験生を横目で睨み、我々はこう呟いたのであった。入ると地獄だぜ……。
それはそれとして(笑)、みなさん指摘していらっしゃいますが、
>それまでと全く異ならない口調で、しかし、彼女はきっぱりと言い切った。
やっぱここですなー。そして、
>でもしっかりと照れている様子。
です。こういうのが私の萌え(笑)。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: What is what you cannot do?
【記事番号】-2147481996 (-2147482041)
【 日時 】06/04/16 22:59
【 発言者 】tomo
なお。さん、牙丸さん、tambさん。感想ありがとうございました♪
今気付いたのですけど、お話の後、一言コメントを投稿したと思ったのですが、どうやらネットの環境のせいで(?)、投稿されていなかったみたいですね。
えっと、少し説明をすると、このお話(さらに、もう一つ投稿した「Why don't you skip a class?」も)は、一番初めに投稿した「I was waiting for you~」と全く同時期に思いついたものです。
私の場合、キャラのイメージからお話を考え付くとき、だいたい2~3個のお話を思いつきます。
それぞれキャラの行動だったり、台詞だったりでお話を思いつくわけですが、その中で実際に投稿するのはたいてい一つだけです。
これは、思いついたイメージをお話として構成することができなかったり、お話になっても、いまいち自分が納得しなかったりするからです。
今回はちょっとだけ欲をだして(?)思いついてお話にできたお話を3っつとも投稿させていただいたわけです。
ちなみに、投稿の順番は、私の自信(?)のある順番になってマス。
■なお。さん
>インテリだ! 眼鏡はライトグレーか。赤いセルロイドなんかを想像したんだけど、それも似合う。
このお話のレイにはメガネは個人的には必須でした。
そのさい、色をどうするか悩んだのですが、ネットでいくつかメガネを見てみて、ライトグレーに決めました。似合うって言ってもらえて嬉しいです。
>最近tomoさんのテイストがわかってきた気がする。かなりツボです。
ありがとうございます♪かなり励みになるお言葉です。このお話のレイは本編のイメージをあえて無視してイメージされたものだので、ある意味、私の創造性(っていうほど大したものでもありませんが)が前面に押し出されています。
だから、とっても嬉しいです。
■牙丸さん
>ここでちょっと驚きました。合格発表だと思ってたので。
>大学の成績の張り出しでしたか(^^;)
すいません、このお話は高校の頃のお話です(爆)。
えっと、作者としては、「高校に入学してから~」の一文と成績発表の年度でわかっていただきたかったのですが、無理でしたでしょうか。
ちなみに、「’18年度」っていうのは、2018年度です。つまり、このとき、シンジたちは高校2年生という設定なのでした。(これはわかりづらいでしたね、すいません。)
>ちなみに、アスカの順位はどれくらいだか気になります。
アスカの順位は、この時4位です。二年生になって古文が始まって以来、成績を落としています。
ちなみに、たった一度だけレイを抜いて1位になったのは、アスカです。
シンジくんの成績は……まぁ、可もなく不可もなくってとこですね(笑)
>平々凡々っぽいこのシンジも、レイさんをここまで惚れさせているあたり、凄いのかもしれない。
そうですね。でも、このシンジにはそれくらいの魅力はあるんじゃないかなって思ってます。
底の辺り、うまく私が描ければいいのですけど、ね。
>なんだか、このレイにはさん付けじゃないとダメな気分になるのは私だけですか?
やっぱり、そう思います?
実は、私も脳内呼称は「レイさん」なのでした(壊)
■tambさん
私も高校受験した口ですが、tambさんの気持ちはよくわかりませんでした(爆)
私の場合も二つ受けたのですけど、片方落とされてされてしまいましたから~
残念!
>こういうのが私の萌え(笑)。
作者の狙い通りの「萌え」方でよかったです。
作者冥利に尽きるところです。
以上、まとめて返信でした。
長々とすいませんでした。
【タイトル】Re: What is what you cannot do?
【記事番号】-2147481980 (-2147482041)
【 日時 】06/04/17 22:31
【 発言者 】牙丸
>すいません、このお話は高校の頃のお話です(爆)。
あ、本当でした。すみません。完全誤爆です。
高校で張り出しってイメージはまったく無いんですよ。
……といいつつも、18年度で気付けって、私よ。(汗)
>アスカの順位は、この時4位です。
まあ妥当なあたりですかね。
古文さえなければ……ですか(笑)
このころには漢字は大丈夫になったのだろうか?