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091204 ラグドゥネーム・コランダム
件名 | : Re: 091204 ラグドゥネーム・コランダム |
投稿日 | : 2009/12/13 21:30 |
投稿者 | : aba-m.a-kkv |
参照先 | : |
みなさん、読んでくださってありがとうございます。
感想、とてもうれしいです。
■タン塩さん
キザなセリフを淡々と語って許されるのはカヲル君ぐらいでしょうね。笑
私も、アスカはカヲル君じゃないとカバーできないと思ってます。
やっぱりアスカは人の中でも特別な存在ですし、その内側はとても複雑ですから、使徒という超越してしまった存在であるカヲルだからこそ
その内側の全てを引き出せるんじゃないかなあー、と妄想します。笑
なので、私の中のカヲル君は、貞エヴァのほうではなく、本編のほうのカヲル君です。
■tambさん
今回はとにかく甘く甘くしてみました。
私の書ける中では最甘かなと、爆
本当は「コランダム」というタイトルだけだったんですが、ゲロ甘注意のような意味も含めて「ラグドゥネーム」を冠させてもらいました。
さて、tambさんの引用の通りなのですが、「サファイア」も「ルビー」も同じ「コランダム」という鉱物で、
含有する少しの物質の違いで色が変わります。
同じように、アスカもカヲルも、それぞれの欠けた心という含有物で「サファイア」であり「ルビー」ありと個人を形成していますが、
その内側、レゾンデートルを相互交換した二人として、「コランダム」という二つで一つの存在なんだ、という意味を込めてみました。
ゲロ甘ですが、いつもながらのテーマということで。
■caluさん
アスカはアスカらしく、カヲルはカヲルらしく、そう言っていただけるのは最高の褒め言葉です。
こう甘く甘くしてしまうと、書いていて甘すぎてちゃんと二人の存在を出せているか不安ですが、caluさんにそう言っていただいて安心です。
逝きつくところまで逝きついてしまった、このイメージは拙作「流星群」のアスカをイメージしているんですが、
本編でのアスカはやっぱりその領域まで足を踏み入れてしまった気がします。
あのエヴァに乗ることであの赤い海にたどり着いてしまったアスカを引き上げられるのは、カヲルだけかなとLAKを書いていて思います。
逆に、それを引き上げられるほどの存在であるカヲルを救うことが出来るのもアスカだけかな、と。
なのでこういう甘い話が書けるのは幸せですね。笑
■JUNさん
はじめまして、感想ありがとうございます。
ゲロ甘の感覚を味わっていただけたようでなによりです。爆
そうすると、私が今回の「ラグドゥネーム」とタイトルに加えて意味弱にならずに済んだみたいです。よかった!
以前から、LAK苦手な人にも読んでもらえるようにと、どうしたらいいかわからないまま、頑張っているんですが、爆
JUNさんに読んでもらえる物語になったというのはとても嬉しい事です。
また何らか書くと思いますので、その時は読んでやってください。
件名 | : Re: 091204 ラグドゥネーム・コランダム |
投稿日 | : 2009/12/13 19:18 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
もう神がかったLAKですね。この尻の穴がむず痒くなるような感覚は他のカップリングじゃ得られない快感です(笑)
実を言うとLAKは少し苦手だったりするのですが、ここまでいくと苦手なはずの気障さも爽やかです。
次作もお待ちしてますね。
JUN
実を言うとLAKは少し苦手だったりするのですが、ここまでいくと苦手なはずの気障さも爽やかです。
次作もお待ちしてますね。
JUN
件名 | : Re: 091204 ラグドゥネーム・コランダム |
投稿日 | : 2009/12/13 09:55 |
投稿者 | : calu |
参照先 | : |
aba-m.a-kkvさん
拝読いたしました。有り難うございました。
まさに珠玉のLAKですね。美しく綴られた描写もさることながら、アスカはどこまでもアスカらしく、
カヲルもまたカヲルらしく描かれていたと思います。
またtambさんとダブってしまうのですが、
>逝きつくところまで逝きついてしまった私を引き上げてくれた。
このセンテンスにはグッときました。重いですね。ここに至るまでのアスカについて、どれだけ文章を
綴ってもこの1センテンスには届かないような気がします。
また次作を楽しみにしております。
calu
拝読いたしました。有り難うございました。
まさに珠玉のLAKですね。美しく綴られた描写もさることながら、アスカはどこまでもアスカらしく、
カヲルもまたカヲルらしく描かれていたと思います。
またtambさんとダブってしまうのですが、
>逝きつくところまで逝きついてしまった私を引き上げてくれた。
このセンテンスにはグッときました。重いですね。ここに至るまでのアスカについて、どれだけ文章を
綴ってもこの1センテンスには届かないような気がします。
また次作を楽しみにしております。
calu
件名 | : Re: 091204 ラグドゥネーム・コランダム |
投稿日 | : 2009/12/10 05:48 |
投稿者 | : タン塩 |
参照先 | : |
うーむ
こう言っちゃ何ですが、アスカさんはシンジ君程度では手に負えないというか(笑)
カヲル君ぐらい図太くないと相手は務まらないと常々思ってます。
■tambさん
というわけでもう一曲
この曲はマライア・キャリーがカバーしてますが、そっちのアレンジももう古い(笑)
ちなみにロバート・パーマーの死因は腹上死だそうです(爆)死に方もキザ♂
こう言っちゃ何ですが、アスカさんはシンジ君程度では手に負えないというか(笑)
カヲル君ぐらい図太くないと相手は務まらないと常々思ってます。
■tambさん
というわけでもう一曲
この曲はマライア・キャリーがカバーしてますが、そっちのアレンジももう古い(笑)
ちなみにロバート・パーマーの死因は腹上死だそうです(爆)死に方もキザ♂
件名 | : Re: 091204 ラグドゥネーム・コランダム |
投稿日 | : 2009/12/09 21:13 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
まず「ラグドゥネーム・コランダム」とは何か?
とりあえず検索してみる。「ラグドゥネーム コランダム」ではヒットせず。個別に検
索してみると、
「ラグドゥネーム」
ラグドゥネーム(Lugduname)は2007年現在のところ人間が甘味を感じる物質として最も
作用の強い物質である。その甘味は計算上、同量の砂糖と比較して22万倍~30万倍に達す
る(なお、サッカリンで500倍・アスパルテームでは200倍程度)。その甘さは構造中のグ
アニジンおよび酢酸ユニットに由来しているらしい。
毒性について詳細は不明である。
「コランダム」
コランダム(corundum)は、酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶からなる鉱物。鋼玉(こ
うぎょく)とも呼ばれる。赤鉄鉱グループに属する。
純粋な結晶は無色透明であるが、結晶に組みこまれる不純物イオンにより色がつき、ルビ
ー(赤色)、サファイア(青色などの赤色以外のもの)などと呼び分けられる。
いずれもWikipediaから。
つまり「ラグドゥネーム・コランダム」を意訳すると、「ゲロ甘の宝石」ということに
なるのであろうか(笑)。
上記引用中、「ラグドゥネーム」で目に止まったのは「毒性について詳細は不明である」
という点。「コランダム」では「純粋な結晶は無色透明」「不純物イオンにより色がつき」
であった。
というわけで読んでみると、まさにゲロ甘なのであった(笑)。
タン塩さんも書いてるように、このキザ感はたまらん。言ってる本人は恐らく露ほども
意識していないであろうということもまたたまらん。
なので、「何て!恥ずかしく甘いセリフなんだろう」と思ったときに、「恥ずかしいわ
よバカ!」とか言って張り倒すなりセームシュルトばりの膝蹴りを食らわすなりして大喧
嘩になりそこから仲直りをする、という話も読んでみたいと思ったのであった。
しかしこんなゲロ甘セリフ、よく考えつくな(笑)。「この色は、アクアマリン?」なん
て言ったらマジでぶっ飛ばされそうだけど。というか、ぶっ飛ばされる前に「この色は、
アクアマリン? なんちて……あ゛ー!」とかいう流れで絶叫しながら押し倒すわ(爆)。
> 銀色の髪を冠する私の親友も、よく同じようにして困らせている
ところかまわず膝枕してあげると無理強いするのであろうか(笑)。
> 逝きつくところまで逝きついてしまった
地味だけどこの漢字は結構すごいかも。
■タン塩さん
ロバート・パーマーというとパワーステーションを思い出す私は若いのか年寄りなのか
マニアなのかミーハーなのか(笑)。
で、ついついパワーステーション聞いてみたりしたけど、音がむちゃくちゃ古いな。特
にドラムのリバーブが。当時はあんなのが流行ってて、私も結構あんなエフェクト使った
りしたけど、さすがに今聞くとあまりに露骨だ。
しかしロバート・パーマーが死んでたとは知らんかった。
とりあえず検索してみる。「ラグドゥネーム コランダム」ではヒットせず。個別に検
索してみると、
「ラグドゥネーム」
ラグドゥネーム(Lugduname)は2007年現在のところ人間が甘味を感じる物質として最も
作用の強い物質である。その甘味は計算上、同量の砂糖と比較して22万倍~30万倍に達す
る(なお、サッカリンで500倍・アスパルテームでは200倍程度)。その甘さは構造中のグ
アニジンおよび酢酸ユニットに由来しているらしい。
毒性について詳細は不明である。
「コランダム」
コランダム(corundum)は、酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶からなる鉱物。鋼玉(こ
うぎょく)とも呼ばれる。赤鉄鉱グループに属する。
純粋な結晶は無色透明であるが、結晶に組みこまれる不純物イオンにより色がつき、ルビ
ー(赤色)、サファイア(青色などの赤色以外のもの)などと呼び分けられる。
いずれもWikipediaから。
つまり「ラグドゥネーム・コランダム」を意訳すると、「ゲロ甘の宝石」ということに
なるのであろうか(笑)。
上記引用中、「ラグドゥネーム」で目に止まったのは「毒性について詳細は不明である」
という点。「コランダム」では「純粋な結晶は無色透明」「不純物イオンにより色がつき」
であった。
というわけで読んでみると、まさにゲロ甘なのであった(笑)。
タン塩さんも書いてるように、このキザ感はたまらん。言ってる本人は恐らく露ほども
意識していないであろうということもまたたまらん。
なので、「何て!恥ずかしく甘いセリフなんだろう」と思ったときに、「恥ずかしいわ
よバカ!」とか言って張り倒すなりセームシュルトばりの膝蹴りを食らわすなりして大喧
嘩になりそこから仲直りをする、という話も読んでみたいと思ったのであった。
しかしこんなゲロ甘セリフ、よく考えつくな(笑)。「この色は、アクアマリン?」なん
て言ったらマジでぶっ飛ばされそうだけど。というか、ぶっ飛ばされる前に「この色は、
アクアマリン? なんちて……あ゛ー!」とかいう流れで絶叫しながら押し倒すわ(爆)。
> 銀色の髪を冠する私の親友も、よく同じようにして困らせている
ところかまわず膝枕してあげると無理強いするのであろうか(笑)。
> 逝きつくところまで逝きついてしまった
地味だけどこの漢字は結構すごいかも。
■タン塩さん
ロバート・パーマーというとパワーステーションを思い出す私は若いのか年寄りなのか
マニアなのかミーハーなのか(笑)。
で、ついついパワーステーション聞いてみたりしたけど、音がむちゃくちゃ古いな。特
にドラムのリバーブが。当時はあんなのが流行ってて、私も結構あんなエフェクト使った
りしたけど、さすがに今聞くとあまりに露骨だ。
しかしロバート・パーマーが死んでたとは知らんかった。
リビングのテーブルの上、文庫本の文章の流れに目を這わせている私の対岸で音がする。
夜の時間、カーテンで隔絶された箱の中、小さなテーブルを挟んで私の目の前に座るものを、私は一人しか知らない。
でも、私は本に目を落としたままにしていた。
言葉はない。
対岸は音をなくし、動く気配も感じない。
ただ、見つめられている雰囲気が、私の亜麻色の前髪を撫でる。
幾許かを置いて、私は視線を上げた。
そこにあったのは、私の宝石だった。
ラグドゥネーム・コランダム aba-m.a-kkv 20091204
「やっと顔を上げてくれた」
本当に嬉しそうな天使の笑みを浮かべて、渚カヲルはそう呟いた。
「なにやってんのよ」
私はパタンとワザとらしく本を閉じてテーブルの隅にやり、少し身を乗り出すようにしてカヲルのほうへと目線を合わせる。
あとで後悔することなるとも知らずに。
私の姿勢が固定されたのを見計らったように、そして私の問いに一番わかりやすく答えるように、カヲルはずいっと身体を乗り出た。
私が仰け反るのを許さないように、頬に手が添えられ、私とカヲルとの距離が縮まった。
それは私の視界一杯に、カヲルの紅い瞳が映り込む、そんな距離。
「アスカの眸を、見つめたくなったんだよ」
私が驚きと抗議の声をあげる前にカヲルが言葉で答える。
それは優しく優雅で、でも私に抵抗をさせない様な声。
私は一瞬、頬を染めそうになる。
愛している存在に、愛してくれる存在に見つめられるということに、私の心が跳ねそうになる。
でも、いちいちそんなことに反応していては身が持たないことも、それなりの生半可じゃない付き合いを重ねてきて知っている。
だから私は、自分のうちっかわを宥めるためにも問いを口唇に乗せた。
「また“趣味”なのかしら? カヲル」
カヲルがクツクツと喉を鳴らす。
まるで猫のようだと思いながらも、頬に添えられたカヲルの掌が熱くてしょうがない。
「そうだよ、僕の“趣味”あるいは“興味”というべきかな。
ふと思ったんだ、君の眸を見つめていたい、って」
ふう、と、諦観の冷めた雰囲気と、内側の熱い雰囲気とが織り交ざった吐息つきながら、私は目を少し逸らす。
おかしな趣味だ。
カヲルは時々、こういう不思議な行動に私を巻き込んでくる。
以前には、出かけた先でずっと手を繋いでいるとか、休みの昼の間膝枕とか。
まったく変な興味だと思う。
でも、銀色の髪を冠する私の親友も、よく同じようにして困らせているこというし、彼女とカヲルも兄妹のようなものだから似ているのかもしれない。
けれど、今回のこれは、恥ずかしいことこの上ない。
意識しないように、カヲルのペースに乗せられないように心がけても、頬と耳がだんだんと染まっていく音を止められない。
心臓の鼓動が、徐々に早くなっていく。
かといって、立ち上がったり、顔を背けたりするのを、添えられた掌は許してくれそうにない。
私にとってのそれだけの拘束力が、カヲルの掌にはあるのだ。
「アスカの眸は、とても綺麗だね。
この色は、アクアマリン?
それともブルートパーズかな。
否、その奥の深い色を想えば、やっぱりサファイアの色なんだろうね、カシミールの、コーンフラワーの」
バカ!!
そんな滅茶苦茶恥ずかしいセリフを言うな!!
そう心中で叫びながら、私はカヲル睨み付け、そして彼の瞳を、真紅の瞳を見つめてしまった。
そして吸い込まれる。
その紅い紅い、血の色のような色の瞳に。
それは宝石のような赤。
ルビーのような、そう、モゴックのピジョンブラッドのような、美しい赤。
でも、私にとっては、ただ美しいだけじゃない。
私だけの、もっともっと、深く重い意味がある。
この瞳だけが、エヴァや組織に求めて固着した無限ループの中から、そしてサードインパクトという逝きつくところまで逝きついてしまった私を引き上げてくれた。
誰も見てくれない、誰も本当の私を望んでなどくれない。
それを知ってしまった私の、本当は知っていた私の、その前に現れた渚カヲルだけが唯一私を見てくれた。
表層でも能力でもなく、私の内側、私の欠けた心、掛け値のない純粋な私そのものを。
そして、赤い奈落の淵に立っていた私の中の、生きたいという思いを、幸せになりたいという願いを、愛されたいという望みを、引き出し受け止めてくれた。
私のために自らのレゾンデートルさえかけてくれた。
そして、それは今も続いている。
カヲルの紅い瞳はいつも、私の中の本当の私を見つめてくれている。
これ以上のものを私は持っていない。
これ以上のものを私は知らない。
「アスカ……」
その声に私は我に帰る。
視界を埋める紅い瞳、私を見つめる紅い瞳。
その見透かすようなとても優しい視線と、今の刹那、私がその瞳に想っていたものとが重なり、私の中での箍が外れた。
「えっ? あっ……」
火がついたように頬が染まり、耳が焼ける音が聞こえる。
何考えて、しかもなに見つめてるんだ、私は!
恥ずかしさに心がのたうつけれど、表面の私はカヲルの紅い瞳に射抜かれて身動ぎ一つ出来ないほどに固まっていた。
ただ、私の青い眸だけがカヲルを捉えて揺れる。
そんな私を見つめて、カヲルが微笑んだ。
「アスカ、表情が移り変わって可愛いよ。
それに、表情の変化に合わせて、その青い眸がキラキラ揺れて光る。
まるでアイデアルみたいだ」
何て!恥ずかしく甘いセリフなんだろう。
普通であれば拒否反応さえ示しかねないのに、カヲルの紅い瞳に射抜かれた時に聞くその言葉は、私の内奥を優しく撫でる。
これではカヲルのペースに落ち込んでしまう。
「ば、バカ、なにいってんのよ!」
そうささやかな抵抗を言葉に乗せ、とにかくこの場から脱しよう、そう思った私の目の前の瞳が真摯な光の色にかわった。
笑顔をたたえたまま、紅い瞳が私のさらに奥に触れてくる。
「でも、本当に宝石みたいだよ、アスカ。
僕にとってという意味を重ね加えて尚更に」
意味が加わった言葉、意義が深まった声音、私の早い勢いで鳴っていた脈動とは別に、身体の中心で何かがトクンと跳ねた。
二の句を私は永遠に失った。
「僕は見るべきものを失った使徒だった。
立つ道もなく、歩む道もない。
見るべきものが何もないのだから、それは当たり前のことだね。
でも、見るべきものを、君を得たから、君が、僕の見るべきものとして許してくれたから、僕は新しい道に立てた。
君を、この瞳に映しているから、僕はこの道を歩いていられる。
美しい眸を宿す愛しい人よ、僕は君を見つめるところに依って、この世界に生きているんだよ。
これ以上美しいものを、僕は持っていない。
これ以上のものを、僕は知らない」
私の青い眸の奥に触れてきたカヲルの視線に、カヲルの心を感じる。
同じなんだと、私は思う。
色は違うけれど、それは欠けた心として存在を隔絶するけれど、それを繋げる絆は、そのレゾンデートルは同じコランダムなんだと。
「カヲル……」
私は小さく愛しい名を呟き、頬に添えられた掌に私の掌を重ねる。
それから全てを静穏と時の流れに委ねた。
カヲルの趣味につきあってやるのも偶にはいいかもしれない。
そんな言い訳も数瞬で四散する。
恥ずかしさも頬や耳を染める音も意識から消えて、いま私が感じるのは、目の前の宝石のような紅い瞳と、そこに込められた想いだけ。
たぶんそれは、カヲルも同じ。
私も、目一杯の想いをこの眸に込めているのだから。
そして、たぶん、それ以上のものは、ないのだろう。
それから幾許が静寂に時が過ぎて、いままで揺れることも動くこともなかったカヲルの視線がふと少し下がった。
今度はそこで固まったカヲルに、私は首を傾げた。
今度はどうしたというのだろう?
その刹那、カヲルは口を開いた。
私に対して、何か興味を見つけた時の笑顔を浮かべて。
「次は、アスカの口唇に興味を持ったみたいだ」
「えっ?」
私の思考より、カヲルの動きの方が早かった。
テーブル越しの不意のくちづけ。
いままで感じていたカヲルの紅い瞳は今や私の視界から消え去り、代わりに感じるのは柔らかく熱い口唇の感触。
一瞬の軽いくちづけなのに、まるで深い夜のよう。
それが過ぎて一つに重なった小さな結びつきが解けて、私は跳ねるように仰け反った。
見るとカヲルの顔もほんの少し朱が走っている、でも私の顔がどうなっているかなんて知りたくもないほど明らかだった。
あれだけ見つめられて、あれだけ想いを伝えられた後のキスなんだ、どうしようもなくなってしまう。
息が荒い、思考の連結がうまくいかず、心臓の鼓動も目一杯まで上がっている。
なんてことだ、これでは最初から最後までカヲルの望みどおりになってしまう。
その混乱した思考に一つの疑問が光り、私はそれを口に出してしまった。
「か、カヲル。
まさかアンタ、そのまま一つづつ興味あるっていっていくわけじゃないでしょうね!?」
そういったすぐ後に、自分で自分の墓穴を掘ったのだと気がついて私は凍りつく。
カヲルの眸が一瞬中空で考え、私を見渡して、それもいいね、と一言微笑んだ。
うそでしょ!?
その叫びは、赤い奈落に落ちるように、いつの間にかテーブルを回り込んできたカヲルに塞がれて消えてしまった。
でも、私が本当に落ちているのはカヲルの紅い瞳の中。
私の中の本当の私を見つめ続けてくれるカヲルの瞳の中に、私はいる。
だから受け入れてしまうし、望んでしまう。
もっともっとたくさんの、カヲルとの絆を。
なにせ、これ以上のつながりを、私は持っていないのだから。
これ以上の絆を、私は知らないのだから。
アスカ、一年間ありがとう、そしてまた一年よろしく。