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バレンタインデー
件名 | : Re: バレンタインデー |
投稿日 | : 2014/02/17 19:44 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
○tambさん
感想ありがとうございます。
「きっとシンジ君なら……」という思いつきですので。
>つか、男どもはシンジ君にチョコもらってそれでOKなのだろうか。
ぶっちゃけ、BLな意味でなく、「貰えるならもらえないよりいいよな~」という私の価値観です。
(実際、男からもなにもバレンタインに1つも貰えないとやっぱりさみしいです)
感想ありがとうございます。
「きっとシンジ君なら……」という思いつきですので。
>つか、男どもはシンジ君にチョコもらってそれでOKなのだろうか。
ぶっちゃけ、BLな意味でなく、「貰えるならもらえないよりいいよな~」という私の価値観です。
(実際、男からもなにもバレンタインに1つも貰えないとやっぱりさみしいです)
件名 | : Re: バレンタインデー |
投稿日 | : 2014/02/16 01:35 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
教室に行ったらチョコ渡そうと思ってた相手が男子生徒に取り囲まれてたらそりゃびびるわな(笑)。つか、男どもはシンジ君にチョコもらってそれでOKなのだろうか。レイちゃんの乙女方向よりそっちが気になる(爆)。
なんでもない、と否定しまくるレイに萌え。
なんでもない、と否定しまくるレイに萌え。
(おかしい、こんなはずじゃなかったのに)
少女は頭を抱えていた。
今日は2月14日、恋人たちの祝典であり、女の子にとっては勝負の日ともいえる日――バレンタインデーである。
少女――綾波レイもそんな女の子の一人だ。
ご多聞に漏れず、昨日友人であるヒカリ・アスカの二人と一緒に(主にヒカリの指導の下)完成した手作りチョコレートを胸に立ちつくしていた。
なぜなら、チョコを渡すべき愛しの彼――碇シンジ――の机の周りには人の山が出来ていたからだ。
勿論、相手がライバルの女の子たちなら、数が多かろうとなんのその、仮にも使徒を相手に一歩も退かなかったファーストチルドレン綾波レイである。
いかに鉄壁のA.T.フィールドを張られようとロンギヌスの槍よろしく彼のもとに向かっていく用意はある。
が、しかし、シンジの周りを囲んでいるのは男性陣、しかもクラスの半分近くの男子が集まっている。
(どうしてこうなったの)
シミュレーションはばっちりだった。
いつもとは異なり、始業の一時間前には間に合うように準備をし、目標(シンジ)の入室に合わせて射出(出迎え)、指定ポイントへ誘導(人目につかない場所へ移動)したのち、オペレーションクリア(チョコを渡す)。殲滅を確認(食べてもらって感想を聞く)次第帰投する(教室へ戻る)予定だった。
ところが、今日は作戦段階のうち第一段階から大幅な誤算があった。
なぜなら目標はすでに予定位置から大幅に異なるポイント(自分の席)で待ち構えていたのだ。
しかも強固なフィールド(男性陣)を周囲に展開した状態で、である。
こうして冒頭の状態が発生しているというわけだ。
では、彼の机の周りでは何が起こっているのか。
気を落ち着かせながら彼女は様子を伺ってみることにした。
「碇、俺にもくれよ」
「俺にも」「俺にも」
「わかったから、そんなに急がないで」
男子生徒たちの要求を流しながら、シンジは小さな袋をカバンから取り出し、一人一人に手渡していた。
「神さま、仏さま、碇さま~」
「もてない男に救世主だ」
「リア充どもなんか目じゃないぜ」
男性陣が大喜びしている。
尋常な様子ではない。
「みんな、何もそこまでいわなくても」
シンジとしては反応に困っているうえ、あまりの熱気に引き気味のようだ。
「俺だって女の子から決してもらえないと分かってた」
「彼女持ちのやつらがいつもいつもうらやましかったさ」
「俺なんて、ずっとバレンタインなんて滅びればいいと思ってたんだ」
「「「だが碇、お前のおかげでその認識は変わった」」」
口々に言い募った後、綺麗に口を揃える様は見ていた拍手したくなるほどだ。
そんな中一人の男子生徒が次の行動に移った。
「碇さっそくいただくぞ」
「別にかまわないよ」
その返事を聞き終わったかどうか、彼はさっと袋の中身を取り出し、口の中に入れた。
「う、うまいぞ!!」
「ほんとか、田中!?」
「ほんとほんと、とろけるような甘さの中にほんのりと香るカカオの風味。間違いなく完璧だ」
「「おお~っ」」
大絶賛である。
「そんな大したものじゃないんだけどなあ」
シンジはなおのこと反応に困っているようだ。
「碇、ありがとう。この恩は一生忘れない」
「俺も」「俺もだ」
他に口にした男子生徒たちも次々と感謝を述べていた。
シンジも照れてはいるが、満更でもないようだ。
「試に作ってみただけなんだけどなあ、チョコ」
「チョコレートをもらえたというだけで満足だ」
どうやらシンジが渡していたのはチョコレートだったらしい。
集まっている生徒も、見れば一人身ばかり……。
シンジが試に作ったものを貰って、心の無聊を慰めていたようだ。
「「「それじゃあ、ありがとな」」」
「どういたしまして」
ようやくシンジが解放された。
「あれ、綾波?」
シンジが自分に気付いたことがわかると、レイは教室の外へと脱兎のごとく駆け出した。
(……無理、碇君にこんなの渡せない)
レイは、今の今まで忘れていたが、シンジの料理の腕前はプロ級どころか超一流クラスだ。
現に「試しに作ってみた」チョコレートが大絶賛だった。
素人の自分が簡単に作ったものなど、渡せるわけがない。
「待って、綾波」
後ろからシンジの声が聞こえるが、到底止まる気にもならない。
そう言って逃げ込んだ先は屋上だった。
(普段ならここには誰も来ない)
確かに、普段ならここに隠れてやり過ごすことができる――
「綾波っ」
――そう、普段なら。
「!! い…かりく、ん?」
どうやらシンジはここまで追いかけてきたようだ。
「はあ、はあ……い、一体どうしたんだよ……はあ、はあ……あやなみ……はあ、はあ」
息も絶え絶えのシンジの姿を見ながら、レイは後ずさった。
「ダメッ、来ないで」
到底今の自分は顔を合わせられない、そう思った。
「はあ、はあ……そ、それは?」
段々息も落ち着いてきたのだろうか、シンジは視線を上げると、レイが今も抱きしめている箱に気が付いたようだ。
「……な、なんでもないわ」
なんでもないと言われて納得できるものでもない。
シンジとしては、袋の中身に心当たりもある。
「ねえ、綾波。それってもしかして――」
「なんでもないわ」
「いや、チョコレ――」
「なんでもないわ」
「いや、どう見てもチョ」
「なんでもない!!」
「………」
「………」
誤魔化すレイの言葉の後、両者に沈黙が訪れる。
ふう、とシンジは息をつくと、そのまま距離を詰め、綾波を抱きしめると、安心させるように、ゆっくりと優しく語りかけた。
「綾波、一体どうしたの?」
「……だって、碇君、チョコを」
「あれはただ、昨日みんなが『チョコほしい』って騒いでたからあげただけでね」
「ううん、違うの」
シンジの言葉を、そっと首を振りながらレイは否定した。
「……ただ」
ゆっくりと、レイは想いを口にした。
「ただ、碇君に食べさせられないと思って」
「『食べさせられない』ってどうして?」
「だって、碇君のチョコ、すごくおいしいみたいだから……」
レイはとうとう不安の原因を口にした。
――クスッ
「まったく、綾波はかわいいなあ」
「えっ?」
突然の言葉に、レイはシンジの意図を掴めなかった。
「だって、僕は全然気にしないことで悩んでいるんだもの」
「???」
察しの悪いレイに向けて、シンジは恥ずかしそうにしながら答えを言った。
「男はね」
――好きな娘からのチョコってだけで十分嬉しいんだよ――
「ところでさ……」
レイが落ち着くまで抱きしめた後、シンジはふと口にした。
「これ、貰ってもいい?」
シンジが指差したのは、二人に抱きしめられた中で包装がグシャグシャになりながら、なんとか形を保っているチョコレートだった。
「……えっと、その」
「ダメ……かな?」
「……かまわないわ」
煮え切らなかったレイだが、シンジの言葉もあったので、おとなしくチョコレートを明け渡した。
「なかなかおいしそうじゃないか」
包装から出てきたチョコレートを見たシンジの第一声はそれだった。
確かになんらおかしなところはない、普通のチョコレートである。
味見もきちんとしているうえに、ヒカリの折り紙つきなのだが、やはりそれでも不安になってしまうのが女の子というものだろう。
「それじゃあ一口」
――パクッ
「これは……ガナッシュかな」
「ええ、そうよ」
ガナッシュチョコレートとはチョコに生クリームやバター、牛乳などと混ぜあわせ、堅さを調整したもので、口どけのよいチョコレートである。
(……口にあったかしら)
「綾波」
「!!」
「おいしい、すごくおいしいよ」
嘘を言っているようにも見えない、どうやらほんとうにおいしかったようだ。
「……そう、よかったわ」
「ところで、碇君」
「なにかな、綾波?」
――好きです、あなたのことが――
――僕もだよ、綾波――
~Fin~