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惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
投稿日
: 2009/05/31 00:00
投稿者
:
クロミツ
参照先
:
【タイトル】惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481558 (2147483647)
【 日時 】06/09/05 05:26
【 発言者 】クロミツ
無尽蔵に拡がる海の上を、客船はなだらかな航跡を曳きながら滑るように進んでいた。
僕がフェリーに乗ったのはいつ以来だろう?甲板からぐるりと見廻した景色は何処までも青く、上下に分割されたグラデーションが辛うじて空と海を区別していた。夏の太陽は青以外の色をはじき返すかのように白く輝き、単調にうねる水面に反射する。
陸地が見えなくなってからだいぶ経つ。ふだん見慣れない海上の景色も、見飽きるのに十分な時間が過ぎていた。
「海はいいねぇ。そう思わないかい?シンジくん。」
すぐ隣で手すりにもたれながら海を見ていた渚君の言葉に、僕は八割ほど同意した。不賛成の20%は早くも船旅に飽き始めていたというのもあるけど、なにより今回の目的を思うと、この晴れ空に突然黒雲を召喚されたような不安が湧いて来るからだった。
「SAS団の合宿って言ったって・・・行って何するつもりだろう、アスカは・・・。」
僕にとっては宝物庫の扉に立ち塞がるドラゴンに匹敵するくらい難関だった期末試験を辛うじて潜り抜け、僕たちSAS団の面子は団長であるアスカの意向により、夏休み開始第一日目からいきなり3泊4日の強化合宿に突入した。ちなみにこの合宿の趣旨も目的も、どこをどう強化したいのかも、一切謎だったりする。
おまけに合宿先は、渚君の知り合いの富豪が所有する離れ小島といういかにもアスカが好みそうな場所で、案の定この話を聞いたときのアスカの喜びようったらなかった。
「ナイスよ渚君ッ!絶海の孤島にそびえる古い建物、怪しい館の主人、夜な夜な繰り広げられる惨劇、我がSAS団の合宿にふさわしい舞台だわっ!!」
このアスカのセリフに渚君は、
「僕の遠縁にあたる人が少し前に無人島ごと別荘を買ってね、もし良ければと招待してくれたんだ。そんなに喜んでくれて光栄だよ。」
と、人畜無害を絵に描いてJPEG形式で保存したようなスマイルで答えた。『無人島』と『館』以外のアスカが勝手に付け加えた修飾子については笑顔でスルーしている。
「喜んでちょうだい!今回の功績において渚君、あなたをSAS団の副団長に任命するわ!」
どこから取り出したのか『副団長』と殴り書きした腕章を掲げたアスカに、渚君はうやうやしく「謹んで拝領します。」と頭を下げた。彼のその仕種はいかにも芝居がかってたけど、その日以降部室では律儀に腕章を付けてるところを見ると、実は結構嬉しかったのかもしれない。
「惣流さんがあれだけ喜んだのはね、推理小説でいうクローズドサークル、いわゆる密閉された空間を彼女が望んでたからだよ。」
「どうして?」
「大雪の山荘や嵐の中の孤島に代表される、外界と切り離された空間は事件が起こる舞台として打ってつけだと思わないかい?
惣流さんはきっと、そこで事件を解決する名探偵のように活躍したいのさ。」
後で渚君と交わしたこの会話を思い出すにつれ、憂鬱な気分になってくる。悪いことに、アスカの願望はこの世界に少なからぬ影響を及ぼす。当の本人にまるで自覚がなくてもそうなってしまうことを、たった三ヶ月でいやというほど思い知らされた。
「ともかく僕らとしては、彼女がよからぬことを考えつく暇がないよう、娯楽を提供してあげなければね。」
自称超能力者である渚君はそう言って僕の肩に手を置いた。アスカが望む非現実的な存在、宇宙人・未来人・超能力者のうち一人がここに居る。残る宇宙人未来人も既にSAS団の団員だけど、そのことをアスカは全く知らない。念のため言っておくけど、僕自身は何の能力も特徴もない、ごく平凡な一介の高校生に過ぎず、アスカが求めるような非日常的閉鎖的期間限定の特殊空間なんてちっとも望んでいない。
どうか何事も起こりませんように、と心の中で呟いていると誰かに背中をちょんちょんとつつかれた。
「難しい顔してどうしたの、シンジ君。気分でも悪いんですか?」
「あ、山岸さん。別に何でもないです。ちょっと船旅の安全を祈っていただけで・・・。」
振り返って答えると山岸さんはにこりと微笑んで、風になびく艶やかな黒髪を指でかきあげた。清楚な白のワンピースがこれ以上ないほど似合ってる。彼女が実はとある財閥のご令嬢でしたと言われても、一ピコグラムの疑いもなく信じてしまいそうな姿だ。
渚君とは反対の、僕の左隣へ歩み寄ってきた山岸さんは、
「すごいですよねぇ、こーんな大きい鉄の塊が水に浮いてるだなんて・・・ちょっと信じられません。」
と、まるで初めて黒船を見た江戸時代の人のような感想を漏らした。
「未来の船は違うもので出来てるんですか?それとも、船自体が無いとか。」
「ふふっ、禁則事項です。言えません。」
「海は・・・あるんでしょ?」
「ええ、あります。でも、こんなに綺麗じゃないの。なんて澄みきった青・・・。」
そう呟きながら彼女は、遠く古代を夢みる考古学者のような面持ちで海を眺めた。ひょっとしたら未来の海は環境汚染が進んだ挙句、生き物の住めない世界になってしまってるんじゃないだろうかと考え、少しぞっとした。
「あの、山岸さん。未来の人たちってどういう―――。」「なにやってんのよシンジぃー!ちょっと降りてきなさい。」
僕が訊ねようとした疑問は、汽笛のようによく通る無粋な声にかき消された。ややうんざりして振り返ると、あまり有難くない声の持ち主が鮮やかな黄色のスカートを翻しながら、客室へ降りる階段を昇ってきたところだった。説明するまでもないけど、SAS団団長惣流アスカその人だ。
「あんたねぇ、荷物をあたし一人に押し付けて船の中をふらふらするんじゃないわよ。」
「ふらふらなんてしてないよ。僕、ずっとここで景色を眺めてたし。」
「ご、ごめんなさい。私、そとの空気を吸いたくなったから・・・。」
山岸さんが謝ることないって。大体、船が出港すると同時に荷物を放りだして甲板に飛び出ちゃったのはアスカじゃないか。
「荷物はどうしたのさ。」
「レイが居るわよ。あのコ、ずっと黙って本読んでるんだもん。喋る相手もいなくなっちゃったし、つまんないわよ。」
じゃあ一人じゃ無いじゃん。まあ確かに、綾波は話し相手になってくれそうもないけど。
「なら船が到着するまで、みんなでトランプというのはどうだい?退屈しのぎのゲームなら僕が沢山持ってきてるから、ご心配なく。」
「賛成するわ。ところで渚君、そのインファント島だかパノラマ島に着くのってあとどんくらい?」
「そうだねぇ、港に到着するまでまだ三時間はかかるかな。そこで知り合いの人が待ってくれてるから専用のクルーザーに乗り換えて、30分ほど飛ばせば到着するって聞いたけどね。」
誰に断りもなく付けられた島の名前をいつものようにスルーして渚君は答えた。
「孤島にそびえる館ってどんなだろ?きっと変な建物でしょうね、アタシならそうする。お城だったら完璧だけどそこは予算の都合もあるから、昔風の洋館で手を打ちましょ。プールはあってもいいけど煉瓦に石造りは欠かせないわ。孤島なんだからコウモリぐらい飛んでるわよね?血を吸うやつじゃなければいいけど。」
サイドブレーキが壊れた暴走トラックのように妄想が止まらないアスカは放っておくとして、綾波を一人でずっと留守番させているのも気の毒だし海を眺めるのにも飽きたから、そろそろ下に降りようかな。
僕たち四人が二等客室へ戻ると、綾波はSAS団の場所を陣取るように置いた荷物の中でちょこんと正座したまま、黙然と本を読んでいた。寡黙なこの少女は旅行中も寡黙で、今日が始まってからまだ二言しか声を聞いていない。うちひとつは集合場所で顔をあわせたときの挨拶で、もうひとつは彼女の私服を見たときに僕が言った感想への返事だった。
「あ、綾波・・・普段着、持ってたんだね。」
「ええ。」
他にもっと気の利いたセリフが出ないのかと頭を抱えたくなる。言い訳するなら休日でも制服を着ていた彼女の私服姿を見るのは初めてで、クロスチェックのノースリーブに水色の日傘を差した姿がどこかのサナトリウムから抜け出た病弱な少女のように儚げな雰囲気でカメラでも持ってくれば良かったとの後悔は先に立たないことを改めて痛感したわけで、そんなこんなで頭の中がパニくって上手い言葉を検索する余裕など無かった訳だけど、失ったタイミングは取り返すのが困難だということも、身を持って学習した僕だった。
「レイーッ、みんなでトランプやりましょ。」
アスカの言葉で顔を上げた綾波はサーチライトを廻すように右端から順に視線を移動し、最後に僕の顔で止まった。
「ババ抜き、知ってるよね?ずっと本を読み続けるのも疲れるだろうし、いい気分転換になると思うけど。」
僕の言葉に彼女は「・・・そう。」と呟いて本を閉じた。本日三度目に聞いた言葉だ。
トランプの結果は、渚君が持ち前の勝負弱さを遺憾なく発揮してビリになった。ゲームマニアの割りに勝負事にめっぽう弱い彼は、罰として全員分のジュースを奢るはめになってしまった。一時間余りトランプゲームに興じた僕たちは残り時間を各々の思うとおりに過ごすことにし、僕はといえば朝早かったつけが回ってきたのか、眠気を覚えて横になった。
『―――シンクロ率上昇、400%を超えています!』
『―――シンジ君、活動限界まであと4分53秒よっ!』
『―――弾幕薄いよ!何やってんの!』
夢の中で僕は、SFともファンタジーともつかない世界を結構リアルに体現してたような気がする。でもその記憶を印画紙に定着させる前に目が覚めてしまい、薄れゆく映像もパシャリと光ったフラッシュの眩しさで消えてしまった。
「ふふ、寝起きの顔撮っちゃいました。よぉく寝てましたね。」
半眼だけ開くと、使い捨てカメラを構えた山岸さんがぼんやり浮かび上がった。
どうして僕の寝顔なんか?まさか僕の写真を写真立てに入れて飾ったり、寝る前に枕の下に忍ばせたりするなんてことはないか―――いや、でもそういう少女趣味っていかにも山岸さんのイメージだよなぁ、これがアスカあたりだと―――。
「さっさと起きんかっ!このバカシンジ。」
「ぐふぇっ!」
ひしゃげたカエルの鳴き声のような声が、腹部から喉元へ一気に駆け抜けた。・・・は、腹が・・・踏むことないだろっ、アスカッ!!
「団長のアタシが起きてんのに危機感ゼロでぐーすか寝てるからそういうメに合うの。―――いい?」
片手でアスカは山岸さんの肩を掴んで、ぎゅっと抱き寄せた。
「お気楽に寝ていたアンタのバカ面は、証拠写真としてマユミちゃんに撮らさせたわ。緊張感間のかけらもない寝顔がどんなにブサイクか、我がSAS団の活動記録に残して後世への戒めとするのよ。」
残さなくていいって、そんなもの。
「あと5分ほどで港に到着するよ。そろそろ僕たちも降りる準備をしようじゃないか。」
そう言いながら渚君は自分の荷物を持ち、山岸さんと綾波も仕度を始めた。フェリーが到着した際、団長を差し置いて寝ていたとかいう理由で、アスカの荷物まで僕が持って降りるはめになったのは、まあ、どうでもいいけど。
******
「お待ち申し上げておりました。船での長旅、ご苦労様でございます。」
恐ろしく丁寧な口調で頭を下げた執事とメイドさんに、僕たちはしばしあっけにとられた。
「お久しぶりです冬月さん。伊吹さんもお元気そうで。」
ただ一人、顔なじみらしい渚君が朗らかな笑みで話しかけた。
「紹介するよ。この二人がこれから僕たちが向かう別荘でお世話になる方たちで、こちらが執事の冬月さん。そして伊吹さん。」
「執事の冬月です。御用がありましたら、なんなりとお申し付け下さい。」
黒いスリーピースを隙間無く着こなした銀髪の初老の紳士は、挨拶を終わると再び一礼した。
「伊吹マヤです。家政婦を務めております。短い間ですけど、宜しくお願い致します。」
働いているから僕らより年上なんだろうけどややもすると同いどしに見える伊吹さんが、さっきの冬月さん同様、完璧なお辞儀を見せた。落ち着いた紺色のメイド服は普段山岸さんが部室で着せられているのとは違い、まさに仕事着といった感じだ。
それにしても驚いた。今の日本に本物の執事とメイドはそりゃいるのかもしれないけど、自分がそういった職業の人と関わることは一生無いと思ってた。
「こ、こちらこそ、宜しくお願いします。」
あたふたと頭を下げた僕のおじぎは礼儀からほど遠く、懐古主義の老人でなくても「最近の若いモンは・・・。」と愚痴をこぼしたくなる有様だったろう。
「では皆様、船を用意しておりますのでこちらへどうぞ。我が主の待つ島まで、半時ほどの船旅になります。
なにぶん孤島なのでご不便とは存じますが、どうかご容赦の程を。」
「全然OKよっ!それでこそ孤島だわ。半時といわず何時間でもアタシはかまわない。インド洋まで出ちゃってもいいわよ。
ほらぁ、シンジもマユミちゃんももっと嬉しそうな顔しなさい。孤島に怪しい執事とメイドさんまで付いてくるなんて、バリューセットも顔負けだわ。これでどんな変な館が待ち受けてるのか、がぜん期待できるわね!」
何を期待しようが勝手だけど、初対面の人を目の前にして『怪しい』と評するのは礼儀以前の問題じゃないだろうか。
今の言葉を聞いても1ミクロンも表情を変えない執事とメイドさんが、かえって怖かったりする。
「ご期待に副えればよろしいのですが・・・。では、まいりましょうか。」
冬月さんは先頭を歩いて僕らをエスコートした。最後尾を伊吹さんがついてくる。荷物をひとつ持ってくれようとしたけど流石に遠慮した。
用意してくれていたクルーザーは、少なくとも僕は外国映画でしか見たことないような豪華なものだった。船内は洋風応接間のよう絨毯が敷かれ、ソファーもある。ひょっとして僕たちを王侯貴族のご一行様か何かと間違えてるんじゃないだろうか。
「すっごーっ!ね、ね、操縦席どこ?」
「この上になります。冬月が船舶免許を持ってまして、運転も冬月が行います。」
「上がってもいい?」
「どうぞ。少々狭いですが。」
まさかと思うけどいきなり自分で運転したいなどと言い出さないよう、監視のためついて行く事にした。万が一アスカに操縦を任せたりしたら只でさえ短めの僕の生命線が、残りわずか数ミリまで目減りするのは確実だ。
「へーっ、こっちの方が眺めがいいじゃない。意外と遠くまで見渡せるし。」
「アスカ、パネルとか勝手に触れちゃだめだよ。」
「わかってるわよっ、子供じゃないんだから。」
子供だったらここまで苦労しないって。まだ田舎のお婆ちゃん家で幼いいとこの相手してる方がよっぽど楽だよ。
「なにこの梯子・・・あ、こっから上が覗けるのか。」
言うと同時に梯子をとんとん上って言った。えーと、だれが子供じゃないって?
「うわーっ、見晴らし良いー。シンジーっ、ちょっと上がってきなさい。」
「無理だよそんな狭いとこ。」
「大丈夫よあたしもあんたも細いんだから。言っとくけど、パンツみたら承知しないわよ。」
見ないよそんな危険なもの。
途中まで梯子を上り、アスカが脚を置いてる一段下につま先をひっかけて背伸びした。上半身しか出ないので両腕を広げて身体を支える。穴が狭いのでお腹のあたりにアスカの腰がぴったりくっつく。目の前で揺れる綺麗なブロンドが風に吹かれては僕の首すじをくすぐった。
「いーなぁクルーザー、あたしも買おうかしら。」
「そんなにお金あるんだ、アスカの家って。」
「いまじゃないわ、ちゃんと自分で稼いでからよ。とりあえず来期のSAS団の売上げ目標を立てて、クルーザー代の足しにしなきゃね。」
どこが『自分で稼ぐ』んだよ。だいたい売上げ目標なんて持っても、売るものなんて無いじゃないか。
「頭使いなさい。マユミちゃんのセクシー写真集だとか一日一万円でマユミちゃんとデートできる券だとか、考えればいっぱい作れるわよ。」
ここに山岸さんがいなくて良かった。もしそんな計画を実行に移そうとしたら、彼女が気を失う前に断固阻止しよう。
「ま、そんな将来の話は置いといて、とりあえず、謎の孤島むかってしゅっぱあーーつッ!!」
ビシッと前方に突き出したアスカの左腕にいつの間にか、『名探偵』と殴り書きされた腕章が輝いていた。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481557 (-2147481558)
【 日時 】06/09/05 05:41
【 発言者 】クロミツ
えー、前回の投下が予想外に好評だったため、夏の合宿編をお送りします・・・が、長い!
まだ導入部分なのにこれだけ長くなるとは・・・。ここのスレッドに続きを書くのは無理があるかも。
正式に作品として投下するにはtambさんの手前、気がひけるし・・・。続きをどうするかはちょっと考えます。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481554 (-2147481558)
【 日時 】06/09/06 18:32
【 発言者 】みれあ
キターー(爆
遂に待望のドクター孤島ですね!興奮して日本語が変になりそうであります(マテ
ハルヒらしくでも彼らはエヴァらしく、これからへの期待が膨らみますねー。
冗長気味のシンジ君の地の文も「らしさ」をひしひし感じさせてくれます。
そして冬月伊吹コンビ!これまたはまり役ですね(笑)
ちょっとたて込んだりで停滞していた野球の方もバリバリ書きたくなってきました(笑)
続きに特大級の期待をしてます!
>投稿先とか
余裕があればウチのサイトに特設コーナーでも、と思ったり思わなかったり(何
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481553 (-2147481558)
【 日時 】06/09/06 19:29
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
> 余裕があればウチのサイトに特設コーナーでも
ということでみれちゃんとこにどうぞ(笑)。
別にうちでもかまわんとは思いますが、ぶっちゃけ余裕が全然ないです。書き上がる頃には何とかなってるかもしれませんが。
ブライトさんのご冥福を。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481547 (-2147481558)
【 日時 】06/09/07 16:29
【 発言者 】Seven Sisters
メイド服マヤさんの描写、増加を希望します(爆)
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481546 (-2147481558)
【 日時 】06/09/09 17:05
【 発言者 】あいだ
メイド服マヤさんはきっとtamaさんが絵にして下さると密かに期待しています(笑)
(と、密かに召喚呪文を詠唱)
サルベージ先はみれちゃんトコにするとして、実際の所、投下は投下でいいんじゃないでしょうか?
このまま全部最後まで書いて、終わってからでもいいかと。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481545 (-2147481558)
【 日時 】06/09/10 07:41
【 発言者 】Seven Sisters
>メイド服マヤさんはきっとtamaさんが絵にして下さると密かに期待しています(笑)
おお、それはグッドアイデア(笑)
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481538 (-2147481558)
【 日時 】06/09/15 05:03
【 発言者 】クロミツ
■みれあさん
>余裕があればウチのサイトに特設コーナーでも、と思ったり思わなかったり(何
>
おお、ありがとうございます。
でも特設コーナーを作るのなら、みれあさんも書きませんか。^o^)/
■tambさん
>別にうちでもかまわんとは思いますが、ぶっちゃけ余裕が全然ないです。
>
クロスオーバー物ってやり過ぎるとこちらのHPの趣旨から外れるかなと思ったんですよね。
お忙しそうというのもありますが。
>ブライトさんのご冥福を。
>
合唱。個人的に塩沢兼人さん以来の衝撃でした。
■Seven Sistersさん
>メイド服マヤさんの描写、増加を希望します(爆)
>
うぉっ、そこにくるかぁっ。w
いっそのことアスカほったらかして彼女主役にでもするか。シンジ君が年上の魅力にまいってしまうとか。(爆)
■あいださん
>このまま全部最後まで書いて、終わってからでもいいかと。
>
まださわりしか書いてないけどこのままだと長過ぎて、こういったスレッド形式では非常に読みづらくなりそうなんです。
>メイド服マヤさんはきっとtamaさんが絵にして下さると密かに期待しています(笑)
>(と、密かに召喚呪文を詠唱)
>
実現されたら泣いて喜びます。
ところで、あいださんは描いてくれないんですかあ。(←密かに要求)
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481537 (-2147481558)
【 日時 】06/09/15 11:56
【 発言者 】みれあ
■クロミツさん
もちろんそのための「退屈」です(爆
退屈が仕上がったら大作やってもいいんですが、大作が仕上がる頃には劇場版エヴァが完結していると思われます(笑)
■あいださん
召還呪文の詠唱法を教えてください(爆
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481521 (-2147481558)
【 日時 】06/09/26 00:12
【 発言者 】なお。
文句なしにおもしろいです。でも、もうちょっとエヴァぽくてもいいかんじ。ベタだけどアスカに「あんたバカぁ?!」とか言わせたり。
キャラクターをエヴァに置き換えたハルヒってのはわかるけど、いくら性格が似ているからといって、やっぱそれらしさ出さないとエヴァだってわかりずらいです。
それはともかく。このカヲルが好き。副団長の腕章とか細かいところがツボ。それに対してアスカのいまいち目立たないこと(笑)
たしか原作でもそんな傾向があるんですよね。ただ迷惑な人、みたいな……。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481510 (-2147481558)
【 日時 】06/10/02 02:02
【 発言者 】クロミツ
■ みれあさん
とりあえず今回の話は、全部書き終えたらミレアさんのサイトへ投稿しようかと思います。
そのときはお願いしてもいいですか?
>退屈が仕上がったら大作やってもいいんですが、大作が仕上がる頃には劇場版エヴァが完結していると思われます(笑)
>
期待しております^^)
■ なお。さん
>キャラクターをエヴァに置き換えたハルヒってのはわかるけど、いくら性格が似ているからといって、やっぱそれらしさ出さないとエヴァだってわかりずらいです。
>
確かにおっしゃる通りです。実のところこれ書いてる時も前回のときも、アスカではなくハルヒのビジュアルが念頭にあった気がします。
ひょっとして個人的にハルヒ>アスカなのかな…。
>それに対してアスカのいまいち目立たないこと(笑)
>たしか原作でもそんな傾向があるんですよね。ただ迷惑な人、みたいな……。
>
原作が『すべての原因はハルヒだが本人はそれに気付くことすらない(出来ない)』という構造のため、
どうしても、主人公(キョン)+彼女の脇を固める人々の物語になってしまうんですよね…。
まあ、そこを何とかするのが二次創作ともいえるので、もうちょっと練ってみます。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481501 (-2147481558)
【 日時 】06/10/02 18:48
【 発言者 】みれあ
■クロミツさん
>とりあえず今回の話は、全部書き終えたらミレアさんのサイトへ投稿しようかと思います。
>そのときはお願いしてもいいですか?
大歓迎であります!
ただし、現在のyanai_evaは迷惑メールの巣窟となってますんで、メール送っていただいた際には掲示板かどっかで教えていただかないと間違えて削除してしまうかもしれません、ええ(本末転倒
>期待しております^^)
まず退屈がいつになるやら。ふむ。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481491 (-2147481558)
【 日時 】06/10/09 23:38
【 発言者 】パッケラ
原作を、つか作品自体を知らんのだが
ttp://www.youtube.com/watch?v=6LV1SdOyx9U&mode=related&search=Live%20Action%20%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%20Evangelion%20weirdness
ハルヒってこれですよね?
え?違う?
すみません
これ自体はスレ汚しになるので感想は軽く流してちょんまげ。ごめんねクロミツさん。
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WEB PATIO
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【記事番号】-2147481558 (2147483647)
【 日時 】06/09/05 05:26
【 発言者 】クロミツ
無尽蔵に拡がる海の上を、客船はなだらかな航跡を曳きながら滑るように進んでいた。
僕がフェリーに乗ったのはいつ以来だろう?甲板からぐるりと見廻した景色は何処までも青く、上下に分割されたグラデーションが辛うじて空と海を区別していた。夏の太陽は青以外の色をはじき返すかのように白く輝き、単調にうねる水面に反射する。
陸地が見えなくなってからだいぶ経つ。ふだん見慣れない海上の景色も、見飽きるのに十分な時間が過ぎていた。
「海はいいねぇ。そう思わないかい?シンジくん。」
すぐ隣で手すりにもたれながら海を見ていた渚君の言葉に、僕は八割ほど同意した。不賛成の20%は早くも船旅に飽き始めていたというのもあるけど、なにより今回の目的を思うと、この晴れ空に突然黒雲を召喚されたような不安が湧いて来るからだった。
「SAS団の合宿って言ったって・・・行って何するつもりだろう、アスカは・・・。」
僕にとっては宝物庫の扉に立ち塞がるドラゴンに匹敵するくらい難関だった期末試験を辛うじて潜り抜け、僕たちSAS団の面子は団長であるアスカの意向により、夏休み開始第一日目からいきなり3泊4日の強化合宿に突入した。ちなみにこの合宿の趣旨も目的も、どこをどう強化したいのかも、一切謎だったりする。
おまけに合宿先は、渚君の知り合いの富豪が所有する離れ小島といういかにもアスカが好みそうな場所で、案の定この話を聞いたときのアスカの喜びようったらなかった。
「ナイスよ渚君ッ!絶海の孤島にそびえる古い建物、怪しい館の主人、夜な夜な繰り広げられる惨劇、我がSAS団の合宿にふさわしい舞台だわっ!!」
このアスカのセリフに渚君は、
「僕の遠縁にあたる人が少し前に無人島ごと別荘を買ってね、もし良ければと招待してくれたんだ。そんなに喜んでくれて光栄だよ。」
と、人畜無害を絵に描いてJPEG形式で保存したようなスマイルで答えた。『無人島』と『館』以外のアスカが勝手に付け加えた修飾子については笑顔でスルーしている。
「喜んでちょうだい!今回の功績において渚君、あなたをSAS団の副団長に任命するわ!」
どこから取り出したのか『副団長』と殴り書きした腕章を掲げたアスカに、渚君はうやうやしく「謹んで拝領します。」と頭を下げた。彼のその仕種はいかにも芝居がかってたけど、その日以降部室では律儀に腕章を付けてるところを見ると、実は結構嬉しかったのかもしれない。
「惣流さんがあれだけ喜んだのはね、推理小説でいうクローズドサークル、いわゆる密閉された空間を彼女が望んでたからだよ。」
「どうして?」
「大雪の山荘や嵐の中の孤島に代表される、外界と切り離された空間は事件が起こる舞台として打ってつけだと思わないかい?
惣流さんはきっと、そこで事件を解決する名探偵のように活躍したいのさ。」
後で渚君と交わしたこの会話を思い出すにつれ、憂鬱な気分になってくる。悪いことに、アスカの願望はこの世界に少なからぬ影響を及ぼす。当の本人にまるで自覚がなくてもそうなってしまうことを、たった三ヶ月でいやというほど思い知らされた。
「ともかく僕らとしては、彼女がよからぬことを考えつく暇がないよう、娯楽を提供してあげなければね。」
自称超能力者である渚君はそう言って僕の肩に手を置いた。アスカが望む非現実的な存在、宇宙人・未来人・超能力者のうち一人がここに居る。残る宇宙人未来人も既にSAS団の団員だけど、そのことをアスカは全く知らない。念のため言っておくけど、僕自身は何の能力も特徴もない、ごく平凡な一介の高校生に過ぎず、アスカが求めるような非日常的閉鎖的期間限定の特殊空間なんてちっとも望んでいない。
どうか何事も起こりませんように、と心の中で呟いていると誰かに背中をちょんちょんとつつかれた。
「難しい顔してどうしたの、シンジ君。気分でも悪いんですか?」
「あ、山岸さん。別に何でもないです。ちょっと船旅の安全を祈っていただけで・・・。」
振り返って答えると山岸さんはにこりと微笑んで、風になびく艶やかな黒髪を指でかきあげた。清楚な白のワンピースがこれ以上ないほど似合ってる。彼女が実はとある財閥のご令嬢でしたと言われても、一ピコグラムの疑いもなく信じてしまいそうな姿だ。
渚君とは反対の、僕の左隣へ歩み寄ってきた山岸さんは、
「すごいですよねぇ、こーんな大きい鉄の塊が水に浮いてるだなんて・・・ちょっと信じられません。」
と、まるで初めて黒船を見た江戸時代の人のような感想を漏らした。
「未来の船は違うもので出来てるんですか?それとも、船自体が無いとか。」
「ふふっ、禁則事項です。言えません。」
「海は・・・あるんでしょ?」
「ええ、あります。でも、こんなに綺麗じゃないの。なんて澄みきった青・・・。」
そう呟きながら彼女は、遠く古代を夢みる考古学者のような面持ちで海を眺めた。ひょっとしたら未来の海は環境汚染が進んだ挙句、生き物の住めない世界になってしまってるんじゃないだろうかと考え、少しぞっとした。
「あの、山岸さん。未来の人たちってどういう―――。」「なにやってんのよシンジぃー!ちょっと降りてきなさい。」
僕が訊ねようとした疑問は、汽笛のようによく通る無粋な声にかき消された。ややうんざりして振り返ると、あまり有難くない声の持ち主が鮮やかな黄色のスカートを翻しながら、客室へ降りる階段を昇ってきたところだった。説明するまでもないけど、SAS団団長惣流アスカその人だ。
「あんたねぇ、荷物をあたし一人に押し付けて船の中をふらふらするんじゃないわよ。」
「ふらふらなんてしてないよ。僕、ずっとここで景色を眺めてたし。」
「ご、ごめんなさい。私、そとの空気を吸いたくなったから・・・。」
山岸さんが謝ることないって。大体、船が出港すると同時に荷物を放りだして甲板に飛び出ちゃったのはアスカじゃないか。
「荷物はどうしたのさ。」
「レイが居るわよ。あのコ、ずっと黙って本読んでるんだもん。喋る相手もいなくなっちゃったし、つまんないわよ。」
じゃあ一人じゃ無いじゃん。まあ確かに、綾波は話し相手になってくれそうもないけど。
「なら船が到着するまで、みんなでトランプというのはどうだい?退屈しのぎのゲームなら僕が沢山持ってきてるから、ご心配なく。」
「賛成するわ。ところで渚君、そのインファント島だかパノラマ島に着くのってあとどんくらい?」
「そうだねぇ、港に到着するまでまだ三時間はかかるかな。そこで知り合いの人が待ってくれてるから専用のクルーザーに乗り換えて、30分ほど飛ばせば到着するって聞いたけどね。」
誰に断りもなく付けられた島の名前をいつものようにスルーして渚君は答えた。
「孤島にそびえる館ってどんなだろ?きっと変な建物でしょうね、アタシならそうする。お城だったら完璧だけどそこは予算の都合もあるから、昔風の洋館で手を打ちましょ。プールはあってもいいけど煉瓦に石造りは欠かせないわ。孤島なんだからコウモリぐらい飛んでるわよね?血を吸うやつじゃなければいいけど。」
サイドブレーキが壊れた暴走トラックのように妄想が止まらないアスカは放っておくとして、綾波を一人でずっと留守番させているのも気の毒だし海を眺めるのにも飽きたから、そろそろ下に降りようかな。
僕たち四人が二等客室へ戻ると、綾波はSAS団の場所を陣取るように置いた荷物の中でちょこんと正座したまま、黙然と本を読んでいた。寡黙なこの少女は旅行中も寡黙で、今日が始まってからまだ二言しか声を聞いていない。うちひとつは集合場所で顔をあわせたときの挨拶で、もうひとつは彼女の私服を見たときに僕が言った感想への返事だった。
「あ、綾波・・・普段着、持ってたんだね。」
「ええ。」
他にもっと気の利いたセリフが出ないのかと頭を抱えたくなる。言い訳するなら休日でも制服を着ていた彼女の私服姿を見るのは初めてで、クロスチェックのノースリーブに水色の日傘を差した姿がどこかのサナトリウムから抜け出た病弱な少女のように儚げな雰囲気でカメラでも持ってくれば良かったとの後悔は先に立たないことを改めて痛感したわけで、そんなこんなで頭の中がパニくって上手い言葉を検索する余裕など無かった訳だけど、失ったタイミングは取り返すのが困難だということも、身を持って学習した僕だった。
「レイーッ、みんなでトランプやりましょ。」
アスカの言葉で顔を上げた綾波はサーチライトを廻すように右端から順に視線を移動し、最後に僕の顔で止まった。
「ババ抜き、知ってるよね?ずっと本を読み続けるのも疲れるだろうし、いい気分転換になると思うけど。」
僕の言葉に彼女は「・・・そう。」と呟いて本を閉じた。本日三度目に聞いた言葉だ。
トランプの結果は、渚君が持ち前の勝負弱さを遺憾なく発揮してビリになった。ゲームマニアの割りに勝負事にめっぽう弱い彼は、罰として全員分のジュースを奢るはめになってしまった。一時間余りトランプゲームに興じた僕たちは残り時間を各々の思うとおりに過ごすことにし、僕はといえば朝早かったつけが回ってきたのか、眠気を覚えて横になった。
『―――シンクロ率上昇、400%を超えています!』
『―――シンジ君、活動限界まであと4分53秒よっ!』
『―――弾幕薄いよ!何やってんの!』
夢の中で僕は、SFともファンタジーともつかない世界を結構リアルに体現してたような気がする。でもその記憶を印画紙に定着させる前に目が覚めてしまい、薄れゆく映像もパシャリと光ったフラッシュの眩しさで消えてしまった。
「ふふ、寝起きの顔撮っちゃいました。よぉく寝てましたね。」
半眼だけ開くと、使い捨てカメラを構えた山岸さんがぼんやり浮かび上がった。
どうして僕の寝顔なんか?まさか僕の写真を写真立てに入れて飾ったり、寝る前に枕の下に忍ばせたりするなんてことはないか―――いや、でもそういう少女趣味っていかにも山岸さんのイメージだよなぁ、これがアスカあたりだと―――。
「さっさと起きんかっ!このバカシンジ。」
「ぐふぇっ!」
ひしゃげたカエルの鳴き声のような声が、腹部から喉元へ一気に駆け抜けた。・・・は、腹が・・・踏むことないだろっ、アスカッ!!
「団長のアタシが起きてんのに危機感ゼロでぐーすか寝てるからそういうメに合うの。―――いい?」
片手でアスカは山岸さんの肩を掴んで、ぎゅっと抱き寄せた。
「お気楽に寝ていたアンタのバカ面は、証拠写真としてマユミちゃんに撮らさせたわ。緊張感間のかけらもない寝顔がどんなにブサイクか、我がSAS団の活動記録に残して後世への戒めとするのよ。」
残さなくていいって、そんなもの。
「あと5分ほどで港に到着するよ。そろそろ僕たちも降りる準備をしようじゃないか。」
そう言いながら渚君は自分の荷物を持ち、山岸さんと綾波も仕度を始めた。フェリーが到着した際、団長を差し置いて寝ていたとかいう理由で、アスカの荷物まで僕が持って降りるはめになったのは、まあ、どうでもいいけど。
******
「お待ち申し上げておりました。船での長旅、ご苦労様でございます。」
恐ろしく丁寧な口調で頭を下げた執事とメイドさんに、僕たちはしばしあっけにとられた。
「お久しぶりです冬月さん。伊吹さんもお元気そうで。」
ただ一人、顔なじみらしい渚君が朗らかな笑みで話しかけた。
「紹介するよ。この二人がこれから僕たちが向かう別荘でお世話になる方たちで、こちらが執事の冬月さん。そして伊吹さん。」
「執事の冬月です。御用がありましたら、なんなりとお申し付け下さい。」
黒いスリーピースを隙間無く着こなした銀髪の初老の紳士は、挨拶を終わると再び一礼した。
「伊吹マヤです。家政婦を務めております。短い間ですけど、宜しくお願い致します。」
働いているから僕らより年上なんだろうけどややもすると同いどしに見える伊吹さんが、さっきの冬月さん同様、完璧なお辞儀を見せた。落ち着いた紺色のメイド服は普段山岸さんが部室で着せられているのとは違い、まさに仕事着といった感じだ。
それにしても驚いた。今の日本に本物の執事とメイドはそりゃいるのかもしれないけど、自分がそういった職業の人と関わることは一生無いと思ってた。
「こ、こちらこそ、宜しくお願いします。」
あたふたと頭を下げた僕のおじぎは礼儀からほど遠く、懐古主義の老人でなくても「最近の若いモンは・・・。」と愚痴をこぼしたくなる有様だったろう。
「では皆様、船を用意しておりますのでこちらへどうぞ。我が主の待つ島まで、半時ほどの船旅になります。
なにぶん孤島なのでご不便とは存じますが、どうかご容赦の程を。」
「全然OKよっ!それでこそ孤島だわ。半時といわず何時間でもアタシはかまわない。インド洋まで出ちゃってもいいわよ。
ほらぁ、シンジもマユミちゃんももっと嬉しそうな顔しなさい。孤島に怪しい執事とメイドさんまで付いてくるなんて、バリューセットも顔負けだわ。これでどんな変な館が待ち受けてるのか、がぜん期待できるわね!」
何を期待しようが勝手だけど、初対面の人を目の前にして『怪しい』と評するのは礼儀以前の問題じゃないだろうか。
今の言葉を聞いても1ミクロンも表情を変えない執事とメイドさんが、かえって怖かったりする。
「ご期待に副えればよろしいのですが・・・。では、まいりましょうか。」
冬月さんは先頭を歩いて僕らをエスコートした。最後尾を伊吹さんがついてくる。荷物をひとつ持ってくれようとしたけど流石に遠慮した。
用意してくれていたクルーザーは、少なくとも僕は外国映画でしか見たことないような豪華なものだった。船内は洋風応接間のよう絨毯が敷かれ、ソファーもある。ひょっとして僕たちを王侯貴族のご一行様か何かと間違えてるんじゃないだろうか。
「すっごーっ!ね、ね、操縦席どこ?」
「この上になります。冬月が船舶免許を持ってまして、運転も冬月が行います。」
「上がってもいい?」
「どうぞ。少々狭いですが。」
まさかと思うけどいきなり自分で運転したいなどと言い出さないよう、監視のためついて行く事にした。万が一アスカに操縦を任せたりしたら只でさえ短めの僕の生命線が、残りわずか数ミリまで目減りするのは確実だ。
「へーっ、こっちの方が眺めがいいじゃない。意外と遠くまで見渡せるし。」
「アスカ、パネルとか勝手に触れちゃだめだよ。」
「わかってるわよっ、子供じゃないんだから。」
子供だったらここまで苦労しないって。まだ田舎のお婆ちゃん家で幼いいとこの相手してる方がよっぽど楽だよ。
「なにこの梯子・・・あ、こっから上が覗けるのか。」
言うと同時に梯子をとんとん上って言った。えーと、だれが子供じゃないって?
「うわーっ、見晴らし良いー。シンジーっ、ちょっと上がってきなさい。」
「無理だよそんな狭いとこ。」
「大丈夫よあたしもあんたも細いんだから。言っとくけど、パンツみたら承知しないわよ。」
見ないよそんな危険なもの。
途中まで梯子を上り、アスカが脚を置いてる一段下につま先をひっかけて背伸びした。上半身しか出ないので両腕を広げて身体を支える。穴が狭いのでお腹のあたりにアスカの腰がぴったりくっつく。目の前で揺れる綺麗なブロンドが風に吹かれては僕の首すじをくすぐった。
「いーなぁクルーザー、あたしも買おうかしら。」
「そんなにお金あるんだ、アスカの家って。」
「いまじゃないわ、ちゃんと自分で稼いでからよ。とりあえず来期のSAS団の売上げ目標を立てて、クルーザー代の足しにしなきゃね。」
どこが『自分で稼ぐ』んだよ。だいたい売上げ目標なんて持っても、売るものなんて無いじゃないか。
「頭使いなさい。マユミちゃんのセクシー写真集だとか一日一万円でマユミちゃんとデートできる券だとか、考えればいっぱい作れるわよ。」
ここに山岸さんがいなくて良かった。もしそんな計画を実行に移そうとしたら、彼女が気を失う前に断固阻止しよう。
「ま、そんな将来の話は置いといて、とりあえず、謎の孤島むかってしゅっぱあーーつッ!!」
ビシッと前方に突き出したアスカの左腕にいつの間にか、『名探偵』と殴り書きされた腕章が輝いていた。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481557 (-2147481558)
【 日時 】06/09/05 05:41
【 発言者 】クロミツ
えー、前回の投下が予想外に好評だったため、夏の合宿編をお送りします・・・が、長い!
まだ導入部分なのにこれだけ長くなるとは・・・。ここのスレッドに続きを書くのは無理があるかも。
正式に作品として投下するにはtambさんの手前、気がひけるし・・・。続きをどうするかはちょっと考えます。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481554 (-2147481558)
【 日時 】06/09/06 18:32
【 発言者 】みれあ
キターー(爆
遂に待望のドクター孤島ですね!興奮して日本語が変になりそうであります(マテ
ハルヒらしくでも彼らはエヴァらしく、これからへの期待が膨らみますねー。
冗長気味のシンジ君の地の文も「らしさ」をひしひし感じさせてくれます。
そして冬月伊吹コンビ!これまたはまり役ですね(笑)
ちょっとたて込んだりで停滞していた野球の方もバリバリ書きたくなってきました(笑)
続きに特大級の期待をしてます!
>投稿先とか
余裕があればウチのサイトに特設コーナーでも、と思ったり思わなかったり(何
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481553 (-2147481558)
【 日時 】06/09/06 19:29
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
> 余裕があればウチのサイトに特設コーナーでも
ということでみれちゃんとこにどうぞ(笑)。
別にうちでもかまわんとは思いますが、ぶっちゃけ余裕が全然ないです。書き上がる頃には何とかなってるかもしれませんが。
ブライトさんのご冥福を。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481547 (-2147481558)
【 日時 】06/09/07 16:29
【 発言者 】Seven Sisters
メイド服マヤさんの描写、増加を希望します(爆)
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481546 (-2147481558)
【 日時 】06/09/09 17:05
【 発言者 】あいだ
メイド服マヤさんはきっとtamaさんが絵にして下さると密かに期待しています(笑)
(と、密かに召喚呪文を詠唱)
サルベージ先はみれちゃんトコにするとして、実際の所、投下は投下でいいんじゃないでしょうか?
このまま全部最後まで書いて、終わってからでもいいかと。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481545 (-2147481558)
【 日時 】06/09/10 07:41
【 発言者 】Seven Sisters
>メイド服マヤさんはきっとtamaさんが絵にして下さると密かに期待しています(笑)
おお、それはグッドアイデア(笑)
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481538 (-2147481558)
【 日時 】06/09/15 05:03
【 発言者 】クロミツ
■みれあさん
>余裕があればウチのサイトに特設コーナーでも、と思ったり思わなかったり(何
>
おお、ありがとうございます。
でも特設コーナーを作るのなら、みれあさんも書きませんか。^o^)/
■tambさん
>別にうちでもかまわんとは思いますが、ぶっちゃけ余裕が全然ないです。
>
クロスオーバー物ってやり過ぎるとこちらのHPの趣旨から外れるかなと思ったんですよね。
お忙しそうというのもありますが。
>ブライトさんのご冥福を。
>
合唱。個人的に塩沢兼人さん以来の衝撃でした。
■Seven Sistersさん
>メイド服マヤさんの描写、増加を希望します(爆)
>
うぉっ、そこにくるかぁっ。w
いっそのことアスカほったらかして彼女主役にでもするか。シンジ君が年上の魅力にまいってしまうとか。(爆)
■あいださん
>このまま全部最後まで書いて、終わってからでもいいかと。
>
まださわりしか書いてないけどこのままだと長過ぎて、こういったスレッド形式では非常に読みづらくなりそうなんです。
>メイド服マヤさんはきっとtamaさんが絵にして下さると密かに期待しています(笑)
>(と、密かに召喚呪文を詠唱)
>
実現されたら泣いて喜びます。
ところで、あいださんは描いてくれないんですかあ。(←密かに要求)
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481537 (-2147481558)
【 日時 】06/09/15 11:56
【 発言者 】みれあ
■クロミツさん
もちろんそのための「退屈」です(爆
退屈が仕上がったら大作やってもいいんですが、大作が仕上がる頃には劇場版エヴァが完結していると思われます(笑)
■あいださん
召還呪文の詠唱法を教えてください(爆
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481521 (-2147481558)
【 日時 】06/09/26 00:12
【 発言者 】なお。
文句なしにおもしろいです。でも、もうちょっとエヴァぽくてもいいかんじ。ベタだけどアスカに「あんたバカぁ?!」とか言わせたり。
キャラクターをエヴァに置き換えたハルヒってのはわかるけど、いくら性格が似ているからといって、やっぱそれらしさ出さないとエヴァだってわかりずらいです。
それはともかく。このカヲルが好き。副団長の腕章とか細かいところがツボ。それに対してアスカのいまいち目立たないこと(笑)
たしか原作でもそんな傾向があるんですよね。ただ迷惑な人、みたいな……。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481510 (-2147481558)
【 日時 】06/10/02 02:02
【 発言者 】クロミツ
■ みれあさん
とりあえず今回の話は、全部書き終えたらミレアさんのサイトへ投稿しようかと思います。
そのときはお願いしてもいいですか?
>退屈が仕上がったら大作やってもいいんですが、大作が仕上がる頃には劇場版エヴァが完結していると思われます(笑)
>
期待しております^^)
■ なお。さん
>キャラクターをエヴァに置き換えたハルヒってのはわかるけど、いくら性格が似ているからといって、やっぱそれらしさ出さないとエヴァだってわかりずらいです。
>
確かにおっしゃる通りです。実のところこれ書いてる時も前回のときも、アスカではなくハルヒのビジュアルが念頭にあった気がします。
ひょっとして個人的にハルヒ>アスカなのかな…。
>それに対してアスカのいまいち目立たないこと(笑)
>たしか原作でもそんな傾向があるんですよね。ただ迷惑な人、みたいな……。
>
原作が『すべての原因はハルヒだが本人はそれに気付くことすらない(出来ない)』という構造のため、
どうしても、主人公(キョン)+彼女の脇を固める人々の物語になってしまうんですよね…。
まあ、そこを何とかするのが二次創作ともいえるので、もうちょっと練ってみます。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481501 (-2147481558)
【 日時 】06/10/02 18:48
【 発言者 】みれあ
■クロミツさん
>とりあえず今回の話は、全部書き終えたらミレアさんのサイトへ投稿しようかと思います。
>そのときはお願いしてもいいですか?
大歓迎であります!
ただし、現在のyanai_evaは迷惑メールの巣窟となってますんで、メール送っていただいた際には掲示板かどっかで教えていただかないと間違えて削除してしまうかもしれません、ええ(本末転倒
>期待しております^^)
まず退屈がいつになるやら。ふむ。
【タイトル】Re: 惣流アスカの憂鬱/Dr.孤島のしま
【記事番号】-2147481491 (-2147481558)
【 日時 】06/10/09 23:38
【 発言者 】パッケラ
原作を、つか作品自体を知らんのだが
ttp://www.youtube.com/watch?v=6LV1SdOyx9U&mode=related&search=Live%20Action%20%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%20Evangelion%20weirdness
ハルヒってこれですよね?
え?違う?
すみません
これ自体はスレ汚しになるので感想は軽く流してちょんまげ。ごめんねクロミツさん。