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あなたといるだけで
件名 | : Re: あなたといるだけで |
投稿日 | : 2009/05/31 00:00 |
投稿者 | : tomo |
参照先 | : |
【タイトル】あなたといるだけで
【記事番号】-2147481366 (2147483647)
【 日時 】07/03/12 04:32
【 発言者 】tomo
携帯が震える。
私はこの振動が好きだ。
一瞬にして体をめぐるこのちょっと、無神経な振動は、私と『誰か』との繋がりを実感させてくれるから。
携帯は、二度、小刻みに振動してとまった。
わざわざみなくても私には誰だかわかる。
私が彼のメールにオプション設定をしてるとしったら、彼はどんな顔をするかしら。
それも、こうやって無視するためだけに設定してるとしったら……?
彼からのメール。
その本文をみて、なおも無視してしまえるほど、私は意志が強くない。
そう。
メールのオプション設定は、私自身が常に合理的な選択ができるための一種のプリ・コミットメントなのだ。
今、私と彼は喧嘩している。
そして。
私はすごく怒ってる。
………少なくとも、彼はそう思ってるはず。
だから。
メールでなんとかなるなんて、思わせたくはない。
せめて、電話をかけてくるべきなのだと思う。
それくらいのわがまま、ゆるしてもらえるって思う。
「どーかしらねぇ?」
まるで私の心を見透かすかのように。
蒼い瞳が私をみつめる。
「あのバカに、そんな甲斐性、あるかしら……?」
「アスカは、大学生になった碇君のこと、知ってるの?」
かつてと変わらない煌めくような笑顔で語る彼女に、私はひどく安心する。
「ま、たしかに。私はドイツに帰っちゃったからね~」
でも、と彼女は続ける。
「よくいうじゃない?六つ子の魂百までって」
「三つ子よ、アスカ」
私の冷徹なつっこみ。
「いーのよ。六つ子の方が響きがいいから」
わけのわからない理屈をつけるアスカ。
こういうの、懐かしいっていうのだと思う。
彼女がドイツに帰って、まだ二年くらいしかたっていないというのに。
こういう会話は楽しい。楽しいと思うようになった。
やっぱり、アスカと過ごすことを選んでよかった。
たとえ、それで彼と喧嘩することになってしまったとしても。
「しっかし」
と、アスカは切り出す。
「誘った私も私だけど、まさか、24日をレイと二人で一日中すごすことになるとは思わなかったわ」
一応、断られるの覚悟してたんだけど。
とアスカは続けた。
「いいのよ。アスカはクリスマス休暇しかこっちにいられないんだから」
私はきっぱりと答える。
それが、本心だから。
「それに。私は、クリスマスだから彼と会いたいんじゃない。いつだって、どこだって、彼と過ごせるなら、私はそれで満足」
これも本心。
24日という日にちに、こだわりなんてない。
ほえ~っと。
アスカは彼女に似合あわない声を口にする。
「だってよ?シンジ?」
突然。
アスカは私の後ろに視線を移す。
それが何を意味するのか、理解して。
私は、瞬間的に、後ろを振り向いた。
「さっき、私にメールでどこにいるのか聞いてきたから、教えといたのよ」
アスカは、まるでいたずらが成功した子供のように、小悪魔的な笑顔をみせる。
「あんたが思ってる以上に、想われてるようよ、あんたは」
ラブラブねぇ~
小声でアスカは続けた。
「ってわけだから、今日一日、レイを借りるわ。いいでしょ?」
「わかったよ」
顔はわからなかったけれど、その声で、彼は本当に納得してくれたんだと感じられた。
「じゃ、いきますか。時はマネーっていうしね♪」
ちょっと大袈裟と思えるくらい、はしゃいでるアスカにせかされて、私は喫茶店の席を立つ。
お店を出る間際。
彼と一瞬だけ目があった。
「いってらっしゃい」
暖かく笑うその目をみて、私は、再び、体の芯で鼓動する、心地よい振動を感じていた。
【記事番号】-2147481366 (2147483647)
【 日時 】07/03/12 04:32
【 発言者 】tomo
携帯が震える。
私はこの振動が好きだ。
一瞬にして体をめぐるこのちょっと、無神経な振動は、私と『誰か』との繋がりを実感させてくれるから。
携帯は、二度、小刻みに振動してとまった。
わざわざみなくても私には誰だかわかる。
私が彼のメールにオプション設定をしてるとしったら、彼はどんな顔をするかしら。
それも、こうやって無視するためだけに設定してるとしったら……?
彼からのメール。
その本文をみて、なおも無視してしまえるほど、私は意志が強くない。
そう。
メールのオプション設定は、私自身が常に合理的な選択ができるための一種のプリ・コミットメントなのだ。
今、私と彼は喧嘩している。
そして。
私はすごく怒ってる。
………少なくとも、彼はそう思ってるはず。
だから。
メールでなんとかなるなんて、思わせたくはない。
せめて、電話をかけてくるべきなのだと思う。
それくらいのわがまま、ゆるしてもらえるって思う。
「どーかしらねぇ?」
まるで私の心を見透かすかのように。
蒼い瞳が私をみつめる。
「あのバカに、そんな甲斐性、あるかしら……?」
「アスカは、大学生になった碇君のこと、知ってるの?」
かつてと変わらない煌めくような笑顔で語る彼女に、私はひどく安心する。
「ま、たしかに。私はドイツに帰っちゃったからね~」
でも、と彼女は続ける。
「よくいうじゃない?六つ子の魂百までって」
「三つ子よ、アスカ」
私の冷徹なつっこみ。
「いーのよ。六つ子の方が響きがいいから」
わけのわからない理屈をつけるアスカ。
こういうの、懐かしいっていうのだと思う。
彼女がドイツに帰って、まだ二年くらいしかたっていないというのに。
こういう会話は楽しい。楽しいと思うようになった。
やっぱり、アスカと過ごすことを選んでよかった。
たとえ、それで彼と喧嘩することになってしまったとしても。
「しっかし」
と、アスカは切り出す。
「誘った私も私だけど、まさか、24日をレイと二人で一日中すごすことになるとは思わなかったわ」
一応、断られるの覚悟してたんだけど。
とアスカは続けた。
「いいのよ。アスカはクリスマス休暇しかこっちにいられないんだから」
私はきっぱりと答える。
それが、本心だから。
「それに。私は、クリスマスだから彼と会いたいんじゃない。いつだって、どこだって、彼と過ごせるなら、私はそれで満足」
これも本心。
24日という日にちに、こだわりなんてない。
ほえ~っと。
アスカは彼女に似合あわない声を口にする。
「だってよ?シンジ?」
突然。
アスカは私の後ろに視線を移す。
それが何を意味するのか、理解して。
私は、瞬間的に、後ろを振り向いた。
「さっき、私にメールでどこにいるのか聞いてきたから、教えといたのよ」
アスカは、まるでいたずらが成功した子供のように、小悪魔的な笑顔をみせる。
「あんたが思ってる以上に、想われてるようよ、あんたは」
ラブラブねぇ~
小声でアスカは続けた。
「ってわけだから、今日一日、レイを借りるわ。いいでしょ?」
「わかったよ」
顔はわからなかったけれど、その声で、彼は本当に納得してくれたんだと感じられた。
「じゃ、いきますか。時はマネーっていうしね♪」
ちょっと大袈裟と思えるくらい、はしゃいでるアスカにせかされて、私は喫茶店の席を立つ。
お店を出る間際。
彼と一瞬だけ目があった。
「いってらっしゃい」
暖かく笑うその目をみて、私は、再び、体の芯で鼓動する、心地よい振動を感じていた。
【記事番号】-2147481366 (2147483647)
【 日時 】07/01/03 20:45
【 発言者 】tomo
携帯が震える。
私はこの振動が好きだ。
一瞬にして体をめぐるこのちょっと、無神経な振動は、私と『誰か』との繋がりを実感させてくれるから。
携帯は、二度、小刻みに振動してとまった。
わざわざみなくても私には誰だかわかる。
私が彼のメールにオプション設定をしてるとしったら、彼はどんな顔をするかしら。
それも、こうやって無視するためだけに設定してるとしったら……?
彼からのメール。
その本文をみて、なおも無視してしまえるほど、私は意志が強くない。
そう。
メールのオプション設定は、私自身が常に合理的な選択ができるための一種のプリ・コミットメントなのだ。
今、私と彼は喧嘩している。
そして。
私はすごく怒ってる。
………少なくとも、彼はそう思ってるはず。
だから。
メールでなんとかなるなんて、思わせたくはない。
せめて、電話をかけてくるべきなのだと思う。
それくらいのわがまま、ゆるしてもらえるって思う。
「どーかしらねぇ?」
まるで私の心を見透かすかのように。
緋色の瞳が私をみつめる。
「あのバカに、そんな甲斐性、あるかしら……?」
「アスカは、大学生になった碇君のこと、知ってるの?」
かつてと変わらない煌めくような笑顔で語る彼女に、私はひどく安心する。
「ま、たしかに。私はドイツに帰っちゃったからね~」
でも、と彼女は続ける。
「よくいうじゃない?六つ子の魂百までって」
「三つ子よ、アスカ」
私の冷徹なつっこみ。
「いーのよ。六つ子の方が響きがいいから」
わけのわからない理屈をつけるアスカ。
こういうの、懐かしいっていうのだと思う。
彼女がドイツに帰って、まだ二年くらいしかたっていないというのに。
こういう会話は楽しい。楽しいと思うようになった。
やっぱり、アスカと過ごすことを選んでよかった。
たとえ、それで彼と喧嘩することになってしまったとしても。
「しっかし」
と、アスカは切り出す。
「誘った私も私だけど、まさか、24日をレイと二人で一日中すごすことになるとは思わなかったわ」
一応、断られるの覚悟してたんだけど。
とアスカは続けた。
「いいのよ。アスカはクリスマス休暇しかこっちにいられないんだから」
私はきっぱりと答える。
それが、本心だから。
「それに。私は、クリスマスだから彼と会いたいんじゃない。いつだって、どこだって、彼と過ごせるなら、私はそれで満足」
これも本心。
24日という日にちに、こだわりなんてない。
ほえ~っと。
アスカは彼女に似合あわない声を口にする。
「だってよ?シンジ?」
突然。
アスカは私の後ろに視線を移す。
それが何を意味するのか、理解して。
私は、瞬間的に、後ろを振り向いた。
「さっき、私にメールでどこにいるのか聞いてきたから、教えといたのよ」
アスカは、まるでいたずらが成功した子供のように、小悪魔的な笑顔をみせる。
「あんたが思ってる以上に、想われてるようよ、あんたは」
ラブラブねぇ~
小声でアスカは続けた。
「ってわけだから、今日一日、レイを借りるわ。いいでしょ?」
「わかったよ」
顔はわからなかったけれど、その声で、彼は本当に納得してくれたんだと感じられた。
「じゃ、いきますか。時はマネーっていうしね♪」
ちょっと大袈裟と思えるくらい、はしゃいでるアスカにせかされて、私は喫茶店の席を立つ。
お店を出る間際。
彼と一瞬だけ目があった。
「いってらっしゃい」
暖かく笑うその目をみて、私は、再び、体の芯で鼓動する、心地よい振動を感じていた。
【タイトル】Re: あなたといるだけで
【記事番号】-2147481361 (-2147481366)
【 日時 】07/01/05 22:45
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
携帯の振動と、彼と一瞬目があって跳ねてしまった心臓の鼓動との対比はすごくいい。
彼が何をして彼女が怒ったのかはわからないけど、この一瞬しか目をあわさないという意地悪でチャラだな(笑)。
一瞬だけ目があって~という部分に作者の意図があるなら、
> 私は、瞬間的に、後ろを振り向いた。
ここは振り向かないで我慢した方がいいかもね。
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: あなたといるだけで
【記事番号】-2147481328 (-2147481366)
【 日時 】07/02/05 02:32
【 発言者 】クロミツ
こういう話すごく好きです。携帯のバイブレーションと鼓動をかけ合わしているところとか、
短くてもカチッと構成されていますね。
>まるで私の心を見透かすかのように。
>緋色の瞳が私をみつめる。
>
ここがちょっと分かり辛かったのですが、緋色の瞳とは自分自身の目のことでしょうか?
アスカなら青とか瑠璃色ですよね。最初はレイが鏡やそれに類似したものを見つめて自分と
対峙しているのかと思ったのですが、次を読むとやっぱりアスカの目のような…。
>彼が何をして彼女が怒ったのかはわからないけど~(略)
>
私の想像では、どうもレイがクリスマス・イブの夜をアスカと一緒に過ごしたい(最初はシンジ
を交えて三人で、と言ったのだと思う)と主張したので、前々から二人きりのクリスマス・イブを
計画していたシンジが反対。だんだん口論となり、「僕とアスカとどっちが大切なんだよ!」と
口走ってしまったシンジにレイが激怒したのではないか、と。
レイが怒ったのは、自分が親友と恋人を秤に掛けてると思われたこと以上に、
>「それに。私は、クリスマスだから彼と会いたいんじゃない。いつだって、どこだって、彼と過ごせるなら、私はそれで満足」
>24日という日にちに、こだわりなんてない。
>
という自分の想いが、シンジに伝わってなかったのかという腹立たしさがあったんだと思います。
【タイトル】Re: あなたといるだけで
【記事番号】-2147481321 (-2147481366)
【 日時 】07/02/07 18:56
【 発言者 】tamb <tamb○cube-web.net>
> >彼が何をして彼女が怒ったのかはわからないけど~(略)
> >
> 私の想像では、どうもレイがクリスマス・イブの夜をアスカと一緒に過ごしたい~
これは
> やっぱり、アスカと過ごすことを選んでよかった。
> たとえ、それで彼と喧嘩することになってしまったとしても。
で、自明でしたね。浅いなorz
mailto:tamb○cube-web.net
【タイトル】Re: あなたといるだけで
【記事番号】-2147481284 (-2147481366)
【 日時 】07/03/12 04:35
【 発言者 】tomo
返信が遅くなってすいません。
クロミツさん、tambさん、感想ありがとうございました。
このお話は、短くてもちゃんと話としてはきっちり描こう、と思って書いた作品なので、クロミツさんのようにほめていただけると、すごくうれしいです。
あ、あと。
目の色ですが、これは単純に推敲段階で直しきれてなかった間違いです。
すいません。